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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 2巻 (研究者の町 ロンドン)
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02 (ミサイル)〇

 そもそもの原因は、ナオ(オレ)達が家を造る為に必要なガスボンベを作っていたのが原因だ。


 役所。

「さて、次は 家の素材に使う炭素繊維だな。」

 椅子に座りオレが隣の席のクオリアに言う。

「ああ…炭素繊維の作り方は ガラス繊維と同じだが、布にした後で高温で長時間 熱する必要がある。

 必要な温度は3000℃だ。

 この温度に持って行くには 酸水素ガスバーナーが必要になる。」

 クオリアがARウィンドウを使った資料を表示させて言う。

「で、その水素と酸素は水の電気分解で作る訳か…」

「そうだ…で、その電気を作る為の発電機が必要になる。」

「オレ達が造った ガラスの水車じゃダメなのか?」

 ガラス型の水車は鋳造(ちゅうぞう)で簡単に作れるので、もう量産されていて、あちこちで使われている。

 耐久性に問題があって割れやすい弱点はあるが、破片を回収して また融かして また鋳造(ちゅうぞう)すれば良いと言う判断だ。

 アレでも結構使えるんだが…更に高性能な水車を作るのか…。

「あの水車でも良いが効率が悪い。

 水力発電の場合、水が落ちる高低差を利用して発電をしているのだが、あの水車の場合、効率良く発電するなら3m位の高さから水を落とす必要がある。

 が、この 川ではそれも難しい。

 そこで、1m以下でも機能する水車が必要になる。」

 クオリアが倉庫から石英(せきえい)とモルタルで出来た型を持ってくる。

 型は上下に分解出来るようになっていて、型を開けて中を見て見ると主軸の棒の周りに螺旋(らせん)のスクリューが付いているような穴になっている。

「マイクロ水力発電用の螺旋(らせん)水車だ。」

「発電機の割に小さいな…。」

 サイズは 螺旋(らせん)の直系が30㎝…長さが120cmと言った所だ。

「マイクロ水力発電機は100kw以下の発電量だからな。

 このサイズだと おおよその発電量は1kw…。

 一般家庭の2件分の電力位は 出せる。

 ただ、私達が作る電化製品は 効率が悪くなる だろうから…実際の所は 1件分だろうな…。」

「まぁ大抵の家電製品はコイツで動く訳か。」

「ああ…ただ 工業用となると まだ足りないが…でも」

「この大きさ だったら、2、3台作れは足りるって事か。」

「そう…面倒な工事の必要無く、人の手で運べるサイズだ。

 これを量産して数で電力を稼ぐ。」

「OK…」

 オレ達は外にある炉に向かった。


 型に融けた高温のガラスを流し込み、水で冷却…。

 主軸の棒に螺旋(らせん)状のスクリューが付いたガラス棒が出来る。

「スクリューの形は研究する必要がありそうだな…。」

 出来たスクリューの形を見てクオリアが言う。

 前方に比べ、後方が10cm程高い傾斜(けいしゃ)が付いた ガラス繊維強化プラスチックの箱の骨組みを造って その中にスクリューを入れ、発電用のモーターを主軸の棒の上部に取り付ける。

 モーターも電線も絶縁体のガラス繊維強化プラスチックで被覆(ひふく)しているので川の水での漏電(ろうでん)の心配はない。

 螺旋(らせん)水車が川の水を受けて回転し始め、電力を生み出す。

「後はガスボンベだけだな…」

 トラブル無く電気を生み出している螺旋(らせん)水車を見ながらオレはクオリアに言う。

 

 ガスボンベは風呂の時に造った浄水器と同じだ。

 装甲は ガラス繊維強化プラスチックで、直径23.2cm、高さ151cmの円柱のタンクを造り、供給口を下に向けてガスが入るようにし、上からガラス製のビー玉を入れる。

 そしてタンクの上をガラス繊維のカバーを被せ、フェノール樹脂を厳重に塗って気密を確保。

 後はペットボトルのスクリューキャップをガラスで再現した物をタンクの下の供給口に取り付ければ完成だ。

 そして その下には 同じ構造のタンクを造り、タンクの中の左右に銅板2枚を張り付けて間隔を(わずか)かに開ける…。

 それが被覆(ひふく)された銅線に繋がってタンクの下を貫通してケーブルが出ている。

 貫通させた穴を見ると、融かしたガラスで固めて気密を確保している。


「それじゃあ…水…行くぞ」

 事故に巻き込まないように村から 少し離れた川のそばにタンクとボンベを組み立て言う。

 クラウドと弟子の男の子『セルバンテス』…『セルバ』の他に何人かが見に来ている。

 オレはバケツを使って川の水を下のタンクの目盛りの限界まで注水する。

 続いて、上のボンベの口を回して 下のタンクと スクリューキャップで固定。

「さて、耐久実験だ。

 全員離れろ…。」

 クオリアは 螺旋(らせん)水車から伸びる銅線に 鉄で出来たワニクリップを取り付け接続…。

 螺旋(らせん)水車からの電気が下のタンクに流れ、水を電気分解して水素と酸素の混合ガス…酸水素にして行く。

 ただ、電気分解で酸水素を生成するのに80%のエネルギーを消費してしまい、残り20%の半分が下の充填機(じゅうてんき)に溜まってしまうので、タンクに充填(じゅうてん)されるのは 投入電力全体の90%とロスが多い。

 とは言え 恒星間航行するスペースコロニーでは、他の星から石油を確保する事は不可能に近く、何処(どこ)の星にでもある水、氷、水蒸気を重水素と三重水素の核融合発電でゴリ押して作る方が効率が良い。

 オレ達がやっているのも 核融合は使っていないが そう言う理屈だ。

 オレ達と見物客と退避(たいひ)…タンクから12mの距離まで離れる。

「せっかく造ったのに壊すのかよ…。」

「一回、壊してみないと安全基準が分からないからな…。」

 クラウドの言葉にオレが返す。

 まだまだ 素材精度がクソ過ぎるので、理論値は信用できない。

 なので、一回 破壊して 限界地点を見極め、安全基準を限界地点の大体3分の2位に設定する。

 こうする事で皆がタンクの爆発の危険に(おび)えないで使えるようになる。

 特にこう言った圧力タンクは破裂すると70m程飛ぶロケットランチャーになり、簡単に人が死ぬので厳重な注意が必要だ。


「全然 爆発しないじゃないか…。」

 オレとクオリアにクラウドとセルバは 地面に伏せて、爆発に備えながら待つ。

 興味深そうに見ていた皆は 中々爆発しないので それぞれの仕事に戻って行ってる。

「まぁ発電量が発電量だし、本来 水は 絶縁体だからな…。

 だがタンクの圧力は上がって来ている。」

 クオリアが 下のタンクにあるクリスタルガラス出来た注水メーターを指を差して言う。

 よく見て見ると最初は 目盛りの一番上まで水を入れたが、上部が気体になっている事が分かる。

 川に設置されている螺旋(らせん)水車から生まれた電気が銅線を通り、水に電気を流す…。

 水は電気分解されて、水素2、酸素1の状態の気体となって下のタンクの上部に行き、下のタンクの圧力を上昇させる。

 そして内部の気圧が1気圧を越えると、上のタンクのビー玉が圧力で上に持ち上がり、下のタンクの酸素と水素が上のタンクに入って行く。

 ちなみに下のタンクの残りの水の量から 使った水の量を計算し、そこから1Lの水を電気分解した場合、1870Lの水素と酸素が得られるので、計算をすれば、今ボンベ内が どの位の気圧なのかが割り出せる。

 50…100…。

「おっ…150気圧を越えたな…。」

 クオリアがオレに言う。

 日本の高圧ガスボンベの基準値だ。

 中には おおよそ7000Lの水素と酸素が入っている計算になり重量は10㎏程度だ。

「一発でか…何回も爆発すると思っていたんだが…。」

粗悪(そあく)とは言っても、ガラス繊維強化プラスチックの12枚重ねだ。

 (はがね)製に比べても圧倒的に強度が高い。

 理論上だと500気圧は行く…。

 ちなみにタンクの水の量は10Lで丁度(ちょうど)500気圧になるように調整してある。」

「精度は素材でカバーしているって事か…。」

「そう」

 その後もどんどんタンクとボンベ内の気圧が上がって行き、夕方…。

 現在、350気圧…。

 ドン!!

 突然の爆音にオレ達は耳を塞ぎ、オレは目をぎゅっと閉じて口を開ける。

 一平方センチメートル当たりに350㎏掛かっている時の圧力がボンベの先から一気に解放され、大量の酸水素を推進剤にしながら、まるで ミサイルのように飛んで行った。

「350気圧か…割と持った方だな…。」

 クオリアが破壊された下のタンクに繋がっている銅線からワニクリップを外して 電気分解を止め、螺旋(らせん)水車を川から引き上げる。

「ガチで危険な物を作っちまったな…。」

「その危険な物を制御する為の耐久実験だ。

 品質が安定しない事も考えて、限界値の半分…150気圧を安全値にしよう」

「日本の基準もこう言った事をやって決まったのかな~。」

 ドン!!

 先程では無いが、もう1回の爆発音がする。

 オレ達が振り向くと、村の方向で煙が上がっているのが見えた。

「火事だ!!」

 150m離れたアトランティス村から怒鳴り声が聞こえる。

「はっ?…まさか…。」

「ああ…そのまさかだな…村に落ちたらしい。

 ボンベの回収と村人の救助に行くぞ」

「OK…まさか150mも飛ぶとはな…。」

 オレとクオリア、その後を追う形でクラウドとセルバは走り出した。

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