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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
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11 (大統領 暗殺未遂事件)〇

 1963年11月22日金曜日。

 アメリカ合衆国テキサス州ダラス。

 道の脇に大量の群衆が集まっており、辺りは非常に騒がしく警備員が抑えている。

 警備車両に守られた大統領と婦人を乗せたオープンカーが低速で走って来る。

 既にオープンカーを狙える主な建物に人員を配置済み、ナオ(オレ)は群衆を押しのけ 一番可能性が高い、教科書を製造、保管をしているビルの6階に向かう。

 弾の入射角度から考えても ここがベストポイントだ。

『ワンダウン…』『ツーダウン』無線から報告が次々と聞こえて来る。

「はぁマジかよ…やっぱり他にもいたか…。

 殺してないだろうな…」

『テーザー銃です。意外と弱かったですね』

「警戒は怠るな…拘束して監視を強化しろ…。

 それにしても本当に 大統領のパレードだと言うのに やけに警備が手薄だな…おっ…いるな…交信終了」

 オレはドアを開けて ビル内に突入!!

 優秀…敵は こちらに反応して すぐにハンドガンを向けている。

 オレは 銃の射線に入らない様に横に移動をしつつ相手に近づき、両手で銃を構える相手の銃のスライドを掴み、同時にセーフティを入れてリロードボタンを押す。

 敵はトリガーを引くが 弾は発射されず、マガジンが地面に落ちる。

「なっ…」

「危ぶねーな…てかサプレッサー(サプ)付けろよ…ほいっと」

 腕を強く引っ張り、背中をヒジで軽く押すとバランスを崩して前のめりに倒れる。

「リー・ハーヴェイ・オズワルドだな…」

「何処のチームだ?調()()は既に済んでいるはずだ。」

 オレはオズワルトの手と足を結束バンドで結ぶ。

「調整ね…よし、そこで大人しくしてろ…。

 おっ…カルカノか…良い趣味しているな~」

 銃はカルカノM1891にスコープを取り付けた物…。

 600m以内の狙撃としては十分な性能を持っているライフルだ。

 ただ…サプレッサーが無い…大統領を撃ち殺して ちゃんと逃走 出来るか疑問だ。

 オレは 木製のストックに頬を付けてスコープで道路を狙う。

 近くに緑の公園があり 皆が大統領の車両に目を向けて騒いでいる。

 ただ その中、1人だけオレの位置に視線を合わせ、アメリアの国旗を掲げて風の向きの情報を狙撃手に伝えている観客がいる…多分、暗殺者の仲間だろうな…。

 旗は下に垂れ下がっていて ほぼ無風…絶好の狙撃日和だ。

「オマエ、ベトナム人か?大統領を暗殺すれば戦争が収まるとでも…」

「アンタの役割は ここに銃を持って来てくれた事で終わっている。

 後はオレが撃った責任を全部 アンタに受け持って貰うだけだ。

 名スナイパーとして歴史に名を刻めるぞ」

 とは言っても他人の銃程 使いにくい物もない。

 ブローバックしないボルトアクション式だから反動をある程度抑えられているが、木製のストックは綺麗に削られ、オズワルトの体型にマッチする様に調整されている。

 これが無改造の正規銃だったら まだ良いんだが…。

 弾はクリップに収められており、換えクリップ無しの装填済み 6発。

「ゼロイン調整が必要だな」

 標的を殺す事は出来るだろうが、弾が如何(どう) 飛ぶか細かい軌道が分からない。

 ゼロイン用の標的は如何(どう)するか…。

 一発撃って弾道を見たら即、車を撃ち抜ける位置…民間人を巻き込みたくないし…おっ…大統領車両のボンネットの横にも 小さな国旗がある。

 カシャッ!!

「初弾装填よ~し…。」

 オレは右手内側のアナログの腕時計を見る…現在 12時29分…後1分。

 狙いは大統領車両のボンネットの横に付いている小さな国旗。

 ここからなら 多少 ズレたとしても ボンネットに当たってくれるし、目標もすぐ近くだ。

 大統領車両は時速16kmを正確に維持して移動中…等速で動いている為、非常に撃ちやすい。

 オレはカルカノのトリガーを引く…。

 撃針が6.5 mm×52 マンリッヘル-カルカノ弾の尻を叩いて弾が発射され、正確にボンネットの横の国旗を撃ち抜く。

「おおっ…ほぼ真ん中…良い銃だ。」

 僅かに弾道が上に行っているが、250m(この距離)での射撃なら問題にならないレベルだ。

 カシャッ…。

 ボルトを引いて次弾装填…射撃音に驚いて車を止めた所を撃つ!!

 弾はフロントガラスを突き抜けて運転手の鼻にヒット。

 血しぶきを上げた事で大領領と婦人が驚く。

 この場合、銃声が聞こえた瞬間にアクセルをベタ踏みして逃げるのが一番なんだが、向こうの運転手は 知ってか知らずか 等速移動を厳命されている 大統領暗殺の為の関係者だ。

 次…助手席にいる ボディガード…あっ…ボディガードの鼻を抜くと大領領婦人に当たる。

 仕方ないか…少し下を狙って ハートショット…。

 ボディガードの心臓を撃ち抜き、弾はシートに当たって後部座席に貫通せずに止まった。

「はい、ミッションコンプリートと…。」

 キャアキャアと周りが騒ぎ、大統領車両の後ろの車のボディガードが、走って後ろから飛び乗り、パニックになって夫を置いて車から飛び降りて逃げようとする大統領夫人を無理やり押さえ付けて肉の盾となる。

 オレはライフルを床に置き、オズワルドのハンドガンを取る。

 オズワルドは足を拘束して座らさせている中、ぴょんぴょんと跳ねるがオレは彼を無理やり座らせ、セーフティを外して こめかみにハンドガンを突きつける。

「えーと、この位置かな…じゃあ お疲れ~」

 オレはトリガーを絞って発砲…銃弾はオズワルドの こめかみを撃ち抜き、血しぶきを上げて 崩れる様に倒れた。

「うん…ちゃんと焦げ跡が付いたね」

 オレは至近距離で撃たれると発生する焦げ跡を確認し、オズワルドを拘束していた結束バンドを切って 死体を地面にうつ伏せに寝かせ、右手にハンドガンを握らせる。

 これで すべて コイツがやった事にして事態を丸く収められる。

『こちら暗殺者を処分…これで事件は迷宮入りになった』

 オレは無線でそう言い、すぐに その場を後にするのだった。


 ケネディ大統領、暗殺未遂事件後。

 クラウド商会 ボストン支店。

 オレはテーブル席に座りながら今朝 浮浪少年が買って来た新聞紙を広げる。

 暗殺者は大統領車両を襲った後に自殺したと言う事で片付けられ、現地の工作員はいなかった事になった。

 新聞やラジオなどの報道では ベトナム人の暗殺者が大統領を襲ったと言う事になっており、これに対してベトナムに報復するべきであると言う世論を作り出そうとしている。


 この数日後。

 ケネディ大統領が暗殺者が リー・ハーヴェイ・オズワルドである事を公開。

 彼のソ連に亡命していた経緯からソ連のスパイであるとして 国民を先導し、ソ連との核戦争を早めた。

 で、実際の所 今回の暗殺計画は、軍事複合体と化したアメリカの武器製造企業や ベトナムで活動をしている一部の好戦派軍人達が起こした事件で、今はオレが大統領にリストを渡して 組織の中の好戦派の粛清中だ。


 事件の発端は1961年5月にベトナムに自由と資本主義を強制する為にアメリカ軍の正規軍人から構成された「軍事顧問団」という名目の、アメリカ正規軍のゲリラ掃討部隊 600人が現地入りした事。

 相手は武器も文明も劣ったベトナム人。

 一方的な弱い者いじめが出来ると 信じていたアメリカ軍だったが、森林地帯での不意打ち、ベトナム人の民間人に成りすまして軍事作戦を行う便衣兵などの戦法で散々苦しめられ、このままではアメリカが負ける可能性も出て来てしまった。

 ただ、ケネディ大統領はベトナム戦争に予算を出せなかった…宇宙開発をしていたからだ。

 現在 月に行く計画の他に 火星に行く為の 熱核ロケットエンジンの開発が行われていて、それが どんどん予算を圧迫し、ベトナムからの撤退も視野に入れ始めている。

 自分達の仲間にはベトナムで多大な犠牲を出しておいて、世界最強とされるアメリカ軍が文明的に劣っているとされるベトナム人に勝てもせずに撤退…現場の兵士としては大変 不名誉な事だ。

 なので 好戦派の軍人や軍事企業は『予算さえ潤沢に付ければゲリラを掃討出来る』と主張した。

 だが、ケネディ大統領は宇宙開発に潤沢な予算を付けていてベトナムに まわせる余裕が無い。

 そこで大統領を暗殺して、宇宙開発を縮小、凍結。

 更に大統領の暗殺を ベトナムゲリラがやった事にして、ケネディ大統領の(とむら)い合戦をメディアを通じて国民を先導する事で、宇宙開発の縮小で浮いた金をベトナム戦争に積み込もうとした訳だ。

 戦争の口実の自作自演はアメリカのお遊芸だからな。

 ただ当日には (とむら)い合戦をベトナムでは無く、ソ連にする為にソ連に亡命していたオズワルドに撃たせる事に決まってしまったのだが…。

 現場の兵士達はゲリラを排除する為に予算を欲し、ケネディ大統領は周回軌道から地上への核爆撃を警戒して宇宙開発を進めようとした…どちらも正しい。

 なら何故、オレらが この暗殺を防いだのかと言えば、スペースコロニーに必要な 熱核ロケットエンジンの開発を彼らが進めてくれているからだ。

 前回では 核エンジンの技術は失われ、核エンジンで推力を稼げなかった事で予算が圧迫されて 宇宙開発が大きく後退した…オレはそれを防ぐ為に彼を生かした。

 これでトニー王国は大統領に大きな恩を着せる事が出来し、宇宙開発も大きく進む事となる。

「さて、後は大統領次第だな…姉島に帰るか…」

 オレはそう言い、エアトラで姉島へと帰るのだった。

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