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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 2巻 (研究者の町 ロンドン)
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20 (人類 農奴化計画)〇

 秋、アトランティス村の湖の近くにある鉄条網(てつじょうもう)に囲まれた大豆畑が茶色一色に染まる。

 ()いた後1週間で生育が始まり、白色の花を咲かせ、緑色の枝豆になり、茶色になる。

 ナオ(オレ)は それをバギーの前に コンバインアタッチメントを取り付けた簡易コンバインに乗り、ノロノロと回収していく。

 コンバインは、(くし)が円柱型に配置されていて、それが回転する事で大豆を縦に整列させて、下のチェーンソーに使った 丸のこが下部から切断し、切断された大豆は一ヵ所にまとめられ、炭素繊維のコンベアで席の左側を通って上がり、後ろのリアカーに積まれて行く…。

 よく見ると雑草も含まれている…まぁ除草剤は使っていないからな…。

 普通のコンバインなら、この時点で脱穀(だっこく)が出来てマメだけになってタンクに入れらるのだが、構造が複雑になる為、今回は実装を諦め、脱穀(だっこく)機を別に用意している。

 農業初心者のオレは、枝豆 状態では無い大豆を見るは 初めてだったのだが、事前に現場の農奴と1ヵ月以上掛けて綿密(めんみつ)な打ち合わせをしていたのと、ホープ号にある コンバインの構造データを元にアタッチメントを作ったので、何とかなっている。

 来年の春の小麦の収穫では、脱穀機(だっこくき)も一緒に搭載したいのだけど、現状ではバギーの馬力が足りないので、設計レベルでコンバインに最適化した、大型コンバインを造る必要がある。

 が、農地面積が少ない 今の状態ならこれで十分…。

 実際、アタッチメントを交換するだけで、土の(たがや)しから回収まで出来るからだ。

 一杯になったリアカーを外して新しいリアカーを接続し、また大豆の回収を再開する。

 別の場所では、リアカーに乗せられた多量の大豆を 脱穀機(だっこくき)に掛けられてマメにされ、次々と袋に詰められていく。

 隣のジャガイモの農地では、いくつもの突起があるアタッチメントで、土の中のジャガイモをすくい上げ、オレと同じ様に炭素繊維コンベアで後ろのリアカーに積まれている。

 操縦しているのはクオリアだ。

 これも普通ならジャガイモだけを回収するのだが、土と根っこが そのまま付いて来ている。

 まっそれでも、手作業で掘り起こすよりかは、数倍はラクだろう。

 結局、土を(たがや)して肥料を混ぜて植えての大量の人数を使って1ヵ月程度掛った作物を 機械を使う事で少人数で丸一日で回収する事が出来た。

 多分、機械化した今の状態なら全部の作業を含めても2、3日 程度の時間で終わる作業だろう。

「機械ですか?コレって凄いですね…。

 今まで苦労して、収獲して来たってのに、あっと言う間に終わっちまいますよ。」

 夕方になり今日の作業が終わり、バギーを止めてた所で、元農奴のおっさんがオレに言う。

「こうでもして 畑面積をどんどんと増やして行かないと、人が増えた時に食料がまわらなくて、餓死者(がししゃ)が出て来るからな。」

「今、備蓄食料も家畜も かなりの数ありますよね…。

 それでも足りないんですか?」

「足りないな…。

 えーと『マルサスの法則』ってのがあって、それによると、農業ってのは 毎年、収穫量が一定量 上がって行くんだが、人は違う…。

 今は200人程度だけど、10年後には400人、次の10年で(さら)に倍の800人と どんどんと指数関数的に増えて行く。

 だから、いずれ食料が人口を支えられ無くなって来る。

 で、食料が無くなれば、()よくな土地を取り合う為の戦争が始まって、人口が減ると…。

 人類の歴史は これをひたすら繰り返しているんだ。

 な訳で、オレ達は 食料を必要としない 手作業の数十倍早く仕事が出来る機械を開発したって訳…。

 数十人分の食料が浮いたと言い換える事も出来るな…」

 コンバインを見ながらオレは言う。

 オレらは このトニー王国 国民200人を20万人まで増やさないと行けない。

 マルサスの法則を信じるなら 100年と少し あれば20万人に辿(たど)()くが、それは食料が持った場合だ。

 山岳地帯(さんがくちたい)が多い、この島で それらを(まか)うなら、化学肥料に遺伝子組み換え作物に農薬が必須となる…本当に農作物は賢い。

 人類から大量の栄養を(もら)って自分達を効率良く増やし、栄養を奪うライバルの雑草は農薬で()れさせ、遺伝子操作により短時間で最適な環境に適応させて(もら)える…。

 本当に人類を奴隷化して自分達を増やしていく優秀なシステムだ。

「オレ達はコイツらを増やす為の奴隷なのかね…。」

「まぁ私の人生の大半は、畑仕事でしたからね…。

 そう考える時も確かにありました。

 でも、農作物の思惑(おもわく)如何(どう)あれ、私達が生きる為には コイツらが必要です。

 村の皆が腹いっぱい食べれるなら、奴隷でも構いません。

 それに 例え奴隷だとしても こんなに ラクして育てられる様になりましたし…」

「その考え方には共感出来ないな…。

 アンタ、砂糖農園に送られる途中で餓死(がし)し掛けていたんだろ。

 それでも良かったのか?」

「いいえ…。

 その砂糖を作っているのが 私の村の会社なら、家族の為、村の為に犠牲になる事も考えますが、相手は顔も知らない貴族です。

 彼らの為に自分を犠牲にしようとは考えません。」

「う~ん…。

 守る価値のある組織の為なら 犠牲になれるが、価値の無い組織の為には働きたくないと…じゃあ、ウチの国は如何(どう)だ?」

「……死なないレベルでなら、協力しますよ…。

 ただ、国の為に死ぬ気には慣れません。」

「そっか…それじゃあ そのままで良い。

 人材の損失は国力の損失になるからな…。

 アンタは 出来るだけ健康で長生きして、この国の食料を支えてくれ。

 そんじゃあ…皆 引き上げるぞ…お疲れ~」

 オレは、片付けを作業をしていた作業者に言うと、皆 夕食を食べに冒険者ギルドに向かって行った。

 その作業者の表情には、生き生きとしていて、とても作物達の奴隷とは思えなかった。

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