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15 (冬休みは潜水艦でクルージング)〇1985_12

 1985年12月。

 北海道、上富良野町 中学校…3年生。

「ナオ…冬休みは 如何(どう)するんだ?」

 隣の席で椅子を傾けてキコキコしている アキトがナオ()に言ってくる。

「俺か?いつも通り、定期メンテだよ。

 今回は大人用の義体に乗り換えるから、身長もアキトと同じ位になるかな。 

 後、今回はクルージングもある…。」

「うわあ…豪華客船?世界一周?」

「いやいやいや…期待させて悪いけど そこまで豪華じゃないよ…場所も 結構 近場だし…何より寒い」

「ちぇ…なんだ~」

「また お掃除のバイト?」

 メグミが やって来て俺に聞いて来る。

「そう…今回は一段としつこく なりそうでね…」

 俺は苦笑いをしながらメグミに言う。

「そっか…ナオは自衛隊に入るのが夢だもんね~」

「なんで そんなに銃で人を殺したいのかね~」

 アキトは隣で呟く…。

「いやいや…人を殺したいんじゃなくて、守りたいんだよ…。

 てか 仕方ないだろ…学校では いじめは ダメって言うけど、現実問題、周りの国は いじめっ子だらけ なんだから…。

 俺は いじめっ子になる気はないけど 周りから タコ殴りにされるのも嫌だから…」

「まぁナオの近くにいれば いじめられないからね~」

 メグミは 教室の端にいる いじめっ子の派閥を見ながら言う。

「そう…それ、入学した時に 俺がチビだからって言う理由で いじめて来た連中をボコって『俺とケンカすると割りに合わない事になる』って、学習させたから、今は俺が暴力を振るわなくても 周りが安全になっている…これを 抑止って言うんだが…」

「ナオは 身体が小さいけど、色々と知ってるね…」

「そんな事より、オレは 高校受験の方が気になるかな~」

 アキトが教科書を見ながら言う。

「と言っても 生徒の数が いないんだから、楽勝で合格出来るでしょ…」

「オレは その楽勝でも落ちそうなんだよ~。

 はぁ…いつも100点を取る ナオの頭が羨ましいよ」

「理数系なら100点を取れるけど、俺は国語と社会は無理だな…。

 社会は日教組(にっきょうそ)に配慮した答えにするのが面倒だし、国語には『筆者の気持ちを述べよ』なんて言う無茶苦茶な問題も出て来る。

 そんなの『締め切りに間に合わねー』とね『早く眠りてぇ』とかだろ」

「あ~それ…走れメロスでしょ…。

 確か『借金の担保に友人を置いて行って、自分は 別の友人と将棋で遊んでた最低行為を美化して作った作品』とか書いて先生から×を貰ったってヤツ…」

「それが事実なんだけど…どーも俺は嘘をつくのは苦手でね…」

「あれは 出題者の解釈を予想する問題だしね~」

「てか、そもそもナオは自衛隊に入れるのか?身体障害者だろ?」

 アキトが俺に言う。

「まぁ…一応 3級の障害者手帳は持っているけど、身体自体は 生身の人間より動くしね。

 まぁ電気の無い所だと3日位で動けなく なっちまうから、山岳訓練だと 少し厳しいかな…予備バッテリーを持ち込ませてくれると良いけど…」

 ガラガラガラ…。

「オイ、とっとと席に付け…まだ冬休みじゃないぞ…。

 さぁてと…これから体育館で終業式だ…夏休みで浮かれる気持ちも分かるがもう少し辛抱しろ…じゃあ、今日の予定は……」

 先生がやって来て今日の終業式の段取りを聞かされる…まぁ慣れた光景だ。


 午後…。

「じゃあ…帰って来たら連絡入れてね~」

「ああ分かってる…」

 2人は除雪された2mの壁になっている道路を歩き、家に帰る。

 俺は タイヤにチェーンを巻きつけたアキヒロが運転するハイエースに乗り、雪の道を進み、深夜に留萌港(もるいこう)に着く。

 海の上に浮かぶドローンが俺の存在を確認すると 潜水艦が海から浮上し、エレベーターが下がりエアトラが上がって来る。

「ナオ…こっちだ」

 クラウドが降ろした縄梯子を上ってエレベーターの上まで上がり、エアトラに乗り込んで 垂直離陸し、トニー王国へと向かった。


 トニー王国 潜水艦整備用メガフロート…潜水艦船内。

「よっと…それで積み荷は?」

 ハシゴで下りて 廊下を歩きながら俺は隣のクラウドに言う。

「エアトラが6機…DL6機、小型無人戦闘機のソニックが6機、乗員が24名、ドラム24機…。

 武装は音響爆雷と高威力爆弾が それぞれ12ずつ…小型核爆弾が1つ」

「フル装備だな…」

「それだけ危険な任務なんだ。

 じゃなきゃ私達が わざわざ呼ばれない」

 クラウドが命令書を俺に渡して言う。

 トニー王国軍人は 俺達がいなくても十分に潜水艦を操れるし、今までに困難なミッションも いくつも達成して来た。

 にも かかわらず 非常勤の俺達を引っ張り出す辺り、確実性が 欲しいのだろう。

「なっ…ソ連のバレンツ海で アメリカとソ連の潜水艦が相打ち?」

 命令書を見ながら俺はクラウドに言う。

「そう…アメリカの潜水艦が ソ連の潜水艦を 後ろから追っている最中だった。」

「ソ連側がストーキングにイラついて撃墜したのか?」

「分からない…ただアメリカは潜水艦を撃墜したソ連を批難し、逆にソ連もアメリカを批難している。

 そして、両軍の潜水艦を撃墜する理由があり、現場に痕跡を残さないステルス性からトニー王国も疑われている。」

「一応確認するが こっちは やってないよな…」

 通常トニー王国の潜水艦はパナマ運河が通った西ルートで進むので、ソ連付近の海を通る東側ルートは使われていない。

 ただ、トニー王国側の密命で存在しない潜水艦が動いている可能性も十分にあり得る。

「商船も含めた 展開中の全潜水艦に位置の確認を取った。

 それに 軍にも 問い合わせをしたから 国からの密命もない。」

「了解…それでお客さん達は?」

「所属不明の米軍特殊部隊が24名、潜水艦の調査委員が2名、民間の通訳が2名の28名」

「結構 大人数だな…」

「状況によっては 特殊部隊の投入が必要になって来る事も 十分に あり得るからな。

 このままだと、アメリカとソ連は 全面戦争に発展する事もある。

 そうなれば核の撃ち合いだ…」

「俺としては 予定が前倒しになるだけ だから それでも良いんだけど…。

 まぁトニー王国軍には 結構自由にさせて貰っているからな…恩は返すよ…。

 まずは向こうの指揮官と話すかな~」

 俺はそう言い、食堂に向かうのだった。


 食堂…ここでは 食事を取るだけでは無く、重要な会議も行われる場所だ。

「コンニチワ…私の名前、ジョナサン・グラス…階級、少佐…トニー王国語少し…」

 グラス少佐がトニー王国語で挨拶をして敬礼をする…敬礼の仕方からして アメリカ陸軍か?

 どの国でも英語が通じると勘違いしている傲慢(ごうまん)なアメリカ人より好感が持てる。

「こちらの言語で会話しようと してくれる事に有難く思う。

 俺は英語を使える…発音が下手で 訛りがヒドイとか言われるけど、一応の意思疎通は出来る…細かい言い回しは再現できないから、通訳を挟む事になるんだろうけど…」

 俺が英語でグラス少佐に言う。

「確かに 聞き取りづらいが…こちらでカバー出来る範囲だ。」

「さて 少佐…俺の階級は中尉で あなたの2階級下になります。

 ですが、あなた方は この船の事を知りません…。」

「それは 分かっている…あなた方から指揮権を奪う つもりはない。

 ただ こちらの意見に対して考慮はして欲しい。」

「まぁ この潜水艦をチャーターしてくれたお客様ですから、こちらは 支障が出ない範囲で協力はします。

 ただし、軍事機密の発令所や こちらの戦術は 基本 すべて非公開です。

 あなた方の武器類は 全部 格納庫に鍵付きで保管されています。

 格納庫への出入りは俺達の監視付き、基本自由に動けるのは この一般居住区画だけです…出たいなら その都度 許可を取って下さい。」

「……了解した…部下に徹底させる。」

「それじゃあ、すぐに出航させます。

 目的地まで3000km…片道で3日程度です…外見えないですけど 快適なクルージングを お楽しみください。」

 そう言うと俺は発令所に向かうのだった。

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