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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
273/339

16 (簡単で非常に困難な要求)〇

 ジョンソン宇宙センター 管制局。

「はぁ…取りあえず これで時間を稼げたな…。

 アポロ クルーに伝えろ…『当分の危機は回避した…ゆっくり問題を解決して行こう』と」

 主任管制官()が言う。

「了解…こちらヒューストン…当分の危機は回避した…。

 だが、キミ達が帰還するには問題が山積みだ。

 これから ゆっくり問題を解決して行こう」

「主任…」

「今度は なんだ!?」

 ストレスのせいか 私は 多少声を荒げて言う。

「クラウド商会から電話です…。」

「クラウド商会?トニー王国の?」

「ええ…姉島宇宙港の責任者が 主任管制官と話したいと…。

 彼は『こちらには支援の手があるが、時間によっては間に合わなくなる。』と言って来ています。」

「トニー王国に救援か…彼らに任せる方が確実なのだろうが、問題がある。

 我が国のプライドが許すかだ。

 宇宙開発の技術同盟を結んでいるとは言え、彼らの国は 仮想敵国だ。」

「ええ…なので、満身創痍(まんしんそうい)状態の13号をアポロクルーが操作して 無事 地球に帰還させるか、例え 失敗しても 宇宙開拓の偉大な犠牲者として、豪華な葬式をする事で国民の感情に訴える事が望ましいと…大統領から」

「確かに その方が我が国のプライドは傷つかないが、アポロクルーは 高確率で死ぬ。

 帰還 出来れば 歴史的な偉業となるが…私は彼らの生還に必要な手は 全部打つ…クラウド商会と電話で連絡を取りたい。」

「分かりました…スケジュールを組みます。」

「頼む」


 クラウド商会ボストン支店。

 黒電話のベルがなったのと同時にナオ(オレ)は素早く受話器を取り 電話に出る。

「こちら クラウド商会ボストン支店…姉島宇宙港の責任者…ナオ・マキナだ。」

『主席管制官のジーン・クランツだ…。

 その名前はトップシークレットになっているが 私は知っている。

 月でのファーストコンタクトの事も』

「なら話は早い…13号は酸素タンクが爆発…。

 酸素の消失と電源の喪失…乗員は月着陸船に避難。

 ここまでは間違いないな?」

『ああ…いや、何故 キミが酸素タンクの爆発を知っている…まだテレビに公開していない情報だ。

 まさか…キミが仕組んだのか?』

「いや…13号を爆散させるには そこが一番だと思ったから…。

 月の到着 目前で燃料タンクが爆発…乗員は爆散して死亡…しかも不吉な番号である13番…これが起これば 宇宙開発予算の大規模な縮小が始まり、ベトナムで戦っている戦友達の武器の予算が増える」

 オレは机の上で重なっている書類の束をペラペラと めくり ながら言う。

『まさか、これが 破壊工作だと…』

「さぁな…こちらが(つか)んでいる情報では 怪しいが証拠不十分で 濃いグレー。

 爆発した部分は 大気圏再突入前に切り離されて 宇宙を漂う事になる…事実は 如何(どう)あれ、これは事故で片付けられるな」

『分かった…取りあえず そちらの要望を聞こう。

 まずは この救出ミッションに いくら掛かる?』

 救出 予算か…事前に かも知れないのレベルでトニー王国政府に伝えているが…これはオレの裁量で決めちまって良いな。

 オレは即座に消耗品から救出金額を はじき出す。

「1人1億…3人だから合計で3億…」

「クルーを安全に降ろすには それしか手が無いとは言え、ぼったくりじゃないのか?3億ドルなんて…」

「いや…3億トニーだよ」

「なっ?ドルじゃなくトニー?今度は安すぎる…何が目的だ!」

「こっちは 働いている人間 その物が 少ないから その分 人件費も削減 出来る。

 これでも ふっかけてる方だよ…支払いの3億トニーは 貿易品をトニー王国に輸出する事で返してくれ。」

 アメリカ側にトニーで貸しを造れれば、そのトニーの返済と共に 今は まだ

少ない両国の貿易の数も増えて来るだろう。

『分かった…それで、こちらは 何を用意すれば良い?』

「まずは土地だ。

 ケネディ宇宙センターの敷地の何処(どこ)かで マスコミが見に来れる場所…サイズは最低 300m四方の土地を借りたい。

 地面は おおよそ平らで、排気熱で草が燃えなければ着地 出来る場所。」

 現場には エアトラを数機と簡易メンテが出来る施設と人員が必要だ。

 まぁケネディ宇宙センターは ロケットを打ち上げる都合上、土地面積は非常に広い…この要求は簡単に通るだろう。

『その点は 問題無い…他には あるか?』

「オレが アポロ13号の帰還計画に 口を挟める様な権限を与える事。

 こちらの意見を無視して NASAだけで やられたら こちらでは 回収仕様がない。」

『それは こちらも理解している…なのでキミをアドバイザーとして この計画に関わらせる つもりだ。』

「で、最後…これが一番 重要な条件だ。

 クルーを回収した後、こちらのエアトラ内で 広報用の撮影をして貰う。

 こちらが救助に出す 黒人宇宙飛行士と女性宇宙飛行士の前で、救出に感謝して 立派な宇宙飛行士だと彼らの地位を認める発言をして欲しい。」

『……それが一番 難しい要求だ。

 我が国は 表向きは人種や性別に関係無く平等だが、キミも知っての通り 実際には 平等では無い。

 女が 力で男に敵わない様に、人種にも得意、不得意があるとされている…。

 例え実際には 優秀でも 現場では 適正と言う名目で排除される…この条件は 大統領も認めないだろう。』

「それは理解している…。

 だが、その価値基準を修正する切っ掛けを作る為の要求だ。

 今後 白人と黒人の混血が増えてグレーゾーンが増えて行った場合、他人の気分次第で 黒人か白人を区別するようになるだろう。

 実際、オレから見るとアメリカ人の肌は思ったほど白くない…場合によっては有色人種に見える事もある。

 両者に 明確な色の境界が 無く、それに 人種、性別の能力差があったとしても 機械で補える…車より早く走れる人間は 存在しないだろう?」

『確かに そうだが…。

 よし、広報の内容以外は 全面的に受け入れる。

 広報も そちらの意見に そえる様に努力はする…今の所は それで良いか?』

 結論が出ずにタイムアップか…。

「取り合えずは…13号が帰還ルートに乗った後で また交渉し 話を詰めよう…今は とにかく時間が惜しい。

 オレは エアトラで ジョンソン宇宙センターに向かう。

 ここからだと 3000kmも距離があるから半日は 普通に掛かるかな。

 姉島宇宙港とトニー王国から ケネディ宇宙センターに最速で機材を回して おおよそ半日…。

 後、推進剤 補給用の潜水艦が浮上状態で バナナ川に入るから 撃墜しない様に言ってくれ」

「分かった…現場に話を通しておくから そちらの裁量でやってくれ…こちらも忙しくてな…では…ジョンソン宇宙センターで待ってる。」

「ああ」

 オレがそう言うと通話が切れた。

「それにしても、やけに黒人と女の肩を持つんだな。」

 受話器を置いた所で クラウドが言う。

「向こうが白人を優遇しているから こっちが バランスを取っているだけだよ。

 ケベック商会の時だって『黒人は白人より劣っている』って言う俗説を検証したかった だけだし、今回のだって正当に能力で評価して欲しいだけさ…。

 さっ…燃料を積んだら ジョンソン宇宙センターに行こう」

 既に姉島宇宙港とトニー王国からのエアトラが こちらを目指して飛んで来ている。

 事前に準備していたと言う事もあり、荷物を既に積んであるエアトラに最後の荷物であるオレ達が乗り込み離陸し、ジョンソン宇宙センターを目指した。

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