表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
307/339

21 (相互確証破壊)〇

 作戦司令部 屋上ヘリポート…。

 駐機されているヘリコプターのローターブレードが回転を始める…マズイ…。

 グラス少佐()達は後ろにあるテールローターにワンマガジンの弾を撃ち込み破壊する…これで飛んでも すぐに墜落する。

 私はコックピットのドアに しがみ付き、ドアを開ける…チェルネンコがヘリコプターを上昇された事で強烈な横回転が発生し、こちらを振り落とそうとして来る。

「んっ…」

 ヘリコプターは少し浮き上がるも、ヘリポートに横回転を起しながら墜落をし、私は脱出したチェルネンコを階段の近くまで無理やり引きずって行く。

「確保だ…」

「オマエ…アメリカ人か…だがもう遅い…争いの種は既に撒いた…」

「ソ連がアメリカと戦争しても確実に負けるぞ」

「だがベトナムでは私達が勝利した…」

「それは歩兵戦だからだ…兵器なら負けない」

「そうか…なら、アメリカの兵器は 放射線対策をしているのか?」

「っ!!…まさか…核を撃つ気か?」

 ソ連の兵器は 核戦争を想定していて、対 放射線用の装備をしていて装甲が厚い。

 対して こちらには それが無く機動性重視の設計だ。

 放射線の脅威がどの程度かは分からないが、ソ連に有利な戦場になるかもしれない。

「いや…撃つのはアメリカだ!!ははははは」

 チェルネンコは腰からF1手榴弾(レモン)を取り出し、ピンを抜く…安全レバーは握ったまま、離せば3秒後に爆発する。

「マズイ…退避だ!!」

 チェルネンコは ニヤリと笑みを浮かべて手榴弾を手放し、地面に落下…。

 私達は必死に逃げる…殺傷範囲は半径30m…ここだと階段から下に降りるしかない。

 3秒…仲間達が階段にたどり着き、階段を降りる…地面で爆発した手榴弾の破片は 下には やってこない。

 2秒…1秒…間に合わない…そう判断した私は ジャンプしてヘッドスライディング状態で階段の少し前で伏せる。

 0…1、2…3、爆発しない?不発?振り返るとチェルネンコの姿は無い。

「ちくしょう…ダミーか…」

 私は走って追いかけると そこには ワイヤーが固定されていて、地上に向かって降ろされている…チェルネンコの姿はいない…。

「1階だ…追え!!」

 そう言った瞬間…爆発音と共に私に向かって大量の破片が向かって来る。

 超遅延式の信管?

「ナメた真似を~」

 私に無数の破片が突き刺さり、背中を地面に向けた状態で屋上から落下した。


 ドサッ…。

「熱っ熱い」

 背中が焼ける程に熱い…パイロットスーツが手榴弾の破片をかろうじて受け止め、地面の落下の衝撃を耐弾ジェル装甲が熱に変換して無力化する。

 スーツ側で急速冷却が始まったのか…背中の焼ける様な熱も徐々に去っていく。

「うあ~転落死しなかっただけマシか…」

「ご無事で…」

 私は階段から降りて来た兵士達の肩に(つか)まり起き上がる。

「あ~だが逃げられた…ヤツは核戦争を望んでいる…戦争の先端を開く気だ」

「まだ近くに いるはずです…探しましょう…」

「ああ…」

 次の瞬間、地下のミサイルサイロから大型の巡航ミサイルが放たれる…あれは核ミサイル?

「畜生…撃たせちまった…次があるかも知れない、車を回せ、サイロを襲撃するぞ」

「はい!」

 私がそう言うと、近くに駐車していたソ連軍の車を拝借して、ミサイルサイロへと向かうのだった。


 トニー王国 潜水艦、深度100m…発令所

「は?核?」

『はい、現地から報告を受けていて こちらもレーダーで観測しています。』

 帰還ポイントに向かっているエアトラのAIコパイが言う。

 クラウド()は 今、機雷を水中用ドラムで無効化しながら、軍港へと向かってる最中だ。

 海上には有線で繋がった通信用のドローンがあり、私はコパイと連絡を取っている。

『北大西洋に向けて方向に向けて移動中、速度から言って巡航ミサイルでしょう…核弾頭かは不明…』

「だろうな…ちっ普通なら戦闘機を発艦させて迎撃させる所だが…」

『今は海中で周りは機雷だらけですからね…それに、発艦速度が遅い潜水艦では、追いつけません。』 

「だが向こうには トニー王国の潜水艦が網を張っている…衛星通信で位置情報を送れば 迎撃も出来るだろう。」

『エアトラの足は遅いですが、ミサイルの進路上に展開する事は 十分に可能です。』

「ダメだ…ファットマン相当の核ミサイルだった場合、陸地にも被害が出る…迎撃は海上でだ…」

『了解しました』

 エアトラは 予定だと機雷の無い海域まで進んだら、海面に着水して こちらの回収を待つ予定だ。

 だが、まだエアトラはミサイルの進路上にいる…。

『電波、熱による誘導が利きません…外部操作を受け付けない、ミサイルは完全自立型です…機体保全の為、退避します…』

 ギリギリまで情報を収集した所でミサイルを回避し、高度を下げて着水コースに乗る。

 翼の角度を垂直にしたヘリモードで ゆっくりと着水…プロペラの回転を止めて 燃料の消費を抑える。


 海中…ソ連 核報復用 潜水艦内。

 情勢は かなり悪い…本国からの連絡が この1週間帰ってこない。

「今日で1週間…まさか核戦争で滅びたのでしょうか?」

「通信がしにくい短波通信と言う事もあるが、1週間連絡が無いのは あり得ない。

 ソナー海面の様子は?」

「音は拾っていますが、砲撃と爆撃ですかね…。

 上では既に戦闘が発生しています。

 けん制攻撃でしょうか?」

「艦長…船内の空気も そろそろリミットです。

 一度上に 上がって空気の補給をしないと…。」

「そうだな…よし、準備をしろ…。

 海面の状況は慎重に…離れた場所で本国との通信を試みる。」

「了解…」

「浮上…ポリャルヌイ軍事基地から通信を受信…アメリカからの攻撃、壊滅的被害を受けた、指揮は不能」

「本当に核攻撃を受けたのか…よし、発射を許可する。

 目標は ワシントンDC…ギリギリ届くはずだ。」

「了解…こちらに危害を与えた報い、受けて貰うぞ!!」


 アメリカ レーダー基地。

「海上から高速に接近する飛翔体発見!!」

「まさか…核ミサイルか?」

「不明です…ただ速度は 潜水艦に搭載型の巡航ミサイルに類似…。

 誤動作の可能性も十分にありますが…」

 このレーダーは 度々誤動作が起き、あまり信用が出来ない…。

「進路は?」

「キューバです…」

「キューバ?…あそこはソ連側のはず…。

 まさか…我々が キューバに核を落としたと言う事にして、核報復する気か?」

「十分にあり得ますね…。

 しかも対応の時間も考えると判断出来る時間は 5分もありません。」

「とにかく政府に報告だ!!こちらでは判断が出来ない。」


 ホワイトハウス 地下会議室。

「とうとう来たか…場所は?」

「キューバ、もしくはフロリダです。

 ただレーダーの誤報の可能性も十分にあります。」

「仮に こちらから撃った場合の名目はたつか?」

「はい、おそらくソ連側も核攻撃をしてくるでしょうから、事実は如何(どう)あれ 戦争に勝ってしまえば ソ連側が核を撃った事に出来ます。」

「わかった…そのミサイル…例え誤報だとしても核ミサイルとする。

 通常弾頭だった場合、核ミサイルの不発弾だったとする。

 核戦争が始まるぞ…戦力の温存に努めろ!!」

「了解しました。」


 キューバ 基地。

『アメリカ側からミサイル…こちらにやって来る…高速の為 迎撃は不可能、総員地下に退避せよ、繰り返す、総員退避せよ』

「くっそ…ヤツら撃って来やがった!!」

「前にアメリカ軍を皆殺しにしちまったのがマズかったのかな~」

「あ~自分が最強だと思っているヤツ程、返り討ちにあった時にプライドが傷つくからな…」

「とは言っても、こっちが始めに撃ったって事にされるんだろうな…」

 作業員達が地下に逃げながら言う。


 トニー王国上空、衛星軌道、宇宙ステーション作戦司令部『推進剤スタンド』

「ミサイル警報!!各国から1000発近いミサイルを確認…こりゃ核戦争だな…」

「ミサイルの位置をリアルタイムでトニー王国の潜水艦部隊に送信…戦闘機による迎撃を頼む…量子通信は?」

「可能です…神4人とコンタクト出来ます。」

「了解『緊急、緊急、ナオ、クオリア、ジガ、ハルミ…核戦争が始まりました…ミサイルの数は最低で1000…大至急対処をお願いします』

 司令()が月のホープ号を中継して量子通信を使って神達に連絡を取る。

『……こちらナオ…こっちからも ミサイルの発射を確認。

 ただ今回、オレは 中立を維持する。

 西と東が核戦争で共倒れしてくれるなら有難い。

 両国の政府機関が核で吹っ飛べば、トニー王国の一強状態になるしな。』

「なっトニー王国が核攻撃される可能性は?」

『例え 核攻撃を受けたとしてもユートピア島の地表を焼くだけ…。

 地下10kmのジオフロントは完全に生き残る。

 それに 迎撃自体は、トニー王国の戦闘機だけで間に合うだろう…。

 その為に潜水艦を分散 配置させている訳だし…』

「ですが…それでは西側と東側を見捨てるのですか?」

『見捨てる?違うな…各陣営の意志を尊重するんだ。

 お互いがお互いを滅ぼし合う事を望んでいるんだから、如何(どう)しようもない。

 だったら一度、思いっきり やってストレスを発散させた方が良い。』

「っでは クオリアは?」

『私もナオと同じ中立を維持する。

 政府が滅びれば、法律が崩壊し 次の統治が始まる…復興期に被災者を救う事で、エクスマキナ教の信者も増える事だろう。

 と言うより、私達2人は この星に来た1700年の時点で 世界を征服して私達が統治した方が 一番死人が出なく、恒久的に人間の幸福を追求出来ると 既に結論が出ていた。

 人類の文化の損失を防ぐ為、殺し合いを許容して 過度な干渉を避ける方針にしたのは ハルミとジガだ。』

「では ハルミは?」

「私も止める理由が無いな…核戦争後には 私が治療出来る患者が増える。

 衛生兵の私は 平和な世界では 目的が無くなってしまう。』

『ジガは?』

『ウチは賛成だ…全面協力する。』

『……どうしてだ?』

『今年 ジェダイの帰還の年なんだよ。

 しかも情勢悪化で遅れてて まだ封切り されていない。

 ハリウッドに ルーカスフィルムとディズニーだけは 吹っ飛ばさせない。』

『私は未来を知らないから どちらでも、ただ各国の技術が損失するのは問題だと思っている』

 クラウドが言う。

「何というか…皆、人命とかは 如何(どう)でも良いんだな。」

『史実で核戦争が起きるのが2050年だ。

 ただ、俺は歴史が変わっても良いと思っている。

 だから 俺は間接的に世界を変える為にナチスに協力した。

 俺達が出来るのは間接的な補助だ…キミ達の歴史はキミ達で決めるんだ』

 ナオが言う。

「分かった…ジガ、クラウド…ミサイルの迎撃は可能か?」

『十分に可能だ…』

『後始末は頼むよ…こちらの核 迎撃能力を見せつけて 脅威判定を喰らったら、また世界大戦が始まる…迎撃後の外交が重要になって来る…良いな』

「了解した…今は時間を稼ぐ力が必要だ。」


 トニー王国 潜水艦、エアロック内、ファントムコックピット。

『注水始めます。』

 海中で潜水艦のエレベーターを下げてエレベーター内が浸水、その隣の解放したエアロック内でも海水が入り、緑色に光る装甲を持つファントムが海水に浸かって行く。

 エレベーターが こちらまで降りて来て、ファントムは台の上に乗り、そのまま ゆっくりと上昇する。

 海面を出た辺りで周辺の海にライフル弾を放ち、機雷を次々と爆発させて行く。

 ファントムは光り輝いている為、視認性は非常に良く、ステルス性も皆無だ…ここでファントムが機雷を排除しておいた方が良いだろう。

「よし、クラウド機は これより迎撃に向かう…現場の兵士達の回収は頼んだ」

 私は そう言うと急加速で空に上がって行った。

 

 日本 大阪芸術大学。

「今、トニー王国から緊急連絡があった。

 皆、速やかに校舎に退避…アメリカとソ連で 最低1000発の核ミサイルが一斉発射された…これだと愛國戰隊大日本が、笑い事じゃ済まない事になる。」

「まさか…今時 核戦争?」

 岡田さんがウチに言う。

「そう…この国は 平和な国だったから…。

 各国の とばっちりで核ミサイルが飛んで来る可能性も十分にある。

 分厚いコンクリートに囲まれた場所に行くんだ。

 幸い、この校舎なら直撃さえしなければ 大半は生き残れる。」

「分かった…ジガは?」

「ウチも一応、トニー王国軍人だから緊急招集。

 何ごとも無ければ、1日程度で戻って来れる。

 本格的に核戦争が始まった場合は、これでお別れかな。

 一応、状況の手紙は送っておく。」

「分かった…」

 ウチは岡田さんにそう言うと、学校の屋上に向かって走り出し、ファントムを出して飛び立った。


 北大西洋 高度100km…上空。

『くっそ…1000発近い核ミサイルがアメリカから撃たれている。

 それも 各国に分散している為、迎撃をしにくい。』

「とは言え 目的地は アメリカとソ連だ ミサイルの方からやって来る。」

 クラウド()は ファントムの操作マニュアルを即座に学習し、マルチロックモードを展開する。

 ファントムの周囲には6つの3Dバーコードで空間ハッキングが記載された魔法陣があり、流石のファントムも地平線より先を攻撃する事は出来ない。

 だが この高度の空なら、1200kmは見通せる。

「マルチロック…準備完了」

『クラウドのブレインキューブでは 負荷が強いし、ギリギリのはずだ。

 演算バックアップをする…目的の識別だけをして欲しい。』

「助かる…」

『リンク…完了…合わせろよ…マルチロック…ファイヤー!!』

「ファイヤー!!」

 次々と魔法陣から製造される量子通信弾を ミサイルが通る場所を予測して その場所に亜光速で撃ち込んで行く。

 量子通信弾は 量子通信で ファントムと接続されており、弾に触れた物体を空間ハッキングする為の弾だ。

 今回の空間ハッキングは分解…。

 触れる物すべての物質を元素レベルまで分解してしまう物で、理屈としては核分裂を同じだ。

 ただ、核爆発が起こらない為の無効化システムも組み込まれており、片っ端から分解されて行く。

 インプルージョン型なら通常弾でも迎撃が出来るが、ガンバレル型なら空中や海底で大爆発を起こしかねない。

 各国の核ミサイルに次々と着弾し消滅…。

 ミサイルの大半は ソ連やアメリカの領土…後はトニー王国の本島に放たれている。

 その内、トニー王国に放たれたミサイルは海上の潜水艦から発射された戦闘機型のドローンが迎撃に付いてくれていて、次々と核ミサイルを北大西洋上空で撃ち落として行く。

 ただ、無関係な所にも撃たれており、その中には ベトナムや日本も含まれている。

 どさくさ紛れて この機会に敵対組織を一掃しようとしている様だ。

「うっ…」

 頭が痛い…私のデータが入っている このブレインキューブが、処理の負荷を頭痛に再現して流してくる…大丈夫…十分に持つ。

『さぁ…おかわりが来たぞ~』

 トニー王国の本島の最終防衛ラインでは 地下から出してきた大型のレールガンで近づいて来るミサイルを的確に迎撃して行っている。

 あれは原発の莫大な電気が必要だが、秒速3mで小型の砲弾を射出 出来る砲台で、DLに装備出来る小型の物なら各潜水艦にもある…トニー王国からしたら非常に枯れた技術だ。


 数十分後…。 

「はぁはぁ…あ~」

 迎撃し終わった所で次第に頭痛が落ち付いて行く。

『両軍で1万と500発だったな…被害は無しっと…。

 これで表向きは両軍の核攻撃は無かった事に出来るな。』

 ジガが言う。

「地上に戻ったら各国の政治家と水面下で交渉しないとだな…」

 私達はしばらく地球を周回し、核ミサイルの発射が起きていない事を確認して私は 潜水艦へと向かって降りて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ