10 (バトロアゲーム)〇
夜…。
夕日が沈み、皆が食事の為に冒険者ギルドに集って来て 食事が始まる。
そして、ナオも電気とAR食で食事をしながら 書類作業をする。
村を武力で制圧し、しかも急速な技術改革…。
まだまだ国が発展途中で、ある程度 落ち着くまで オレはブラック労働だ…まぁ独裁者だから仕方ないのだが…。
少し流れが落ち着いた所で、クラウドがセルバにトランプの遊び方を教えていて、別のテーブルでは クオリアがTRPGセットを出して皆にゲームの説明をしながら遊んでいる。
オレは気晴らしに席を立ち、クオリアがいるテーブルを見に行く。
プレイヤーは 4人で、24×24のマスが入っている板の四隅に剣士のコマを配置…。
各プレイヤーの横には ステータスが、おはじきを置く事で表現されていて、体力が6…攻撃力、守備力、素早さがが それぞれ3ずつ…。
ただ、ゲーム開始時のキャラメイク時に他のステータスを下げる事で、別のステータスを上げる事が出来、攻撃特化や防御特化などに出来る仕組みになっている。
今回は 初めてのゲームの為、ルールが非常に簡単で分かりやすい『バトロア』。
4人のプレイヤーが順番に素早さの数だけ移動し、接触したらバトル開始…。
逃げたり戦ったりしつつ、最終的にプレイヤーが1人になれば、そいつが勝者だ。
TRPGと言いつつもストーリー要素が一切無い。
多分、こう言った簡単なゲームで基本を学んだ所で、ストーリーモードが追加されるのだろう。
クオリアはゲームを面白くする為、好戦的な行動に出て、プレイヤーを1人ずつ片づけて行こうとする。
他のプレイヤーとバトルになり、クオリアがサイコロを振って4が出る。
相手の素早さ以上の数字を出したので攻撃成功…。
攻撃側の攻撃力から 防御側の防御力を引いた数がダメージとして入る…。
ただし、同数の場合は1のダメージを受ける。
ちなみにクオリアのステータスは、体力6、攻撃力3、防御力3、素早さ3のバランス型 状態なので、防御するには 防御4以上にする必要があるが、そうなると ステ振り時に他のステータスを1つ犠牲にしないと行けなくなる。
ただ、現状では全員バランス型なので、1ダメージずつ ちまちま やって行くしかない。
さて、この状況を打開する方法が 宝箱マスであり、攻撃力を3上げる剣や防御力を2上げる盾、素早さを2上げる靴…体力を3回復する薬があり、プレイヤーは これら取り合う事になる。
そして、ここでステ振りの効果が戦略に効いてくる。
つまり、攻撃力に特化にして アイテムを取る前にプレイヤーを仕留める方法。
防御特化して、ちまちま相手にダメージを与えて行く方法。
素早さ特化で、攻撃を回避しつつ 最速でアイテムを確保して自分を強化する方法。
主に この3種類の戦略に分かれて行く。
クオリアは 剣を取って攻撃力6になって 1人を倒すが、敵との戦闘中に他のプレイヤー2名がコマを進めて行き、盾と靴をGET…。
そのまま戦闘に突入し、勝者が敗者のアイテムを装備して、攻撃力3、防御力5、素早さ5となり、クオリアと交戦。
サイコロで5、6を出せないと攻撃を加えられないクオリアは、ことごとく攻撃が外れ、ちまちまと削り取られて行った。
「うん…負けたな…。」
「よしゃああ」
「それじゃあ ステータスを変えて もう一回やってみようか‥。」
「おう…。」
クオリアは体力3、攻撃4、防御4、素早さ4だ。
あ~この時点でクオリアの本気度が分かる。
六面体サイコロの場合、平均値は3.5に収束する…つまり最小のコストで最大効果を期待するとなると4が正解になる。
他のプレイヤーは、攻撃特化…防御特化、素早さ特化と綺麗に分かれていて、クオリアが最短で向かったのは剣…。
これで攻撃力が6になったクオリアは 防御特化のプレイヤーを攻めて、盾の取得を防いで落とし、防御6…この時点で クオリアは ほぼ勝利だ。
攻撃特化型のプレイヤーは クオリアに1ダメージしか与えられず、クオリアは2ダメージ…。
それでも体力が少ないクオリアが不利だが、後で薬を取れば良い。
と思っていたが素早さ特化に薬を取られ、クオリアが靴を取りバトル。
互いに6分の1でしか当たらないが、相手は クオリアの防御力が高くて攻撃が一切通らないので実質、クオリアの勝ちだ。
「勝った。」
「難しいな…。」
このゲームの勝ち方としては 相手のステータスを見て、立ちまわり方を変えていく事が基本になって来る。
単純な割に意外と奥が深いゲームだ。
「これは人気が出そうだな…。」
「私としては クトゥルフ神話をやりたいのだが、当分 先の話になるだろうな…。
物語の比喩表現が伝わらないからな」
クオリアが席から立ち上がり、オレと一緒に他のプレイヤーがプレイする次のゲームを見ながら言う。
「と言うと?」
「見た目は体長2~3メートルの巨大な昆虫。
蟻のように見えるが角は短く、背中に蝙蝠のような羽、4本の腕、皮膚と目は人間、耳と口は爬虫類のようにも見える。」
「ビヤーキー?」
「そうバイアクヘー…。
これをプレイヤーに想像させるには、まずはメートルを理解させて、アリ、コウモリとは如何いう物なのか教える必要がある。」
「アリは そこ等中にいるが、コウモリはいるのか?」
「おそらく いると思うが、分からない。
とは言え、一番 教えるのが面倒な 色の概念を11色も持っているのは創始者レナのお陰だな…。」
「ん?如何いう事?」
「そうだな…工業化をしている国では、基本的に 黒、白、赤、緑、黄、青、茶、オレンジ、ピンク、紫、灰色の11色の言葉をベースに色分けがされている。」
「ああ…。」
「ただ、文明が未発達の文化圏では 黒、白、赤の3色、または緑を入れて4色しか無い事が多い。」
「それは、色覚異常か?」
「いや…ちゃんと色の違いは認識はしている。
と言うのも人工的に染料を作れない時代だと、日常的に見る色数が少ないからだ。」
「う~ん…黒が暗い、白が明るい、赤は火の色、緑は森の色って事か?」
「そう、森の中で生活するなら それだけの色でも不自由はしない。
アトランティス村の場合は オレンジ、ピンク、紫の言葉が無い可能性が高かった。
だが、色々な色の果物が栽培されていた事もあって、色の言葉の消失が防がれている。」
「で、その果物の木をレナが植えた訳か…。
それで クオリアは、何種類の色の言葉を持っているんだ?」
オレは少し気になって聞いてみる。
「私が色の識別に使っているのは 256色だな…」
「8bitカラー?」
「そう…もちろん目が感知出来る色数は 人より多いのだが、色の情報量が増えても処理に時間が掛かってロスになるからな…。
日常生活なら256色を扱えれば十分事足りる。」
「オレは?」
「ナオのブレインキューブの画像認識プログラムが如何なっているかは 知らないが、芸術家で無い人なら精々が16色と言う所だろう。」
「4bitか…。」
「実際、私が人と会話をする時も4bitに変換して伝えているからな…。
まぁ情報をシンプルに加工出来るのが人が身に着けた特徴だ。
意思疎通に支障が出ていなければ問題無い…。」
「そんな もんかね…。」
「そんな もんだ。」
「ナオ…暇ならトランプ?をやらないか?
人数がいなくてな…。」
別の席でセルバとトランプをしているクラウドが言う。
「あ~分かった 行くよ…。」
オレはそう言うと、クラウドの元へ向かって行った。
そして、これらは娯楽の少なかった 労働者の数少ない娯楽になり、夜遅くまでゲームで盛り上がるのであった。