表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/339

19 (核実験)〇

 最終日…射爆島…上空。

「右側の窓をご覧ください…。」

 ヘリモードで空中に留まっているエアトラの機内でマイクが言うと、乗客が右に行き、エアトラの重量バランスが変わって右側に傾き、エアトラのAIコパイがすぐに傾きに調整を掛けて飛行を続ける。

 射爆島はトニー王国の小さな離れ島の1つで、兵器のテストに使われている島だ。

 島は平らな草原で 中心には 木造やレンガの家や畑が広がっており、家の周辺には何故か()()()()()()やマネキンがいる。

「猿しかいないが…ここには 人は住んでいるのか?」

「これは 実験用のダミーの町です。

 家は各国の大工に頼んで建てて貰いました。

 後で目的を聞いてブチ切れらたらしいのですが…結構 町の再現は出来ていると思います。

 では退避します。」

 マイクがそう言うと機体が傾いて射爆島から次々とエアトラが離れて行く…あれは俺達と同じ核爆発を見に来た同業者だろうか?

 海上の潜水艦から打ち上げられた赤と青に塗装された6機の無人戦闘機が、空中で明らかに人の動きではないマニューバーを使い、ドッグファイトをしている。

「防衛側の味方が青…攻撃側の赤が敵ですね。

 赤の戦闘機の1機には核ミサイルを搭載しています。

 今はそれを青の機体が阻止している所です。」

 無人戦闘機は 左右の翼の下にジェットエンジンをぶら下げており、その可動式の翼の向きを自由に変える事で、急旋回などの人外な機動が取れる。

 戦闘機の底面には、可動式の機関銃が内蔵されており、色同士でチームを組み、機関銃で撃ちあっている。

「おっ…赤が1機落とされましたね。」

 赤の戦闘機が 青の戦闘機の機関銃から放たれた青いペイント弾を受けて、海面の潜水艦に戻る。

 青の守りが堅いのか、1機、また1機と赤の機体が確実に落とされて行く…青の損失は今の所ない…。

「あらら…学習AIの性能は同じはずなんですけど…ちゃんと撃てるかな。」

 マイクが言う…ん?あ~なるほど…。

 赤は戦闘機を犠牲にする事で 核ミサイル無人戦闘機の針路を確保し、戦闘機の間の僅かな隙間を通り抜けてスピードを上げる。

 これは 命が無い機械だから出来る芸当だな。

「おっ抜いた…皆さん来ますよ…」

 核ミサイル無人戦闘機が 町の中心の×の看板に向けて速度を上げる…ミサイルが機体から外れない…カミカゼか!

 赤い無人戦闘機は×の看板に突っ込み、核ミサイルが爆発!!

 核爆発による熱で周囲の酸素を消費尽くし、熱による急激な空気の膨張が突風となって、エアトラ達を襲う。

「うっ…」

 ガタガタと揺れる機内で 乗員の俺達は 近くの席のふちを必死に掴み、通常なら機体が横転して墜落しそうな状況で、パイロット達は 巧みに風に乗って姿勢を維持し続けている。

 そして ある程度 時間が経って爆発が終わったのか 機体が安定し始めた。

「いやっ凄いですね…少し威力が高過ぎでは?」

 マイクが苦笑いしながら言う。

 窓から外を見ると他の見物人を乗せているエアトラ達も無事だ。

 射爆島の町は いくらか原型を残しつつも消し飛び、上空にはキノコ雲が上がっている。

 ただ、通常の原爆ならキノコ雲が成層圏まで広がるのだが、威力が低い為かキノコ雲の高度が低い…。

 それにしても凄い威力だ。

「落ち着いたら爆心地に向かいます。

 放射線の影響が強い為、外に出れませんが…」

「放射線?」

 俺はマイクに聞く。

「目に見えない光です。

 大量に浴びると細胞異常が起きてガンの発症リスクが上がります。」

「なっ…」

 そんな記録 見て無いぞ…核兵器の専門家も驚いている事から知らないのだろう。

「放射線とはX線の事ですよね…。

 あれはレントゲンにも使われている安全な光です。」

 専門家が言う。

「x、α、β、γ、の電磁波をまとめて放射線と呼びます。

 確かに放射線自体は身体への危険性が非常に低い光です。

 ですが、例え小さな影響でも短時間に大量に浴びれば、身体に深刻な影響が出ます。

 まぁ そこまの影響が出るのは 核反応位なのですが…。」

「では この機体は?」

「放射線対策はしています。

 エアトラは 元々、放射線だらけの宇宙に行く事を想定して設計されていますから…。」

「放射線の影響は?」

「今、日本で原爆の被害者達の追跡調査をしていますが、爆発後 48時間は 健康被害が出る事が既に分かっています。

 後、核爆発後の黒い雨も放射性物質を含んでいて危険ですね…。

 ただ、それ以降なら大気で周辺に拡散されて、健康被害が タバコ以下まで落ちます。

 今でも他の土地に比べて 爆心地では 放射線量が僅かに高い状態なのですが、健康被害としては 無視出来るレベルです。

 今回の実験も 実際に爆発させてみて 影響や放射線量の減衰の値を調べるのが目的なので…」

「やけに詳しいのだな」

「じゃないと、この爆発の中を飛ぼうとしませんよ。」

 マイクがそう言うのだった。


 射爆島を超低空飛行で旋回する…爆発現場は、酷いありさまだ。

 爆発地点を中心に周囲の建物が綺麗に拭き飛んでいる。

 ただ、トニー王国のコンテナハウスは、側面が焦がされ 爆風で吹き飛ばされて転がっているが、無事…。

 炭素繊維は耐熱と耐衝撃に優れているから、爆心地から少し離れていれば高確率で生き残っている。

『まだ温度が高いな…これは人が生存出来る温度じゃない。

 これだと ハッチを開けたら、皆 蒸し焼きだな。』

 ウィングが機長席から言う。

「でも実際に現場で生き残りがいました。

 ほら…建物の陰は 比較的無事です。

 あれは コンクリートの家ですか?」

『コンクリートは 放射線を遮断出来るからな。』

 ウィングが言う。

「ちょっと…あれは何ですか?

 猿はいないのに地面に猿の影が…。」

「多分原理はレントゲンと同じです。

 強力な放射線が猿を貫通して、地面に痕を残したのだと思われます。

 猿はその後に沸騰でしょうか?

 生き残りがいると良いのだけど…。」

「本当にしっかりしてますね…倫理的には吹っ飛んでますが…。」

「お互いにね…」

 俺の皮肉にマイクが少し笑って答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ