表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/339

12 (黒の死神)〇

 夜…午前3時。

 まずは 屋敷の近くの屋上にスナイパーを護衛して配置。

「狙えるか?」

 スナイパーがリュックを使って即席の台座を作り、その上にタオル、M3グリースを乗せ、角度を更に調整する。

「一応見えるが 射角がキツイな…。」

 スナイパーは仰向けに寝っ転がり M3グリースのバレルにタオルを巻き、両膝で挟んでバイポットの代わりにして屋上を狙う。

「よし、これなら行けるか?回避は 全くできなくなるが…」

「それじゃあ、俺達も行こう…」


 C-4爆薬を屋敷の複数個所に設置する。

「俺達の仕事は 爆発後に各爆破箇所から1階から突入し、作業員と工場を破壊する事。

 工場は1階…2階は 事前情報では個室との事だ…おそらく作業員は ここにいる。

 俺達は階段を塞ぎ、1部屋ずつチェックして 中にいる作業員は 全員殺す。

 そして ヤツらが屋上に逃げだそうにも 各階の階段には俺達がいるから 3階に上がれない。

 で、仮に取り逃がして屋上に たどり着いたのしても、狙撃される…こんな感じだな。」

「普通の突入作戦だな…」

「と言うより これ以上 やりようが無い。

 それじゃあ、行くぞ」


 無線でC-4を起爆し、辺りが爆風に包まれる。

「よし、突入だ。」

 無線で連絡を取り、4ヵ所から同時に攻撃を仕掛ける。

 突入部隊は 全部で12人で、各箇所に3人だ…。

「クリア…クリア…」

 ライトで照らしながら次々と屋敷を制圧して行く。

『こちら4班…工場を発見…』

「了解…爆破は後だ…こっちは数が少ない…制圧を優先する。」

『了解』

『こちら3班…階段を発見…1名付ける。』

「了解…階段を確保しろ…」

 1階には人は いない…やっぱり2階か…。

『こちら1班…資材搬入用のエレベーターを発見。

 っ…エレベーターが動いている…3階から敵が降りて来るぞ!構えろ!!』

 エレベーター?不自然(おか)しい…開いた瞬間に蜂の巣になると分かっていて乗るか?


 エレベーターの上を見ると 3の数字が緑色に光って点滅している。

 俺は側面のボタンを押してエレベーターを1階に呼び寄せる。

 2階…1階…チンッと…音が鳴り、扉が開くのと同時に俺達3人でエレベーターのゴンドラに向かって ワンマガジン分の銃弾を一斉掃射する。

 バババババッ…。

「いない?何故?」

「ざんねぇん~惜しかったね…」

 はっ…後ろを見ると 階段を見張っていた3班の兵士が頭を撃たれてバランスを崩し、床に叩きつけられる。

「ひっ…」

 咄嗟(とっさ)に 窓から月明りに照らされる影に向かってM3グリースを向けて引き金を絞るが弾が出ない…あっ弾切れ…予備マガジン。

 硬直していた俺とは違い 1班の2人のリロードが間に合った為、彼らは 俺の前に出て銃を構えカバーしてくれるが、2人共 影に頭を撃たれて床に倒れ、そして俺も額を撃たれた。


 1班の方向だな…。

 銃声を聞いた3班の俺達は エレベーターに向かう。

「4キル~」

 そこには 倒れた4人と立っている1人の影がおり、こちらを一瞬見て こちらが銃を構えると逃げる様に階段を駆け上がる。

「いや待て!!」

 俺の相棒が走って影を追いかけ、階段を上がろうとした瞬間に頭を撃たれて階段から転げ落ちる。

 こちらからでは ダメだ…反対側の階段から上がらないと。

 俺は背を向けて反対側の階段まで走る…。

「はい5キル~」

 うわっ…後ろからの女の声と発砲音…そして 後頭部からの衝撃…。


「こちら2班、1班、3班…応答を……チッ」

 やられたのか?…こんなに早く?

『は~い…こちら今、6キル目で~す。』

 はっ?女の声?まさか…無線機を拾われて…。

 次の瞬間…一斉に屋敷内のすべての照明が点き、一瞬目が眩む。

 ウウウウウウ…サイレンの音?

 それに 今まで白い光を放っていた街灯が赤色の光に染まる。

『今、援軍を呼んだよ…投降するなら今の内…』

 投降?この状況で?ここで投降すれば 拷問されて、後ろのアメリカ政府にも被害が及ぶかもしれない。

 俺は拷問に耐える自信が無いし、ここで死んで自分の口を塞いだ方がマシだ。

「行くぞ…覚悟を決めろ!」

『そう…ざんね~ん』

 何かが足元に投げられる…手榴弾?しまっ…。

 物凄い音と閃光が俺達の耳と目を潰される…あっ…フラッシュバン。

 パン…パン…パン…。


「うぐっ…」

 無線からの音で耳をやられ、キーンと言う音が耳に響く…耳鳴りがヒドイ。

『9キル~あと4人~ふふふ』

 不気味な女の笑い声…しかも こっちの人数も知られている…どこかで監視されていたのか?

 そして窓から外を見るとvillage(ヴィレッジ) of(オブ) gunsmith(ガンスミス)の住民達が真夜中だと言うのに それぞれの銃で武装して こちらに駆けつけて来ており、その中には 女子供もいる。

 まさか…住民全員を武装して招集 出来る様に手懐けているだと。

 金に余裕が無い途上国は 自分の利益を最優先にし、他人との協調は取れないはず…。

 だと言うのになのに ここのボスは どれだけ信頼が厚いんだ。

 今だと本当に分かる…これは脅威以外の何物でも無い。

「はははははっ…勝てる訳ねぇよ…あははははっ」

 もう これは笑うしかない…。

 2発の銃弾が仲間の手の平に当たって 銃を落とし、もう自殺する事も出来ない。

「だから、降参すれば 痛い思いをしないで済んだってのに」


「こちらスナイパー?敵の位置は?オイ?聞こえているのか?

 救援を…救援を…」

 武装している住民達が階段に設置して置いた ワイヤートラップを解除して、こちらに やって来る…普通 住民が解除するか?

『後はアンタしかいない住民に殺されたくなければ 降伏しろ…』

 ここから自力で生き残れるか?ムリだな…下の武装している住民を10人は削れるかも しれないが、弾が切れたら次のマガジンをリロードする前に大量の銃弾を身体に受けて確実に死ぬ。

「投降する…」

 それしか方法が無い…例え捕虜になって拷問を受けたとしても脱出する機会はあるかも知れない…少なくとも ここで即死するよりは長生きが出来る。

『お利口さん…』

 女が そう言うと住民達が突入し、俺の後頭部に銃を向けて 俺の銃を取り上げ、腕を後ろに回して拘束する。

 突入した住民達は 味方に誤射しない様に常に銃口を意識して立ち回っている…素人の感じは拭えないが、ちゃんと訓練を受けている様だ。

 もしかしたら コイツらは ニカラグアへ送る為のテロリストかもしれない。

「よう…よくも家に大穴を開けてくれたな…」

 住民達が左右に広がり 後ろから 銀髪の女が ゆっくりと歩いて来る…写真の女…ハルミ・マキナだ。

「どーせ、所属なんて喋らないんだろ…。

 まぁアメリカ所属の工作員とかだろうが…」

 バレている?俺は両脇を抱えられつつ、穴だらけの屋敷に連行されるのだった。


 俺は意識を取り戻し、辺りを確認する。

 ここは病院?身体は完全に拘束されていて首 位しか動かない。

 横には頭を撃たれたはずの仲間が拘束されて寝かされている…。

 頭に穴は開いていなく、額に たんこぶが出来ている辺り、暴徒鎮圧用のゴム弾を使われたのだろう。

 頭に強い衝撃が入り脳振盪(のうしんとう)を起して気絶したのだろうか?

「起きたか…」

「ああ…助けられた様だな…」

「2人、辺り所が悪くて死んだがな…まぁそっちは ガチで殺しに来たんだ…生きているだけ ありがたいと思いな」

「そっか…」

 任務は失敗…それも最大限 手加減をされてか…。

 見た所 ハルミには負傷の痕も無い。

「で、国に戻る気は あるか?あるなら帰すが…」

「いや、どーせ 国は関与を否定して、俺達は 切り捨てられるだろう…。」

「なんで、そんな事をする国に仕えるのかね…。

 まぁ銃を運ぶ 警備員を募集しようとしていた所だから、幸運だったね。

 能力的には問題無い…合格だ。」

「オマエは、殺そうとした俺達に銃を持たせる仕事をさせるのか?」

「まぁ私は殺しても死なないし…さて まずは、屋敷の壁を爆破して出来た 大穴を直して貰おうかね」

「俺達は大工じゃないぞ…」

「だったら まずは コンクリートブロックの作り方からかな…。

 壊したな直す…当然の事だろう…」

 ハルミはそう言うと、俺達の拘束を外して行った。


 数日後。

 爆破した壁の穴をコンクリートブロックで埋めて行き、モルタルを塗って完全に元通りになった。

「はぁ…終わった…」

「壊すのは一瞬…直すのに3日…追撃部隊が来ない事から、国は諦めて くれたみたいだけど…。」

「アイツら ベトナムでハルミが乗るエアトラに対空ミサイル(レッドアイ)をぶち込んだらしいからな…。」

「と言うか、ハルミは 良く生きてましたね…」

「まぁ不死身ってだけあるよな…さっ…今日はトラックの警護だ。

 ちゃんと商品を届けるぞ…」

 トラック一杯の武器弾薬を堂々と積み込み、俺達は売人の元へ向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ