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19 (降下作戦)〇

 エアトラの貨物室には 奥にベックがあるだけであり、座席の類は外されている。

 ただ天井には 固定されたワイヤーがあり、これにパラシュートの紐を引っかけて機内から飛び降りる事でパラシュートが最短で開く仕組みだ。

 24人は床に座った状態で 詰め込んで行く…降下用の装備が重いので、降下直前までは この姿勢だ。

 俺はコックピットの機長席に座って機体を立ち上げる。

「後部ハッチ閉鎖…離陸後 30分程度で到着する…」

「了解…」

『こちら発令所、クラウド…バラスト排水中、毎分120mの速度で上昇中…準備は?』

「トーイングカーに接続、問題無し…いつでも どーぞ」

「……………海面に浮上した…今、エレベーターを降ろす。」

 降りて来た エレベーターにトーイングカーで引っ張られたエアトラを乗せ、俺は電源を入れて、プロペラを回転さぜずに エンジンを始動…。

 エレベーターの中は エアトラがギリギリ収まるサイズで、プロペラは回せない。

 エアトラから トーイングカーを切り離して 戻らせ、そのままエレベーターが上昇…。

 上の窓を見ると エレベーターの出入り口から海水が流れ込んで行き、エアトラを濡らして行く。

 潜水艦の上に たどり着き、エレベーターがロックされる。

『エレベーターのロック完了…任意のタイミングで離陸を許可…』

「了解、プロペラを動かす…離陸まで60秒」

 2機のエアトラのプロペラが高速で回転し始め、航行出力まで持って行く。

「離陸するよ…衝撃注意…」

 推力を上げ、潜水艦を海面に押し付ける形で離陸する。

 高度600mまで垂直上昇した後、水平方向を維持しつつ慎重に翼の角度を変えて翼の角度を1°にするプロペラ機モードにして巡航速度である時速500kmまで加速…。

「さてと…コパイ良いな?」

『いつでも どーぞ…』

 俺はエアトラを降下させて 高度30mの距離を保ち、プロペラから発せられる突風で波を立てながら飛行する。

「うわっ…近い」

 後ろから見に来たグラス少佐が言う。

「お静かに…今 修羅場の真っ最中…操作を間違えると海面に激突して死ぬよ…後、重心位置が変わるから出来るだけ機体の真ん中を歩いて…」

匍匐飛行(NOE)か…分かった…頼む。」

 匍匐(ほふく)飛行とは高度が低いとレーダーに映らない事を利用した飛行方法で、地表から数十mの距離まで下がりながら飛行する事を言う。

 今誤って操縦桿を6°程 傾けてしまえば、2.5秒後にはエアトラが海面に叩きつけられてバラバラになり乗員は死ぬ。

 ヘリコプターなら まだしも、時速500kmで飛行中の固定翼機では コパイのアシストが無ければ 俺でも やる気にならない。

『前方に商船です』

「高さ的に接触しない…向こうに悪いが無視する。」

 エアトラが商船のすぐ上を通過し、突風による波で商船が揺さぶられる…それなりに大きいし、転覆はしないだろう。

 そして、しばらくすると氷の海が見え、船が氷を割って通ったであろう氷の痕が道路の様に真っすぐと続いている。

『目的地まで おおよそ10分…慎重に 立ち上がって下さい…』

 コパイが機内放送でアナウンスし、重いパラシュートを下にして寝転がっていた兵士達が次々と立ち上がり、エアトラを揺らし、コパイが それをリアルタイムで修正して行く。

 兵士達は天井のワイヤーに掴まり、パラシュートの開閉の為に必要な紐をワイヤーに取り付ける…これで後は勇気をもって飛び降りるだけだ。

『警告、ソ連 戦闘機が来ます…Su-27!!』

「Su-27?分からん…ペットネームは?」

『フランカーです。』

「マジか…さっきの商船が通報したのか?」

『分かりません…』

「だろうな…オイ…フランカーが来るぞ。

 後部ハッチを開けたら すぐに飛び降りろ!!」

「大丈夫なのか?」

「多分、音速を出すジェット戦闘機が 30mの超低空高度で飛ばないだろう。

 問題はミサイルだが…フレアが1回分ある。」

 俺は上を見る…フランカーはエアトラを一気に通り抜け、大きく旋回しながら減速を始め、こちらの後ろに付こうと追って来る。

 ただ高度は落ちていない…まぁ あれでも かなりの低空飛行をしている訳だからな。

『ミサイルロック…来ます』

「回避任せる」

『了解、乗員の皆様、急上昇します…何かに(つか)まって下さい。』

 俺はカーナビに映るレーダーでミサイルを確認すると、後部カメラに切り替える。

 遠くから ミサイルが接近してきている。

 コパイはエアトラの高度を更に下げ、海面ギリギリを飛び、舞い上がった波をミサイルに ブチあててミサイルを破壊する…当然ながら人間では出来ない芸当だ。

 更に2発目、翼の角度を上げて水平状態を維持しつつ 急上昇…。

「うぐっ…ふっふっ」

 後ろでは兵士達が必死に耐G呼吸をしている…急上昇で頭の血が下に流れ、血流が脳に上って来れなくなる。

 ミサイルは目標を見失い 海面に激突…後2発!!

『降下準備、30秒前!!』

 2発のミサイルに追撃される中、フレアを散布…1発が爆散…残り1発。

 左右に機体を揺らすがミサイルは追尾して来る。

『後部ハッチ開きます…迎撃、頼みます!!』

「無茶言うなよ!!」

 後部ハッチを開ける瞬間、兵士達は AKを構えて フルオートで撃ちまくる。

 ミサイルは大量の銃弾を浴びて爆発…破片が後部ハッチからやって来るが、右に旋回してコパイは回避する。

『機体チェック、損傷なし…降下軌道に戻ります10秒前、ナオもお早く』

「了解、戻ってこいよ…」

『努力します、6、5、4、3、2、1、降下!降下!』

 俺がベックの固定を解いて乗り込む中、グラス少佐が1秒事に兵士の背中を押し、後部ハッチから飛び降ろさせる。

 飛び降りると同時にワイヤーに引っ掛かっている紐が引っ張られ、パラシュートが展開…高度600mから1秒間隔で次々と兵士達が下りて行く。

 エアトラは 大きく孤を描く旋回軌道に入り、螺旋階段の様に兵達のパラシュートが展開される。

『では地上で』

 全員を降ろした事を確認した グラス少佐は 俺に敬礼をすると、後部ハッチに向けて走り、勢い良く飛び降りた。

 俺はDLの背中側のコックピットブロックを下げて中に滑り込む様にして入り、最短でDLの起動を行う。

 俺が降りるのは皆が着地した後だ。

「さて、俺も行くぞ…コパイ頼む…」

『了解しました…』

 プロペラ機モードに戻ったエアトラが角度を付けて斜めに急上昇…DLが乗っているパレットが滑り、空中に投げ出され、3つの丸型のパラシュートが展開される。

 兵士達が使う着陸地点をある程度修正が出来る パラグライダー式では無く、減速特化で 位置修正が出来ないタイプだ。

 下を見ると、炭素繊維のパラシュートが いくつも捨てられており、それは目標である作戦司令部の120m付近に集中している…あれだけの状況で 飛び降りたのにも掛からわず、大したものだ。

 俺が落ちるのは軍用の道路、その近くには 警戒態勢になっている装甲車などの車両も見える。

 DLの大きさに拡大したM3グリースを構えるが、ここでは撃てない…撃てば反動でパラシュートが絡まってしまうからだ。

 俺は即座に判断して、少し高いがパラシュートをパージ…。

 爆発ボルトにより機体から外れたパラシュートが宙を舞い、俺は背中から後転する形で雪混じりの道路に落ちる。

 装甲内部の耐弾ジェルが衝撃を熱に変換して、機体のダメージを無効化。

 装甲で熱せられた空気が陽炎が出し始めるが周りは氷点下…すぐに冷却される。

 後転した勢いを殺さず、足を出して 飛び起き、すぐに銃を構える。

 ババババッ…。

 パラシュートを被って視界不良になった装甲車に発砲…破壊。

 よし次…多少派手に暴れ、一番 危険な 着地後の歩兵の安全を確保する。

「はい、次ぃ…」

 上を見るとエアトラが墜落に近い形で急降下し、また匍匐(ほふく)飛行に入る…損傷も無かったし、あれなら十分に帰れるだろう。

 俺は 近くの丸い球体型のレドームに向けて発砲…敵のレーダーを無力化する…これで探知は非常に難しくなった。

 俺はDLを走らせ、作戦司令部に向かって行った。

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