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06 (国お抱えのテロリスト)〇

 ある日、ナオ()は いつもの様に 朝起きて、皆とランニングから戻って来る。

「ただいまー」

「お帰り」

 アキヒロがTシャツの上に ケブラー繊維の黒のベストを着て、ケブラー繊維の帽子を被り、ゴルフバック(キャディバッグ)を背負っている。

「アキヒロ…敷地外()に出るのか?」

「ああ ちょっと ゴルフ(打ちっ放し)にね…。」

暗殺(撃ちっ放し)ね…接待か?相手は?」

「アメリカ企業の しつこい団体さんがいてね…日帰りになるだろうけど…。」

ヒット&()アウェイ(帰り)か アメリカで団体か…お客さんを1人で接待するには キツくないか?勝てるのか?」

「他に3人が出るから スコア的にはね…。

 ナオキが見に来てくれるなら助かるが…。」

「うん分かった…着替えて来る。」

 俺はアキヒロにそう言い、自分の部屋に着替えに戻った。

 

 俺のは甚平を脱ぎ、黒いジャージのズボンを着て 黒いTシャツの上に防弾機能がある黒いジャンパーを着る。

 ジャンパーの両腰のポケットの内側には穴が開いており、手を突っ込めば 裏側に仕込んであるホルスターに すぐにアクセス出来る様にしてある。

 銃はアミュレットリボルバーとウージーマシンピストルの2丁だ。

「そう言えば 現場の情報は聞いて無かったな…。

 まぁ持ってく装備が変わる訳でも無いか」

 バッグには 予備弾薬と味方が撃たれた場合の応急処置用の衛生キットを入れておく。

「おまたせ…そんじゃあ行こう」

 俺達はハイエースに詰め込まれて 山を降りて行った。


 ハイエース助手席。

「最近ゴルフは?」

 助手席に座る俺は運転席で運転をしているアキヒロに聞く。

「結構 少なくなったね…でもお客が減った訳じゃない。

 雇い主が他国に飼いならされたって感じかな。

 この国が他国に忖度するのは 今に始まった事じゃないけど…このまま 私達は この国に 仕えて良いのか…と 時々 思う時がある。」

「元近衛とは言え、もう陛下(あるじ)も権力を失っち まっているからな。

 いっそう独立して見たら如何(どう)だ?」

「独立?組織をか?」

「そう…国から頼まれた 汚れ仕事を やっているとは言え、その実体は 軍じゃなく 国 お抱えのテロリスト…。

 どんなに国に尽くしたとしても、上の都合が悪くなれば ある事無い事 でっち上げられて 機動隊に送り込まれて 皆殺しにされる。

 だから 民間軍事会社 みたいな 組織を立ち上げて、こちらが正義だと思う仕事で傭兵契約をする。

 この仕事…やりがいが無いと成立しないからな。」

「考えてみるか…子供達が ちゃんと国の為に働ける様に…」

 アキヒロは運転しながら そう言うのだった。


 港、倉庫。

 港の近くには船から降ろして来た荷物を保管して置く為に 大量の倉庫がある。

 今回のターゲットは その中の1つの倉庫だ。

『こちらアキヒロ(スライサー)配置に付いた。

 今、(クラブ)を取り出している。』

 無線でアキヒロの声が聞こえて来る。

 隣の倉庫の屋根の上を向くと アキヒロがゴルフバック(キャディバッグ)からライフルを取り出して、伏せた状態で構えている。

 彼の銃は ボルトアクション式のスナイパーライフル。

 狙撃用のライフルなんて どれも似たり寄ったりで、カスタムされている事もあり 元の銃の特定は出来ないが、神崎家のガンスミスによる自作で 書類上 この世に存在しない事になっている幽霊銃(ゴーストガン)だ。

 ライフルの名前は『ウッド』…ウッドは 遠くに飛ばしたい時に使うゴルフクラブの名前で、狙撃銃の隠語だ。

 ちなみに 俺のウージーマシンピストルと アミュレットリボルバーは、サブマシンガンとリボルバーなので『パター』に分類されている。

 これも ゴールの穴付近で使う 近距離用のゴルフクラブの隠語だ。

 俺はポケットに手を突っ込み、倉庫の付近で一般人を装ってブラブラと待機をする。

「こちら ナオキ(ノーズブレイカー)配置に付いた。」

『こちらモップ…準備OK…』『こちらジープ、回収は任せて』

『では作戦通り』

『『了解…』』

 俺はポケットに手を突っ込み、ゆっくりと突入をした。


 倉庫内。

「Hey!!, boy over there!(おい!!、そこの小僧!)」

 外国人が英語で俺に怒鳴って来る。

「僕ですか?」

「Why are you here?(何故ここにいる?)」

「はぁ…ここは日本だよ…全く、これだから どこでも英語が通じると思っている傲慢(ごうまん)な連中は…。」

「what? What is this boy saying?(何?この小僧は何を言っているんだ?)」

「なるほど…そもそも日本語が通じないのか…。

 じゃあThank you for your hard work(お疲れ様)、Good night(おやすみ)

「What?(何?)」

 次の瞬間には 右手から引き抜かれたウージーマシンピストルが鼻の前に向けられ引き金が絞られる。

 パスッ…銃弾が鼻を突き抜けて その後ろの脳幹を貫き、ストンと崩れる様に即死させる。

 サプレッサーで 多少音がこもっているが、それでも映画の様に 敵に気付かれない なんて事はない位の音だ。

 まぁこのサプレッサーは 敵に気付かれないと言うより、自分の耳を傷めない様に するってのが目的だからな…。

 と言う訳で 次々と敵が廊下にやって来る。

 崩れて床に転がっている味方の死体を見て、こちらに銃を向けようとする。

「Do you have a passport?(パスポートは お持ちですか?)」

「What?(何?)」

 突然の俺の意味不明な発言に一瞬トリガーが鈍り、次の瞬間には やって来た3人は鼻を撃たれてストンと落ちる。

「はい、これで4キル…スライサー…外に逃げたよ」

『確認している…ショット…こちらも4イーグル』

『こちら、モップ…2匹スパイ(ネズミ)を駆除した…残りは1匹…ボスだけだな』

「了解…こちらが確保する…モップはネズミが逃げない様に逃走経路を潰してくれ」

『了解した』

「さてと…こんにちは~」

 俺がそう言い 壁に背中を向けて 片手でドアノブを掴むと、9mmパラベラム弾がフルオート掃射され、ドアが たちまち 穴だらけに なって行く。

 発射速度は 1秒で10発の高レートの銃…と言う事は銃身長が短いな。

 入手経路から考えても ウージーだな。

 30発撃った所で弾切れ、リロードタイミングを狙って俺はドアを突き破り、アミュレットリボルバーをボスの腹部に向けてぶっ放す。

「あがっ」

 45口径の低致死性 ゴム弾…プロボクサーのストレートパンチを受けた様な衝撃が腹に入り、腹を抱えてぶっ倒れた。

「はい終了…ジープ…ボス以外の敵は排除した 回収に来てくれ」

『了解した ノーズブレイカー』

「さてと…手足を拘束してと…あ~これか…」

 山になっている段ボールを広げて見ると多少黄色が混じった白い粉が見つかる。

「そう、ニカラグア産のクラック コカイン。

 最近、アメリカの首都圏で アフリカ系の黒人のマフィアが ばら撒いているとか…。

 今、大統領令で黒人の薬物使用者と売人を一斉検挙を行っている らしい。」

 掃除を終えたモップがやって来て俺に言う。

「あ~それは嘘…実際にクスリを やってるのは白人…。

 今の黒人の賃金じゃクスリを買うのも難しい…。

 まぁ完全にやってないって事は無いんだろうけど 白人の中毒者は捕まらないからな…必然的に捕まるのは黒人だけになる訳さ。

 今だと顔が黒いって言う偏見だけで捕まったり、拷問で嘘を自白させられる事も多いらしいよ。」

「それで、実際に ばら撒いているのは?」

 モップが現場の写真を撮りつつ言う。

「アメリカ政府…誰が関与しているかは分からないけど、少なくとも今の大統領は知っている。

 ホワイトハウスの前で黒人の少年に クラック コカインを渡して、それを検挙するって言う いつもの自作自演していたからな。

 で、今のアメリカは ニカラグアに武器を送れないから、一度イランに武器を密輸してイラン経由でニカラグアに送って、ニカラグアは アメリカにクラック コカインを流す。

 それをアメリカ国内のヤク中に買って貰う事で 多額の利益を得ている…仕組み自体は パチンコの三店方式と同じで、新しい北大西洋三角貿易だな。」

「まるで現代のアヘン貿易だな…クスリを めぐって戦争にならないと良いけど…。

 じゃあ、何でアメリカに送るはずのコカインが日本に?」

「さぁ?英語を喋っていたから アメリカからの転売じゃないか?

 もしかしたら こっからヤクザに流して、クラック コカインの市場を作ろうとしていたの かもな。

 で、少なくとも こっちに黒人は来てない見たいだ。

 まぁ詳しい話は このボスに聞くしかないかな…。

『ジープ…車を持って来てくれ…後、ここにある弾とクスリの回収だ…これは高く売れるぞ…』」

『それを知ってて 売ろうとするのか?』

 逃走車両を担当しているジープが言う。

「まぁ すぐには売らない…ニカラグアの紛争が落ち付いて、コカインの供給が減って来た時が最高値(さいたかね)かな。

 それまでは 神崎家の資産として倉庫に保存して置けば良い。

 麻薬は(きん)と同じで資産価値があるから 組織を独立させる時の資金にも賄賂にも使える。」

『えぐい事考えるな…。

 それじゃあ、(ブツ)を車に積み込んで撤収。』

 スライサーが言う。

死体()は?」

『コイツらの上に警告する為、そのまま放置…こちらの力を見せつける』

「了解~」

 俺はそう言うと、ここのボスを担ぎ、倉庫のすぐそばに止まったハイエースに乗せる。

 モップは クラックコカインが入った 段ボールや銃弾が入った弾薬箱を押収し、スライサーは屋根から周辺の監視…。

 そして 皆がハイエースに乗り、後始末を付けて 夕方には 神崎家に帰るのだった。

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