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14 (災害派遣)

 潜水艦、食堂。

「やっと帰国出来ますね…でも、入港の許可が下りないなんて…」

「まぁこっちは武装しているし 原子力潜水艦だからな…核弾頭は積んでないから入港出来ると思ったのだが…」

 クオリア()が食堂の席で暇を持て余しているオオノに言う。

「最悪 入港を断られたら、エアトラで空港まで送る…この近くだと大阪空港になるか?」

 本来なら関西国際空港が一番近いのだろうが、関西国際空港は完成前で まだ埋め建て地の状態だ。

 そんな話をして、入港許可を待っていた頃。

 ガタガタガタ…。

「うわっ…」

 オオノが固定されている椅子にしがみ付く…。

「揺れが酷いな…コントロール…何かトラブルか?」

 クオリア()は食堂の壁に取り付けてある受話器を取り、内線で発令所に連絡を取る。

『船体にトラブルなし…ただ、大規模な地震が発生したようです。

 入港の為 海上に上がっていた本艦は、津波の危険性がある為 微速潜航し、津波をやり過ごします。』

 発令所で通信を担当しているドラムが言う。

「正しい判断だ…船体の安全を最優先に…同時に周りの状況も かき集めろ」

『了解…水中用ドラムを使って探索をします』

「とっ…大丈夫か?負傷者は?」

 私は椅子に しがみ付いているオオノに聞く。

「いません…状況は?」

「大規模な地震と津波だ…こちらは津波の影響が少ない海中で待機。

 規模によるが沿岸部が飲み込まれる可能性もある…これでは入港は無理だな…。」

「救助は?僕達は良い位置にいます…被災者を助ける事も出来るかも しれません…。」

「それも私達が乗りきれたらだ…」

 ズザザザザッ…。

『アラート…船体が引き潮により座礁(ざしょう)しました…海面が上昇するまで動けません。』

 艦内のスピーカーからドラムが報告を入れる。

「この潜水艦が座礁(ざしょう)する程の引き潮って マズいな…被害が跳ね上がるぞ…。

 コントロール…沿岸部の地域に警告を発しろ!

 高波による被害を避ける為に住民達を高い位置に逃げさせるんだ。」

『警告は行っております…ですが、情報が伝わっていないのか住民達に反応がありません。』

「あ~情報伝達のラグがここで効いて来るか…」

 内線で連絡を取るクラウドが言う。

「今は取れる手はない…災害後の事を考えよう。」

 私はそう言うと、安全確認をしつつ津波が収まるのを待つのだった。


 災害から0時間…沿岸部は壊滅していた。

 1m位の海水が勢い良く流れ込み 木造住宅が次々と破壊され、住民達を飲み込んで行く。

 1mだと上半身は海面から出るが、海水の勢いがヒドイ為 ロクに歩く事も出来ない。

「予想よりヒドイな…」

 小型無人戦闘機からの映像を見ながら私が言う。

「この航空写真を政府や自衛隊にファックスで送る。

 現場の情報があれば救助部隊が来るのが早くなるだろう」

 クラウドが言う。

「となると投下ポイントは、ここ、ここ、ここ…。

 あと、こっちは海水の被害は無いけど、地震で建物が倒壊…多数の住民が生き埋めになっている。」

「まずは溺死(できし)の回避かな…高台に逃げているのは今は無視で…」

「ちょうかい~」

 オオノが言うのだった。


 波が収まった所で潜っていた潜水艦が海面に上がり、エレベーターを下げてエアトラが上がって来る。

「エアトラ、出るよ」

 機長席のクラウドが発令所に言うと、潜水艦を海面に押し付けて垂直離陸で飛び立つ。

「現場まで10分以下…オオノ頼むよ…」

 私は後ろで身体にハーネスを取り付けて 落ちない様にしているオオノに言う。

「大丈夫…」

 事前に調べていた通り沿岸部は壊滅状態…。

 何人かの住民は海面が上昇した波に飲み込まれて流されている。

「よし、ラインに乗った…3、2、1、投下、投下!!」

 クラウドがそう言うと、開けた後部ハッチから オオノが 次々と(しぼ)んだ炭素繊維の救命ボートを投げ込んで行き、海面に当たった所で急激に膨らんで行き、近くの住民達は 救命ボートに必死にしがみ付き始める。

 これで最低限 溺死(できし)は防げる。

「よし、次のポイントに行くぞ…後3ヶ所…。」

 私達は 次々と救命ボートを投下して行き、積み荷が空になった所で潜水艦に戻り始める。

「着陸ポイントが確保 出来れば良いのだが…」

 機長席のクラウドが操縦している中、私は身体を乗り出して下を確認し続けている。

 平らだった地面は海水で覆われ 着陸は困難…水上滑走路として使うには水の高さが足りな過ぎる。

 水没しない標高が高い場所で、平らな地面を持ち、かつ沿岸部に近い場所…そんな都合の良い場所があるのだろうか?

「おっあの山…クラウド、あの山を旋回して…。

 木で覆われているが、平らな地面…あそこなら ヘリポートに出来る」

「確かに この山なら沿岸部から近いし、木を撤去すれば ここに降ろすのが良いだろう…この山の名前は何だろうか?」

 クラウドは後ろのオオノに聞く。

名草山(なぐさやま)です…ですが、良いのですか?

 他所の私有地を勝手に(いじく)って…」

「ヘリが着陸出来る 拠点は必ず必要だし、最悪 賠償金を払えば済む。

 今は人命と復興が最優先だ。」

 私がオオノに言う。

「りょうかい~となると次に落とすのはDLですか?」

「そうなるな…ハルミとジガも来るだろうし、早めに片付けないと…」

「おっ同窓会か…リアルで合うのは本当に久しぶりだからな…」

 クラウドが楽しそうに言う。

 私達は友人が少ない…何故なら人はすぐに老化して寿命で死んでしまうからだ…。

 なので、私達の友人は必然的に長命の全身義体やヒューマノイドに限られて来る…なので友人達との交流は私達にとっては非常に重要だ。

 今までは組織に縛られず、それなりの頻度で会っていたのだが、今は それぞれが組織に所属しており、中々自由に動ける機会がない。

「楽しくなりそうだ…」

 私は下の山を見つつ不謹慎(ふきんしん)にそう言うのだった。


 災害から6時間…無事だった大阪空港で燃料補給を終えて、チヌークが飛び立ち、現場の沿岸部まで飛ぶ。

「事前の情報通り…ヒドイな…」

 ナオ()が窓を見ながら言う…。

「おい、あれ…大量の救命ボートが浮かんでいるぞ!!」

 赤木が大声で言う。

 チヌークは防音能力が低く 常にキーンとった甲高い音が鳴っており、大声で無いと会話が出来ない…耳栓やイヤーマフが必須の環境だ。

「きっと座礁していたトニー王国の潜水艦からだな…おっと…」

 急にチヌークが傾いて飛び上がる…緊急回避軌道?

「何があった?」

『海上からトニー王国軍!!

 津波で防御力が落ちた所で、上陸作戦を仕掛けてきました!

 ちっ…こちらの安全確保の為、高度を上げます…』

 無線を担当している副操縦士が言う。

「いや待て…よく見させろ…。

 あ~やっぱり…あれは戦闘装備じゃない土木用の装備だ」

「土木用?DLなのにか?」

「DLだからだよ…本来のDLは土木作業がメイン…ほら、頭部バルカンはライトに換装されて 弾帯の髪がないだろう…装備は斧とシャベル…銃は装備していない。

 DLは黒い標準タイプのベック…それに大型の足ヒレが付いている…バタ足で海中を泳いで来たのか?

 確かにあれは 上陸作戦に使う装備だが、武装は土木用だ。」

「ですが、接近戦用の あの武器でも私達からすれば脅威です。」

「無線で呼びかけ続けろ…周波数は156.800MHz…チャンネル16だ。

 トニー王国の潜水艦は 国際VHF(マリンバンド)に対応しているはずだ…通信可能状態にあれば 必ず答えてくれる」

「了解…156.800MHz…こちら自衛隊所属のチヌーク…付近のトニー王国潜水艦にリクエスト」

『こんにちは、こちらトニー王国所属の潜水艦、東アフリカ 青年海外協力隊号、チャンネル6にて応答可能です、通話をお望みなら チャンネル6に切り替えて下さい』

 抑揚の無い機械音声…潜水艦の操縦をしているドラムか?

「チャンネル6に切り替えます、ありがとう…」

『お待ちしております。』

「切り替えました青年海外協力隊号…聞こえますか?」

『通信再会しました感度良好です…どうぞ』

「現在、海岸部にDLの部隊が侵攻しています…数は6機…この部隊の説明を求めます。」

『はい、おそらく あなたが観測している部隊は、こちらから発艦した機体です。

 こちらの目的は被災者の救助が目的であり、侵略行為ではありません。

 DLは土木用装備の非武装であり、交戦の意志も ありません。』

「理解しました…こちらは あなた方を信用します。

 こちらは被災者を救助し、大阪空港に降ろします…問題はありますか?」

『問題ありません…私達もエアトラで救助活動を行います。

 今後、自衛隊との交信には このチャンネル…チャンネル6を使います…よろしいでしょうか?』

「ええチャンネル6…了解です」

『それでは…交信を終了します…ありがとうございました。』

 通話が切れる。

「ふう…トニー王国の機械兵…普通に日本語を喋っていましたが…」

 副操縦士が下を見ながら言う。

「まぁ あの国はドラムが既に一般化しているからな…。

 それじゃあ、向こうの許可も出た事で救難活動をしよう…救える命は すべて助けるぞ」

「はい!!」

 任せて貰っている部下達がそう言い、流されない様に屋根に上っている被災者達の救助作業に入った。

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