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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 10巻 (スターマンの宇宙開拓史)
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04 (マーフィーの法則)〇

 姉島宇宙港。

 ヘリポートと格納庫がある姉島宇宙港の隣には パイロット養成の為に造られた訓練施設がある。

 とは言ってもカリキュラムは まだ模索状態で、これからパイロットと一緒に作って行く事になる。

「まずはエアトラに乗る為の座学だな。

 エアトラの構造を完璧に把握し、自分だけで メンテナンスが出来るようにする。」

 ナオ(オレ)が言う。

「えっ自分だけ…1人でですか?」

「そうだ…構造自体は サーバー接続型の小型端末であるメックを見てやれば 大丈夫で、暗記の必要もない。」

 エアトラは 複雑な機械の塊だが、高度にモジュール化している為、不具合が起きている場所を特定して そのモジュールごと交換してしまえば大丈夫だ。

 こうする事で整備の簡略化と同時にエアトラの機密も守られる。

「それじゃあ、各部品の取り外しと交換、やってみようか…」

 基本はモジュールに付いている配線を外し、周りのボルトとナットを電動ドライバーで外す事で取り出せる。

 エアトラの整備で一番の基本で 重要な作業は ボルトとナットでの固定だ。

 ボルトに滑り止めのワッシャーを入れて通し、反対側からワッシャーを入れてナットで取り付けて、ナットを持ちながら電動ドライバーでボルトを回す。

 閉まったら ボルトの穴に割りピンを差し込み、それを曲げて完成だ。

 これでボルトが落ちなくなる。

 そして それを包む装甲は 互いにフック状になっており、重ねて超強力接着剤で骨組みに固定するリベットを使わない方式だ。


「よ~し次はエアトラの命、翼の接続部分だな」

 翼は 揚力を受けて 機体を持ち上げ、更に翼が縦から横へ回転する為、エアトラ本体の上部にある翼を回転させるユニットが入っている所が 一番負荷が掛かる。

 これが固定翼機ならガッチガチに固めて強度を確保してしまえるのだが、エアトラは可変翼…。

 翼を動かしつつ、コパイが翼の角度を指定したらガッチリと止められ、強度も十分に確保すると言う 一見 矛盾した構造が必要になって来る。

 これを現時点で強度が最強の分厚い炭素繊維の歯車に カルダンジョイントを接続して 完全電子制御された大型モーターと油圧の併用で動かしている。

「前に 同じ機構を搭載した トニー王国の無人戦闘機で判明した事だが、この接続部分を損傷すると両翼がすっぽ抜けて後ろに飛んでってしまい、無人戦闘機が墜落した。

 その為、その後の改修機には 両翼の翼は独立して動き、片翼が飛んで行っても もう片翼で 軟着陸出来る様になり、より固定翼に出来ないアクロバティックな機動が出来る様になったんだが、翼の角度の同期機構が 狂うと空力特性が変わり 墜落するリスクが増えた…ここがエアトラの命で弱点だ。

 後で この組んだ機体に 自分で乗って貰うからな~…ちゃんと整備しろよ。」

 新しい機体が組み上がり、試験飛行をして見る…機体のAIのコパイが文句を言って来ないし、問題は無いだろう。


 次は 飛行機を乗るには 当たり前の飛行高度や方角、燃料の計算などの航法一式。

 これは皆がプロペラ機に乗っているだけあって、やり方に そこまで違いはない。

 ただ、トニー王国では 高度の単位が『フィート』ではなく『メートル』で、燃料もポンドではなく㎏が使われる。

 その為、次のエアトラのフライトシミュレーターで、度々計算を間違えるトラブルが発生している。


 訓練施設には この時代では絶対に見ない 高度なフライトシミュレーターがあり、中に入ってみると エアトラのコックピットが完全に再現されている。

 天井に取り付けられたレーザープロジェクターにより、前面の白く丸い壁に映し出される仕組みだ。

 今はオレが右の機長席に座り、左の副操縦席にはヘルメットにジャージ姿のミラーが座ってエアトラを動かしている。

 まずパイロット達が驚くのは、そのシンプルさ。

 計器は アナログの高度計と速度計、燃料計が、左右と真ん中の3つずつ あるだけ…。

 それも通常時は 前に取り付けられているヘッドアップディスプレイに表示されるので、パイロットは前だけ見て操縦していれば良い。

「やっぱり メートルだと離発着の感覚に誤差が出るな。」

 ミラー達は 離陸から安定飛行までし、そして旋回して空港まで戻って着陸するまでの作業を一周とし、コパイを挟まない完全マニュアル操作で 交代しながら何周も ひたすら繰り返している。

 まずは 機体を壊さず持って帰る事…飛行機の基本中の基本だ。

 ミラー達の操作は 多少 おぼつかないが、今の所 垂直状態にした時にセットリングを発生してしまい、勢い良く着地したせいで タイヤがパンクした位だ。

 この訓練の目的は あえて完全マニュアル操作で飛行をさせて この機体の空力制御の難しさを理解されて墜落させる事で『あ~機械のアシストが無いとダメだな~』と思わせる事にある。

 それが全然 落ちないんだから…。

「とは言っても、ちゃんと着陸 出来ているじゃないか…。」

「そりゃあ、俺達は 実機で離発着の訓練をひたすら してたんだ。

 事故れば簡単に死ぬし、現に俺の同僚も何人も死んでいる。

 エアトラは機体が過敏で気を使うが、気になるのはセットリング位で、オーバーランも失速も気にしないで ゆっくりと旋回して減速が出来る。

 ヘッドアップディスプレイに必要な情報は表示されているし、余程の事が起きない限り全損する様な墜落は ないかな…」

 この機体は完全電子制御の為、ごちゃごちゃした スイッチ類は無く すべての情報は目の前のヘッドアップディスプレイに表示される。

 操作するのは 操縦桿2本と足のべダルが左右合計で4本、推力レバーが真ん中に2本、後は翼の可変用レバーがあり、ヘリモード、中間モード、プロペラ機モードの3種類のモードにし、レバーを動かす事で切り替えられる。

 なので電源ボタンなどを含めても ボタン数が かなり少ない。

 今はマニュアル操作だが、通常なら こちら操作にコパイが状況を見て細かく調整を掛けてくれるシステムの為、フライトゲーム(エスコン)の様な感覚で操縦出来る…。

 実際、これを元にしたテレビゲームでは10才の子供でも運転 出来る訳だから 子供でも短期間で運転出来る様になるだろう。

「何か改善して欲しい点は?」

「遊びが少ない?機体が操作に過敏過ぎる気がするが、操作がシンプルなのは 素直に有難い。

 しいて言うなら ジョイスティックの位置だな…機長席は右側だから良いが、こっちだと 左手で持つから扱いづらい。

 出来れば 車のハンドル見たいにして欲しいな。」

 この機体のコックピットデザインはジェット戦闘機が元になっていて、右にジョイスティック、左にエンジン出力調整用のレバーだ。

 ただ、副操縦席になると位置が逆になってしまい、多少扱い難くなる…。

 まぁ戦闘機動で飛ばす訳じゃないから、業務に支障が出ないレベルなのだが…。

「ハンドルか…レイアウトを変えてみるか…。」

 操縦桿や推力レバーによる出力は 電気信号を送受信するだけのシステムであり、ゲームのコントローラーと大差ない…プラグを再接続して固定し直す位の手間だ。

 まぁこれは次の訓練からかな。


「それじゃあ 次はコパイのアシストを使って飛行して見るよ。

 驚く程 扱いやすくなるから逆に気を付けて」

「えっ機体にブレが無い…暴れていた機体がスムーズに動く…こんなに変わるものなの?」

 ヘルメットを被りジャージ姿のコクランが言う。

「そっ…AIは あの位 過敏の方が操作しやすいんだ。

 だから…操作貰うぞ、っと…」

 機体を横に回転させるバレルロール…機種を上げて減速するコブラ機動…更に左右の急旋回…戦闘機の様な軌道を次々とやって行く。

 ただ このシミュレーターは動かず 加速Gが発生しないので、パイロットに負荷は無い。

「こうやって簡単な操作で 戦闘機みたいな機動が取れる訳だが、コパイが風量や風向きから 翼のフラップや角度を左右で変えたり、左右のエンジンの出力を調整したりと言った事を同時に一瞬でやってくれるから こんな芸当が普通に出来る。

 これを人の手でやった場合、確実に墜落する。

 だから緊急時程、コパイに任せろ…その方が圧倒的に生存率が高い。」

「機械に任せきりって…それは 本当に空を飛んでるって言うの?」

「飛行機を使っている時点で機械に頼ってるさ、ただ その割合が増えただけ…。

 道具を一切使わない全裸の人間は弱くて何も出来ないからな。」

「それは…言っている事は 分かりますが…。」

「地上はともかく、空は人が適用していない環境…息も難しいし、何より凄く寒い。

 それはコクラン自身の肌で実感しているはず…」

「それは…はい…」

 小型プロペラ機の巡航高度 3000mでも地上の温度と比べて18℃も低く、氷点下に行く事は 当たり前で防寒着が無いと凍死する世界だ。

「宇宙は 空気が無く気圧が0…。

 生身で外に出れば 身体中の空気が口と鼻から抜けて、身体の水分が蒸発して行く…しかも宇宙の温度は-270℃だ。

 まぁ周りに熱を伝える空気が無いから、それ程 寒さを感じないだろうが、太陽からの熱線で高温にさらされるかも しれない。

 意識を失うまで30秒…一応 数分以内なら蘇生が可能らしいけど、酸素不足によって脳障害が起きるかも しれない。

 そんな所に行こうとするなら、機械に頼るしかないだろ…。」

 コクランはコクリと頷く。

 宇宙飛行士はエリート職だ…空軍パイロットが多く、自分の操縦テクニックに誇りを持っている。

 だから自分の腕で宇宙船を操縦士し、致命的な手順ミスでコンピューターをフリーズさせ、地上のエンジニアが 死にかけた宇宙船を如何(どう)にか帰還させる訳だ。

 で、エンジニアは称賛される事はなく 真面に仕事をしない無能な宇宙飛行士が称賛されると…そんなのオレはゴメンだ。

「皆も良いか! 決して自分の腕を信用するな!!

 信用するなら この機械を…整備したエンジニアを信用しろ。

 人は必ず間違いを起こす…指示通り全部実行できる 完璧なパイロットなんて存在しない事を良く覚えておけ!!」

 オレはパイロット達に厳しく言うのだった。

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