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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
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06 (シミュレーター訓練)〇

 整備に操縦訓練に座学を一通り こなせるようになり、ミラー()達は 正式にトニー王国からエアトラの操縦資格を与えられた。

 実験要素の多いエアトラジェットの操縦資格は 今の所無く、実質エアトラの資格と共有になる。

 さて、次はエアトラジェットでの訓練だ。

 天井を高く設計されたシミュレーター用の倉庫では、天井まで届く巨大な球体が2台設置されている。

「さて、先日完成した ばっかのエアトラジェットのシミュレーターだ。

 コックピットのレイアウトは変えたし、実機と殆ど同じ感覚で動かせる。

 今日はこれで 高度120kmの周回軌道に言ってもらう…座学は大丈夫だよな」

「はい!」

「良い返事だ…それじゃあ、1チームごとに行くぞ。

 まずはミラーとコクラン…他は待機だ。」

 俺とコクランはパイロットスーツの姿でシミュレーターに乗り込む。

 シミュレーターは2人乗りで操縦のレイアウトは もちろん最新型で、ジョイスティックでは無く 前方にある車のハンドルを使って操作する。

 耐Gシートに座り、シリコンゴムで身体が沈みこむ中、シートベルトで身体を固定…。

 計器を確認しつつ 次々と作業手順をこなしていく。

 モニタはレーザー投影型からLEDディスプレイに代わり、エアトラジェットの倉庫の風景を映し出す。

 細部を見ると多少 角付いているし、光の当たり方も少し違和感があるが、シミュレーターとしては十分な性能だ。

『トーイングカー接続…移動開始…。』

「うおっ…」

 エアトラジェットがゆっくりと動き始める。

 今、このコックピットは 球体の内部を移動する事で 加速を再現している。

『基本操作は エアトラの時と変わらない…。

 ただ、加速Gが掛かるだけだ。

 離陸して高度1万まで上昇、速度1000…。

 後はコパイがやってくれる。』

「了解…」

『トーイングカーを外し、安全距離まで退避した。

 離陸を許可…繰り返す離陸を許可』

「離陸 許可 了解…。」

 1番、4番のターボジェットエンジンが液体水素と液体酸素を使って推力を生み、機体が浮き上がる。

 ターボジェットエンジンは低速域では燃費が悪くなる…外から十分な酸素を取り込めないからだ。

 ただ、足りない分の酸素を燃料タンクから供給する事である程度の燃費の改善が出来る。

 高度120mの安全高度まで垂直離陸をし、翼を斜めにする中間モードで失速を防ぎつつ更に加速…速度が乗って来た辺りで、翼を水平にするプロペラ機モードに切り替える…まぁこの機体にプロペラは 無いんだけど。

「指定高度、速度に到達 コパイ…後は任せる」

『了解しました』

 1番4番停止、2番3番のスクラムジェットエンジンの推力が最大…急激な加速により俺とコクランは シートに叩きつけられ、高度と速度を急激に上げて行く。

「ひっひっひっひっひっひっ…」

 この状態では 手を動かすのもキツく、機体の操作は殆ど不可能。

 俺達は手を腹の上に置いて 強く短く呼吸する耐G呼吸法で 意識を保ちつつ ひたすら加速に耐える。

 今 このコックピットは 球体の中を一秒間に何回も回る事で この加速Gを再現していて、後2分は これに耐える事になる。

 そして加速が収まる…。

『おめでとう高度120kmの周回軌道に乗った。

 まぁ無重力は再現出来ないんだけど…そこから見える光景は結構 再現 出来たかな。』

「うわあ 綺麗…」

 コクランが身体を乗り出して窓から下を見る…そこには 今までいた青い地球が見える。

 もちろん これは映像だ…本物じゃない。

 でも この為になら命を賭けて宇宙に言っても良いと思える位の光景だ。

「近いうちに 本物を見に行けるんだな。」

「ええ…行きましょう。」

『さあ…普通なら再突入まで90分は掛かるんだが、待つのが面倒だから飛ばすぞ』

 ナオがそう言うと 画面が一瞬点滅した…一見すると先ほどと変わらないが、地球の大陸の形を見ると位置が変わった事が分かる。

『さぁ…降下を始めるぞ』

 1番のターボジェットエンジンを翼の燃料タンクから液体水素と液体酸素を供給して燃焼させる事で推力を生み出し、ゆっくりと横回転を始める。

 1番を停止させて4番のターボジェットエンジンを点火…横回転を止める。

「減速シーケンスに入る。」

 機首を上に向け、1番4番のターボジェットエンジンを推力をゆっくりと上げて降下角度を調整する。

 一般的に降下する時の大気の摩擦熱で機体の温度が上昇すると言われているが、その実態は断熱圧縮…空気が機体に ぶつかり、押しつぶされる事で熱量が発生する仕組みで、車のエンジンなんかにも利用されている一般的な現象だ。

 そして水切り理論…これは水面に平たい石を投げた時にバウンドして飛んで行く現象で、降下時の空気でバウンドすると言われている。

 のだが、実際は 機体が降下した事で速度が上がってしまい 機体が落ちる速度より地平線に進む速度が勝ってしまうからだ。

 ただ、今のこの機体は 反転して加速する事で減速しているのでバウンド現象が発生しなく推力を上げれば上げる程 降下速度が速くなる。

 この機体の場合、降下角度を浅くして 地球を半周しながら目的地に降りるので 熱の上昇も抑えられ、機体の底面もダメージが少なく長持ちする。

 しばらくして大気密度が高くなり、1、4番エンジンを停止…2、3番のスクラムジェットエンジンを起動…周囲の酸素を取り込んで燃焼させる事で液体酸素の消費を大幅に節約する。

「燃料の消費量も 少ないわね…もう一回は上がれそう…。」

 コクランが俺に言う。

「減速時に燃料の消費が抑えられるのは良いな…。」

 打ち上げ時と違い、降下時は 会話が出来る位には 余裕がある。

 ヘッドアップディスプレイの高度の数字が どんどんと下がって行き、物理の計器も同じスピードで下がっている…計器異常は無し…と。

 高度計が2万を切った…速度に対して十分な大気を確保出来る。

「良し、抜けた…突入誤差を調整する…。」

 1~4番のエンジンを一旦停止し、右の翼を水平から斜めに変えて旋回をして進行方向を戻す。

 翼を水平に戻し、エンジンを再点火…ゆっくりと速度を維持したまま カーブをし、姉島宇宙港に戻る。

 目標まで100km…この速度じゃ割とすぐだ。

 すぐに小笠原諸島が見え、空中旋回をしつつ ターボジェットエンジンに変更して速度を落とし、ヘリポートに着地する。

「はい、お帰り…無理の無い 良い成績…。」

 シミュレーターから降りてきた所でナオが言う。

「それで…いつ宇宙に行けるんだ?」

「1961年の6月かな…4月にソ連が初めて有人宇宙飛行をして、5月がアメリカのマーキュリー計画のロケットが多分2番目、3番、4番がミラーとコクランで、黒人初と女性初を取る。

 ちなみに周回軌道へ投入した人類としては 初だな。」

「おおっ良いね…これで こちらが優秀だと証明出来る。」

「NASAは私を落とした事に後悔するでしょうね。」

 2人は少し笑いながら言うのだった。

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