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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 2巻 (研究者の町 ロンドン)
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15 (熊型ワーム)〇

 翌日…。

 バギーで コンテナハウスが 木材の拠点に運ばれ、チェーンソーで切り倒した 木を輪切りにして黒鉛炉(こくえんろ)で木炭にする。

 そして、そこから出る煙を回収して蒸留(じょうりゅう)し、木タールと木酢液(もくさくえき)を入手…。

 その後は 木炭を燃やして灰を作り 瓶に入れて行く。

 螺旋(らせん)水車マイクロ水力発電機も数機持って来て、近くの川に設置し、そこから電気を発生させる。

 ガス発生機に水を150気圧になる指定位置まで入れ、その上に ガスボンベを差し込み、電気を通して水を分解…。

 発生した酸水素が ガスタンクに詰め込まれ、バギーやチェーンソーの燃料が手に入る。

 ほんの数ヵ月前までは、ここまで半日も掛かっていたと言うのに、バギーが出来た今では すぐに行き来が出来る…。

「これが道具の力か…。」

 クラウド()がつぶやく。

 ここの規模が大きくなれば、ここに生活する人も出てくるだろう。

 ただ…この時の私は この開拓村を甘く見ていた。

 竹の森の拠点とは違い ここには 原住民達がいると言う事を…。


 数日後…。

 ナオがクラウド()達の護衛にと、アトランティス村からロウ(悪魔憑きの女)を寄こして来た。

 狼の耳と尻尾を持つ子供で、ナオの仲間らしい。

 悪魔憑(あくまつ)きは、(わざわ)いの元とされ、(かく)まっていた場合、断頭刑も十分にあり得る。

 とは言え 自称とは言っても 神のお墨付(おすみつ)きが付いているし、ここは教会の支配は及ばない。

 大金の為なら邪教(じゃきょう)でも表面上は 信じた私だ。

 十分な報酬と快適な生活を送れているし、対価としても問題無い。

 

 木の伐採(ばっさい)と木の一次加工に 慣れ始め、そろそろ業務を任せられると思ってきた時期だ。

「熊だ!」

 悪魔憑(あくまつ)きの少女、ロウが叫ぶ。

 私達は すぐさま戦闘態勢を整えるが…何処(どこ)だ?

 熊が見当たらない。

 ロウは コンテナハウスのすぐ近くで、木を伐採(ばっさい)作業をしている作業員を下がらせ、腰を下げ、ボーラの回転を始める…。

 私はロウの側まで近づき、ロウの指の先を見る…。

 森の木々に隠れて敵が見えない中、私は必死に熊を探す。

 見えた…熊の数は3…。

 ヤツの目的は 果物の木の果物で、地面に落ちている果物を食べている。

「そのまま、大人しく帰ってくれよ」

 が、作業員が威嚇(いかく)の為にチェーンソーをならす。

「止め!」

 ロウが言うが、かえって熊を刺激してしまい、猛スピードで、こちらに向かって来る。

「来るな!!」

 作業員が作動したチェーンソーを槍のように構え叫ぶ。

「止めろ!!」

 私が言うが 作業員は聞かず、熊に回転しているチェーンソーを突き刺す。

 ウオオオオ!!

 熊の表面を削り、血しぶきが上がりチェーンソーが作業員の頭に向けて跳ね返って来る…キックバックだ。

「うわっ」

 作業員は咄嗟(とっさ)にトリガーを離して首を(かた)け、チェーンソーの刃を回避…もう少し反応が遅れていたら、額が削られていた。

 熊の方は、表面を削られ血が出ているが、まだ十分に動けるようで むしろ激昂(げっこう)している…明らかに危険だ。

 残りの2匹は弓やクロスボウ 槍で対応しているが 多少、突き刺された位じゃビクともしない…数が少な過ぎだ。

「チッ…。

 戦え無いヤツは コンテナの中に隠れろ!!」

 私が叫ぶ…私だって…まともに戦え無い…。

 が、何かないか?…いやあった。

 私はコンテナの横にある薄暗い森の中を照らすライムライトをボンベごと 持ち上げる。

 ロウがボーラで熊の頭を思いっきり殴り、熊がふら付かせる…。

 次の瞬間、別の熊がパンチを放ちロウは回避。

 私を一瞬 見ると、2頭の熊のパンチを回避しつつ、そのまま下がる。

「皆 離れろ!!」

 そして、私はボンベを最大出力にして ライムライトを熊に向けた。

 ボンベから噴射された可燃性のガスが勢いよく燃え、大きな火炎となり熊を襲う。

 グオオオオ…。

 熊の毛皮はよく燃える…。

 チェーンソーで相手をした熊は焼かれて焼死…。

 1匹は火を見て逃げ、もう一匹は大量の矢で仕留められ 拳を握った状態で死んでいる。

「やったか…。

 何とか なりましたね…。」

 大きく息をしながら作業員が言う。

「ああ…全員無事だな…。」

 私はボンベを緩めてガスの供給を止めて答える。

「ええ…今日は熊鍋でしょうか…。」

 作業員が冗談交じりに言う。

「そうだな…なっ」

 次の瞬間、ロウが作業員に飛び付き、転倒…その上を熊のパンチが勢いよく、通り抜ける。

 そこには2本の足で立つ 熊の姿があった…死んだふりだ。

「うわああああ」

 恐慌状態の作業員を背中で押さえ付け、ロウは小さな銃を抜き、熊に構える。

 あんな小さな銃から出る1発の弾で、熊を仕留められる訳ない…。

 次弾を装填している内にロウと作業員は殺されるだろう。

 そして援護しようにも味方を巻き込んでしまう為、火炎放射器が使えない。

「コンテナに逃げろ!!」

 私は叫んだ。

 次の瞬間!

 バババババ…。

 ロウの持っている小さな銃から大量の弾が一気に吐き出され、熊に次々と当たって行く。

 弾が出なくなった所で ロウは起き上がり、作業員と一緒にコンテナハウスに向かう。

 私達は 横に3つ、縦に2階のコンテナハウスの階段を上り、高さを稼げる屋上まで上る。

 この位置なら熊も攻撃が出来ないが…。

 ドスン…。

 床のコンテナが大きく揺れる…。

 下を見て見ると 非戦闘員がいる一階のコンテナが穴だらけの皮膚を持つ熊のパンチで襲われている。

 が、傷が付いているが あのパンチにコンテナは 普通に耐えている。

 木やレンガの家だったら この時点でアウトだった。

「ここなら狙えるか…。」

 私はボンベを開放…。

 電気を使って火を点け、屋上から下の熊に向かって火炎放射器を吹き続けた。

 グアアアア…。 

 熊は拳を開いてまま その場に倒れる…今度こそ死んだか?

 念のため、しばらくは火炎放射器で熊を過剰に焼き…。

 ガスタンクの残量が無くなった所で 焼死体を確認し、槍で思いっきり頭に突き刺し、今度こそ仕留めた。

「犠牲者は出なかったか…嬢ちゃんありがとう…。」

 作業員がロウに言い、ロウは「おう…」と一言 答えた。

「まさか…死んだふりを するとはな…。」

「クラウド、逃げる」

「そうだな…。

 全員…作業を中止!

 熊と仲間の死体を乗せてアトランティス村に戻る。」

 私達は犠牲者が出なかった事を喜びつつ、リアカー1台に1頭、熊の死体を乗せてアトランティス村に帰った。


 冒険者ギルド。

「すまんが緊急だ!

 ナオはいるか!?」

 冒険者ギルドの横に高速でバギーを止めて、慌ただしく中に入って来たクラウドとロウが周りを見渡しながら言う。

如何(どう)した?」

 テーブル席で書類作業中のナオ(オレ)は、クラウドの『緊急』と言う言葉に反応して言う。

「作業中に熊が出た。

 死者は出なかったが、何人か怪我している。」

「何!?熊の数は?」

「3匹だ」

「よく 犠牲者が出なかったな…。」

 熊はプロボクサーの10倍の平手打ちと、時速40kmで走行する足を持っている猛獣(もうじゅう)だ。

 仕留めるには銃が必要で、9パラの銃だと威力が低く 心持たないと思う位には 頑丈な身体を持っている。

 確実を狙うなら ショットシェルやライフル弾が使える銃が必要だ。

「いや…火炎放射器を使わなければ 危なかった。

 それで、熊が死んだふりをして襲われそうになっている所を ロウに助けて(もら)った。」

 火炎放射器は熊には有効か…。

「普段、森を歩いているロウが危ないって言うから付けたんだが…。

 まさか本当に来るとはな…。」

「ごめん、弾使った。」

 ロウは腰に下げているPP-2000のマガジンを出して言う。

「人の命には代えられないからな~まぁ良くやった。

 今回は死者が出なかったが、熊用に武器を強化する必要があるな…」

 ロウが使用した弾、9mmパラベラム弾は 空間ハッキング(チート)を使えば、時間が掛かるが 銃弾の生成は可能だ。

 だが、自前で補給が出来ないと意味が無い。

 作れるまで気長に待つ つもりだったが、こりゃあ 早急に銃を作らないとマズイな。

「それで 武器もそうなんだが、熊の死体を見て欲しい。」

「熊の死体?」

「ああ…明らかに不自然なんだ。」

「分かった…。」

 オレは しばらくして 撤退(てったい)して来た部隊が戻った所で、クラウドとロウと一緒にバギーの元に向かった。


「こっこれは?」

 ナオ(オレ)はリアカーの上に乗る腹を()かれた熊の死体を見る。

 火炎放射器で皮膚は完全に焼かれてるが、その内側の損傷が驚くほど少ない。

「な…変だろ…銃で撃たれたのに血が出ていない。

 筋肉は あるが、臓器も無いし、あの熱でも中まで焼けていない…。

 これは生き物じゃない…。」

 クラウドが言う。

「まさか…な…。」

 オレは熊の腹を広げて中を見る。

『ナオからクオリア、ジガ、ハルミに通信…。

 クラウド商会の部隊が熊に襲われた。

 死者無し…怪我人あり、ハルミ(医師)が必要だ。

 今 熊の死体を見ているが、中身がコンピュートロニウムの構造っぽい生物を発見。

 熊型ワームの可能性がある…ジガに検死を頼みたい。

 全員 冒険者ギルドに集合だ。』

 オレは量子通信で皆と連絡を取る。

『一体どっから()いて来たんだよ…。

 ジガ了解…。』

『ハルミ了解…。

 ホープ号に付着してやって来たのか?

 いや…ワームの付着は徹底的に確認している。

 まさか タイムマシン形態に進化したワームが、ワームを過去に運んだのか?』

『十分 あり得る話だ。

 ラプラスは、三次元に確率、時間、空間を制御していた六次元生命体だ。

 今までは ワームもラプラスも 個体事のデータのやり取りだけだったが、物質転送技術があっても不自然(おか)しくない。

 クオリア 了解…作業を中断し、冒険者ギルドに向かう。』

「なぁこれは何なんだ?

 アンタ神なんだから知ってるんだろう。」

 クラウドがオレに聞く。

「ああ…名前はワーム…。

 オレ達ですら 敵わない、宇宙最強の生物だ。」

 オレはそう言うと、熊の死体が乗るリアカーをバギーから外して冒険者ギルド前まで引っ張って行った。

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