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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
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26 (強力な後ろ盾)〇

 1979年8月01日…キリバス島。

 パタパタパタ…。

 キリバス共和国は 太平洋の赤道直下にある小さな島が集まった国で、今 トニー王国が 交渉しているのは キリバス島…。

 ハワイのホノルルから南に1000km程 行った場所にある ロンドンとか パリとか ポーランドとか言う紛らわしい名前の集落が ある島だ。

 この国がイギリスからの独立を果たしたのが 1979年7月12日…つまり まだ半月位しか経っていない 独立した ばかりの国だ。

 と言うのも こっちは基礎技術を蓄えつつ、キリバスの独立をひたすら待っていたし、こう言うのは 相手が忙しい時期に 組み込んでしまった方が 交渉が ラクになる…。


 イーオン空港 上空。

「こちらエアトラ…イーオン管制塔…着陸の許可を要請する。」

「こちらイーオン管制、着陸を許可…ようこそ、あなた達を歓迎する。」

「ありがとうイーオン…」

 外交団を乗せた エアトラが滑走路の端で垂直着地し、駐機場へと向かう。

「おおっ上から見てたが やっぱり 綺麗な海だな…」

 ナオ(オレ)は お世辞を言う。

「ですが、ただ 海が綺麗なだけで、住民は豊かとは 程遠い…。

 独立前は リン酸塩の鉱床で 莫大な利益を生んでいたのですが、鉱床すでに枯渇…この為、キリバスは ほとんど天然資源を持たない。

 と言うより価値が無くなったから独立出来たと言った方が正しい表現でしょう。」

 外交官が言う。

「まっそうなるよな…産業は?」

「キリバスでは 一次産業が盛んで、国土の半分が農地です。

 主な輸出品は コタロイモ、コナッツのコプラ、バナナ、漁業、ブタで、主な取引相手は 北に1000km行ったハワイ…新しく開拓出来るのは精々が観光業でしょう。

 工業製品も作れず 輸入するしかない状態です。」

「典型的な 発展途上国だな~。

 さて この国は どっちなのか?」

「どっち?」

「発展を望むのか、望まないのか…だな…一生 農業をして それなりに幸せな人生を過ごす生き方もアリなんだ。

 オレ達は 工業化すれば 工業化する程、生活は 便利になって豊かになるって信じてるけど、発展する事で 問題も 山の様に増えて来る。

 工業化してしまったら、この国の特徴を潰してしまう かもしれない。」

「そう言う物ですか…それにしても 発展を拒むなんて…」

「まぁ国には 国の生活や考え方があるって事…。

 オレが感じる限り、文明の発展を拒んでいる訳じゃないけど、生活スタイルは 変えたくは ないって感じかな。

 そこら辺の面倒をこっちで引き受ければ、行けると思う…それじゃあ 行こう。」

 オレ達は 村長の家までバギーに乗って行く。

 運転席から横を見ると ここの住宅は ヤシの木を使って建てた木造住宅で、屋根には 葉っぱなどが 使われている。

 椅子は 無く、床に(じか)に座る生活で まだ学校は無い…こちらは 教育の提供も出来るだろう。


 村長家。

「ようこそ…タブワケアへ…。」

 Tシャツ、短パン姿の村長は 外交団と握手をし、カーペットが敷かれた床に座る。

 ここの言語はキリバス語だが、元はイギリス領土だった為、イギリス英語を話せる人も多い…村長も その一人だ。

 ただ住民達は 日常生活では キリバス語を使っており、言語問題が発生している。

 頭まで機械のオレは 言語モジュールをインストールしているので138言語も扱える訳だが、その中にキリバス語はマイナー過ぎて無い。

 言葉の文化を維持する為にも 出来る事なら現地語で教育したい物だ。

 歓迎会為に提供された料理は、主食が パンの実と呼ばれるバナナの味がする丸い果物、ココナッツなどのフルーツ類、後は タロイモ…副食は 釣って来た魚で、ここの基本の食事だ。

 で、ここの住民は ダンスが好きらしく 踊っている事が多い。

「うん まだ食べれる…」

 外交官の一人が言う…外交官で あちこちの国に行くと ゲテモノ料理を出される事も多く、外交官にとって食べ物が食べられるかは 非常に重要だ。

「さて、では 交渉に入りましょう…」

 村長がそう言い、オレ達は カバンからプレゼンの資料を持って来る。

「事前に書類を渡していますが、まずは説明から…。

 こちらが 行いたいのは キリバスの上空、3万6000kmの静止軌道に建物を建てる事を許可して貰いたいのです。」

「何故そんな遠くに建物を建てる必要がある?しかも何故 我が国の許可がいる?」

「この位置は 地球の回転と建物が同じスピードで ずっと動く地点です。

 つまり、キリバスの地上から見ると ずっと同じ場所に建物が事になります…そのポイントは極 狭い位置しかありません…これはキリバスの重要な資源になるのです。」

 オレは 出来るだけ 分かり易く村長に説明して行く…この村長は 大学を出ているので ある程度 宇宙に付いての教養は あると思うんだが…。

「うん場所の重要性は 理解した…。

 だが、キリバスの上に建てるのは 如何(どう)言った理由だ?

 トニー王国の上空でも良いのではないか?」

「ええ…トニー王国の上空にも既に通信衛星があります。

 ですが、宇宙からロープを降ろすには 赤道の直下で ないと出来ないのです。

 で、他の候補には ブラジルとソマリアが あるのですが、こちらは 治安が心配で…それで困っていた所に キリバスの独立を聞き、これはチャンスだなと思って交渉に来た訳です。」

 向こうには後にバベルタワーと言われる軌道エレベーターが立つが、政治的な難易度は こっちの方が遥かに簡単だ。

「確かに この国は 助け合いが普通で治安が良いからな…それで そちらの要求は?」

「はい…ここです。キリバス島から南に500kmの地点…。

 ここに海上都市を建築します…宇宙からロープを降ろす地点ですね…この2ヵ所を貸し出して欲しいのです。

 ちなみに この地点に海上都市を作った場合、食糧をキリバスから買わせて頂きます。

 それに 交通の便が良くなれば 外国からお客も来てくれ 観光地として 賑やかに なるかと…」

「うん…悪くない条件だが…その物凄い長いロープ…当然、相当に重く、場合によっては 千切れるはずだ。」

「ええ…ですが もしも 切れてロープが落ちたとしても総重量で10t程度。

 おそらく、落下では無く 葉っぱが木から落ちる様なヒラヒラ~と言った感じになるでしょうね…。

 ただ、この丈夫なロープ…カーボンナノチューブと言う素材で作るのですが、現状で製造は出来ても 量産の目途は 全然 経っていません…」

「それでは、計画自体が 破綻するのではないか?」

「ええ…その可能性も十分に あります…現時点では20年後の2000年が目標です。

 なので、軌道エレベーター建設後の 宇宙産業までは お約束出来ません。

 お約束出来るのは レンタル料金と海上都市を建設した後の観光需要です。

 あ~もちろん、建設費用、維持費は すべて こちら持ちです。」

「う~ん…こちらは 遊ばせている土地を貸し出せて利益を得られる…決して損をする契約ではないな…。」

「ええ…基本的に あなた方には 利益しか ありません。

 まぁ観光客が増えればマナーの問題とかは あるのでしょうが…。」

「分かった…私としては賛成だ。

 議会に議題として提出しよう…当日の会議には キミ達も参加してくれ」

「ありがとう ございます…」

 よし、取りあえず 議員達と交渉が出来る機会を得られた。


 その後、議会が開かれ そこでオレ達は プレゼンを行い 話は思ったよりスムーズに行われ、正式に書面として契約書が作成される。

 多少 厄介なのは レンタル料の支払い通貨が キリバス・ドルだと言う事だ。

 キリバス・ドルは オーストラリア・ドルと価値が同じの通貨で、キリバスで一番 普及している現地通貨だ。

 こうする事でトニー王国は キリバス・ドルを稼いで支払いをしなくては ならず、トニー王国とキリバスとの貿易機会が 生まれる必然を作れ、通貨の価値を維持する事が出来る。

 こっちが売るのは 主に 食べ物や教育で、こちらが 学校を建てて 主に その収益でキリバス・ドルを稼ぐ事になる。

「さてと…後は 地上はトニー王国政府に任せて…オレらは 宇宙側だな。」

 オレは キリバスの青い空を上げ、そう言うのだった。

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