表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
304/339

18 (作戦会議)〇

 潜水艦内 食堂。

 食堂は6人用の長テーブルが4台の24席があり、ナオ()達は奥の席に座る。

「さて、会議を始めるぞ…で、グラス少佐 作戦は?」

 俺はテーブルに地図を広げながら言う。

「まず、目的の確認から…俺達の最終目的は チェルネンコ代理を今の地位から引きずり落とし、ユーリ大統領が 正規の手続きを得て 元の地位に戻る事だ。

 この作戦により両国の友好関係が高まり、核戦争になる事を避けられると考えている。」

「ええ…私は あなた方が資本主義の思想を押し付けないので あれば、アメリカと戦う事は ありません…。

 そして、私は 共産主義の考え方をアメリカに押し付ける気も ありません…。

 この2つの考え方を妨げず、互いにメリットとデメリットを把握して双方でデメリットを補う…これが双方の一番 利益を得られる方法です。」

 その隣のユーリ大統領がグラス少佐を見ながら言う。

「その考え方を私は 個人として支持する…互いに殺し合っても労働者が死んで生産活動が出来なくなるだけだからな…。

 ただ 国の安全を任せれている指揮官としては NOを出さないと行けなくなる。」

「まぁ表に出なければ 問題無いだろ…で、ユーリ大統領…如何(どう)すれば元の地位に戻れる?」

 俺がユーリ大統領に聞く。

「まずは、この潜水艦の無線を使い、私が元気であり、国家元首の仕事が 可能である事を大々的に発表します。

 無線の送り先は ソ連とアメリカ、トニー王国の各政府に なります。」

「う~ん…こちらは ソ連の追撃がある可能性がある為、海上に上がれない…。

 その為、ユーリ大統領の作戦を達成するには ここから 有線でドローンを海の上に上げて、照射角度を狭めた 指向性電波を送信する事になる。

 送り先は ここ…トニー王国の上空…衛星軌道上にあるトニー王国の宇宙ステーション…名前は『推進剤スタンド』だ。」

 推進剤スタンドの本来の役割は 名前の通り、月から持って来た推進剤を備蓄して宇宙船に供給している場所。

 ただトニー王国との衛星通信も行っており、地球の半分に無線を届けられる。

 更にトニー王国の裏側に当たるキリバスにも『世界樹』と言うミニスペースコロニーがあり、ここを中継する事で、極地点を除けば ほぼ 地球全体で通信が可能になる。

 まぁ流石に大容量の通信は出来ないし、同時に繋げられる回線にも制限があるからリアルタイムでの通信は無理な訳なんだが…。

「なるほど…衛星経由で各国にデータを届けるのですね…。

 分かりました…5分程度の動画で こちらの正当性を主張 出来る様に台本を組みましょう。」

「頼む…さて、米軍部隊は如何(どう)する?」

「ポリャルヌイ軍事基地に行き、チェルネンコ代理の拘束、もしくは暗殺を任務とする…。

 当初の予定では 所属を服装は私服で行くつもりだったが、民間人との区別を付ける為に トニー王国のパイロットスーツを使う事にする。

 つまりトニー王国軍がやった事にする訳だが…」

 グラス少佐が俺を見る。

「その作戦は 今無線でトニー王国に送って返信待ち…許可が降りれば 現地徴用の志願兵と言う事になる。

 トニー王国の軍法に従って貰うぞ…後で抵触しそうな注意事項をリストに まとめて渡す。」

「了解した…それで そこに行く為の輸送なのだが…。」

「こちらの輸送機…エアトラは巡航速度が毎時500km…。

 ただ、非武装でフレアは1回分しか積んでない。

 よって、ソ連にスクランブルが掛けられて戦闘機と戦闘になれば、確実に落とされる。

 なのでパイロットがいない自動操縦で現地まで行き、着陸をせずに 上空から乗員をパラシュート降下させる。

 エアトラは 帰還出来れば 帰還させるが、基本 敵に撃墜される事が前提になるな…。」

「敵基地の中心にピンポイントで降下か…。

 それも相手に気付かれている状態で…近くに落として貰って徒歩で現地に潜入する事は?」

「それも考えた…が、レーダーで確実に見つかって 警戒態勢の状態になる以上、相手に気付かれず 隠密に潜入する事は 不可能だと判断した。

 そこで相手の施設を一気に強襲して、防御を固められる前に逃げた方が まだ生存率が高い。」

「逃げる?脱出ポイントは?」

「ここ…軍港の海岸…ここに潜水艦で乗り付けて回収する。

 海面に顔を出せる時間は短時間だ…場合によっては 潜って貰う事もあり得る。」

「だが、ここの海中には 機雷原がある…潜水状態での接近は不可能だ。」

「分かっている…なので、空中からパラシュート降下する事で敵の注意が陸上に向けている間に、水中ドラムを使い、機雷やセンサーを無力化させつつ 海岸にたどり着く。

 兵士を回収後…こちらは 開けた機雷網を進み、脱出。

 追っ手のソ連 潜水艦が来たとしても 機雷で海中に潜れない都合上、こちらが圧倒的に有利になる…そんな所かな…」

「それが一番だが やはり死者は出るな…」

「そこは どうしようもない。

 こっちが その気なら ドラム部隊で強襲を掛けるのが 一番 手っ取り早くて確実だが、アメリカが協力したと言う 裏の事実が欲しい。

 あくまで兵士の輸送の任務を引き受けたと言う形で処理するからな…。」

「巻き込んでしまった以上、そちらの兵士に犠牲を払えないか…」

「そう…トニー王国は 兵士の損耗を何より嫌うから…リスクは担当して貰う。 

 てか、トニー王国の兵士は 戦闘の大半をドラムに任せている都合上、自衛程度は 出来るが 戦闘能力は 皆無に等しい…戦った所で 大して役に立たないよ…。」

 俺は 少し苦笑いしながら言う。

 トニー王国 国民は機械に頼り過ぎで、生身での力は極端に低い。

 ドラムがいなければ 歩兵戦闘なんて成り立たない。

「了解した…後は この大まかな流れを維持しつつ、現場でアドリブを効かせて行くしかないかな…」

「じゃあ、作戦の準備をしよう…グラス少佐は兵達を集めてくれ…パイロットスーツとパラシュートを配る。

 ユーリ大統領は演説の準備と撮影を…」

「了解しました…」

 俺がそう言うと会議は終了し、各メンバーが今後の作戦に向けて動き始めた。


 格納庫…。

 特殊部隊員24名と俺を合わせた25名が作戦の準備をしている。

「これがパイロットスーツか…なんか冷たいな…」

 グラス少佐が着なれないパイロットスーツを着ながら言う。

「このスーツは宇宙での活動を想定しているから一切空気を通さない。

 だから このままだと体温で蒸し風呂状態になる。

 なのでシリコンゴムで熱を吸収して背中から放熱する仕組みになっている訳だ。」

「温度調節は?」

「体温を測って自動で調節してくれる…体感的には20℃の室内と同じ位かな…。

 で、現地の予想気温は-10℃から-20℃…向こうの兵士は 寒さに慣れているとは言っても、いくらか動きが鈍って来るだろう…そこがチャンスだ。」

「被弾時は?この服は ハサミで切れるのか?」

 メディカルキットの中身を調べているアメリカの衛生兵が言う。

「切れない…防刃性能もあるからな…脱がす時は ツナギになってる真ん中から脱がせる。

 ただ 被弾した時は 傷口を手で押さえろ…。

 パイロットスーツの生地の隙間には 血液に反応してゴムの様な状態になる血液硬化ジェルが入っている。

 だから 貫通した部分からジェルが傷口に入って急速に止血される…まぁ硬化したジェルを取り除く 手術がクッソ面倒になるんだけど…」

「つまり、傷口を抑えていれば 応急処置の必要が無いと…」

「そう言う事…ただし、この技術は動物実験どまり…トニー王国では 兵士が被弾する事が まずないからな…。」

「私達が人体実験をすると言う事か…」

「そう…ただサルでも止血 出来たから、確実性は ある程度 保障されている。

 この潜水艦には レントゲンが取れる医療室の他に簡易手術も出来る無菌室もあるから、生きて帰って来てくれれば、こっちで如何(どう)にかする。」

「助かる…」

 衛生兵がそう答えると グラス少佐達は パイロットスーツの上から防弾チョッキを着て、俺が空けたロッカーから銃を取り出して準備をする。

「AKか…」

 彼らが使う銃は 精密バレルに交換したAK-47…ソ連の名銃だ。

 普通 アメリカなら M16を使うのだろうが、今の M16は ベトナムなどの極限環境では 動作不良が頻発する 命中精度は良いが お上品のアサルトライフルだ。

 なので、現場だと 命中精度が悪くても、どんな環境でも とりあえず撃てる AK-47の方が信頼性がある。

 特に今回は 極寒の寒冷地…M16だと作動不良になる事も あり得るだろう。

 なので、所属の秘匿と、現地で弾薬の補給をする為に この銃が選ばれた。

「ナオ…キミの銃は?」

「俺?俺はこれ…ウージーマシンピストル」

「ウージー?これが?」

「そう…まぁクローズドボルトだし、パーツ単位で改造しているから 殆ど別物だけだけど…。」

 この銃のベースは 2009年に発売されるウージープロを 中国がコピー改良した銃で、中国兵器工業集団(ノリンコ)から『9mm機関拳銃』の名前で自衛隊が購入している銃でもある…まぁ完璧に未来の銃だ。

「弾は9パラか?マカロフ弾は使えないのか?」

「使えないね…。

 とは言え、30発×5マガジンの150発…これだけ あれば十分…。

 足りなければ 現地でマカロフを調達するし…」

 そう言うと俺は 標準型のDL…ベックが積まれたパレットをエアトラの中に入れて固定する。

「DLを使うのか…」

「そう…向こうには 戦車も あるからな…歩兵だと少し厳しい。

 だから目標の建物付近で援護をする…それよりも パラシュートの確認だ。

 しっかりと手順を覚えておけ…300mしかないから、すぐにパラシュートを開く事になる。」

「よっと…これは まだ軽い方か…」 

 グラス少佐がパラシュートを持ちながら言う。

「おおよそ20㎏の炭素繊維製パラシュート…。

 パラグライダー式だから着地点の修正も効く…。

 ただこれもドラムしか使って無かったりする…まぁドラムの重さ的に確実に降りられるんだろうけど…」

「命を預けるには不安が残るな…」

「まぁそこは仕方ないね…さぁ行こう」

 俺は そう言うとエアトラの後部ハッチから乗り込んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ