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16 (より良い安全を求めて)〇

 ハボック()は、ニューヨークの要人と一緒に飛行場に行き、C-47(スカイトレイン)でボストンに向かう。

 今回のメンバーは、おおよそ半年ごとに入れ換えをしている現地 外交官。

 核兵器について詳しい学者、政治家に その家族…子供までいる。

 そして、護衛である俺がハンドガンが入ったホルスターを腰に下げている。

 正直、政治家 連中は、税金でバカンスに来たとしか思えない…ちゃんと仕事をして貰いたいものだ。


 ボストン空港…。

 キュッ…タイヤが滑走路に接触…減速が始まる。

 そして 駐機場に移動したスカイトレインがエンジンを停止し、完全に止まった。

「お疲れ様です…」

 機長が俺達に荷物を渡しながら言う。

「さてとエアトラと言うのは、どんな機体なんだか…。」

 初めて 飛行機に乗った時の様な不安感が身体を襲う。

 こう言うのは 数字上で知っていても あまり意味がない…信用が無いからだ。

 なので、飛行訓練で 徹底的に機体の良い所も悪い所も知り尽くす…そうする事で初めて機体に命を預けられる。

「こんにちは!…チャーターした『ハボック』です。」

 俺達は 格納庫の頑丈なドアを開けて中に入る。

「はいはい…ようこそ、クラウド商会ボストン航空へ…。

 ジェーン・ブラッドリー…トニー王国の医師です。

 まぁこちらでの医師資格は持っていないのですが…。

 今日は 皆さんの健康診断をさせて頂きます。」

 俺は 乗員名簿と健康診断書を彼女に渡す。

「我々は 事前に病院で健康診断を受けて来ています。」

「ふむ…ちゃんと大きな病院で見て貰ってますね。

 なら、問診と血液検査で十分でしょうか?」

「我々の医療技術は信用 出来ないと?」

「ある程度は信用しています…。

 ですが、トニー王国に入国するには 少し足りませんね。」

「具体的には?」

「感染症の検査は信用していますが、こちらが警戒しているのは 性病の類ですね。

 ご存じの通り、トニー王国は 性に おおらかなのと、外交官の方々に性病の検査せるのは、対面上に色々と問題がありまして…。

 それで 過去に外交官が媒介になって集団感染した事がありました…。」

「あ~」

 性病の検査は 性器の粘膜を採取する必要がある…そんな事を毎回やっていたら 確かに外交上、好ましくないだろう。

「ただ、今は 問診と血液検査だけで、性病も感染症も分かる様になりました。

 前に比べれば、随分と入国検査も簡単になっています。

 なので、ご協力お願いします。」

 ブラッドリーは問診票を受け取る。

 質問が240問と多く、子供に聞きにくい性的な内容も多い。

「了解した…」

 俺はそう言うと 書類を配り、問診票を書き始めた。


「はい、血を抜きます…ラクにして…」

 ブラッドリーが1人1人注射器を交換し、名前のラベルを付けて 次々と血を抜いて行く…かなり手慣れている見たいだ。

「いや~注射嫌い~」

「あ~ちょっとお嬢さんを抑えていて下さい。

 お嬢さん…痛くないからね…はい、ご協力ありがとう。

 痛かった?」

「う~ん…少し…」

「そうですか…はい、ご褒美にドライフルーツです。

 皆で分けて下さい」

「ありがとう…」

「次、お母さん…」

 外交官の妻が腕を出し、ブラッドリーが血を抜いて行く。

「あら、痛くない…」

「針が細いので、刺激する痛覚神経の量が減っているからです。

 はい、絆創膏 張りますね…はい、終わりです。」

 ブラッドリーは、名前が書かれている注射器の容器を次々と機械に入れ、スイッチを押すと機械が動き始めた。

「これで分かるのか?」

「ええ…1時間程で…後は 聴診器をあてますね。」

 ブラッドリーは、ドライフルーツを摘まんで失った血の補給をしていた 外交官達に次々と聴診器を当てて音を聞く。

「はい、服の上から大丈夫です…」

 彼女の聴診器は耳では無く 別の機械に接続され、彼女は波形と文字が映し出されている画面を見ている。

 音を機械に分析させているのか?

「あらら…やっぱり、お酒飲み過ぎて肝臓が弱ってますね。

 滞在期間中は お酒を控えた方が良いかも知れません。」

「主治医からも そう言われているよ…。」

 外交官が苦笑いしながら言う。


 しばらくして 血液検査が終わり、画面に表示されている数値を書類に書き出て行く。

 結果は全員 感染症の類が無くクリア…。

 ただ、脂ものを多く食べていたり、酒やたばこ などで、健康上の警告を受けた。

 その中には、事前の健康診断では 分からなかった事も含まれている。

 そして、入国書が パスケースに入れられ、これで準備完了だ。

「さて皆さん…出発は 明日の午前6:00です。

 今日はこちらで ゆっくりして行って下さい。」

 現在は夕方前…まだ かなりの時間がある。

「エアトラを運転するパイロットは?

 こちらの安全の為に一度あって おきたいのだが…。」

「彼らは 今日1日 休日です。

 明日は 6時間の長距離飛行なので、もう そろそろ眠る時間では ないでしょうか?」

「う~ん…エアトラを事前に見たいのだが…。」

「それは構いません…。

 え~と 格納庫の整備師長の指示に従って下さい。

 場所は分かりますね…」

「ああ…ありがとう…。」

 そう言うと俺は安全を確かめる為に隣の格納庫へと向かった。


 格納庫

 格納庫には エアトラが6機あり、黄色のドラム缶の身体に手足が生えた機械が作業をしている。

 あれがドラムか…数が多いな…12機か…。

 俺はホルスターに手をやる。

 今は エンジンをバラして整備を行っている最中だ。

 ドラムは歩兵としてだけでは無く、エンジェニアとしても使えるのか…本当に厄介な相手だ。

「お客さんですか?明日のチャーター機の?」

 男が俺のパスケースを見て言う。

「ああ…護衛を任されている ハボックだ。

 キミが整備師長か?」

「ええ…ここ格納庫のエアトラと整備師達を任されています。」

「整備師は この機械達…ドラムがやっているのか?」

「ええ…私は機体の中身を把握していますが、大半はドラムが作業をしています。」

「そのドラムは信用出来るのか?」

「アレは エアートラック社の整備ドラムですからね。

 エアートラック社は エアトラだけでは無く、整備を学習させたドラム整備師もセットで売られます。

 これはヒューマンエラーで機体が墜落する事を防ぐ為です。」

「優秀な整備師に任せた方が安全だと思うのだが…。」

「いいえ…人は焦るとミスを犯しますし、面倒な作業だと 必ず現場で作業手順の省略が始まります。

 それが安全確認を怠る事に繋がり、結果 事故が起きます。

 人はラクをしたいと思う生き物ですからね…。」

「ドラムには それが無いと?」

「ドラムも完全ではありません。

 ミスをする事も十分にあり得ます。

 ですが、ミスをする度にドラム全体で その情報の共有がされるので、時間が経てば経つほど ミスが減り、作業クオリティが上がって行きます。

 エアートラック社で整備の学習をしていた時には 整備ミスが多発して酷かったみたいですが、今では 立派な整備師です。」

「なるほど…確かに凄い…」

 人は歳を取るし、会社を辞める事も普通にあるから 常に新人の技術者を教育して 育てて行かないといけない。

 そして、新人は必ずミスをするので、それをベテランがサポートして被害を軽減させる…これは人を教育している都合上 仕方のない事だ。

 俺も自分が乗る戦闘機には ベテラン整備師だけで行って貰いたいのだが、教育の機会を失っては 未来のベテランになる新人が育たない…。

 だが、エアトラでは それをドラムは学習能力と仲間のドラムへの情報共有させる事で、全員をベテランの整備師にしてしまう訳だ。

「それで…エンジンをバラしている様だが…何か不具合が?」

「ええ…エアトラに積んであるAIコパイが 不調を訴えて飛行拒否をしました。」

「機械が飛ぶ事を拒否出来るのか?」

「そうです…今は異物の混入による2番エンジンの不調…ペンがコンプレッサー内に吸い込まれて焼き付いてました。

 とは言っても普通なら何の問題も無く飛べて 無視出来るレベルの不調なのですが…これもパイロットが『まだ大丈夫』だと不調を無視し続けて、重大な事故に繋がらない様にする為ですね。」

「本当にトニー王国は 人を信用していないのだな…。」

「研究などの発想力は評価してくれているのですがね…。

 私としては快適に飛べれば機械の手であろうと問題無いと思うのですが…。」

 整備師長は俺にそう言うのだった。

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