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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 2巻 (研究者の町 ロンドン)
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21 (奴隷解放の救世主 砂糖大根)〇

 数日後…。

「さてと…真空ポンプが出来たな…」

 真空ポンプの稼働を見ながらジガ(ウチ)が言う。

 減圧室(げんあつしつ)の場所は スターリング冷凍機のコンテナの隣に設置されていて、見た目は普通のコンテナだが、徹底的に気密がされていてる。

 ウチの隣には、新発明に興味があるクラウドが 見に来ていて、その技術が使えるなら クラウド商会が買い取り、住民に売る事で普及させて行こうとしている。

 さて、仕組みは 回転する丸い駆動部(くどうぶ)が回転し、上部にある2つの 遮断弁(しゃだんべん)が駆動部と連動して開閉作業を行う機構だ。

 まず、遮断弁(しゃだんべん)の1つである吸気弁(きゅうきべん)が開き、減圧された内部の気圧差を均等に戻そうと 外から空気が中に取り込まれ、吸気弁(きゅうきべん)が閉じる。

 それと同時に排気弁(はいきべん)が開き、内部で圧縮された空気を排出…。

 これを駆動部(くどうぶ)が周り続ける限り繰り返す。

 で、これを 吸気側をコンテナの中に繋ぎ、排気側を外にすれば、減圧が始まる。

 ちなみに今回は駆動部分をモーターで回しているが、圧縮時点でスパークプラグでタイミング良く、点火して燃料を爆発してやれば、駆動部分を回転させる事が出来る様になり、これをタイヤに繋げば、本格的なガソリンエンジン…4ストローク(スト)エンジンになる…。

 しかも このエンジンは 燃料は 酸水素ガスでも使え、スターリングバギーもエンジン部分を付け替えるだけで、アップグレードさせられる。

 これで、バギーだけでは無く、10tトラックでの運搬(うんぱん)も現実レベルで可能になって来る。

 とは言っても、国民の数が圧倒的に少ないのに、各作業の自動化を徹底して 作業効率が半端なく高いので、需要に対して供給量が異様に高い状態になって しまっているのだが…。

「よし、とっとと やっちまうか…。」

 ウチとクラウドは、最近収穫した大量の大豆、テンサイ(ビート)を大量に持って来る。

 他に収穫できたのは ジャガイモで、ニンニク、小麦は 秋植えなので これから植え、春には全部の食材が(そろ)うだろう。

 減圧室(げんあつしつ)の主な用途(ようと)は、フリーズドライ食品だ。

 凍らせる(フリーズ) 乾燥させる(ドライ)の名前の通り、一度 食品を冷凍して水分が氷になった所で、減圧室に放り込み、真空状態にして水分を抜く。

 こうする事で 中がパサパサのスカスカ状態になるので、これをパッケージングすれば、缶詰レベルの賞味期限を維持出来、香辛料をフリーズドライ加工して粉状すれば、味覚剤(みかくざい)になり、あらゆる味が 味覚剤(みかくざい)の組み合わせで再現が可能になる食品添加物(しょくひんてんかぶつ)になる。

 なので、ビートを煮込んだ出来た しぼり汁を大量に作り、大豆はすり潰してペースト状にして、それぞれを フリーズドライ加工する。

 これで大豆は 常温で2~3年は(くさ)らなくなる。

 そのフリーズドライ加工されたしぼり汁は 砕いて粉状に加工すると、奴隷を死ぬまでこき使って働かせていた元凶である砂糖が簡単に手に入り、大豆も粉にする。

 出来上がった粉 大豆と砂糖は、今は食料に十分に余裕があるので、炭素繊維の箱に入れて、倉庫で常温 保存し、春に収穫されるニンニク、テングサと組み合わせる事で、ソイフードが完成する…。

 そこまで行ければ、料理のバリエーションが飛躍的に上がだろう。

「はぁ…ビート(家畜の餌)が、砂糖に化けるなんてな…」

 砂糖を袋に詰める作業を手伝っているクラウドが言う。

 この時代だと、コーヒーや紅茶に砂糖を入れる文化が始まり、貴族達は砂糖の生産の為に 離島に砂糖農園を作り、そこで奴隷を死ぬまで働かせる事で、砂糖を手に入れていた。

 当時のレートだと、砂糖や胡椒(コショウ)は 砂金と同じ重さで取引されたとされている。

「このビートでの砂糖 製造方法が確立されたから、自国で砂糖を生産出来る様になって 奴隷貿易が衰退したんだ。

 『奴隷解放の救世主』って呼ばれている。」

「奴隷の価格は年々上昇していたからな…。

 効率の良い 生産方法が見つかったから 砂糖の値段が安くなって、割が合わなくなったのか…」

「そう言う事、しかも 砂糖を取った(しぼ)りカスのビートは、家畜の餌として使えるから、ウサギに与えられる。

 本当にビートは無駄が無いんだよな…」

「これで、開拓村から町に昇格かな…」

「あっそうだ…クラウド商会にある食料備蓄は?」

 現在、各拠点で生産された物資は、クラウド商会の支店に一度保管されてクラウド商会の輸送部隊が運搬(うんぱん)している。

 なので、一番多くの倉庫を持っているクラウド商会に定額料金で預けている…運搬(うんぱん)がラクだからだ。

「冬の備えの為に各食料を均等に分けて、支店の倉庫に送っている。

 雪が降ったら輸送が出来ないからな…」

 今のバギーカーは、タイヤの粘着力(グリップ力)は問題無いんだが、スターリングエンジンの都合上、アクセルの反応が極端に悪いので急に出力を変えられない。

 なので、操作のしにくさと事故防止の為、晴天で地面がぬかるんでない状態で無いと走れない…当然、雪もだ。

「分かった…備蓄関係の書類は、ナオに送ってくれ」

「分かっている…。

 暖房器具や発電が出来なくなる事を想定して、大量のガスタンクを移動させている。

 全部終わるのに1週間位か…。」

「なら、冬までに間に合うかな…」

 冬になったら半数の国民の仕事が無くなり暇をするので、バギーの4ストエンジン化のテストとアップデートが出来るだろう。

「それじゃあ…品質に問題が無いみたいだし、人を集めてやっちまおう。」

 ウチはそう言うと、掲示板に人材の募集の張り紙を張る為、クラウドと一緒に冒険者ギルドに向かうのだった。

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