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18 (トニー王国祭)〇

 高度6000m雲海の上。

 ハボック()達を乗せたエアトラが安定飛行に入ってから、2時間ごとに機長と副操縦士で運転を交代して順調に飛ばしている。

 このエアトラは コパイと言う人工知能が入れられており、コパイはエアトラを自分の身体の様に動かせ、パイロットのすべての入力に対して干渉する権限を持っている…。

 つまり、パイロットと言う責任者が欲しいだけで、緊急時でなら完全に無人の状態でも飛ばせる訳だ。

 なので、機長も副操縦士も 一度飛んで安定飛行に入ってしまえば 基本 計器を見張っているだけで、離着陸 以外は非常に暇になる。

 そこで 片方が接客に付いていて、今は ウィングが客室に来ている。

「あ~負けちゃったか~」

 ウィングが子供達とトランプ(プレイングカード)をしながら言う。

 やる事が無いとは言え、パイロットとして それは良いのだろうか?

『ご搭乗の皆さん…そろそろ着陸態勢に入ります。

 シートベルトの締め忘れが無いよう ご注意下さい。』

「おっ時間ですね…はい、お片付けをしましょう。」

 ウィングがそう言うと、チェスをして暇を潰していた外交官や子供達が片付けを始め、ウィングが安全確認をする。

「いよいよ着陸か…。」

「片付け良し、シートベルト良し…着陸準備 良~しと…」

 ウィングが そう言い、機長席に戻る。


 昼、トニー王国。

 速度を落とし雲海から降下…雨が機体を打ち付け、北大西洋の孤島…トニー王国が見える。

「あれが本島…ユートピア島か…」

 文明の欠片も無いような一面が緑のジャングル…トニー王国の大半の施設は地下にある らしいのだが…。

『ご搭乗の皆さん…左右の窓から外をご覧ください。

 トニー王国名物、スクランブル無人戦闘機です。

 トニー王国の空に飛行機が侵入した場合、地上から発進…対象を追跡、場合によっては 撃墜する事もあります。

 この無人機によってトニー王国の空の安全を維持しているのです。』

 マイクの言葉に俺が窓から後ろを見る。

 エアトラの斜め後ろには 小型の無人戦闘機が付いて来ている…。

 翼の下のハードポイントには あれは ミサイルか?小型のミサイルが1発搭載されている。

「何と言うか後ろに付かれているのは むず痒いな…。」

 そんな事を思いながらも撃たれる事も無く、エアトラは 翼を斜めにして速度を落とし、ヘリポートの周りを一周する。

 窓から下を見ると数字が書かれたヘリポートが 24機分あり、端からエアトラ6機が そのままヘリポートに止まっている。

 ヘリポートと駐機場が一緒に なっている訳か。

 ガクンとランディングギアが落ち、エアトラが翼を縦にして垂直着陸…軽い衝撃と共に地面に着地し、プロペラの回転が止まり、エンジンが停止した。

『お疲れ様でした…まだシートベルトを外さないで下さい。

 格納庫で皆さんを降ろします。』

 通常トーイングカーは トーバーと言う棒を機体のタイヤに接続して 押し出す事によりプッシュバックをするのだが、トニー王国は ワイヤー式の様だ。

 エアトラの後ろの2本のタイヤの接続部分にワイヤーを接続し、トーイングカーが引っ張ってエアトラのバック走行が始まる。

 そして格納庫に到着…後部ハッチが開き、荷物を持って パイロット2人の後に続き、降りる。

 退避室に入っていた黄色のドラム整備師と人の整備師が出て来て、ウィングが書類を渡し、俺達は 歩いて格納庫の隣の空港に向かい、ヘルメットと救命胴衣を渡して入国審査を受ける。

 だが、パスカードのバーコードをスキャンしただけで終わり…如何(どう)やら入国検査は 出航前の航空会社で受ける方式の様だ。

 空港の隣のトニー王国銀行でドルから現地通貨のトニーに両替…レートは、1ドルで100トニーだ。

 近くの路面電車に乗り、外交官の為の寮に行く。


 外交官寮…。

 1階は一般人も使える食堂やショッピングモールになっており、2階以降は 各国の外交官が住む寮で、6階建て…。

 6階には 各国に付き 徹底防音の大部屋を1つを持っており、そこがトニー王国での大使館となっている。

 まぁ各国の外交官の常駐が 6~12人なので、機能としては十分だ。

 俺の滞在期間中の個室になる3階にエレベーターで上がり 廊下に出ると、各国の聞きなれない言葉を話す外交官が通り過ぎて 俺と入れ違いでエレベーターに乗る。

 部屋にいれば話を聞かれる事は無いのだろうが、同じ建物に住んでいる以上発言には気を付けないとだな。

 そう俺は思い、個室の中に入るのだった。


 翌日…トニー王国祭。

 トニー王国祭は 年2回、1週間にかけて 行われるトニー王国のお祭りで、開発した研究成果などを お祭りの形式で発表するイベントだ。

 期間が1週間もある為、住民達の熱量は そこまで高く無いが、各国の技術者達の情報交換や人脈の形成の為に各国から少数の研究者もやって来ている。

 ただ…今回は人数が多いし その中でも軍人が多い…おそらく最終日の原爆(花火)を見に来た人達だろう。

 如何(どう)やら今回のトニー王国は、こちらを威嚇して無駄な戦争を回避する為なのか、異例の軍事パレードもやっている。

 俺達は 外交官を引き連れてパレードを見に行く。


 上空からエアトラが墜落しそうな程 急降下し、辺りを驚かせる。

 エアトラは、スムーズに180度回転して後部ハッチをこちらに見せ、ハッチが開いてワイヤーを投げ降ろし、ドラムが次々とロープを使って降下…大型道路に着地…。

 着地したドラムは、銃口に赤いキャップが取り付けられたM3グリースを腰に構えて 周辺警戒をし、手を振った所で次々とドラムが次々と降りて来る。

「ほおっ」

 付近の軍人達は驚く…非常に統率されている。

 そして、6×6の36機の整列したドラムが、4本の足で足並みを そろえてザッザッザッと行進を始め、エアトラは上昇してヘリポートに戻る。

 次にその後ろから新たなエアトラがやって来て、後部ハッチから黒いDL2機が落とされる。

 落とされたDLは丸い背中から道路に落ち、後転しつつ速度を落としながら 飛び起き、足から着地…赤いキャップの付いたDLの大きさのM3グリースを構え、周辺の警戒を始める。

 そして、トニー王国の国旗のマントを はためかせながらドラム達の護衛に付く。

 続いてまた2機が降りて来る…今度は青い装甲で細見の体型のDLだ…高機動型か?

 その後ろには 体格が しっかりとした重量級のDLがキャップがされたガトリングガン2丁を両手に構えてやって来る。

 最後に上空を見るとトニー王国の無人戦闘機が 色鮮やかなフレアの花火を放って行く…うん、完璧なパレードだ。


 外交島に来た移民がトニー王国人になる為に必須なトニー王国外国人学校では、沢山の講義が開かれており、他国の研究者達が来ている。

 今回の主要な目的だ。

 その中で一番人気なのは、ブリテンからの亡命者 アラン・チューリング博士のブレインキューブの講義だ。

「我が国でブレインキューブが使えれば、こちらも機械歩兵を実用レベルで導入出来る様になるでしょうね…。」

「いや…こちらでは無理でしょうね。

 ドラムは命令通りに動かない事もありますから。」

 科学者が俺に言う。

「ですが、歩兵も同じで 不確実性があります。

 そう言う物だと思って運用してしまえば良いのでは?」

「いや…これはジャム率が高いライフルと同じです。

 ジャムの多さは死傷率に直結しますから、製品として買ってくれません。

 強力な兵器には、確実性が最も重要視されますから…。」

「確かに買いたくは ありませんね…。」

 結局、軍も商売だ…兵器を開発して製造する企業があり、それを国に売り込み買ってもらう…そして現場で 敵味方で殺し合いをさせて 武器を消費させる。

 そして 足りなくなった分は 国が金を出して兵器を補充し、また軍事産業が儲かる。

 ドラムは確かに強いが、無駄弾を撃たないく、食糧を消費しない。

 と言う事は、物が売れなくなってしまうと言う事で、企業側には不利益でしかない。

 それなら対ドラム兵器を開発して 歩兵に持たせて突っ込ませた方が、利益が出る。

 技術的な問題もあるのだろうが、この仕組みを突破出来ない限り ドラムの導入は無理だろう。

 

 続いて、宇宙開発部門。

 ここは エアトラのエンジンのテストをしている部門で、主に日本の姉島宇宙港で活躍しており、北太平洋を守る 我が軍の空母が戦闘機を度々スクランブル発進させる危険度が高いチームになる。

 今は一応、ハワイに試験の日時を伝えてから飛ばしているが、北太平洋は領空侵犯に当たらないとして 空母を無視し続けて飛んでおり、エアトラの乗組員は拳銃以外の武器を装備しておらず、撃墜する事も出来ない状態だ。

 彼らの目的は新型のエンジンを開発して、エアトラで宇宙に行く事…。

 月にはトニー王国の聖地があり、その場所へ行く為のプロジェクトだ…表向きは…。

 裏では このエンジンの飛行データを元に、大陸間弾道ミサイルを造っていると言う推測がされており、おそらく それは間違いない。

 姉島宇宙港から大陸間弾道核ミサイルを飛ばせば、アメリカ本土を焦土に出来、トニー王国から撃てば ロシアを核攻撃する事も出来る。

 もちろん 本気で撃つは無く、こちらを警戒させて好戦的な行動に出させない為の方法なのだろうが…。

 発表が終わると、宇宙開発 名目でアメリカの役人がトニー王国と協力体制を築こうとアプローチを始める。

 今はどの軍も軍縮が始まっており、それは我が国でも例外ではない。

 次の戦争に勝つ為には 核ミサイル開発が必須なのだが、これを開発するには 戦争では無い新たなる名目が必要になる…それが宇宙開発だ。

 ソ連は技術流出を嫌ってアプローチを かけて来ないし、トニー王国はアメリカと戦争をしていた為、アメリカ国民の好感を稼ぎ、民意が戦争に向かわない様に する必要がある…そして、そこに交渉が生まれる。

 時間の関係上 詳しい話は後になるが、交渉の場を設けて貰っただけでも成功だ。


 そして、核開発部門。

 運用はともかく、仕組みは完全に分からず講義の話を聞くだけだが、こちらの核兵器の専門家は黙って真剣に聞いている。

 おそらく、本当に所持しているのだろう…。

 アインシュタインが見つけたE=MC^2の方程式を使い、僅かな質量から莫大な熱エネルギーに取り出し、強力な爆発を起こす技術の様だ。

 聞いてて気付いたのは、トニー王国は 小型無人戦闘機に積める積載量の問題で、最大威力が制限されてしまう事が問題になっており、その為に核の力を使って小型で高威力のミサイルを造るのが目的らしい。

 これは威力が低い分、民間人を巻き込まずに軍事基地をピンポイントで吹き飛ばせる 比較的撃ちやすい核兵器となる。

 とは言え、大型の核兵器も 当然ながら所有しているのだろうがな。

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