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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
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24 (熱核ロケットエンジン)〇

 1973年7月…アメリカ ケネディ宇宙センター。

 左右に2機のプロペラエンジンを搭載した1機の機体が エンジンを縦方向に向けて プロペラの出力を上げ、垂直離陸をする。

 そして 高度を稼げた所で プロペラ機は エンジンを前に向けて真っすぐ飛行をし始めた。

「おおっ…前回より随分と速いな…」

 ナオ(オレ)が飛んで行くプロペラ機を見つつ言う。

 エンジンの向きを変える事でヘリコプターとプロペラ機の特徴を持ったティルトローター機、名前は XV-22オスプレイだ。

 オスプレイの初飛行は1989年…正式な運用開始が 2007年6月だが 今回は かなり早い。

 まぁ 予算の問題で 長らくプロジェクトが進まなかったと言うだけで、エアトラと言う前例と トニー王国の エアトラに対抗すると言うモチベーションを付ければ、意外と早く作れるらしい…。

 と言ってもまさか、エアトラを撃墜するとは 思わなかったが…。

 やっぱり、前回は 予算の削減で有能な技術者達を遊ばせて いたみたいだ。

 とは言え、ティルトローター機の難関は ここから…エンジンの傾きで常に変わる空力特性を瞬時に把握し、パイロットの入力に対して コンピューターが微調整して機体に伝えるフライ バイ ワイヤ技術の蓄積が必要になって来る。

 既に最新の戦闘機や民間機だとコンコルド辺りで使われている技術だが、まだまだ洗練とは程遠い。

 と言うか、こっちも エアトラのAIである コパイが 機体の操作を 学習するまで 何度も墜落したからな。

 で、別の場所では 小さなスペースシャトルが組み上がっている。

 前回のスペースシャトルと比べて サイズが かなり小さく、エアトラに比べれば まだまだ大きいが、相当な 設計変更が あった見たいだ。

 スペースシャトルのエンジンは 液体水素と液体酸素の液体ロケットエンジンで、史実通り大型のロケットに取り付けて空に飛ばすが、そのロケットのサイズも かなり小さくなっている。

 こちらの NASA的に小型であるエアトラを宇宙に上げた事で、宇宙に持ち込める燃料と重量が正確に決まり、更に宇宙で推進剤の補給が出来る為、地球から持ち込む 燃料の量も減らして重量を削減…。

 で、その重量を持ち上げる為の燃料も削減出来た事で、サイズを大幅に下げる事が出来た…当然だが コストも大幅に安く出来る。

 今まで そのロケットの大きさ 故に専用の電車でゆっくりと運搬しなければ ならなかった所、このサイズにした事で 大型トラックでの輸送が可能になった。

 それは スペースシャトルに掛かるコストを下げ、スペースシャトルを打ち切り宇宙開拓が中止になった理由…コスト問題を大きく改善しつつある。

「今回は 打ち切りにならないと良いのだけど…」

 トニー王国を建国した 宇宙人の存在と証拠を示したお陰で 宇宙開発へのモチベーションも順調。

 ただ、アメリカの次の目標は火星らしい…こんなに苦労してギリギリの綱渡りをして月に行ったと言うのに、国民は既に月に目新しさを感じなくなった から らしい…まぁ月の開拓はトニー王国が始めているからな。

 で、月なら ともかく、火星となると片道で9ヵ月、滞在期間と帰りを計算すると おおよそ 20ヵ月程 掛かる。

 だが これは 推進剤を最小限にする軌道を取った場合で、宇宙で燃料を大量に補給出来る様になれば、片道1ヵ月程度に短縮可能だ。


「おっやってる やってる…。」

 ケネディ宇宙センターの敷地の片隅では この無茶を通すために必要な 新しいロケットエンジンの開発が進んでいる。

 熱核ロケットエンジン…制御された 核爆発の爆発力をロケットの推進剤にしようと言う かなり ぶっとんだ計画だ。

 ただ これは 核爆発を連続して制御する都合上、技術的、政治的に困難…。

 なので、原子炉の熱で 推進剤である液体水素を 膨張させ、水素を推進剤にする方法で開発が始まった。

 これなら 火星と地球を1ヵ月以内に行って帰って来れるし、宇宙で水素の補給も出来る…推進器の技術としては非常に効率が良く、このロケット技術は トニー王国に とっても スペースコロニーを移動させる為に必須の推進機関になる為、かなり期待していて、トニー王国からも 資金援助はしていないが その代わりに 多額の価値を持つ 宇宙のデータと 面倒な計算処理の肩代わりを提供している…で、今はそのテストだ。

「調子はどうだ?」

 オレは現場のスタッフに聞く。

「おっナオ…順調ですよ。

 これも、強度なんかの最適化計算をトニー王国にして貰ったお陰です。」

「こっちは 理論としては あっても、運用規模の問題で作れなかった エンジンだ…期待している…このエンジンさえ あれば、おおよその重量問題は 解決されるからな。」

 今までは 大きな出力を生み出すには燃料の量を増やすしか無く、それを上げる為の重量も増えてしまうと言う悪循環が発生していた。

 ただ、このエンジンだと推力が凄まじい為、搭載燃料を大幅に減らせ、その重量も持ち上げる為の推力も少なくて済む 好循環が発生する。

「退避を確認…行きますよ…カウント、3、2、1、燃焼試験 スタート!」

 今までのロケットとは 比較にならない程の熱量と推力が 比較的小型な この推進器から生み出され、辺りは 爆音に包まれる。

 前回 宇宙開発予算の縮小で研究が打ち切られ、失われた ロストテクノロジー。

 ここで推進機関を開発してしまわないと、後に核アレルギーを発症する各国のせいで、熱核推進の研究は 2050年の大戦後の再開まで停滞する事となる…それは 宇宙開発に とっては非常に致命的な事だ。

 何としても モチベーションを維持させ続けないとないと…。

「次は…宇宙ステーションかな?」

 最低でも宇宙開発には 3機の宇宙ステーションが必要になる。

 既に基礎理論は 出来ているので後は タイミングの問題だったが…そろそろ良いかも知れない。

 オレは無事に燃焼試験が終わった所を見届け、次の計画を経てる為にトニー王国へと戻るのだった。

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