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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 8巻 (戦争は続くよ 何処までも)
219/339

19 (存在しない観測者)〇

 極東…日本…。

 この国は 世界で最も長い2000年の歴史を持つ国だ。

 島国の為 大陸からの侵略は受けにくく、戦闘と言えば 日本国内の内乱がメインで、それも自然災害で戦っている余裕がない為か、かなり限定的で小規模の戦いだった。

 そして、ブリテンから ポルトガル経由で日本に宣教師を日本に送り、アフリカで不足し始めた 奴隷を供給する為の基板を造ろうとしていたのだが、当時の豊臣秀吉にバレて キリスト教の布教を禁止…。

 その後 出島など一部 地域を除いて鎖国となり、1853年のペリーによる黒船来航まで、初期型の単発式マスケット銃…火縄銃で戦っていた。

 だが、ペリーの砲艦外交により、武力が無い国は 人権すら保障されない事を気付き、そこから周辺諸国の技術を取り込んで 軍拡が急激に始まり、50年程度で 白人達が次々とアジアの国々を植民地にする中、世界の軍と渡りえるだけの戦力を身に着けて 日本を守り抜き、第一次世界大戦で活躍…。

 海外の戦闘では 日本の裏の思惑は 如何(どう)あれ『白人の植民地支配からアジアの国を救い』独立させる と言う大義で戦争をしている…実際、これで 独立出来たアジアの国は多く、政府からすれば戦争する方便なのだろうが、そこまで嘘ではない。

 そして第二次世界大戦…。

 ドイツと同盟の枢軸軍として戦っていた日本軍だが、序盤の優勢だった。

 ただ、戦争の規模が果てしなく大規模であり、補給線が長くなった状態の数百万の兵士の胃袋を支えるには 日本軍の補給システムは貧弱過ぎた。

 この時点でも部隊の半数が、餓死、病死などの戦闘とは無縁の死に方をしている。

 たが 日本陸軍において『餓死』、『病死』は『脱走兵』と『降伏』に 次ぐ不名誉な事だ。

 彼らは 天皇陛下の為に 戦場で戦死する事を 至上の名誉として考えている為、戦闘以外での損失は 好ましいものでは無かった。

 その為『事故死』、『餓死』は 戦死と報告され、時には 苛烈な新兵のイビリで うっかり殺しちまった場合も、苦痛に耐えかねて自殺した場合も、戦死として扱われる。

 これは 部隊長や士官の出世の為 と言うだけでは無く、銃後の国民感情を意識したものだ。

 本国の家族が 大切な息子の戦死報告を受け取った時に『お国の為に立派に散った』と書かれるか、『餓死や発狂して自殺した』と書かれるか、どちらが良いかは一目瞭然だろう。

 そして、こんな国民を気を付かった嘘は、戦果の水増しと言う 大本営発表に繋がる訳だ。

 で、その後 日本は、餓死者、病死者を 本国から兵士を追加する事で解決する戦術を取った事で 次第に兵士が枯渇し、日本軍はアメリカ軍に次々と敗戦し続ける。

 日本の敗因は、アメリカ軍の兵站の要因が大きい。

 アメリカ軍は クソ マズイと言われているが、栄養価が高いレーションを前線に送り続けて、餓死者は出さず、フィリピンで 蚊が媒体になるマラリアが流行れば、蚊を絶滅させる勢いで DDT殺虫剤を撒き、ワクチンなども大量に前線に送られている。

 こんなにもアメリカ軍の対応能力が異常に高いのは、1ヵ月ごとに 全戦死者の数や要因を敵軍も含めて正確に記録しており、敗因のデータを学習して 次に生かすからだ。

 それに対して、日本軍の場合は、餓死、病死が 戦死になってしまうし、統計論で数値上 確実に敗北が決まっていたとしても、指揮官が大和魂と言う精神力で数値をカバー出来ると 考えてしまうので 負けが多くなる。

 更に現場の指揮官の感覚に頼っている為、当たり はずれが激しいし、基本的に負ける戦いが出来ず、勝利に固執する。

 その為、1、2回 アメリカ軍が わざと負けて 成功体験を与えてあげると、日本軍は その勝った 戦術を例え負けても使ってくれるので比較的ラクに叩ける…これらが日本軍の敗因だ。


 1945年3月…沖縄…。

 ハルミ()達は 12機の潜水艦は海中で 日本軍とアメリカ軍の監視任務に付いていた。

 隠密性能に長けている この潜水艦だが、見つかって魚雷を撃たれれば 簡単に沈められてしまう…その為、こちらは 攻撃が出来ず、ひたすら この場に いない物として振る舞うしかない。


 沖縄の周辺の海域は 戦火に晒されていた。

 アメリカ軍の戦艦に対して、半壊した日本の海軍 戦力で 止められる訳もなく、日本最後の戦艦…大和は 軍港で最終整備中…。

 巡洋艦などで敵艦に対して攻撃を仕掛けているが、それも難しい。

 この絶望的な戦況の日本軍で比較的 大活躍をしているのは 対艦ミサイルだ。

 本土決戦に向けて 空軍の在庫一掃セールと言うべきか…。

 日本の様々な戦闘機に200㎏の爆薬を積載して、敵艦に体当たり攻撃を仕掛けている。

 人類初の人力誘導 対艦ミサイル…神風特攻隊だ。

 今の日本軍には、戦闘機で真面に軍艦と戦えるだけの練度のパイロットが 存在しない。

 なので、最低限 操縦が出来るまでに速成訓練されたパイロットに戦闘機を操縦させて戦艦に突っ込ませる狂気と言える戦術が誕生とした。

 実際、1発当たれば 敵艦を沈められないとしても大損害を与える事が出来る。

 これが無人で誘導出来る様になれば、対艦ミサイルとして ある程度 有効だろう。

 だが、これは有人だ…。

 速成訓練で育てられた 未来の日本を支える 若者達が、次々と敵艦に体当たりをし、ある者は 無事に着弾して敵艦に大打撃を与え、ある者は 死ぬ意味も無く、対空機関砲で撃ち落とされて海の中へと消えて行く。

 私達は その光景を有線接続された水中ドローンで記録し続ける。

 アメリカ軍では 特攻隊をバカ ボムと呼ばれている。

 バカは どちらかと言うとクレイジーの意味合いが強く、多民族国家のアメリカには、国の為に特攻する精神を理解出来ない…彼らなら そんな命令に従わないし、脱走する…。

 だから 国を守る為なら200㎏の爆薬で体当たりする事も いとわない狂気の集団を恐れる。

 初期と比べて対応策が確立した為、迎撃出来る数も増えて来ているが、現場の兵士達は 彼らのメンタルに確実にダメージを与えて行く。


 そして、一式陸上攻撃機が 敵艦から30~60kmの距離まで近づき、翼に吊り下げられた4発の対艦ミサイル『桜花』撃って すぐに旋回して、航空場に帰還する。

 桜花は 戦闘機のエンジンとしては使われない 800㎏の固体ロケットエンジンを3基積んでおり、その巡航速度で 時速648kmを叩き出し、敵艦の上を取って急降下した時の速度は 時速983km…音速に到達する事が出来る。

 飛行機の形をしているが、構造上は ロケット推進のミサイルだ。

 ドイツが作ったV2ロケットは兵器としての性能は良かったが、制御技術が未熟(あま)く、命中精度が低かった。

 なので、人間と言う この時代で 最高の制御、誘導装置を備える事で、この問題を解決し、アメリカ軍が 潜在的に最も脅威となる対艦攻撃兵器となる。

 彼らの対抗策は ミサイル発射前の一式陸上攻撃機を戦闘機で撃墜する事…。

 これらは アメリカ軍の最優先の迎撃目標になった。

 何で こうも簡単に 自分の命を捨てられる?

 日本側の理屈としては分かる。

 国の存続の為、アメリカ軍の侵攻を遅らせる為…家族を守る為…分かる。

 でも、自分が死んでしまったら その利益を受け取れないだろう。

 自己犠牲の精神…単一民族だから持てる精神なのだろうか?

 私は この情報を記録し続ける…後の戦争資料とする為に…。


 1945年 4月6日、16時45分。

 日本最後の戦艦、大和がと10隻の巡洋艦が 海上特攻隊として沖縄に侵攻中のアメリカ軍の輸送艦の攻撃任務に向かった。

 護衛の戦闘機は無し、大和の燃料は片道のみ…そもそも この戦争は日本に対しての 石油の経済制裁から始まったものだ。

 経済制裁をされている中では 持った方だろう…。

 燃料の残り備蓄も少ない 今の日本では、石油の価値は人の命より優先される。

 翌日…大和は 陽動の為に進んでいたコースを変更…敵艦を叩きに行く。

 私達は少し離れた安全な場所から追跡をする…記録を残す為に…。


 4月7日12時34分、大和は鹿児島県坊ノ岬沖 90海里の地点で アメリカ海軍艦上機を50km遠方に確認し、牽制射撃を開始した。

 艦上機は すぐさま その場から退避し、大和の位置を知らせたのだろう。

 しばらくして、アメリカ空母から航空機隊が 次々と発艦…。

 大和に向かって無数の敵戦闘機が向かっており、大和にハリネズミの様に設置されている機関砲が 次々と放たれる。

 敵戦闘機は 大和の後ろ側から弾幕を回避しながら甲板に向けて機関砲を撃ち込み、命中した大和の機関砲兵が次々と血まみれになって動かなくなる。

 装甲板は血で赤く染まるが、大和の装甲が厚い為、機関砲では有効打に ならない。

 激しい弾幕の中を飛ぶ 戦闘機部隊は 速度を殺さず、そのまま大和を突っ切り、距離が離れた所で、旋回をし始めて 再度の突撃の準備に入る…戦闘機の速度を生かした一撃離脱戦法だな。

 続いて、その旋回時間の隙を埋める様に戦闘機部隊が魚雷を投下…。

 海水に入った魚雷は 大和に向かって真っすぐ進んで行き…大和 左側 側面に命中、被弾…。

 破損した部分から大量の海水が なだれ込み、大和の浸水が始まる。

 大和は 被弾した左側に大きく傾き、しばらくすると右側に意図的に海水を入れる事で 船のバランスを取り、再び水平に戻る…。

 が、敵部隊は 左側を集中的に狙っている…再び浸水により大和が大きく傾く…右側のバラストの限界まで撃ち込む つもりだろう。

 対空機関砲の戦果は上々…だが、敵の数が 圧倒的に多い…。

 本来、戦艦とは 威力が上がり、大型化してしまった主砲に耐えられるだけの厚い装甲と 大口径弾の主砲で 敵艦を沈める為の物だ…対空迎撃では、大和の性能を十分に発揮できない。

 実際、主砲も撃ってはいるが、高速で動く戦闘機には 全然 命中していない…火器管制システムが無く、全部 人が手動で操作しているからだ。

 更に数度の戦闘機による機関銃砲の掃射で ある程度、機関砲の数を削れた所で、大量の爆撃機が 大和の上空を通り過ぎて 空爆用の爆弾を次々と落としていく。

 ここまでやるのか…明らかに過剰だが、それだけ敵が脅威だと思っているのだろう。

 実際に この航空機による集中砲火でも大和は如何(どう)にか対応出来ている。

 が、金でゴリ押しした物量には 例え戦艦と言えど敵わない。

 空爆により、木製の甲板が燃え、消火部隊がホースで組み上げた海水を掛けて消火して行くが、次の瞬間には 彼らは爆発に巻き込まれてバラバラに吹き飛んだ。

 大和の中心部から爆発…砲弾が仕舞われている火薬庫に引火したな…甲板から盛大に炎を上がっている。

 大和 航行不能…船体が左側に傾き、海水と血と水兵のバラバラになった死体が混ざった物が甲板を滑べって 海に落ちて行く。

 退艦命令は出たのだろう…次々と 水兵達が海に飛び込むが、大和と共に運命を共にしようと機関砲から離れない者も多い。

 散発的な対空砲火で、敵機を落としながら最期の抵抗を続けている。

 そして、魚雷だろうか?推進機関が爆発したのだろうか?

 海中で衝撃波が発生し、海に飛び込んだ水兵達には 悲惨な事になる。

 爆発による衝撃波は 空気中より水中の方が威力が高くなる。

 その為、兵士達は 表面上無事に見えるが、中の臓器が衝撃波で 無茶苦茶に破壊されて、やがて 口や肛門から血を吹きだして 壮絶な痛みと共に死ぬ…。

 ただ その中で生き残る者もいる…。

 彼らは 沈んだ大和の浮遊物に捕まり、救助を待つが、少ない浮遊物を めぐっての味方同士での殺し合う。

 死ぬ覚悟を決めた兵士でも、生きる望みが目の前に あるのであれば (つか)まずには いられない。

 中年の軍人が軍刀で まだ若い少年の腕を切り落として 海に沈め、すぐ近くでは 殴って相手を沈める者もいる…。

 それは ひたすら(みにく)く…そして、それが建て前などで 取り(つくろ)わない人の本性だ。

 これは運命だと言うのか?

 私達は 散々 史実と違う行動を取り続けているのに、戦艦大和は 北緯30度43分、東経128度04分に 史実通りの位置で沈んだ。

 まぁ大和の残骸は ここから海流で移動するのだけれど…。

 こちらの潜水艦の上には 大量の瓦礫が降って来ており、潜水艦らは致命傷を避ける為に移動する。

 ただ、生き残った味方の巡洋艦が、生存者にロープを投げて 引き上げて行く…今だと海上からの救出の方が安全だろう…。

「あ~止められ無いって本当にキツいな…。

 はぁ…」

 私は ため息を付きつつ、また監視任務に戻るので あった。

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