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20 (移民侵略)〇

 1951年。(終戦から5年)

 外交島、役所、会議室。

 トニー王国祭が終わり、皆がエアトラや潜水艦で母国に帰る中、ナオ(オレ)達は、役所の会議室に集まっていた。

 外交島の都市長 ユリンが席に座り、続いて次々と彼女の側近たちが座って行く。

 その中に1席の空席がある…先日、天寿を全うし死去した 都市長補佐のバートの席だ。

 そして、その隣には 久しぶりに呼ばれた オレが座っている。

 ここ50年程 トニー王国の内政は 完璧に任せきりで良く、オレは姉島宇宙港で 好き勝手 エアトラの開発が出来ている。

 ユリンは まだ20と若いが、都市長歴 5年の非常に優秀な都市長だ。

 彼女は テキパキと役員達の話を聞き、即断 即決をして行く。

 例え、政策が間違ってても即決して実行した方が良い…。

 運用して見て間違いだと分かれば、すぐに問題を洗い出して 修正してしまえば良いからだ。

 そんなバートのやり方は、義理の孫であるユリンにも しっかりと受け継がれている。

 だが、ここに来てオレの招集だ…自分達の手に負えない問題が発生したのだろう。

「さて、トニー王国の本島の人口が やっと200万人を超えましたわ。

 これは ナオの指示だった はずですわよね。」

「ああ…良く頑張ってくれた。」

 トニー王国は元々 奴隷と原住民の集まりの国家で、最初の人数は僅か200人程度…。

 それが この250年で 移民を入れつつ、人口が1万倍にも増えた訳だ。

 ここまで増やせたのは、規制を最低限にして 性に明るい雰囲気を作り、経済を安定させて子供を産みやすくし、その産まれた子供も 政府が全員 育てる方針にした事で気軽に産めるようにした。

 それでも、娯楽が増えた事で生涯 出生数が減り、移民や人工子宮なんかも駆使しても この数字だ…結構 頑張った方だろう。

「そこで、これからの方針を決めますわ。

 人口を増やすか、現状維持…ナオは どちらが良いと思いますか?」

「う~ん…人口ピラミッドは?」

「こちらです。」

 オレは 専門家からグラフが書かれた書類を受け取る。

 ピラミッドの形状は山型…つまり、若い人程 人口が増え、歳をとるにつれて 人口が減っている形だ。

「確かに これは 改善が必要だな。

 良い国って言うのは コップ型…。

 つまり、毎年 同じ人数の子供が産まれ、80歳位で減り始めて100歳位で0 これが理想。

 人口が増え続けたら 老人だらけになって若者の負担が増大するし、逆に若者が多ければ 問題が少なくなるが、今度は経験を積んだ優秀な技術者がいなくなる。

 増え過ぎた老人を処刑して人口調整するつもりがないなら、出生数をコントロールするしかない。」

「人工子宮で年間の出生数を増やしていますから、不可能な数字ではないですね。」

「となると…出産を許可制にして、避妊の教育をする必要が出てきますわね。」

「まぁ…性欲は止められないからな…。」

 コンドーム…人類の人口爆発を阻止した非常に優秀な発明であり、少子化の原因を作った原因でもある。

 今までは 人口をひたすら増やす為、あえて教えて無かったが、これからは飽食の時代。

 無制限に人口を増やして行ったら国民の胃袋を支えられ無くなり 国が亡びる事になる。

「だが、ユリン都市長…この考え自体は 前から有ったはずだ。

 なら何故、人口を増やそうと考えている?」

「このまま人口を無制限に増やして、トニー王国の思想を持った国民を安価な労働力を持つ移民として世界各国に ばら撒きますわ。

 彼女らは そこで子を産み、人数がどんどん増えて行きます…。

 そして、相手国の人口の3分の1位をトニー王国の思想を持った 移民にしてしまえば、こちらの思想に合った議員を当選させ、相手国をトニー王国の文化に染め上げる事が出来ますわ。

 これは 相手が民主主義を行っている以上、避けるすべは ありません。」

「うわっえげつな…移民侵略か…。」

 主に人口が10億人もいる中国が使っていた手で、余剰の人口を世界中に送り付け、各国から技術を吸収して本国に送り、パクリ製品を安価に作って相手国に売りつけ 市場を破壊…。

 現地で移民が困窮すれば、犯罪を起こして警察のリソースを削れ、移民の数が増えて行けば 移民に有利な政策を行う議員を当選させて、更なる追加人員を中国から連れて来る。

 そうなると 多数の意見である中国人に従った政策が行われ…例え それが出来なくても、議会を妨害し続けて停滞さえ させてしまえば、即断即決が可能な一党独裁国家が非常に有利な状況に出来る。

 で、これを続けて行けば、中国に逆らえない傀儡(かいらい)国家の誕生だ。

 ちなみに前の周回の日本では、バブル景気に安価な労働力として大量の中国移民を入れた事で、中国とアメリカに従い自分の利益を最大化する腐った政府が出来上がり、公用語から日本語が使われ無くなって行った。

「戦略としては非常に優秀…。

 だけど、移民になった連中が ボロボロの状態になって、まともに生きて行けないだろ…。」

「いいえ、彼らはトニー王国 国民…。

 一度根付いてしまえば こちらのバックアップで 資金を投入し、相手国の市場を乗っ取る事も不可能じゃありませんわ。

 そうなれば、移民達は金持ちになれます。」

「こんな感じで、意見が2つに割れまして…。

 神であるナオに今後の方針を決めて頂きたく…。」

 役員の1人が言う。

「う~ん…よし、200万人で調整で…。

 こちらは 他国の市場を攻撃して 勝つ必要はない…負けなければ 良いだけだからな。

 上手く移民や出生数をコントロールしつつ、すべての世代の人口を一定に保ってくれ。

 こちらは 少数で効率の良い国を作って行く…。

 その方が管理しやすいし、問題も起きにくい。

 それに 例え こっちが移民侵略をしても、中国には絶対に数で負けるからな。」

 3人いれば 意見が違って来る様に人口が多ければ多い程、国民の意見が政府に反映され無くなって行く…。

 1億人の国の1日のすべてのデータを個人が把握するには 年単位の時間が掛かり、全部を見て適切な対応が取れないので、本人が見える範囲のデータを基準に判断してしまう…これが政治が腐敗する原因だ。

 結局、人 1人が制御出来る人数は 20万人が限界…。

 数が少なければ 国民からの話も聞きやすくなり、その分 対応も し易くなる。

 この国が一見 時代遅れに見える封建制を採用しているのも それが理由だ。

「はぁ…分かりました…そちらの方向で話を詰めましょう」

 ユリン多少不満がありそうな顔をしているが、渋々了承してくれる。

 自分が信じている意見を曲げるのは非常に難しい…それが統治者としての資質だ。

 その後はスムーズに話が進み、おおよそ の方針が決まった。

 後はやってみて それに合わせて修正していけば良い。


「それでは、本日の会議は終わります…お疲れ様でした。」

「お疲れ様~」

 役員が立ち上がり、会議室から去っていく…。

「あ~ナオ…。

 まだ テスト前ですが、新しいパイロットスーツが出来ましたよ。

 これで宇宙にも行けます…研究島の方に行ってください」

 エアートラック社の役員が言う。

「あ~シリコン内蔵のか?

 と言うか本島じゃなくて研究島?技術流出は良いのか?」

「一応セキュリティは 高めにしてありますが、最悪技術流出しても構いません。」

「分かった…後で 寄るよ…性能テストに1週間は掛かるかな。」

「真空チャンバーも ちゃんとありますので、自由にテストして見て下さい。」

「分かった…それじゃあ」

 オレは役員にそう言うと、離島を飛ぶエアトラに乗る為 ヘリポートへと向かった。

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