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31 (電気文明の始まり)〇

 旧文明のゴミ捨て場?

「ガラス板が(しめ)していた位置は ここだな…。

 この下 おおよそ6mと言った所だ。」

 クオリアが 草が生えていない地面に手を当てて言う…。

 手から電波を出して磁性体があるかを探しているのか?

「6mね…重機が必要かな…。」

 そう言いナオ(オレ)はファントムを展開して乗り、シャベルで掘削を始める。

 オレが掘り出した土は クオリアが分析を行う。

含有率(がんゆうりつ)がまだ低いが、粘土質の地層に鉄、石英、銅が入っている…その調子で掘り進めてくれ。」

「あいよ…それにしても (ほとん)()びているな…。

 水酸化カルシウムで()び取りかな…。」

 見た所 酸化して()び付いている 薄い鉄板のような板の欠片だ。

 オレは この島で初めて会う旧文明の工業製品の欠片を見てウキウキしている…一体どんな技術を使われているのだろう。

「表面は空気に触れやすいからな…。

 ただ、もっと下に行けば、酸化していない鉱物も あるはず…そろそろだな…。」

 穴を掘るファントムが鉄ぽい固い地面に当たり 少し抵抗を感じるが、ファントムの出力が桁違いの為、シャベルが鉄を切断してしまう。

「おっと」

 シャベルを その場に置いてファントムの手で慎重に掘削をしてお宝を掘り出す。

「よし、鉄ゲット…」

 原型は残っていないが 鉄板の欠片を大量に見つけた。

「こっちは銅だな…。

 この割合で入っているなら 鉱山より効率が良いかもしれない。」

「だけど坑道(こうどう)を掘っても雨が降れば、地下水が流れ込んでくるぞ…。

 排水設備をちゃんと造らないと本格的な掘削は無理だ。」

 ファントムに乗るオレが クオリアが言う。

「分かっている…が、将来的には この山は無くなるはずだ。

 ここは砦学園都市の真上だからな…。」

 砦学園都市はトニー王国の都市の1つで、地下10kmに直径20kmの大穴を空けて そこに生活設備を置いた地下都市だ。

「ここがか…地形が変わっていて分からなかった。

 で、最低限どれ位の資源が必要なんだ?」

 現在の深さは10m程で、ファントムの身長の2倍程度になって来た。

 この機体は飛べるから良いが、人が掘るなら足場が必要だろう。

「取り合えずは 鉄と銅が1tずつ それだけ 有れば十分だ。」

「そんなもんか…結構少ないな。」

 まぁクオリアが別の鉱山から持って来てくれた鉄がまだ残っているし、炭素繊維が出来れば、(ほとんど)ど鉄の使い道が無くなる。

「大半が磁石とコイルに使われる。

 これだけは炭素繊維が使えないからな…。」

「え?何で?炭素繊維は電気抵抗率が低いよな…。」

「ああ…だが、それでも銅の4倍の抵抗率だ。

 電線や電子回路には非常に有効な素材なんだがな…。」

 ファントムがゆっくりと浮き上がって穴から出るとクオリアとアトランティス人の住民がリアカーの上に鉄と銅を積んでいる。

 丁寧(ていねい)に遺体の埋葬(まいそう)をした事や高圧的な態度を取らなかった事で、住民との摩擦(まさつ)も少なく、まだ少ないが こちらの技術に興味を示している人がいる。

「それじゃあ磁石を作るぞ…。

 これには根気と時間が掛かる。」

 クオリアが役所の隣の倉庫に行き、棒磁石を12本を同時に作れる型を持って来て言う。

「レナの磁石があるだろう…磁石を量産するのか?」

「それも そうだが、レナの磁石が経年劣化で磁力が低下している…。

 まずは これを材料に強力な永久磁石を作る…。」

 オレ達は近くにある川のそばに設置した2000℃に耐えられる鉄の炉に向かう。

 素材となる鉄は アトランティス人達が リアカーで運んでいて人が集まっている。


 さて、砂になるまで粉々にした砂鉄を紙越しにレナの純鉄磁石で引っ付けて回収…それに 木炭、貝を砕いて高温で熱して作った生石灰…酸化カルシウムを砂鉄7、木炭2、生石灰1の割合で入れ、均等になるように混ぜる。

 これを炉に入れて下に火をつけて木炭、竹炭を大量に入れまくり、火の出力を上げていく…。

 (さら)に これに川に設置されて周っている水車から動力を引いて来た扇風機で大量の空気を送り込み、更に温度が上がって行き、鉄の色が赤色、オレンジに…そして黄色に変わって来る。

 そして光り輝く白になった所で 竹のトングで 容器を炉から取り出してドロドロになった鉄をグリスを塗った棒磁石の型に流し込む。

 そして型の上から水を掛ける事で 急速冷却 ジューと言う音と共に膨張していた鉄が収縮し、鉄の密度が急激に上がり、これで棒磁石の棒の完成だ。


「それじゃあ 今から強力な永久磁石を作る…。

 やる事は簡単だが 非常に面倒だ。」

 クオリアはそう言うと磁石で鉄棒を(こす)り出した。

「S極とN極の異極にした状態の2個の磁石を鉄の中央から端に向かってゆっくりと(こす)って行く…。

 こうする事で 鉄を永久磁石にする事が出来る。

 そして この方法で棒磁石を2本作ったら その磁石で次の鉄棒を(こす)って棒磁石にする…。

 こうする事で少しだが 棒磁石の磁力が上がる。

 これを ひたすら繰り返して行くと磁力が鉄の磁力上限まで辿(たど)り着く。

 18世紀ヨーロッパで編み出された『ダブルタッチ法』と言う方法だ。

 後は その磁力上限の磁石を使って磁石を量産して行く。

 鉄だと ネオジム磁石より磁力上限は低くなるが、効率を突き詰めないならこれで十分だ。」

 オレとクオリアは このダブルタッチ法で棒磁石の磁力をひたすら高めていく。

 この作業、最初の磁石の出力で磁力上限まで行く回数が大きく変わるらしく、天然磁石の場合、数百回行う事も普通にあるそうだ。

 住民達も魔法のように反発する磁石の性質に興味を引き、オレ達がやり方を教え、ダブルタッチ法に挑戦している。

 まぁ2本作れば 後は強力磁石を作り放題になる訳だからオレとクオリアの棒磁石を使えば良いのだが、こうやって体験して覚える事が技術継承(ぎじゅつけいしょう)なのだろう…。

 結局、時間は掛ったが その日の夕方には 磁力限界の強力磁石が いくつか出来、住民は磁力と言う不思議な魔法に魅了(みりょう)され、その日の話題を独占するのであった。


 炉で融かした銅を綿あめ機に入れて高速で回して 銅の綿を作り、その綿を紡績機(ぼうせきき)で ひも状に加工し、磁力が無い鉄心にグルグルと1000回巻いて行き、コイルが完成する。

 このコイルを3本作って鉄心に接続し、コイルの両側にS極とN極側の永久磁石を固定して やれば、電気を送ると回転運動が始まる直流モーターになり、そして コイル側を回転させると電気を発生させる直流の発電機になる。


丁度(ちょうど) 2ヵ月か…。

 一気に第一次産業革命を駆け上がって来たが やっと完成したな…。」

 オレがクオリアに言う。

 太陽が夕日になり、仕事を終えた皆が こちらに集まって来ている。

 大型モーターを2個作り、1個は水車に取り付けて発電を…。

 もう1個は 炉に風を送っていた大型扇風機(せんぷうき)に取り付け、一応絶縁体のグリスを銅線に塗り付けて絶縁した銅線を 2つのコイルに接続する。

「ああ…これで私達の食料も自給自足出来る。」

 クオリアが言う…後ろにはジガとハルミも来ていて この歴史的瞬間に立ち会っている。

 水車でモーターを回して生成された電気が 電線を通じて大型扇風機(せんぷうき)のモーターが回転を始めて、プロペラが回り始める。

「おおっ歯車も無いのに動い出した。」

 弟子と一緒に水車を身に来ていたクラウドが言う。

 歴史的瞬間を見に集まって来た村の人たち歓声を上げている。

「これが 創始者(そうししゃ)様が行っていた雷の力か…。」

「あれが…。」

 村長が言い…村人達に波及(はきゅう)して行く。

「ああ…電気だ。

 これで ちゃんとした家も造れるし、今より もっと快適で豊かな生活が出来るようになる…電気文明の始まりだ。

 さあて…皆、これから 手伝って(もら)うだけじゃなくて 本格的に働いてもらうからな…。」

 オレが皆を見て そう言うと「オレもあの力が使えるのか?」「私は磁石を作りたい」などの村人の声が聞こえ、やる気は十分のようだ。

 アトランティス村の占領から1ヵ月…オレ達は 仲間として村の住人に受け入れられたのだった。

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