15 (意図的な うっかりミス)〇
1970年4月11日、ケネディ宇宙センター。
ナオ達が見送る中 ロケットが打ち上がり、1970年4月11日 アメリカ時間で13時13分に アポロ13号はサターンV ロケットで宇宙に旅立った。
乗組員はラヴェル、スワイガート、ヘイズの3人だ。
マスコミや住民達は 今回で3回目であるマンネリ化した 月面着陸で早くも コンテンツ離れが進み、国民は 興味を示さなくなって来ていて 見物人も少ない…ただ彼らの家族は ちゃんと来ている。
アメリカは ロケット開発に多額の予算を付けており、ベトナムに弱い者いじめに行き、今、返り討ちになっていて アメリカ軍の軍事予算は一向に増えない。
その為、アポロ14号で月面着陸は 終わりにして 軍事予算に割り当てる計画が持ち上がっていて、今後の宇宙開発も危うい状態だ。
「ナオは ロケットの発射に毎回来ているな。」
オレの隣でロケットを見ているクラウドが言う。
「まぁ…オレは 2週目の人生だからな…大きなイベントには必ず出ないと。
それに…13号はな…」
オレは もう そろそろ見えなくなるサターンⅤロケットを見て言う。
「まさか事故が起きるのか?」
「そう…酸素タンクが爆発してね…それで皆で必死で地球に帰す事になる。
ただ…今回も酸素タンクが爆発した場合、偶然じゃなくて意図的な可能性が高い。」
オレの経験則だが 歴史改変の傾向的に うっかりミスの場合は確率が 分散して ミス箇所が変わる事が多く、ミス箇所が同じなら 強い意志が働いた事になり、意図的に起こした可能性が高くなる。
「破壊工作だって事か?まさか大統領を暗殺しようと した連中か?」
「確定じゃないけどね…一応、姉島宇宙港には 事故が起きた時のバックアップの準備もさせているけど…これは 多分起きるな…13号を爆散させて 宇宙開発の予算を削りに」
「何というか、アメリカには マンパワーは 十分に あるんだから、金を発行して どっちにも振り分けすれば 良いのに…」
「予算は限られているって言う思い込みがあるからな。
この点はソ連の方が優秀…ソ連は 金が無くても技術者が余っていれば、物を生産出来る事を知っているからな…だから あの国は強い。
さぁ…こちらも もしもに備えて準備しよう。」
オレはクラウドにそう言い、今の滞在先である クラウド商会に戻るのだった。
打ち上げから3日後…月まで後 半日の距離。
「こちら オデッセイ(13号の司令船) トラブルだ…アラートが沢山つき初めている…酸素減少…窓からガスの噴射を確認している これは計器の故障じゃ無いぞ」
ラヴェルが言う。
「如何なってる…こんなのマニュアルに無い…ヒューストン…早く対処しないと俺達は漂流だ。」
ヘイズが言う。
「オレが 第2タンクの攪拌機のスイッチを入れた時に爆発した…だが、撹拌機のスイッチで爆発が起きるのか?」
スワイガートがイラつき ながら問題に対処している。
『………対応が決まった。
前代未聞のトラブルが多過ぎた為、月面着陸は中止だ。
その代わりに キミ達は この絶望的な状況を乗り越えて 生きて地球に帰ると言う 月面着陸より難易度が高いサバイバル ミッションをする事になった。』
「はぁ…了解した…月面着陸を中止し、次のミッションに備える。
指示をくれ」
私が地球の管制に言う。
『まずは 残り15分以内に 月着陸船に避難する…着陸船が救命ボートだ。
最短の手順で 着陸船を起動させてくれ』
「了解した…よし 何としても 生き残るぞ!」
そう私は 汗をかきながら仲間達を鼓舞するのだった。
クラウド商会 ボストン支店。
『緊急速報です。
月面着陸に向かった アポロ13号ですが、航行中に致命的なトラブルが発生し、月面着陸を中止…現在 対応中です。
詳しい機体の情報が入り次第、お知らせします。』
オレがテレビを見ていると 画面が切り替わり アナウンサーが言う。
「ほら来た…ヒューストンに連絡だ。」
ナオが言いながら、固定電話を使い テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターに電話を掛ける…アポロ13号の管制は ここでやっている。
とは言え 当然ながらオレ達は一般人だ…直通回線がある訳じゃない。
「こちらクラウド商会…そちらは ジョンソン宇宙センターか?
ああ…オレはナオ…ナオ・マキナ…姉島宇宙港の責任者だ。
NASAに伝えてくれ…主席管制官かな…『支援が必要なのか現場のトップと話し合いたい。
こちらには支援の手があるが、時間によっては間に合わなくなる。』
今の言葉を伝えてくれ…こちらの電話番号は………」
電話に出た女性は、国民からの大量の電話に うんざりしている様だったが、オレの話を真面目に聞いてくれて 上に伝えてくれるとの事だ。
「さて…トップに この情報が伝わるまで 何時間かかるな…向こうは漂流寸前の緊急事態だし…。」
オレは そう言い、テレビの速報を見ながら クラウド商会の固定電話が鳴り出すのを待つのだった。