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10 (幹部自衛官)

 防衛大は比較的ラクだ。

 体育の時間や戦闘に関する専門性が高いとはいえ、大学…。

 通常の大学の様な一般教科もあり、戦闘に必要な座学や体育の時間は多いがナオ()にとっては大した問題では無い…しかも嬉しい事に授業料は無料…それどころか 学生手当と言う名目で毎月10万円が入る。

 1年目は部隊の見学から始まり、敬礼などの基礎訓練を行い、クソパーツ数が多い64式小銃の分解とメンテナンスを完璧に出来る様にする。

 後は手漕ぎボート(お船)に、野外勤務(キャンプ)と言われるレクリエーションもある。


 俺は実技、座学どちらも非常に優秀の評価を受けており、俺の唯一の弱点は水泳だったりする。

 以前の様に比重が高すぎて水に浮かばないと言う事はないが 非常に泳ぎにくく、長距離の水泳では 平均より遅い。

 2年目は1年目の訓練の他にスキーが入り、3年目には 普通科部隊に分散して配属される部隊実習に回され、4年目では 入校直後の第1学年に対し、基本教練の教育を行い、教育法と呼ばれる教官としての実習を見に付ける。

 ちなみに これらの情報は 量子通信でトニー王国に流しており、トニー王国軍で自衛隊の評価や対抗策を検討する事になる…一応組織に入りこんでのスパイもやってる訳だ。

 で、防衛大を卒業したら、9ヵ月の幹部候補生学校での教育訓練と3ヵ月の普通科隊付教育を経て、卒業から1年後に幹部自衛官である3等陸尉まで昇進が出来る。

 まぁこっちの成績が良い為、妬み憎しみ、嫉妬、妨害工作などを散々受けて来たが、全身義体で記憶力に長けている頭と丈夫な身体がある俺からすると、非常に楽な道のりだった。

 そんな大人しくトニー王国に情報を流しながら、自衛隊の経費で片っ端から資格を取り、出世頭の幹部生活をしていた時だった。


 会議室

「神崎直樹3等陸尉入ります」

「良く来た…掛けてくれ」

「はっ、失礼します。」

 俺は一等陸佐の階級章を付けている幹部自衛官に頭を下げて席に座る。

 少尉相当である3等陸尉の俺を呼ぶにしては階級が高過ぎる。

 左官だと複数の駐屯地を管理 出来る程の権限を持った人物で、普通は会う事はない人物だ。

「それで…早速 本題に入るのだが、近日中に新しく部隊を作る事になった。

 名前は特殊作戦群…アメリカ陸軍のグリーンベレー、デルタフォース、イギリス陸軍のSAS、ドイツ陸軍のKSKなどを参考にした特殊部隊だ。」

 は?特殊作戦群?あれは2004年だ…いくら何でも 早すぎる。

「実戦用の特殊部隊ですか?と言うより工作員?」

「まぁおおよそ その認識で合っている。

 今の自衛隊は民間の武装警備会社と言う建前があるが、雇い主の国を裏切る事は出来ないし、アメリカと世論によって活動が大幅に制限される。

 そこで 表に存在を悟られず、少ない制約で敵を排除する部隊が必要になって来る訳だ。」

「なるほど…それで俺を勧誘ですか?」

「ああ…キミは諜報や暗殺が専門の忍者の家系、神崎家の出身で、実戦経験もある。

 それに…正直に言うが我々は 机上論を元に自衛隊の戦力を強化して行っているが、実戦で試す機会が無い以上、それが有事になった時に有効なのかは 分からない…」

「ふむ…なら兵器の評価も必要ですね。

 歩兵中心で、試験装備の運用テストも行う部隊…。

 俺の権限は?俺がアドバイスしても聞き入れてくれないなら 精鋭の意味がありませんよ」

「キミの年齢と階級の問題で与えられる権限は限られているが、理解のある人間を上に付ける。

 不満が あるなら いくらでも彼に言うと良い…」

「本当に文句を言いますよ…今まで俺は出世に響くから大人しく従ってきましたが、実際、歩兵戦闘では 改善点が多いです。」

「ならキミが適任だ…思う存分やると良い…それでやるのかね?」

「ええ…喜んで…」

 俺は一佐と契約の握手をするのだった。


「まさか…特戦がこんなに早く出来ているなんてな…」

 多分組織が表に出ていなかっただけで、ずっと裏で活動していたのだろうが…まさか俺が組織の立ち上げから していたとは…。

 そんなこんなで、習志野市の習志野駐屯所に移動する事になり、表向き第一空挺団(くうていだん)に所属する事になった。


 習志野駐屯所、敷地内 空挺館(くうていかん)

 コロニアル様式を基調とする建物で、外観には装飾が無く簡素な作りになっている。

 ここは元々、陛下が騎兵連隊の馬術を観賞する為に建てられた迎賓館(げいひんかん)で、第二次世界大戦後には米陸軍第1騎兵師団(進駐軍)接収(パク)られ、最近になって帰って来た建物だ。

 内装は元迎賓館(げいひんかん)だけあって貴賓(きひん)のある物になっているが、隠し階段を使って地下に行くと 大規模な地下施設がある。

 元々は 陛下を空爆から守る為の防空壕的な役割の為に造られたのだが、その頑丈な造りは、表に出せない物を保存して置くには非常に良く、今回 特殊作戦群が拠点とする事になった訳だ。

「ミキタ 一等陸佐だ…特殊作戦群を任される事になった。」

「神崎直樹三等陸尉です…よろしく」

 俺とミキタ一佐は握手をし、ソファーに座る。

「さて、見ての通り、拠点は用意したが その他には何もない…。」

「本当に俺が頼りなんですね…」

「まずは どの様な訓練をして優秀な兵士を選別するかだ。」

「いや、まずは装備から見直しましょう…」

「何故だ?まずは人材を(そろ)えて教育するのが先では無いのかね?」

「今は、その教育する先生がいない状態です。

 それに階級が低い俺が 教官をやるなんて、それこそ問題になります。

 なので まずは装備から…どんなに屈強な兵士でもバイクより速い速度は出せませんし、銃を一切使わず敵を殴り殺す訳でもない。

 銃などの装備の見直しをして、彼らが戦う為に必要な基礎技術を作ります。」

「ふむ…だがどこで銃を調達する?」

「日本の銃器メーカーと協力します。

 例えば64式(ロクヨン)の次期アサルトライフルを造るHR計画に食い込ませるとか…後は地下に銃の工場を造りたい所ですね。」

「密造銃か?」

「そうです…例えば64式(ロクヨン)を使って敵を殺し、こちらの兵が現場で撃ち殺されたとしますね。

 そうなると64式(ロクヨン)が回収されて、シリアルナンバーから出所が特定されます…そもそも この銃…自衛隊でしか使って無いですし…。

 なので、隠密性を重視する場合、自前で銃を作ってしまうのが 一番足が付かないです。」

「だが、そんなに簡単に銃を造れるのかね?」

「金型さえあれば、プレス加工でパカパカ作れますよ。

 ただ64式(ロクヨン)はパーツ数が多くて不向きですがね…と言うか俺、あの銃 嫌いなんですよ。

 自前で製造するなら、M3グリースか…ウージーでしょうね。

 あれは表も裏でも大量に出回っていますから、特定される危険性がありませんし…」

「待て、サブマシンガン?アサルトライフルでは無いのか?」

「任務にもよりますが、想定される交戦距離は12m以下、そこまで威力も射程も必要ありません…。

 携帯性と速射性を重視しつつ、あまり狙わないで弾をばら撒ける フルオート射撃が出来れば十分です…個人的には ウージーがベストだと思います。」

「ふむ…ウージーか…一通り試してみよう」


 1ヵ月後…。

 上の部屋は そのままに地下室を強化…工房とシューティングレンジ、それに室内用のサバゲー施設を取り付けた。

「これで一通り そろったかな…後はガンスミスが欲しい所だが…」

 俺はプレス機で鉄板を押しつぶし、M3グリースとウージーの部品を作りながら言う。

「普通に銃を作れるんだな…」

 ミキタ一佐が言う。

「まぁ構造は非常に簡単ですしね…。

 ただ、命中精度を左右する高精度バレルだけは、外から持って来た方が良いです。

 今、神崎家のルートを使って取り寄せています…フィリピンのダナオ市、ヴィレッジ オブ ガンスミス…銃職人の聖地と呼ばれている所ですね。」

「神崎…キミは本当に人脈が広いな…」

「こう言った裏稼業は横の繋がりが何より重要ですから…。

 それとエアガンメーカーのマルイさんにM3グリースとウージーのガスガンを作って貰っています。

 これが完成すれば、そっちの室内戦を模したサバゲー施設で撃ち合いが出来ます。」

「実銃は使わないのだな…」

「まぁあれはベニヤの家ですからね…。

 でも、ガスガンなら ベニヤを貫けませんし、弾代を気にせずにバカスカ撃てます。

 後は防弾チョッキ…これだけは米軍基地経由での購入になりますかね…不自然にならない名目を考えて下さい…」

 今の自衛隊は防弾チョッキが採用されていない…これでは バイタルゾーンを撃たれた場合の死傷率が跳ね上がる。

「分かった…いずれは自衛隊でも防弾チョッキを採用するだろうかな。

 それと、神崎はレンジャーの訓練を受けに行ってくれ…キミは まだレンジャーの資格を持っていないだろ…今回は特戦の候補生達も参加している…」

「了解、それでは ここの運営は 一佐に任せますね…。

 はぁそれにしても、レンジャーか…クリア出来るかな…」

「キミの能力なら余裕だろ」

「いやいや…俺が気に入しているのは電池切れです。

 3日充電を受けなかったら完全に動けなくなりますからね…兵糧攻めにどれだけ耐えられるか…」

「そこは私からも言っておく…」

「なら問題無いですね…さてと今日中に完成させないと…」

 俺はそう言い、プレスされた銃の組み立てに入るのだった。

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