表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/339

21 (性感染症)〇

 翌日…夜…。

 ナオ(オレ)達はジガが運営を始めた風呂屋に向かう。

 ジガからは 風呂の製造を手伝った全員に現金報酬と開店初日の一番風呂の権利を(もら)っている。

 風呂屋は かがり火に木炭を燃やした火が灯り、星が輝く夜空に川が流れる音と幻想的な雰囲気を放っている。

 竹板の仕切りの中に入ると脱衣場があり、オレ達は この半月 ずっと着ていたパイロットスーツを脱ぐ。

 オレ達エレクトロン組の義体は 汗なんかの老廃物(ろうはいぶつ)を出さないのでパイロットスーツは汚れず、洗濯する必要が無いのだが…人間の時の価値観を引きずっているのか、どうも気になる。

 耐寒耐熱 耐放射線 耐化学物質に耐弾と一通り(そろ)っていて 非常に快適なのだが、第二次世界大戦後まで この服を持たせないと行けない都合上、そろそろ持って来た私服(ジャージ)に着替えても良いかもしれない。

 現地民の村を制圧 出来て安定した来たら私服に着替えるかな…オレはそんな事を思いつつ脱ぐ。

 オレの隣では 羞恥心(しゅうちしん)が全くない様子のクオリアが脱いでいる。

 130cm位の小柄な体型から幼女体型を想起されるが、腹はへっこんでいてわずかだが、くびれもある。

 胸は小さいものの 確かに存在を主張しており、小さい女の子が大好きなオレの性癖とマッチしていて とても可愛いい…。

 ただ 乳首や性器の類は付いていない…。

 これは機械出身である機械人(エレクトロン)は 手作業で自分の特徴を受け継いだ次世代機(子孫)を製造する文化の為、生殖機能が必要ないからだ。

 なので クオリアの親は 設計者のカナリアさん…。

 組み立ては 造顔 整備師のジガ…。

 育ての親で、エレクトロンの長老のコンパチの3人の女性の間に生まれると言った人の価値観だと奇妙な事になっている。

 そして、義体が全損してクオリアの予備義体をカスタムして作られたオレの義体も同じく性器が無い。

 クオリアの隣のハルミは 人間出身の機械人…。

 ハルミは 美人として作られる義体の割に 少し太ももが 太い。

 だが、くびれが ちゃんと へこんでいて、くびれから腰、尻、太もものラインが強調されて しっかり見える為、結果的に美人に見える。

 単純に太ももを細くすれば もっと簡単に美しく見えるのだが、ハルミは 人間だった頃の身体のデザインを重視している為、造顔師のジガが 太ももを太くした状態で各部のバランスを精密に整える事で綺麗に造っている…。

 オレには この凄さが分からないが、職人技で芸術の域に入っているとの事だ。

 そして 人の脳のデータを機械に移した時に 今まであった物が無くなると心的ストレスが発生するので、ハルミには性器は付いているが、VRでの経験はあれど 現実で使う機会に恵まれず、550歳を超えていると言うのに未だに処女だ。

 まぁ義体になった事と医師を長くやり過ぎた事で、人間の性行為を『猿同士の交尾』と同じ感覚で見てしまっているのが原因なのだそうだが…。

 続いて、ジガ…。

 ジガは 長年 セクサロイドをやっていた為 当然ながら性器が付いており、形が良いが 大きくない胸に くびれや尻も(ひか)えめの 女性の身体の特徴が(ひか)えめに造られていて 服を着ていれば ボーイッシュな見た目に見える。

 これは VR上の自分に都合の良い女性AIとしか喋ったことが無く、現実の女性に不信感を抱いて風俗店に行かない男性の為に『男のノリで話せる女性』として デザインされた身体で、初めてのお客をジガが相手をして女性に慣れさせてから より女性ぽい人に繋げるのが役目だったらしく…その経験から童貞殺し(チェリー・キラー)と呼ばれていたりする。

 獣人のロウは、狼の耳と尻尾があり、6歳で まだ腹が出ている幼児体型だが、あちこち筋肉が付いていて、身体のサイズに対して筋力の比率が高く、身軽に動ける。

 人と違う特徴としては、カンガルーに見られる育児嚢(いくじのう)が腹部に付いていて、袋の中に乳首があり、胸部には無い。

 これは 子供が腹の中で 大きくなり過ぎて難産になる問題に対して、あえて早産をして、超未熟児状態の子供を育児嚢(いくじのう)で育てる事で解決したからだ。

 さて、最後は男共…。

 主に肉体労働をやって(もら)った為、筋肉質で引き締まった黒人が多く (そう)じてナニも大きい…。

 その光景は 美人で裸の女性が近くにいる事もあり 黒人AV男優のように見えてしまう。

 クオリア、ジガ、ハルミは 備え付けの竹のコットンで編んで作ったタオルと持って風呂場に行き、その後ろ姿を見ながら男共も風呂場に行く。

 一瞬 女性達の身の心配を感じるが、星一つを簡単に破壊出来る 大量破壊兵器扱いされているクオリアがいるし、ジガとハルミは戦闘向きでは無いが 義体の出力的に男の腕力に負ける訳ない。

 ただジガは 風呂場で 双方合意の上で おっ始めないか非常に不安なんだが…。

 風呂場は かがり火の光と満天な星空が見えて川もよく見える…。

 つまり、川側の仕切りが無く (のぞ)き放題だ。

 竹の屋根は付いているが 空調の為 露天風呂状態で 風呂の湯の熱もあるが それでも 少し肌寒い。

 プラスチック製の椅子の数は12席で オレ達は風呂からお湯を(おけ)()み、備え付けの石鹸(せっけん)を使って身体を洗い始める。

 壁は竹製で、お湯が出る蛇口も鏡も無いただの仕切りだ。

 ジガはシャワーを作って見たかったらしいのだが、現状 実装が難しく2号店に期待との事…。

 頭を洗いながら 横を見ると男共が、元性奴隷の湯女(ゆな)達に 丁寧(ていねい)に洗われており、衛生環境が悪かったのだろう…男から(あか)が ボロボロ出てくる。

 湯女(ゆな)達の服は ガラス繊維で出来た2枚の布を(ひも)で止めただけの服で 何で簡単に手に入る竹の繊維で作らなかったのが不思議だったが、防水の為だった見たいだ。

 2枚の布を紐で止めている服の為、肩(ひも)伸ばして谷間が見えるようにし、ボウボウだった脇の毛も綺麗に(そら)られ、脇、横乳、腰などの側面が見える構造にする事で、見えそうで見えない状態を作り 中身の想像を駆り立てるデザインになっている。

 流石(さすが) ジガが作ったデザインだ…男の心理を知り尽くしている。

 最後に石鹸(せっけん)をお湯で流し、オレ達は湯船に入る…。

 男達はサービスを受けながら湯女(ゆな)達に徹底的に洗われていて まだ洗い終わっていない。

「ジガ…流石(さすが)に ここで おっ始めないよな」

 オレは12人程度は 足を伸ばして ゆっくりと入れる大きさの湯に浸かりながらジガに言う。

「あっ?…ああ…ここは一応 公衆浴場だし、コイツらは 洗い慣れていない客を洗ってあげて 衛生管理をするのが仕事だからな…。

 だから服を着けさせている訳だし…。」

 湯船に浸かり周りを見て色々と確認しているジガが答える。

「2000」

 1人の椅子に座っている男が言う。

「3000」

 その男の担当を湯女(ゆな)が言う。

「OK…3000で…。」

 男との交渉は成立したようだ。

「あの~金額交渉が始まってますが…。」

「まぁ喋る内容は制限していないし、仕事の後に やる分には問題無い…自由恋愛ってヤツだな。」

 ジガが笑いながら言う。

「私は 公衆衛生の為に石鹸(せっけん)使わせたりと色々やって来たけど…。

 元々の習慣が無いのと単純に面倒くさいんだろうな…全然、広まらなかった…。

 やっぱりエロに結び付けるとモチベーションが違う。」

 ハルミが足を伸ばしながら言う。

「う~ん よく よく考えてみると良いシステムだよな~。

 売春をする女性を雇って自分と客の衛生管理をしつつ 売り込みも出来る。

 で、女性目当てで、定期的に客が通ってくれるから 店としても利益が出るし、衛生環境も良くなるから ここ一帯の感染症の危険も下がると…公衆衛生的にも良いよな。」

 オレがジガに言う。

「だろ…ウチが素材を集めに行った時に寄った日本の湯屋がモデルだ。

 現地の人は1日に2回は風呂に入るらしい…。

 まぁ湯船じゃなくてサウナに近いんだけど、衛生状態も良さそうだった。」

「あれ…今、日本は鎖国(さこく)をしているよな。

 良く入れたな…。」

 今が1700年だから江戸時代の真ん中位だ。

「ああ…ただ キリスト教の布教をしない事を条件に オランダとは独占貿易をしていた。

 だから ウチは オランダの商人と言う事であちこち周っていた。

 日本人は、話が通じて礼儀が良ければ すぐに信用してくれるからな…。」

 そろそろ、男達が洗い終わり風呂に入って来るので、女性がいる中で 野郎の裸をずっと見ていなきゃ行けなくなる状態を避ける為にクオリアの横にいた状態から 前に出てジガとハルミの対面で座り直す…。

 と、クオリアが オレの後に付いて来て 2対3の状態で向き会い…男達が入って来る。

「ジガ…全員洗い終わりました…問題ありません。」

 湯女(ゆな)を まとめているユフィが (きわ)どく しゃがみ、風呂に入っているジガの耳の前で小声で言う。

「そっか良かった。」

 ジガが そう言うと男を洗い終わった 湯女(ゆな)達と風呂の(はし)でおしゃべりを始める。

「何が良かったんだ?」

 オレがジガに聞く。

「身体に しこりや(うみ)が無いか、熱、(かゆ)い所…痛い所は無いかを調べさせていた。」 

「何かの健康診断か?」

「クラミジア、淋病(りんびょう)梅毒(ばいどく)の簡易検査かな?」

 ジガの代わりにハルミが答える。

「あれ?それ何だっけ?」

「性感染症だ。」

 今度はクオリアだ。

「あ~そう言う事…。」

 確かに身体を売っている女性には死活問題だ。

「現状だと 1人あたり5~6人は産んで行く計算になるからな。

 性感染症を如何(いか)に防ぐかで、人口が大幅に変わって来る。

 で、ハルミ…ペニシリンは?」

 ペニシリンは抗生物質の一種で万能薬と呼ばれている薬だ。

「もう素材のアオカビは(そろ)っているから植物工場で培養(ばいよう)に入ってる…。

 ただ まとまった量を作るには 半年は掛かるかな…。

 問題はHIV…エイズ…。

 現状、コイツには『持たず』『作らず』『持ち込ませず』を徹底する位しか対処(たいしょ)しようが無い。」

「核兵器かよ!!」

 オレがツッコむ。

「場合によっては それ以上にヤバイ。

 人の欲求は止められないからな…。

 一応、漂流(ひょうりゅう)した奴隷達には 過去の病歴と3ヵ月以内の発熱と性交渉があるか問診して初期症状が出てない事は確認しているが、何処(どこ)まで信用出来るか…。」

 あ~この時代の医学的根拠(こんきょ)がない治療を受けたく無くて 嘘を付いている可能性か…。

「オレの時代だと『エイズは(おさ)える事は 出来ても完治する事無い』って言われていたが…未来だと如何(どう)なんだ?」

「あ~人工子宮とVRの普及でリアルで性交渉する事が珍しくなって もう菌自体は(ほとん)ど絶滅しているんだが、感染した場合の対処は主に2種類、マイクロマシンを身体に入れてピンポイントで菌を殺して行く方法か、血液洗浄…血を抜いて機械の中でウイルスを殺して、血を身体に戻す方法…。

 まぁ どっちにしろ今じゃ無理だな…。

 軽症なら薬で治せるが、重症なら抗ウイルス薬を一生飲み続けて(もら)うしかない。

 近いうちに血液型も含めて全員を検査したい所なんだが…注射針を使い回すと私自身がウイルスを広めかねない。

 衛生管理を徹底しつつ注射針を量産しないとな…。」

「それは消毒してもダメなのか?」

「一応、ガチの緊急時には 念入りに消毒してやる事もあるけど。

 ごく微量の感染でも一生問題を抱える病気に発展する事もある…特にエイズ関係はな…。

 だから消毒薬と注射器の量産してから検査だ。

 それまでは 感染症の説明をしてまわって、自覚のあるヤツを消極的にさせるか私の所に来るかさせる。

 こっちはジガも協力して欲しい…。」

 ハルミが言う。

「ああ…客と従業員を守るのがウチの仕事だからな。」

 大変 重要な話だが、絶対に男女で風呂に入った時に話す話題では無い感染症についての話題になり、次のお客を湯女(ゆな)が洗い始めた所でオレ達は風呂を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ