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14 (ミドリムシ工場)〇

 トニー王国 地下都市アトランティス、食糧生産工場…。

 家が貧乏農家だった事もあり、ステン(オレ)は 農業に詳しい。

 金を稼ぐ為に作物を売り、農家なのに腹を空かせる事が多かったオレは 戦争で徴兵前が始まる前に 志願兵として軍に入り、国の為に戦い家族に金を送り続けて来た。

 人は食べ物を食べないと生きていけないので、外国の食事事情に オレは とても興味がある。

 なので 幼年学校を卒業したオレは 職業訓練校で ミドリムシとソイフードの勉強と試験を受けて採用され、役所の隣に立っている6階建ての大型工場『食糧生産工場』で仕事をする事となった。


 食糧生産工場 6階ブルールーム。

 一面が青い部屋…通路の左右には 緑色に染まった大型の筒型の水槽が次々と並び、水槽の上部と下部からは青色のLEDライトによって照らされている。

 オレは周りを見ながらゆっくりと通路を通る。

 水槽の中は 0.5%の糖と二酸化炭素が6気圧になる様に水に溶かした超強炭酸水の中に 成長に窒素が必要無い、あり得ない品種改良がされた ミドリムシが入っており、それがスクリューでゆっくりと かき混ぜられている。

 ミドリムシは青と赤の光の波長を好み、この食用に使われてるミドリムシは青の波長が使われる。

 ミドリムシは非常に優秀な食べ物だ。

 元々川にいる大量の魚に食べられる存在の為 増殖力は半端なく、1日で2倍、1ヵ月で最初の10億倍に増え、畑と比較した面積当たりの効率は60億倍。

 これは 今まで 一番効率が良いと呼ばれていたトウモロコシを軽く凌駕していて非常に興味深い。

 ミドリムシは 光合成により空気中から二酸化炭素を回収して栄養分に変換して体内に溜め込む能力を持っており、自分で移動も出来る 植物と動物の両方の性質を持つ ハイブリッド生命体だ。

 しかも このハイブリッド生命体は バランス良く栄養が取れるので、これだけを食べ続けていれば 十分に生活が出来るし、二酸化炭素を取り込み 酸素を吐き出す性質上、この都市の空調にも非常に役にたっている。

 都市内で 人が吐き出している呼気に含まれている二酸化炭素を この都市の空調会社が回収し、それを圧縮させてミドリムシに与え、ミドリムシから吐き出された酸素を回収して都市内に流している訳だ。

 『直径6km長さ20kmのスペースコロニー内で 20万人分の食糧を維持するには畑の面積が絶対に足りない。』

 そう思ってトニー王国を建国したと言う宇宙人の存在を信じていなかったオレだが、この方法での共生でなら十分に可能で、実際に このアトランティス都市では、地熱と原子力発電を使って 大量の電力を消費する事で 20万人の食糧と酸素を維持している。

 ただ、このミドリムシを食用とするには まだ適さない…粉への加工が必要だ。

 ミドリムシは限界密度を超えると増殖しなくなる。

 なので限界密度の半分のミドリムシを水槽に入れれば おおよそ1日で水槽が濃い緑になり、毎日ミドリムシの収獲が可能になる。

 水槽に付けられているセンサーが 限界密度が来たと判断すると タンクのミドリムシ水が ホースで自動で半分程 排出されて 下の階に行き、タンクには 糖を含んだ超強炭酸水が追加で入れられて またミドリムシが増え始める。

 この水槽は機械で完全管理されているので、天候によって収穫量が変わる事が無く、毎日一定の生産量が期待 出来、この都市は不作とは無縁だ。


 5階ミドリムシ粉精製所。

 回収されたミドリムシ水は 逆浸透膜(ぎゃくしんとうまく)ファイルターやら機械を通ってミドリムシと酸素、二酸化炭素、水に分離。

 回収したミドリムシは温風タンクに入れられ、温風を拭き付けながら かき混ぜて乾燥…粉状にして筒型の大型タンクに入れられる。

 ただ、このミドリムシ粉は 極僅かな苦味を持っているが、基本 味がしない…。


 なので、次は 4階、3階の食品加工 作業所。

 ここで ミドリムシで出来るソイフードの加工をする。

 5階から大型タンクが運ばれて来たミドリムシ粉が様々な工業ラインに運ばれ、ミドリムシから成分を抽出して合成する事で、味覚剤、食感剤、着色剤が作られる。

 ただ、ミドリムシは カプサイシンを持ってないので、辛味の食糧が作れず、自然栽培されている唐辛子が使われている。

 で、別の作業ラインでは ミドリムシ粉に甘味料を混ぜてトニー王国の主食にしている一番簡単に作れるミドリムシ粉を作り、そして その奥にはミドリムシ粉から出来るソイフードの製造ラインがある。

 ミドリムシ粉に水に入れてを入れて かき混ぜる事で粘性が上がり、そこに味覚剤、食感剤を投入。

 味や食感をそれっぽくし、着色剤を入れて本物ぽい色を付ける。

 後は これを複数混ぜたり、強炭酸水を入れてふっくらさせたり、層を作ったりと言った職人のギミックを追加して 最後に それぞれのステンレスの型に入れて 熱を加えて表面を固めて成型すれば ソイフード食品の出来上がりだ。

 ここの作業がソイフードの味を決める非常に重要な作業なので 建物を2階も使用され、一部製造ラインを共有したりしながらも その都市に流通している全種類の食品を加工して作って行く。

 ちなみにオレの職場も ここだ。

 オレの仕事は外の食事を伝えて 新しい商品を再現する事。

 長い間 引きこもっている この都市は、新しい食べ物のアイディアが減って来ていて、外からの刺激を求めている…オレが採用されたのも そう言った理由が大きいのだろう。


 2階フリーズドライ加工室。

 最後に 4階、3階から持って来たソイフード食品を1日かけて フリーズドライ加工により水分を抜き、それを飲み口のキャップが付いた袋、スパウトパウチに入れて 真空包装すれば 店に並べる状態になり、折り畳みコンテナに入れられ、床の穴から下の階に運ばれる。


 1階、食品倉庫。

 ここでは天井に空いた穴から大量の折りコンが降りて来て、商品の種類をバーコードで記録し、棚に種類ごとに分けられて自動で積まれる。

 で、各店がネットで注文リストを この機械に送ると、指定の折りコンがコンベアで流れて来て、ドラムが折りコンをパレットの上に降ろし、パレットがいっぱいになると(ネット)を取り付けてオリコンの転倒を防止…。

 ハンドリフトをパレットに差し、トラックに積み込まれる。

 今まで階は 自動化された機械とそれを管理する人だけだったが、ここでは 折りコンの荷下ろしがある為、ドラムの数が非常に多く、衝突する事も無く せわしなく作業をしている。

 で、そのトラックドライバーもドラムである。

 ドラムが運転するトラックは 各店に配達し、ここで初めて人が荷下ろしをして商品棚に並べられる。

 まぁここも自動化しようとすれば 出来るのだろうけど…。

 トニー王国人は究極の怠け者であり、自動化が出来る事は 全部自動化してしまい、自分達は機械の設計や新商品の開発をする文化になっている。

 これは道具の研究や開発をする事が教義のエクスマキナ教のせいだろうか?

 そして こんな6階建ての大型工場が1つあれば、この都市の人口20万人の腹を十分に満たせてしまうのだから兵糧攻めも難しい。

「これは暇な職場になりそうだな…。」

 オレはそう言いながら、見学を止めて職場に戻って行った。

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