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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 8巻 (戦争は続くよ 何処までも)
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06 (防衛戦略)〇

 5年後…1939年ベルリン。

 ドイツは 戦争の機運が高まっていた。

 夜…暗い中 ベルリンの中心部にある宮殿広場でライトに照らされ、広場から見上げるドイツ国民の注目がステージに集まる。

 ステージの左右には バカ デカいスピーカー4台が広場に向けられており、人の声をマイクで拾って 最適な音響で、広場の国民に届ける。

 彼が演説の為に開発させた音響システムは かなり良好な仕上がりだ。

 広場には 数万人の国民が人々が集まり、一般家庭では ラジオで アディの登場を 今かと待っている。

 ナオ(オレ)は 総統が暗殺されない様に広場の警備だ。


 アディは 威厳に満ちた態度でステージに立ち、ドイツ国民の強い声援を受ける。

「勇敢なるドイツ国民よ、我々は 今、大いなる戦いに 身を投じる時が来た!

 我々は 世界に誇るべき偉大な国家を築く為に、敵に 立ち向かわなければ ならないのだ!」

「おおおっ」

 人々は一斉に拍手や歓声を上げた。

 アディの演説は いつも熱狂的な支持を受けていた。

「我々が戦う相手は、自由や民主 主義を掲げる連合だ!

 ヤツらの傍若無人(ぼうじゃくぶじん)ぶりは 諸君らが一番知っているだろう。

 ヴェルサイユ条約を押し付け、我々から穀物地帯を奪い取り、ドイツ国民を貧困に追いやって大量の餓死者を発生させた。

 そして 彼らは 議員達を懐柔して 議会の遅延させ、我々の偉大な国家を崩壊させようと企んでいた!

 これが彼らの言う、自由と民主主義だ!

 実際、今は亡き ヒンデンブル大統領が行った『大統領 緊急令』が無ければ、我が国ドイツは とっくの昔に滅びていただろう…。

 しかし! 我々は屈服しなかった!

 我々は ヤツら売国奴の手から国を取り返し、ここまで 経済復興をして来た。

 その恩恵は ドイツ国民なら誰もが知っているであろう。」

 アディの声は 広場に響き渡り、人々は その言葉に聞き入る。

「今ここで 私はドイツ国民に宣言をする…。

 私が国民と約束をした最後の1つの公約…ヴェルサイユ条約を ドイツ政府は 連合国側の承認無く 破棄する!!

 これに対して 連合国は また我が国に戦争を仕掛け、また無茶な要求をして来るだろう。

 だが、我々の国家は…国民は、不屈の民族であり、我々は 必ず連合に勝利する!

 さあ 立ち上がれ!…国民よ!…ヤツらが 我々から奪った領土を取返し…そして 世界に 新たなる秩序を築くのだ!」

 アディの演説は続き、人々は彼の言葉に心を奮い立たせた。

「おおおっ」「ハイル ヒトラー!! ハイル ヒトラー!!」

 国民達が熱狂をする。

「これで戦争の準備が整ったな…。

 歴史を吹っ飛ばす事になるが…本気で勝たせて貰うぞ。」

 オレは アディの暗殺を警戒する為、国民を見ながら そう言うのだった。


 1939年9月1日…枢軸国のドイツ軍によるポーランド侵攻。

 同年9月17日…()()()敵陣営である連合国のソビエト連邦がポーランドに侵攻。

 一応史実では「ナチスとソ連の密約が大戦の道を開いた」と言う事になっているが、ナチ党のトップのアディや オレが密約の内容を全く知らない事を考えると、これは密約なのでは無く、ドイツ軍の行動に ソ連が合わせて 来ただけだ。

 もしかしたら、ポーランドより先にドイツ軍を行かせない為の処置かもしれない。

 これにより、ポーランドは西と東からの両面での攻撃にさらされ、ポーランドは すぐに陥落…。

 ポーランドは ドイツ、ソ連に分割 占領され、一応 ソ連とは敵国と なっているが、戦場である西部戦線では 散発的戦闘のみで すぐに膠着状態となる…おそらく連合国側の建前の為の戦闘だろう。

 そして 同月のイギリスとフランスによる タイミングを見計らった ドイツへの宣戦布告により、ヨーロッパは 再び戦場と化した。


 1940年春…。

 ドイツ軍は デンマーク、ノルウェー、ベネルクス三国、フランスを次々と攻略し、連合国軍をヨーロッパ大陸から追い出した。

 その後は 史実とは違い、上陸作戦を防ぐ為に海岸部を固め、海上には大量のUボートを使って海域に侵入して来る イギリスの船を片っ端から魚雷で排除する。

 更に イギリスの軍事拠点と穀倉地帯を狙った空襲も行い、軍事拠点の空爆は それなりの損害は 出たが一応の成功…。

 穀倉地帯には 爆撃機を向かわせ カプセルに限界まで入れられた培養された『トビバッタの卵』を穀倉地帯に向けて散布する…これは ある意味で遅延式の生物兵器だ。

 イギリスが こちらの上陸を防ぐ為に部隊を配置したら、上空から敵部隊へ爆撃を行う。

 アディは イギリスに上陸するより、彼らを新造した高い船に乗せてから 海上で撃墜した方が 確実だと判断。

 なので、こちらの部隊を上陸させると見せかけて、敵を誘い出し 爆撃や魚雷で沈める戦術をすぐに確立して行き、相手の戦力をチマチマ削りつつ、イギリス軍をブリテン島に閉じ込める。

 そして イギリス軍のヨーロッパ大陸への進出を防ぎ、こちらは ヨーロッパ大陸の占領をし続ける。

 史実では フランスが綻びになって一時的に停戦状態になるはずだ…なので今の内に 叩いておく必要がある。

 そして、一応の連合軍であるソ連がいる西部戦線…。

 ポーランドを2つに分けて 散発的に争っているが、警戒の為に部隊を増強…徹底的な防御態勢を整え、食糧や弾薬の補給部隊のルートを しっかりと確保する。

 これは 第一次世界大戦で ドイツ軍は 補給部隊から崩された教訓から来たもので、ドイツ軍では 補給部隊の教育は 戦争前から徹底的に行われており、それが補給、工兵専門部隊の『国家労働奉仕団』だ。

 彼らは 基本戦闘はせず、ひたすらトラックを往復させて物資を現場に届け、敵が設置した地雷を排除し、戦闘で傷ついた路面を修復して防衛陣地を構築する部隊だ。

 前線部隊は 電撃作戦で前線を押し上げ、補給部隊が 占領した陣地を速やかに防衛陣地を固めて再占領をさせ 難くする作戦になる。

 この方法は 部隊が頻繁に動かないので 指揮官の管理がラクで、防衛陣地に攻撃を受けたと言う情報さえ入れば、そこが 食い破られたと判断して、1つ後ろの防衛陣地を強化する…。

 後は ゆっくりと現場の状況を偵察部隊で再確認して、再占領の計画を立てる。

 これなら現場が情報が捻じ曲げられたとしても、十分に防衛が出来る…防御部隊の基本戦術は これだけだ。

 で、攻めの前線部隊は 空からの爆撃と地上からの砲撃で 敵の数を徹底的に減らしてから、歩兵を突撃させて占領する方法だ。

 この方法は 歩兵を消耗せずに安全に敵を減らせるのが利点だが、爆撃機、護衛 戦闘機、砲弾と物資の消耗が早い…なので補給層を厚くする必要がある訳だ。

 今は 長期戦になる事を見越して、防衛網を徹底的に固めて 1人でも戦死者を減らす事…これが後々兵士の練度や数に響いて来る…今は徹底的に防衛戦術だ。


 総統室…。

「よし…ここも落ちたな…再占領の部隊も順調…。」

 オレがアディに言う。

「敵の数も多いが…これなら 十分に持ちこたえられる…占領地の住人は?」

「後方の拠点に移動はさせているが、基本は そのまま…。

 彼らには いつも通り仕事をして貰って、生産した物資をDAP通貨で売って貰って経済を回して貰っている…武力の統治じゃない ビジネスパートナーをしての占領 政策だな。

 これなら住民も大人しくなるだろうし、それを取り締まるこっちの負担も減る。」

「こちらが 直接指示して強制労働させた方が、効率が良いのではないか?」

 アディが書類を見ながら言う。

「それをやった場合、トップの数が限られている オレ達の負担が上がる。

 更に強制労働は 大昔に奴隷で実証されている。

 奴隷は どんなに働いても無給で働かさせるから、例え痛めつけて 無理矢理言う事を聞かせても 生産効率が そこまで 上がらない。

 だが、金を配って 飯を買わせて 酒を飲ませて 経済を回してやれば やる気が出て 意欲的に働く。

 今の状態だと 占領地で反乱が起きて面倒な事になる方が よっぽどの負担だからな。」

「占領地でもケインズ経済か…。」

「そっ…それに住民を怒らせなければ、戦後の統治も かなりラクになるよ」

「試して見よう…連絡は信用が出来る人物で密に…」

「了解…比較的 穏健な親衛隊に担当させる。」

「なあナオ…この戦争…勝てると思うか?」

 普段 強気に振る舞っているアディがオレに対して弱音を吐く。

 アディは 舞台役者だ…表に出ているのは役者としてのパフォーマンス。

 本音を話せる人物は本当に少ない。

「損益分岐点を見失わなければな…。

 もう 目的の地域も占領しているし、これ以上 欲を掛かないで 少し妥協してでも講和する…相手のプライドを傷つけずに 花を持たせて あげるのも忘れずに…。

 一件 こっちが損している様に見えても 戦争が長期化すれば 労働人口が減って大幅な赤字になるから…絶対に黒字の内に戦争を終わらせる。

 さもしないと 損失を度外視して 最終的には相手の民族を皆殺しにする絶滅戦争に発展する。

 そうなれば、勝っても負けても国は ボロボロ…。

 ロクに 生産活動が出来ずに 餓死者を大量に出す事になる。」

「分かった…外交部には徹底して こちらの方針を伝える。

 奴らは 相手国を恫喝(どうかつ)して要求を通そうとするからな…。

 後は 向こうの外交官に賄賂(わいろ)を贈って、個人の利益の為に 国を裏切らせて講和に向かわせる。」

「賄賂か…」

 人は自分が所属している国より自分の利益を優先する。

 その為、いつの時代でも戦争での交渉事には 表に出来ない賄賂が必ず発生する…そこの見極めも外交 交渉の一貫だ。

「どの位の賄賂が掛かるんだか…相場が分からないな…。」

「ソ連の諜報機関が 相手を懐柔する時に使う相場の金額が年収の10倍だったはず…。

 相手が外交官なら、もう少し掛かるかもしれないが…。」

「良く知っているな…助かる。

 それにしても金の話ばっかりだな…。」

「アディは経済は得意だけど、軍の指揮官としての才能は無い。

 オレも経済と数字が得意で個人技能も高いけど…数の暴力には敵わない。

 なら、数字と経済に重点を置いた戦略の方が向いているだろ」

「そうだな…やっぱり特例を出しても アジア人のナオを親衛隊に入れたのは 正解だった。」

「まだ結果が出ていないん だけどね…」

 オレはアディにそう言い、次の手の準備をするのだった。

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