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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 2巻 (研究者の町 ロンドン)
48/339

17 (森は誰の所有物でもない)〇

 工場。

 ガシャン、ガシャン。

 コンテナハウスを組み合わせて作った工場内には 12の黒鉛炉があり、炭素繊維の板とコンテナハウスの壁が作らている。

 そして 床と天井に取り付けられている刃物の様に鋭い鉄の型が 炭素繊維強化プラスチックの板を(はさ)み、その上から大量の砂袋を上に載せた1トンの重さの天井が床に押し付けて切断する事で、型抜き されたクッキーの様にパーツが出来る…プレス機だ。

 現状では 安全の為 あえて自動化はさせず、手が届かない横に配置した ハンドルを回す事で 天井の歯車が回り、1トンの重さの天井を上下させる仕組みにしている。

 今、プレス機で型抜きされているパーツは 3台目のプレス機のパーツで、そろそろパーツを組み合わせて 3台目が出来る所だ。

 オレは 空いている2台目の ハンドルを回して 天井を上げ、安全の為に4(すみ)の穴に棒を差し込んで 天井を支え、ウサギの脂を塗ってある型を上下に入れて固定、その後に 棒を抜いて 炭素繊維強化プラスチックの板を入れ、ハンドルを回して天井を勢いよく下げて、切断する。

 天井を上げて型で切断された炭素繊維強化プラスチックは、プラモデルのパーツのようになっており、パーツを洗浄した後で冒険者ギルドに戻り、組み立てを行い、サブマシンガンの形を作って行く。

 銃の本体部分は廃熱(はいねつ)が容易な炭素繊維強化プラスチック、持ち手は断熱能力が高いガラス繊維強化プラスチックで作られている。

「よし…完成…と」

 銃は両手で持つ分には取り回しが良く、プレス加工で すぐ出来るM3グリースサブマシンガン…のガスガンだ。

「出来たのか?」

 オレが銃を作る所を見ていたクラウドが言う。

「ああ…M3グリースだ。」

 このM3グリースは、第二次世界大戦、ベトナム戦争時に大量にアメリカが生産したM3グリースのパーツを流用しつつ安く 近代仕様に改造した銃だ。

 これは導入コストが安くて 入手が容易なので、予算的に余裕がない国やテロリストが自前で製造して使うサブマシンガンとして広く流通している。

「さて、試射をしに行くか…。」

 オレがそう言って冒険者ギルドを出て、後ろから クラウドが付いてくる。


 射撃場は 前に耐久試験に使ったコンテナハウスの前だ。

 オレは、ガスボンベを背負い マガジンの下にガスボンベのホースを接続し、クラウドが背中に周って ガスボンベのバルブを締めて ガスを開放し、コンテナハウスに狙いを付ける。

 クラウドの退避を確認…目標まで 距離25m…。

 トリガーを引くとガス圧で 中の9mmの鉄の弾が フルオートで発射され、3発ごとに区切たバースト撃ちでトリガーを引いて行く。

 本来は 火薬を燃やしたガスで発射される銃を薬莢(やっきょう)を排出する排出口の穴を(ふさ)ぎ、外部からガスを供給する事で再現した高圧ガスガンだ。

「これがフルオートか…。」

 30発のダブルカラムマガジンを撃ち尽くした所でクラウドが言う。

 この時代だと まだ連続で撃てる銃は リボルバーを含めて無く、単発のマスケット銃が基本だ。

 弾頭重量とライフリングが無い問題で この距離でも着弾点が やや下に言っていて アイアンサイトは 目安程度にしかなっていない。

 ただ 推進剤を内蔵している銃弾に比べて ガスを外部から供給しているこの弾は、銃弾型の鉄の(かたまり)なので質量が高い…。

 25m内なら45口径弾位の威力がある…熊とやり合えるレベルの威力だ。

 ただ、欠点としては マガジンからガスを供給する構造の為、マガジンを交換した後はガスチューブを取り付け直さないと行けなく、実質30発しか撃てない構造になっている。

 だが、ライフリングも無く 火薬が無い この状況で 熊を相手にするなら このガスガンは、必須だろう。

「撃ってみるか?」

 オレは 背負っているガスボンベを降ろして ガスの供給を止め、マガジンを交換してチューブを繋ぎ直し、またガスを解放…。

 クラウドは M3グリースを受け取り、初弾を装填して構える…うん、構えは ちゃんと出来ている。

「撃つぞ」

「どーぞ」

「うっ…。」

 クラウドが発砲…。

 だが、予想より大きかった反動に耐えず すぐにトリガーを離す。

 弾頭重量が大きいと言う事は その分 反動も大きくなり それは命中率を下げる要因にもなる。

 まぁ片手撃ちは反動の問題で まず出来無いし、足を止めて シッカリと構えて撃ち、弾数で押す やり方なら これでも十分だろう。

 1マガジン30発をバースト撃ちで 撃ち終わった時には それなりに集弾するようになっていた。

「使えるか?」

「ああ…反動がキツイが十分だ。

 明日は皆に撃って(もら)おう。

 これで また熊が出ても対処が出来る。」

 クラウドが M3グリースを見ながら言う。

「さてと弾を回収するぞ…。」

 オレはコンテナハウスに詰まっている鉄の弾をほじくり出す。

 弾にはライフリングの様な(みぞ)が直接 彫られており、炭素繊維の壁には弾が回転して巻き込んだ後が残っている。

「弾側に(みぞ)を彫って見たが、ちゃんと回った見たいだな。」

 サンプル用の弾を いくつか確保し、使った弾は 黒鉛炉で 融かして (みぞ)が入った弾の型に入れて また鋳造(ちゅうぞう)するだけだ。

 壁に当たって変形した弾でも リサイクルが出来るのが、この弾の最大の利点でもある。


「さて…リベンジだ。」

 バギーに乗っているオレが言う。

 現在、あの拠点は熊達の増援により占領され、10匹程度が観測されている。

 道路には果物の木がある為、果物を求めて熊達がやって来るらしい。

 熊の出現により、輸送隊の移動の(さまた)げにもなっていて、近々犠牲者が出ると予想されている。

 オレが火薬の生成を待たずにガスガンを作ったのも その事が大きい。

「銃の数も火炎放射器の数も十分…。

 速攻で砦を作るよ…。」

 隣にはクラウドが乗るバギーがあり、その後ろには戦闘員と補給部隊がズラリと並んでいる。

 アトランティス村と 竹の森の拠点の住人の混成部隊であり、それぞれの住民の特徴である黒い肌と白い肌が不規則に混ざっている。

 ひとまず人種の対立関係は 落ち付いた見たいだ。

「それじゃあ…行くよ」

 オレがアクセルを吹かして、スターリングエンジンに熱を加えた所で、押し、加速し始めた所で バギーに飛び乗って(さら)に加速する。

 アトランティス村の広場を混成部隊がリアカーを引いたバギーで木材の森の拠点に向かって行った。


「手早くやるぞ」

 現場の少し前で止めたクラウドは そう言うと装備を整え、ロウを先頭に草に隠れる形で ゆっくりと歩き出し、オレ達も後に続く。

「見つけた」

 ロウが言う…。

 オレもすぐ後に見つけた。

 1倍率でギリギリで目視出来る距離にコンテナハウスが見える。

 距離は50mと言った所だろう。

「マズイな…アイツらコンテナハウスの中に住んでやがる。

 銃も火炎放射もコンテナの中に入られたら効かない。

 完全に逆手に取られた。」

 オレは ロウの横からコンテナハウスを見るクラウドに言う。

「ナオは 目が良いな」

「まぁな」

 オレの目には暗視や倍率機能などがあるので、比較的 熊を見つけやすい。

 コンテナハウスは細かい傷はある物の無事だが、恐ろしい事に熊はコンテナの後ろの扉を器用に開けたらしく 中で寝泊まりしている。

 まぁ熊のパンチに耐えられる強度の巣なんて無いからな。

「小熊を見つけた」

 熊は 小熊を産むとオスは育児放棄してメスから離れてしまうので基本的にメスだけで小熊を育てる。

 また生まれた子供もある程度育つと近親交配を避ける為にオスがメスから分かれて生活を始める。

 つまり、ここのいるのはメスと子供だけだ。

「一番はオレだ…オレが撃ったら前進しろ」

 オレがクラウドに そう言い、クラウドをここに置いて 数名引き連れて熊達を囲むように部隊を配置する。

 オレは扉が空いたコンテナの中が見える位置に付き、射線を確保する。

 ガスガンを向けて アイアンサイト越しに見えるのは 生まれて そんなに日が経っていない小熊が数匹重なっている。

 外のメスの熊は6…合わせれば十数匹程度で事前の報告通りだ。

「小熊を()るのは気が進まないんだが、ここの道を作るにはオマエ達は害獣なんだ。」

 昔 爺さんが行っていたな…。

 地球上のすべての土地は 人が勝手に土地の所有権を主張しているだけで、本来は その土地は誰の所有物でも無いと言う事…。

 これは、オレと動物達の領土を争う戦争だ。

 オレはトリガーを引く…。

 発射された9mm弾は 小熊の鼻から入って脳幹(のうかん)を貫き、即死させる。

 小熊側は 自分が攻撃を受けた事も苦痛を感じる事も無く死んだだろう。

 次…次…早い…2匹を仕留めた所で残りの小熊がコンテナを飛び出して 逃げ始めるが、別の方向から立ち上がって構えた 隊員達がバースト射撃で撃ち、小熊が被弾…。

 足が止まった所から動かなくなるまで、弾を浴びせ続ける。

 背後から聞こえる銃声に母親熊も対応しているが、また別方向から撃たれる…その中には クラウドとロウの姿が見える。

 流石(さすが)に大人の熊には 9mm弾の威力は弱いが、クラウド達は足を中心に狙っている見たいで、3発に1発程度の割合で熊に当たり 足を鈍くした所で 接近して良く狙い フルオートで数十発の弾を熊の頭に受けて 流石(さすが)の熊も動かなくなった。

「よし…行けるぞ…これで熊に勝てる。」

「おおおっ」

 3方向から撃ちながら接近して熊を無力化した所で、一人の隊員が言い、周りに歓声が広がる。

 オレ達との戦争時に夜襲(やしゅう)を仕掛けて来た弓兵達だ。

 今までは 矢の威力では熊の対処(たいしょ)が難しく、度々 犠牲者を出して 熊による死者は許容(きょよう)するしか無かったのだが、ガスガンが出来た事で 比較的簡単に熊を狩れるようになった。

「よし…それじゃあ、陣地を作るぞ」

 今回の目的は 熊を殺すだけではない…。

 むしろ後ろで待機している補給部隊の大半が強固な砦を作る為の人材だ。

 まずは 熊の死体を動かし、アトランティス村の解体職人が 毛皮や肉を削ぎ取って行く。

 熊の毛皮は服に使ったり、部屋の壁に張り付ける防寒材として使われ、今では酸水素ガスがあるお陰で 寒さの問題は解決出来たが、アトランティス村の人達にとっては動物の命を奪って手に入れた 大切な毛皮だ…それだけ神聖視されている。

 肉は 臭みが強く繊維が固いが栄養価があり、ミンチにしてハンバーグにしまえば それなりに美味い。


 さて、果物の木を残して周囲の木をチェーンソーで伐採して行き、更地(さらち)になった所で その上に2階建てのコンテナを囲むように配置し、最低限の安全を確保する。

 外側には 木の先をチェーンソーで鋭くした(くい)を打ち込み、見晴らしの良くなった屋上から 距離のある動物に対しては ガスガンで対応。

 それでも 近づいてくる動物には 射程が短い火炎放射器で対応…。

 これで、近づいてくる動物を安全に火だるまに出来、砦としては それなりの防御力を持つ事になった。

 しばらくは 動物達が奪還に来るだろうが、何度か追い返していれば ここが危険な場所だと学習して近寄らなくなる。

「やっと出来たな」

 警備も含めて泊まり込みの1日で砦が完成し、翌朝に最低限の人だけを常駐させてオレ達はアトランティス村へ戻って行った。

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