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02 (夏の旅行は竹島で)〇1979_7

 入学して3ヵ月後の7月…大学の夏休み前。

「なぁ…ジガ…夏休みの予定はある?」

 岡田さんが部室でジガ(ウチ)に聞いて来る。

「えっと…定期メンテがあるから 一週間位、竹島に帰る。」

 ウチは てんとう虫コミックスのドラえもんの漫画を読みながら岡田さんに言う。

「竹島ってトニー王国が不当占拠している所だよな…」

「ああ…あそこは 朝鮮や中国が 日本に対しての侵略行為を しない様に 防いでいるトニー王国の軍拠点がある所。

 今はトニー王国と日本の貿易拠点にもなっていて、結構栄えている所かな」

「他国に対して攻撃的になれない日本の為に防波堤(ぼうはてい)になってくれているのだったか…。」

「そう、逆に自衛隊が条約を破って 他国を攻撃しようとした場合には日本が敵となるんだけど、日本はアメリカ(戦勝国)から押し付けられた条約を反故にせずに律儀に守るから、そのお陰か今では日本に良い様に使われている。」

「で、部員の皆で どっかに旅行に行こうって話が出てるんだが…候補地が決まらなくてな。

 僕としては ハワイかグアムか…」

「グアムは今だと、ベトナムを爆撃するアメリカ軍の爆撃機部隊の飛行場になっているから 危険かな。

 ハワイの方が まだ安全か…と言うより、旅行先は アメリカなのか?」

「いや、1週間以内で海外に行きたいと言う事で話は まとまってけど、何処の国かは まだ。

 後は近場だと韓国になるかな…物価が安いし 最近 国が発展して来ているから見どころも多い…。

 けどあの国、いつ戦争を再開するか 分からないんだよな。」

 今 韓国こと南朝鮮は 北朝鮮と停戦状態を維持しており、いつ戦争が再開するか 分からない状態だ。

 まぁウチは 戦争が再開されないと言う事は 分かっているのだが、それを言う訳にも いかない。

「そうだ トニー王国は?」

「正直 未知…。

 近いし、それなりに日本が通じるのは良いのだけど、観光の情報が少なくてな…。

 小笠原諸島の方は 海水浴施設があったり、宇宙港を見に来る人もいる みたいだけど…。」

「まぁトニー王国は 観光客も観光名所も少ないけど、日本人にはトニー王国の生活自体が新鮮に映る見たいだ。

 いっそう、ウチと一緒に竹島に行ってみるか?

 旅費も5万もあれば十分だしな…。

 外国旅行の入門としては 結構 安い金額なんだけど…」

「月収の半分位か?国内旅行位の金額になるのか?」

「まぁ一応、日本の書類上では国内だし…興味があるなら旅行用のパンフレットを取り寄せるが?」

「いいね…皆は?」「面白そうだな…」「旅費を抑えられるのは良いね…」

「決まりかな…ジガ…計画書を頼めるか?」

「ええ…まずは 参加メンバーを30人集める所からかな。

 ここの部員は20人位だったから、お友達も誘わないと…」

「何で30人なんだ?」

「トニー王国のエアトラは 定期便無しの完全チャーター機で往復で100万円。

 1人だと100万円負担…エアトラに乗せられる最大の乗客数30人で割れば、1人辺り3万3333円。

 一応 個人の予約も受け付けているけど、30人が集まらないと飛ばせないから 日程がズレても構わない人向けだな。」

「なるほど…飛行機に空席を出さない仕組みか…。

 よし、行きたいヤツを集めてみようか…」

 岡田さんはそう言い 友達を誘う為、部室から出るのだった。


 旅行当日…早朝。

 大阪電気通信大学、野球部グラウンド。

 パタパタパタパタ…。

「おっ来た…」

 上空からエアトラがヘリモードで降下し、グラウンドの砂を舞い上げて丁度 真ん中辺りに着地する。

「あ~あ~またトンボで(なら)さないと…」

 野球部の部員が 滅茶苦茶になっている グラウンドを見ながら言う。

「どっちにしろ(なら)すんだろ。

 だから部活の始まる前にしたんだし…。」

 エアトラがエンジンを落としてプロペラの回転が止まり、後部ハッチが下がる。

「よし、ご近所と野球部に迷惑が掛からない様に早く乗り込もう。」

 乗るメンバーは全部で31名…ウチは副操縦席だ。

「良い着地だったな…」

 ウチが機長に言う。

「まぁチャーター機の都合上、色々な場所で離着陸していますから…。

 それじゃあ、ヘルメットと救命胴衣を配ります。

 装着したら荷物と一緒に体重計に乗って下さい。」

 機長が体重計の数字から右、左、前、後ろで重量バランスが極端に崩れない様にする。

 こちらが事前に測って決めていた席順と同じだ。

「やっぱり、エアトラを知っている人物がいるとラクですね。

 はい、承認…搭乗を許可…。」

「了解…」

 決められた席順通りに座席に座り、荷物は椅子の下の網棚に置く。

「ジガ シートベルトの確認…」

「了解…チェック良し…後部ハッチを閉鎖どーぞ…今 閉鎖…緑ランプを確認。」

 ウチは副操縦席に座りシートベルトをする。

「それじゃあ、行きましょうか?航空無線を頼んでも?」

「ああ…やる?フライトプランは?」

「はい、こちら」

「なんだ 有視界飛行方式(VFR)じゃないか…。

 航空無線は 殆ど いらないな。」 

「ええ…ただ各空港のレーダーで常に見張られているので、無線を切り替えて、通信を維持し続けるだけですね。」

「分かった。」

「それじゃあ、行きますよ…」

 機長がそう言うと再びエアトラの2基のプロペラが回転をし始め、野球部員達が退避を始める。

「野球部員の退避を確認…安全確認良し」

「離陸!」

 エアトラが垂直離陸し、プロペラ機モードで高度3000mの巡航飛行に入る。

 速度は時速300km…目標の竹島まで1時間と少しと言った所だ。

「いやー静かで良いね…ちょっと前まではイヤーマフが必須だったのに」

 ウチが機長に言う。

「エアトラジェットのお陰で防音性能が上がりましたからね。

 やっぱり機体のマイナーチェンジが早いのが エアトラの大きな利点ですかね。

 タッチパネルと このカーナビで飛行も かなりラクになりました。」

 エアトラジェットのコックピットのレイアウトが 一般のエアトラにも導入され、車のダッシュボードを思わせる コックピットデザインに変った。

 正面には 軍でも使い始められている ヘッドアップディスプレイ。

 これは 前を見ながら 緑色で表示されている計器の表示を透過表示で見れるディスプレイで、基本的に ここだけ見ていれば 運転が出来る。

 そして、その下には 計器が信用出来なくなった時に使う 大きな アナログの速度、高度メーターに姿勢指示器、燃料計。

 操縦桿は 車のハンドルの様なデザインであり、全体的に車の印象を受けるデザインだ。

 コックピットの真ん中には 2つのエンジンレバーの他に、最新型のタッチパネル式のデジタル式カーナビが搭載されており、直感的にタッチするだけで 無線などの操作も出来きるので 画面が何台も必要 無くなり、非常に見やすくなった。

 身を乗り出して後ろを向いてみると 飛行機が初めての部員達が 丸い三重ガラスの窓から外を見て騒いでいる…遊覧飛行に持って来いの天気だ。


「ガイドビーコンをキャッチ…。

 見えて来たぞ…目視で確認 竹島だ。」

 竹島は500m四方の小島であり、日本政府にとって島自体に戦略的価値は あまりない。

 ただ、竹島が無くなると日本の海が狭くなって漁獲高も低下してしまうので他国に渡せない状況だ。

 今はトニー王国が竹島周辺の日本の漁を許容しているので、そこまで問題になっていない状態で、竹島を返還されてもトニー王国軍(憲法を無視出来る軍隊)が いなくなってしまっては防衛問題に関わる。

 その為、日本政府は 返せと言いつつも返さなくて良い流れを作って この問題を何百年も先延ばしにする戦略に切り替えている。

 竹島の頂上は 平らに均され ヘリポートに…。

 島の内部は一部くり抜かれて、潜水艦の整備ドックも造られている。

 そして、その近くには海に浮かんでいる人口の島、メガフロートがあり、日本の貿易船がトニー王国から運ばれて来た貿易品を船に詰め込んでいる。

 日本の港には 核兵器が搭載されている かもしれない原子力潜水艦を入港させる事が出来ないからだ。

 まぁ米軍の場合『核を積んでいない』と口頭で言うだけで、船内のチェックもせずに普通に入港出来てしまう訳なのだが…。

 速度を落とし、翼の角度を垂直にして降下し始め、そしてヘリポートに着地…エンジンを切る。

「さて着いたぞ…もうシートベルト外して良い。

 今、後部ハッチを開けるから…。」

 ウチはそう言うと後部ハッチの開閉レバーを入れてシートベルトを外し、皆と一緒に外に出る。

「さあ、入国審査をして後は自由行動だ。」

 ウチはそう言うと、入国管理局の建物に向かうのだった。


 全員が注射器で血を抜かれて 検査機に掛けられ、その間にパスポートの確認や入国管理官の簡単な質問に答えて入国手続きをする。

 質問の数は多いが 基本は書類形式になっており、書類を提出するだけだ。

「はい、大丈夫です。」

 入国管理官と医師の許可が出ると、入国管理官が それを元にアカウントを作り、腕時計と端末を渡される。

「その腕時計は、身分証明書に財布の機能 後は あなたの位置情報を常に送ってくれます。

 この端末はメックと言う小型のコンピューターです。

 旅行中の情報収集に役立てて下さい。」

 入国管理官が言う。

「どーも…うわっこんなに コンピューターが小さくなるんだ…。

 しかも これ、通訳機能に電話もメールも使える。

 おっ…連絡用にIDの交換しようぜ。」

 岡田さんが言い、次々とIDを交換して連絡が取れる様にする。

「最後に銀行ですね。

 円をトニーに両替して下さい。」

 部活の皆は現金で持って来た円を貿易トニーに変える。

 ちなみにルートは、1円=1トニーだ。

「さぁ ここで解散だな…ホテルなんかの観光に必要な情報は端末に入っているから それを頼りに楽しんでくれ。

 それじゃあ、何か有ったら連絡してくれ」

 ウチはそう言い、自分と患者の義体整備の仕事をする為に地下に降りて行った。

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