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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 8巻 (戦争は続くよ 何処までも)
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25 (核シェルター)〇

 数時間後…朝…。

 ナオ(オレ)は闇市で砂糖を売り、現地通貨の円に換えて リアカーと大量の麻袋を購入。

 空爆の後の廃墟から かまどや釜を入手…空爆で焼けた人骨は、リン酸カルシウム…砕けば モルタルの材料に出来る。

 火災で 木材が燃えて炭が手に入るのが有難い…廃材が取り放題の環境は 結構良い。

 それらを麻袋に入れて防空壕まで運んで行き、崩れた家から みずがめ、シャベルを拝借して防空壕に戻る。

 四角い坑道を 孤を描く様に丸く削って行き、防空壕を拡張しつつ トンネルを作る。

 丸い形状だと圧力が分散する為、耐久性が各段に上がる。

 それを セメント1、砂3、砂利6を混ぜ合わせた コンクリートを 壁に厚く塗る事で更に強度がアップ。

 拡張した時に出た土は 麻袋に入れて土嚢にし、防空壕の入り口を丸く囲み、その上から コンクリートでコーティングする。

 これで防空壕への雨の侵入を防げる。

 で、コンクリートで防空壕のドアを造り、取り付けると…。

 コンクリートは ガンマ線のみならず、中性子線を遮蔽する材料として 非常に安価で有効な素材であり、原発でも 多く使われている。

 まぁ厚さも比率も結構 適当の即席 核シェルターだ。

 この防空壕は 爆心地の相生橋(あいおいばし)に近いが、斜面の下に穴を掘って作っていある為、爆風が防空壕の上に逃げて、入り口に入ってこない。

 その為、原爆の爆風で斜面ごと持って行かれな限り、十分に耐えられるだろう。


「おはよーナオせんせー」

 楓ちゃんが核シェルターの前にやって来る。

「おはよーでも、今はこんにちは かな…。」

「そう、さっきまで寝てたから…」

「えっと楓ちゃん…学校は?」

「つまんない…たけやり くんれん だけなんだもん…」

「そっか…でも、自分の身を守る事は 重要だよ。」

「たけやりで、B29おとせる?」

「ははは…。

 それは無理かな~でも必要になって来ると思うよ」

 米軍、中国、ソ連が日本に上陸すれば、一億玉砕作戦で、女、子供も全員が この戦争の為に戦い…無駄に死ぬ事になる。

「それで…せんせーは なに やってんの?」

「これか?お家の整備かな…これで相当 潰れなくなった。

 まだ生乾きだけどね…。

 よっと…」

 オレがシャベルを手に取り、構えて振り回す。

 シャベルのリーチを生かした槍の様な突き、身体を回転させて遠心力を威力に追加する 斧の様な回転斬り、体重を乗せた シャベルのヘラで頭上から相手を叩く、ハンマー。

 一通りの型を試して行く…久しぶりにやったが、結構スムーズに技を繋げられているな…。

「おおっすごい」

「だろ…シャベル格闘術…。

 まぁ銃ぶっ放した方が 早いんだけどね~」

「かえで にも できる?」

「訓練すれば…でも、間に合わないだろうな~。

 それより、防空壕に引きこもっていた方が助かるかな…」

「でも それじゃあ、べいへい、ころせない」

「楓ちゃんは アメリカ軍を殺したいのか?」

「うん、でも かなで けんか よわい…。

 それに、ケンカがつよかった にいちゃんたちも せんそうで ころされた。」

 投入数の半数が餓死、更に その半数が軍艦と共に撃沈されて海底に沈む。

 その兄ちゃん達は 果たして、アメリカ軍とちゃんと戦えたのだろうか?

 皆が 心の何処かで日本が負けると分かっている…。

 でも、周りから非国民 扱いされない様にする為には、少なくとも表面上は勝てると取り繕う必要がある。

 そして、日本兵達も日本の為と自分を騙して戦い、そして 死んで行く。

 どうも楓ちゃんは ラジオの大本営発表が 正しい事を前提に話している みたいだ。

 オレが どう言葉を返せば この子が生き残れるか…。

「でも、敵を殺す事ばかりが戦いじゃない、生き残る事も立派な戦いなんだ。

 将来、キミが大人になった時に 日本の為になにが出来るのか…。

 別に大きな事じゃなくても良い…。

 畑を耕したり、子供に教育を与えるのも立派な戦いだ。

 殺し合うだけじゃ お腹は膨れないし、技術者も育たない。

 今じゃなくて未来に繋げる人…それがキミだ。」

「でも 日本が なくなったら、みらいに つなげられない」

「キミ1人で戦争の勝ち負けが決まるなら とっくに如何(どう)にか なっているさ…。

 さあ そろそろ乾いたかな…さて、まずは 防空壕を強化して 空襲で避難して来る30人を一緒に救おう」

「これも たたかい?」

「そっ その大きな みずがめを運ぶの 手伝って」

「わかった…」

 オレ達はそう言い、防空壕の強化に当たるのだった。


 翌日…空襲…。

「うわっアンさん…1日で良くここまで造ったね…」

「うわっ…これなら こわくない…」

 30人の近隣住民が核シェルターに入って行く中、楓ちゃんが言う。

「井戸の水も みずがめに入れてあるし、緊急時は 何日か 持つかな。」

 外には 八木アンテナ が固定されており、ケーブルが壁を伝って、シェルターの一番奥には 廃墟にあったタンスの上にある 真空管ラジオが置かれている。

 真空管ラジオは、送信機から放たれる 無線の電波を受信する事で音を出力する物で、稼働に 電波以外のエネルギーが必要無い 優れものだ。

 このラジオは 日本で一番普及してるタイプで、ラジオ局から放たれた電波を学校や役所などの公共機関の電気を使って増幅させる事で、各家庭で無電源でラジオが聞ける仕組みになっていて、ここいらだと、広島県物産陳列館(原爆ドーム)の屋根にある アンテナが その役割をしている。

 ちなみにチャンネルは、日本放送協会(NHK)の完全独占であり、法律上は 公共放送なのだが、実体は国営放送となっている。

 今も空爆を受けていると言うのに 核シェルターは 潰れる気配すらしない…。

「後は備蓄の食糧でも入れて置ければ完璧だな。

 明日は廃墟をあたって、乾物系を中心に食糧をあさって みるか…。

 楓ちゃんも協力してくれるか?オレ ここら辺の土地勘が無くてさ…オレが持っている地図もアテにならないし…。」

「わかった…」

 外では既に空爆が始まっているが、防音性がそれなりに良く、普通に会話が出来る程度には静かだ。

 楓ちゃんも、そこまで 怯えていない。

 やっぱり塹壕の時もそうだったが、強度が高くなれば いくらか落ち着いてくれる。


 更に翌日…。

 廃墟から食糧を回収して核シェルターに備蓄を始める。

 その頃には他の住民達も保存性が高い食糧を中心に持って来る様になった。

 家が空爆で無くなっても、ここなら生存率が高いからだ。

 まぁセキュリティが無いに等しい環境なので、腹が空いているヤツが盗んでしまう欠点があるのだが、そこは一応 助け合いの精神と言う事で受け入れている。


 あれから防空壕に退避する事はあれど、毎日が空襲の誤報で『また 誤報だろう』と言うオオカミ少年状態になっており、本番に ちゃんと避難 出来るか 心配だ。

 そして、運命の日が来た…。

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