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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
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25 (子供 宇宙飛行士)〇

 1973年10月。

 各国で宇宙ステーションの開発が本格的に始まった。

 主な目的は無重力を使った科学実験と無重力環境下での人体への影響の調査だ。

 だが、そんなのは高度120kmの周回軌道に乗せたエアトラの時点で 散々やったので トニー王国には あまり意味がない。

 なのでトニー王国は 宇宙ステーションの建設に乗り気では無く、やってくれる人材がいず、労働者のモチベの確保の為、何か別の目的が必要となっていた。


 姉島宇宙港。

「ねぇパパ達…また宇宙に行くの?」

 コクランとミラーの娘である リズがコクランに しがみ付きながら言う。

「ゴメンね リズ…私達 お仕事だから…。」

「むう…じゃあリズも つれてって…」

「わがまま 言わない…リズは 宇宙飛行士じゃないだろ」

「なら、リズも 宇宙飛行士になる~」

「と言っても6歳児が宇宙飛行士になれるのか?」

 ミラーが少し困りながらコクランに言う。

 コクランも如何(どう)やってリズを説得しようか迷っている様子だ。

「おおっ…子供 宇宙飛行士か…いいね~それで行こう。」

 ナオ(オレ)は リズを見ながら言う。

「おいおいおい…いくら何でも 今のリズには 無茶だろう。」

「最終的に地上と同じで 特殊技能が無くても 宇宙に住める様に するんだから、子供 宇宙飛行士が いても良いだろ…しかも本人が やりたいって言って来ているし…。」

「ナオは すぐにノリで決めるな…俺達の娘が死ぬかも しれないんだぞ。」

「でも その時は コクランとミラーも一緒に死んでいるだろ。

 それに 危なくなったら いつも通り地球に降ろすさ…さてリズ…宇宙飛行士になる気は あるか?」

「うん…」

「よし…子供でも宇宙で生活出来る様に環境を整えるぞ…スペースコロニー計画だ。」

「また ぶっ飛んだ事を…流石に20万人も宇宙に上げられないだろ…」

「まぁ規模を小さくすれば 十分に行ける。

 エアトラに押し込める人数と実験 規模的に考えて36人って所かな…。」

「で、その スペースコロニーは?」

「キリバス共和国のキリバス島の上空、3万6000km、3km/秒の静止軌道に置くのがベスト…。」

「キリバス共和国?ブリテンの領土の?」

「そう、まぁ あそこは まだイギリスの領土なんだけど…独立後、速攻で交渉を持ちかける…独立したての国は 国際社会での地位を維持する為に大国との関係を持つ事が多いからな。

 将来…ここに めっちゃくちゃ丈夫なロープを 宇宙から キリバスに降ろすから、領土問題に なる前に交渉をしておきたい。

 で、宇宙に行く住人は キリバスから ロープ4本に取り付けた ゴンドラに乗って、ゴンドラは ロープを辿って宇宙に行く…仕組 自体はトニー王国のエレベーターと同じ…。

 これで宇宙に安価で大量の物資を送れる様になる…そうなれば 20万規模のスペースコロニーも夢物語じゃなくなるな」

「ナオは 未来を知っているから ドンドン先回りして動いて いるのか…良いだろう…娘に構って やれて無かった からな…よし、一緒に宇宙に行くか」

「いく~」

 リズがミラーに付いて行く。

「ちょっ…今じゃないから…今度ね、今度…」

「え~」

「いや~今でも良いけど 。

 Sサイズの大人用 パイロットスーツを ギリギリまで調節すれば 行けるだろう。」

「ちょ…ナオ~」

「やたー」

「おい、良いのか?」

「良いの良いの…訓練もしていない初見の素人が宇宙に行くと如何(どう)なるか見たいし…。

 それに今回は 宇宙での3日の滞在で 新人パイロットが 無重力での生活を体験するのが目的だからな。」

「まぁそうだが…」

「と言う訳でパイロットスーツを持ってきな…」

「わかった~」

「待ちなさいリズ~」

 リズは 迷わず更衣室の方向に走り、その後ろからコクランが追いかける。

「はははは…」

 オレは その光景に少し笑いながら妹島観測所に行くのだった。


 エアトラジェット コックピット。

「はいはい、リズ~大人しくしててね。」

「は~い」

 機長席に座って運転しているコクランの後ろのトイレの個室を挟んで リズが元気よく言う。

「とは言え、リズは6Gに耐えられるのかね~」

 リズの隣に座っているミラー()が言う。

「まぁパイロットスーツを着ているし、気絶する位なら問題無いけど」

『こちら妹島観測所…ナオ…多分 気絶はしないじゃないかな。

 まぁそれを確かめる為でも あるんだけど…リズの体重は15㎏だから 6Gなら90㎏…400㎏近くの負荷を受けているコクランに比べれば遥かに軽い。

 しかも 身体が小さい分、血の巡りも良いはずだ。』

「でも負荷が小さいとは言え、その負荷に耐えられるかは 別よ」

『そう…だから実験するのさ…安全を徹底してな。

 と言う訳で観測所の準備はOK…発進を許可』

「了解、行くよ」

 エアトラが垂直離陸し、安全高度に到達した所で翼の向きを真っすぐに向けてプロペラ機モードになり、一気に速度と高度を上げる。

「うぐっ」

 あ~いつもの事ながら それなりに キツイな…。

「ひっひっひっひっひっひっ…」

 脳への酸素供給不足で 意識を失わない様に腹に力を入れ、タイミング良く酸素を脳に送り続ける。

「ひっひっひっひっ」

 隣でリズが 耐G呼吸法の真似事をやって意識を保っている…ただの好奇心で 付いて来た訳じゃない様だ。


「高度120kmに到達…さ~て、リズ無事?」

 機長席のコクラン(ママ)が後ろを向いて言います。

「よゆーです」

 リズ()は元気 良くママに言います。

「そう…元気そうで何より…さて、退屈な3日間の始まりだね」

「たいくつ?なんで?」

 私は こんなにワクワクで楽しいのに…。

「リズは宇宙の生活に夢 見過ぎなんだよ~。

 まぁ地球が綺麗だったり、無重力を楽しんだりするのは 初日で飽きちゃうからな…後は 結構 退屈な日々。

 酷いと下痢と頭痛に悩まされて3日過ごして 地上に帰還なんて ヤツも多いからな…そうなるとツライ記憶にしか残らない。」

 シートベルトを外して無重力の機内を飛んでいるミラー(パパ)が苦笑いしながら言います。

「えっ おくすりは?」

「いくらか マシになる程度…多分 無重力で 薬の成分を 身体が上手く吸収 出来無いんだろうな。

 で、下痢はある程度 仕方のない事として、宇宙酔いは 上下を明確にする事で ある程度 軽減が出来る。

 座席がある方に足を…天井がある方には 頭を向けて、逆さまに ならない様にするんだ。」

『あ~あまり 知識を与えるなよな~ 実験に影響が出るだろ~』

 妹島観測所にいる ナオが無線で話しかけて来る。

「これ くらい、仕方ないだろ…さて、これから俺達は サブミッションに移る。」

『了解…何かあったら連絡を…交信終了』

「サブミッションって?」

「あ~…リズは 知らな かったのか…。

 まぁ実質 宇宙旅行とは言え、やる事は あってだな…。」

 パパは コックピットの後ろに向かいます。

 エアトラの コックピットの後ろには 右側がトイレ、左側が給湯器になっている エアトラ共通の いつものデザインです。

 パパは給湯器の下の棚を開けて 私に手招きしてきます。

「わわわっ」

 私は 慣れない無重力に苦労しながら座席に(つか)まりつつ 棚の中を覗きます。

 棚の中に 緑色の液体が入っている 大きなガラスケースがあり、上からケーブルと青い光で照らされています。

「これ…ミドリムシの すいそう?」

「そう…無重力に置けるミドリムシの成長速度の観察と 増えたミドリムシを回収して食品に加工しての試食。

 これで宇宙で自給自足も出来る様になる…まぁスペースの問題で 今は 味付きのショートブレッド位にしか 作れないんだがな…。」

「ちなみに、私達が吐いた船内の二酸化炭素は ミドリムシが 光合成で酸素に変換してくれる…空調にも関わっているって訳ね…」

 シートベルトを外して 機長席から やって来た ママが言う。

「きょうせい…ね…」

「そう…ミドリムシと私達は互いに助け合って生きて行くの…まぁ一方的な様にも感じるけどね…さぁ観察記録を付けましょう。」

「うん!」

 私が宇宙飛行士になって初めての仕事は ミドリムシの観察でした。

 皆の食事を支えるミドリムシ…簡単な仕事だけど、宇宙の生活には重要な お仕事なのです。


 ワクワクしていたエアトラの中で 一泊して、2日目…この環境にも飽きました。

 確かに窓から見える地球は綺麗で無重力での移動は興味深いのですが、2日目は 皆 携帯型の電子コンピューター メックで遊んでいます。

 ちなみに メックは 入力データを メインのサーバーに送って計算して貰い、出力データを受け取って画面に表示する仕組みの為、都市から離れると使いものになりません。

 なので、この機内には 性能は悪いですが 省電力用のサーバーを1基、娯楽用として専用で持ち込んでいます。

「なんか、みんな メック いじってるし…いつもと かわらない。」

「ははは…特別な事が無い いつもの生活を宇宙でする事が重要なんだよ。

 いずれ人類は どデカい宇宙船を作って20万人が住めるようにする らしいからな。」

「20万人も?なんか ゆめものがたり みたい」

「俺も そう思う…でも金が掛かるだけで理論上では出来るし、その金の問題もトニー王国なら出来る…大本の計画と基礎研究は250年前から やっていた らしいからな。」

『こちらナオ…今 地上では 子供 宇宙飛行士のネタで持ち切りだ。

 リズが無事に宇宙に行けた事で、一般の旅行者でも 宇宙に行ける事を証明で来た。

 宇宙旅行の話が3件も来ていて、出資の話も来ている…』

「えっ…こんな何もない所に?」

 ママが ナオに言います。

『そ…まぁ 3日なら何とか持つだろう。

 1日目が離陸…2日目が 自由行動、3日目が着陸…まぁ船内は狭いし、退屈なのは 変わり ないけど…これから 宇宙旅行が どんどん身近になって来るぞ…リズは人を動かしたんだ。』

「ほんとに?」

『いやマジで…特別なエリートしか宇宙に行けないと言う 世間の常識を ひっくり返したんだ。

 と言う訳でミドリムシの収穫祭の広報用 動画を取って欲しいんだが…リズ メインで』

「了解~良かったな…リズ…」

「うん!」


 その後、リズ達は 無事に姉島宇宙港に着陸…リズの動画は世界中に拡散され、リズは最年少の子供 宇宙飛行士として有名になるのだった。

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