20 (突入作戦)〇
作戦司令部。
ババババッ…。
「敵が侵入、1階を占拠しました…」
「分かった…私は屋上に上がる…ヘリの準備を…」
「ですが…それでは指揮が…」
「私が失われれば ソ連が崩壊する。
何としても食い止めるんだ!」
チェルネンコが言う。
「了解…」
今集めた限りの情報では、敵はエアトラを使った降下部隊…トニー王国だ。
なんで あの国が私の国を攻撃する?
いや…今はそんな事は関係ない…逃げなければ…。
1階…。
「クリア!!」「クリア!!」「クリア!!」
グラス少佐達は 次々とアメリカ兵達が部屋を制圧して行き、見張りを付けて2階に上る…今の所 犠牲者は無し…強襲が上手く行った。
指令室を抑え、この辺の部隊との通信は途絶…一番 厄介な増援を防いだ。
「チェルネンコは?」
「ここには いません…おそらく、屋上に向かっているのかと…」
ここにいる現場の兵士に尋問しても良いが、吐く前に チェルネンコに逃げられるか…。
「ちっ、多分 ヘリだ…ヘリポートへ急ぐぞ」
「ええ…」
私がそう言うと、階段を使い 3階に上がる。
が、廊下では 一斉掃射が始まり、焦って廊下に身体を晒した 兵士が撃たれる。
「あがっ…」
私はすぐに兵士を引っ張り、下がらせる…兵士は腹部を撃たれているが、穴の開いたパイロットスーツから流れ出した大量のジェルが傷口の 血と反応して すぐに固まって行く…うん、これなら即死を取られない限り無事そうだ。
「援護!」
「はい!」
味方が鏡で廊下を映し、AKだけを壁から出して鏡撃ちをする。
そして、私が破片手榴弾を投げて、爆発…破片が飛び散り、敵の身体をズタズタにする…。
「さあ、部屋のクリアリングは頼む…私達は上に行く…チェルネンコを見つけても殺すなよ。」
「了解…」
4階…この次が屋上のヘリポートだ…。
鏡で廊下を見た次の瞬間には鏡が撃ち抜かれ、味方が手榴弾を投げ込むと空中で手榴弾を撃ち抜き、こちらまで戻って来る…マズイ…。
即座に私はそう判断して、階段を転げ下りる…爆発…破片は水平方向から天井へとドーム状にばら撒かれ、天井に当たった破片がポロポロと頭に落ちて来る。
屋上への階段は廊下の先だ…ここを突破しない事には上がれない…如何する?
地震?いや、この振動は…。
窓の外を見るとDLが走ってやって来て、次々と窓ガラスが割れて行く…DLの頭部にある頭部機関銃の掃射だな。
「今!…」
私達は廊下に飛び出して撃つ…窓側のナオと私達の十字砲火だ…ナオの機銃掃射で床に伏せていた敵を簡単に撃ち抜けた。
私が窓のDLに向けて手を振り、ナオのDLが振り返そうとすると、ナオのDLが何かに 背中向きに突き飛ばされた。
「おいおいおい、マジかよ…」
ナオのDLは 後ろ向きに飛ぶ様に回避をして 建物の陰に入り、顔を出そうとすると撃たれるので、敵の後ろに回り込む為に移動をする。
「それにしても…向こうもDLを開発しているとはな…」
ソ連のDLは キャノピー型のコックピットに2本の腕、4本のタイヤが付いた太く短い足を持つ機体だ…それが6機。
タイヤでの走行の他に4本の足を使った歩行も出来ており、除雪されていない雪道でも普通に動ける。
武装は両手で持ちGSh-6-30を構えている…使っている弾は30mm弾で、まともに正面に出たら こちらの盾も抜かれる。
ソ連DLの後ろから周り込み、20mmM3グリースガン…で建物の陰から攻撃。
命中…するも効果は いまひとつ…装甲もそれなりに厚いな…。
4本のタイヤで回転する様に旋回し、こちらに向いた所ですぐに退避…30mm弾の雨が放たれる…旋回速度も悪くない…おっと…。
左に回避…30m弾が放たれる…十字砲火か…DLの基本に忠実な運用だ。
「発想としては 腕の生えた戦車…ガンタンクだな…。」
ただ、ヤツらはDLの特性を完全に理解していない…被弾を防ぐ為なのか身長が低く、重心位置は 下に安定していて瞬発力は低そうだ。
仮称名 ガンタンクが建物の陰から出た瞬間に こちらは盾と銃を捨てて飛びつき、取り回しの悪いガトリングガンを腰から出した斧で叩き切る。
ガンタンクは 即座にもう1つのガトリングガンを手放し、体当たりを決め、こちらの両腕を掴まれ、俺は足を踏ん張って受け止める。
ソ連型DLの背中からは排気音と黒い排ガスが噴き出す…重い…多分、ディーゼルエンジンか?
電気駆動のこちらとでは出力に差が出るか…そう こうしている内に 背中の後ろにソ連型DLが付かれ、ガトリングガンを向けられる。
「ただキャノピーなのは問題だな…」
俺は見下ろす形でソ連型DLのキャノピーを見て、こめかみ辺りにある7.62mm頭部機関銃を撃って、キャノピーを貫通…中のパイロットを殺す。
ガンタンクの力が抜けた所で回避し、30mm弾が飛んで来て、ソ連型DLが蜂の巣になる。
続いて ソ連型DLが捨てたガトリングガンを拾う…うん、トリガーは ちゃんと付いている。
手のひらのサイズが ほぼ同じ為、敵の銃の使用も可能なのは人型をしているから出来る芸当だ。
ガトリングガンを両手で持ち、腰に構えて撃つ…放たれた30mm弾がソ連型DLの装甲を貫き撃墜するが、反動でガトリングガンが上に上がり始める…。
「次!!」
機体を回転させて敵DLの方向を向こうとするが、ガトリングガンに引っ張られて前のめりになり、機体のバランスを崩す。
「やばっ…」
すぐにガトリングガンを手放して退避、30mm弾が放たれ、さっき捨てた盾とM3グリースを取りに逃げる。
ガトリングガンの質量が大き過ぎて、振り回すと遠心力で火器に引っ張られれる…まともに使うには機体の重量が足りない…アーセナルなら十分に扱えるだろうが…。
「うん、まだ粗削りだけど良い機体…」
戦力評価は終了…よし、勝てる範囲だ…正面のガンタンクが ガトリングガンを こちらに向ける。
が、俺の後ろには ガンタンクが もう1機…俺がタイミング良く左に飛び込むと30mm弾を互いに受けて撃墜…予想通り フレンドリーファイヤーを防止するシステムを積んでいないな。
砲撃警報?画面に赤い〇で砲撃地点が表示された瞬間に後ろに下がり、盾を上に向けて回避する。
砲弾が空中で爆散し 雨の様な弾丸が周辺に降り注ぐ、爆発したのは散弾か?
効果範囲からは離れたが、上に向けている盾にはダメージにならない小雨の弾が降り注いでいる。
最後の2機の砲撃装備を持っているDLだな…。
俺はDLをジグザクに走らせ ながら敵DLに向けて一直線に向かう…見えた…砲撃型。
ボルトアクション式のライフルの様な戦車砲で、アーセナルが使っている物と仕組み自体は同じだろう…向こうはボルトを引いてリロード中。
足を止めての精密射撃…4本ある足の前足2本の間接を撃ち抜き、前のめりに倒れ、キャノピーを破壊、そしてラスト…ライフルを捨ててガトリングガンを持ったガンタンクの弾を避け、腰から取り出した斧をキャノピーに叩きつける。
「よし、片付いた…さて、向こうは如何なっているかな…」
俺は走り、作戦司令部に戻って行った。




