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06 (海外支援)

 日本は空前のバブル景気。

 日本は労働環境に問題があり 過労死をする問題も抱えているが、働けば働く程 金が儲けられ、辛くても 頑張って働けば 生活が豊かになると、希望を持てる位の生活が出来るようになっていた。

 さて この時期、日本が滅びるまで続く、積極的な海外支援を始めだした。

 これは『日本はもう発展しきってしまったから、今後は技術が未熟な発展途上国を教育し、日本の水準まで引き上げよう』と言う考え方が根本にあり、この考えの元、最終的に日本を越えた元発展途上国は非常に多く、その後の人類の文明に大きく関係して来る。

 その為、トニー王国とエクスマキナ教会は 日本と協力して発展途上国の環境を良くする為、技術支援の活動をするのだった。


 東アフリカ、ブルンジ共和国、首都から100km程 離れた村。

 途上国の支援は国として見栄えが良い首都部分に集中し、支援地点から離れる程生活が貧しくなって行く。

 そして、支援から一番遠い この地域では普通では あり得ない生活をしている。

「うわっ(ひど)いな…」

 幌馬車のバギーを運転しているクオリア()は、アスファルト舗装がされていないとか以前に、真面に車が進めない程 ボコボコでガタガタの舗装されていない道路を進んでいる。

「これは二足歩行の強みかな…」

 大量のガスタンクと一緒に荷台に乗っているクラウドが興味深そうに こっちを見ている女子供を見ながら言う。

 道には飲料水を確保する為にポリタンクを持った黒人の女子供達が6時間程 掛かる泥水()みから村へ帰る途中の様だ。

 彼女らは タイヤではデコボコで非常に走り難い悪路を持ち前の健脚で 走破している…。

「着いたぞ…この村だ。」

 私は幌馬車のバギーから降りる。

「何?この村に滞在するのか…。

 あ~こりゃあ、NGOのボランティアが来たくない訳だ。」

 乾季の為、ヒビ割れている乾いた大地に 丸太と葉っぱを組み合わせた粗末な木の家。

 電気、水道、下水道はおろか、トイレも無く、排泄物は その辺に垂れ流し…。

 更に こちらの やる気を削ぐ様に 気温30℃が普通の環境だ。

 適温が5℃の私は パイロットスーツを着て冷却しているとは言え、剥き出しの顔が熱く、頭の熱を吸収した髪の毛が熱くなっている。

 見た所、この村は まだ産業革命に入っていなく、労働力は 今だに人の手と手作りの道具が主流で、自動で動く為に必要な内燃機関を使った機械が存在しない。

 ボランティアも人間で、当然ながら モチベーションもある…その為、未開文明であれば ある程、文明生活に親しんだ人間が来れなくなる。

「主食は芋とバナナだな…栄養的には 問題がないのだろうが、バリエーションが無いな」

 幌馬車から降りた私がカゴの中の食べ物を見ながら言う。

「あっ何だ?オマエ達 顔が白いな…。

 それに妙な服を着ている…それじゃあ、熱いだろう」

 上半身裸の筋肉質の黒人男が、私とクラウドの白い顔の色を見ながら言う。

「いや、そこまでも ない。

 私はクオリア、こちらは クラウド…NGO団体でボランティア活動をしている者だ。」

「NGO?その組織に所属している人が 何故(なぜ)何もない ここに?」

「何もないから来たんだよ。

 ここ、乾季には 6時間かけて泥水の水場まで 水を()みに行っているのだろう…だから 清潔な水が飲める設備を作る為に ここまで来たんだ。」

「清潔な水?」

「そう、大量に水が確保出来るなら飲むだけじゃなくて 農地や牧草を育てる事に使えるし、そうなると家畜の保有数も上げられる。

 そうすれば 随分と生活が安定するはずだ。

 この村を取り締まっている 長老に会いたいのだが…いるだろうか?」

「私が今の長老だ。

 まぁ良いだろう…私の家に案内しよう。」

「助かる。」

 私達は最低限の荷物を持って 長老の家に行くのだった。


 長老の家の中に案内される。

 私が周囲を見るが、やはり長老の家でも 電球と言った照明の類が無く、書類の類も無い。

 長老でも まともな教育を受けておらず、文字も計算も出来ないか…。

「それで、クオリアだったか?どっから水を引いて来る?

 ここら辺の村は 雨季の少ない雨水を回収して使っているだけで、近くに川もない山の中だ。」

 長老が言う。

「だが、私達は 地下に水脈は あると考えている。

 これは私達の他の専門家による調査が行われるのだが、ここに まともな道路も無いし、まして25tにもなる掘削用の重機となると ここまで持って来る事も 出来ない。

 この問題で、この村では 井戸掘りの支援が出来なかったんだ。」

「なら如何(どう)する?」

「まずは、拠点作りからかな…長い付き合いになりそうだし…。

 どこか使っていない平らで広い土地はあるだろうか?

 支援者達が活動する拠点が欲しい」

 まずは こちらの労働環境を整える事だ。

 そうしないと、目的を達成する前にリタイアしかねない。

「ああ…水が無くて作物が育てられない畑がある。

 そこを使うと良い」


 私達は長老の家から少し離れた所にある 枯れている畑にたどり着く。

 畑は耕されているが今は乾季の為 雨が降らなく完全に地面が干からびている。

 この村では乾季に入ると水が不足するので作物を育てられず、農業は雨季のみだ。その為、食糧にも大きな制限を受けている。

「完全に荒地だな。

 だけど地面は平ら…ここなら行けるか…よし、この土地を買いたい。」

 クラウドは リュックから札束を出す。

 通貨はブルンジ・フラン…日本円に換金すれば2000円位の金額だが、この辺の土地では かなりの大金だ。

「そんな紙っ切れを受け取っても 腹の足しにもならない。」

「えっ?これだけ あれば、贅沢しなければ この村が1年は生きられる金額だぞ…それを食べられないからって…」

「ここは まだ貨幣経済が無いんだよ…物々交換が基本だろうしな。

 しかも道路が整備されていないから、金を渡されても街に行って金を使う機会が無いだろうし…。」

 私がクラウドに言う。

「物の価値を知らないから、自分達が豊かになる手段を逃してるって…。

 ほら、今は価値が無かったとしても受け取っておけ、後々『貰っておいて良かった』と思うから…」

 クラウドは長老に札束を押し付け、畑の測量を行う。

 必要なのは周りに大きな木が無い 平らな36m四方の土地。

 土は粘土質で 雨でも降れば泥に変り、歩けなくなりそうだ。

「この近くに砂利はあるか?」

 クラウドが長老に聞く。

「ああ…それなら この近くにある。」

「じゃあクオリア…砂利の回収を頼む」

「了解した。」

 私は長老をバギーに乗せて、採石場まで行き、砂利を荷台に積んで運び出す。

 その間にクラウドが 土地を平らに均し、私が戻って来た所で 上から砂利を敷き詰めて行く。

 後はひらすら、これを繰り返して行くだけだ。

 そして、幌馬車の中で寝泊まりをしながら現地の人達の生活状況や考え方などの聞き取りをしつつ過ごして行った。


 現地に2日滞在して3日目の朝…。

 砂利を敷いた36m四方の簡易ヘリポートが出来た所で、一時撤退…と言うより、これ以上は追加物資が無いと支援は不可能だ。

「と言う訳で私達は帰る…バギーの燃料も そろそろ限界だからな」

 クラウドが長老に言う。

「そうか…次はいつ来るんだ?」

「分からない…データは おおよそ(そろ)ったけど、1ヵ月位は掛かるかな…。

 専門家と機材の手続きが必要だから…水が出る様になるには1年かな…」

「来年の乾季は水不足にならなくて済むのか…」

「多分ね…それじゃあ、行くよ…次は専門家を連れて来るから~」

 クラウドはそう言うと、荷台に乗り込み、私はバギーを操作して下山するのだった。

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