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28 (停戦まで残り6時間…人類最後の戦争)〇

 西部戦線、無線室。

「何?トニー王国が宣戦布告だと?」

 無線を耳に当てている持った司令官()が言う。

『いいえ…交渉期間中の期間限定の攻撃です。

 ドイツ側からの依頼がありました。

 我々は 指定地域の防衛行動を行い、指定区画を占領しようとするなら攻撃を加えます。』

「我が国を裏切ると言うのか…」

『いいえ…攻撃をするのは、同盟国軍側に付いているトニー王国軍です。

 私達は 今まで通り人道的な活動に従事します。』

「くっそ…構わん、押しきれ!

 停戦前に何としても領土を確保するんだ!」

「はっ…」

 兵士は敬礼をして去る。

『交渉は決裂と言う事でよろしいでしょうか?』

「ああ…貴国は我々の物量にあなどっている…痛い教訓を学ばせてやる。」

『分かりました…学ばせて貰いましょう…では…。』

 無線が切れ ピーガーの様なノイズ音が走る。

 モールスじゃない?無意味な 電波を流してこちらを混乱させるジャミングか?


 西部戦線…同盟国軍側、塹壕。

 大量の戦車が横一列になり、塹壕を乗り越えようと こちらへ進んで来ている。

 その後ろには 大量の歩兵が 戦車を盾にしてこちらに 向かって来ている。

 その光景はドイツ側にとっては恐怖 そのもので、容易に戦意をくじかれる。

「戦え!…死んでも祖国を守るんだ!」

「もう、停戦なんだろ」

「くっそ…何としても生き残ってやる!」

 味方側の後方から 砲撃が始まり、塹壕の機関銃兵が戦車に向けて弾を撃ち続ける。

 だが、分厚い表面装甲に覆われている戦車では 効果は薄い。

「ちくしょおおお」

 無駄弾だと頭では理解しているが撃ち続けるしかない。


『こちらトニー王国軍…連合国軍側は 直ちに作戦を中止して下さい。

 こちらは 同盟国軍の交渉期間中の防衛行動を行います。

 同盟国軍に攻撃を加えた場合、こちらは武力行使を行い排除します。

 えっ?失敗ですか…え~ただいま 連合国軍に作戦の停止を進言しましたが、交戦に出るそうです。

 こちらは 宣言通り 武力行使を行います。

 前線の兵士の皆様には、大変な ご迷惑をおかけします…まことに 申し訳ございません。』

 上空からトニー王国軍の輸送機から スピーカーの音で彼らの宣言が聞こえる。


 次の瞬間…後方から地響きがなる…。

 後ろを見ると、マントを着た長い髪の巨人が こちらに向かって走って来る。

 右手には ライフルを持ち、左手には巨人の身体が入りそうな縦長の盾を持っている。

 その姿は まるで時代遅れの騎士の様だ。

「アトラス…」

 こちらでは アトラスと呼ばれているトニー王国の人型の土木重機 DLだ。

 塹壕を掘っている時にアトラスの動きは 重機の様にぎこちなかったが、今はそれが無く、本当に人の様に動いている…性能を隠していたのか?

 こちらに向かっているアトラスは12…いくら何でも分が悪すぎる。

 相手の戦車は200台は あり、その後ろには 万単位の歩兵だ…絶対に勝てない。

 戦車が正面にある無人の塹壕を通過…。

 一部、塹壕に足を取られる戦車もいるが、大多数は こちらに向かって来ている。

 敵との距離は もう100mも無いだろう。

 アトラスは 走ったまま 鉄条網を足で踏み潰し、ジャンプ…。

 塹壕内のオレ達が上を見上げる中、塹壕をジャンプで飛び越え、ライフルを構えて戦車に向かって突撃を仕掛ける。

 彼らの背中のマントには12の歯数の歯車であるトニー王国のマークが描かれている。


「よっしょと」

 塹壕を飛び越えたナオ(オレ)は素早く、ライフルを構え敵陣地に向かう。

 ライフルはGew88DL…Gew88をDLサイズに拡大した銃だ。

 総弾数は5発…のボルトアクション。

 口径も火薬量も拡大されている為、威力が高くなっているが、総弾数が少ない…弾は持って来ているが リロードが必要になって来るだろう。

 敵の戦車は 分厚く装甲に覆われているが、正面からの攻撃が出来ない…砲塔がまだ無く、敵が攻撃が出来る場所は 側面に開けられている窓からだ。

「こちらナオ…敵の位置をマークした。」

 DLの役割は 敵と高機動戦闘をしつつ 味方に敵の位置を的確に伝える事だ。

 DLのカメラ()が見た敵の位置は データリンクシステムにより、戦っている部隊全体で共有され、相手の位置が遂次(ちくじ)分かる仕組みになっている。

 これにより、連絡によるタイムラグを大幅に減らせる。

『了解しました…後方からの砲撃が来ます。

 着弾 予測地点から離れて戦闘を行ってください。』

 オペレーターがオレに言う。

「了解」

 目の前の戦車に 円形の範囲攻撃のマークが広がり、オレ達は 距離を取りつつ ライフル弾で履帯を狙って破壊…足止めをする。

 オレ達の2km 後方にいる ボルトアクション式の対戦車ライフルを持つDLの砲撃部隊が 弾道軌道で的確に砲弾を戦車の上部に命中させ、戦車を中のパイロットを 砲弾で爆殺する。

 続いて プロペラを斜め上に向けた エアトラに沢山の爆弾を積んだ 大量のエアトラ爆撃機が通る。

 爆撃機の中では 兵士が大量の爆弾が入ったカートごと地面に向けて落とし、中に入っている爆弾が 空中で散らばり、地面に着弾!

 戦車の後ろに付いて来ている 地上部隊に少数の損害と混乱を与え続ける…。

 そして 最後…着陸地点を確保した エアトラが降下し、黒いローブで身体を隠しているドラム24機が催涙ガスを塹壕内に ばら撒きつつ突入する。

 通常、毒ガスを塹壕に散布された状態で、味方部隊を塹壕に突入させる事は出来ない…味方もガスで巻き込まれるからだ。

 だが、機械であるドラムに化学兵器は 全く効かない。

 ドラム達は1人辺り1発で 確実に敵兵を仕留めて行く。

「上手い具合に作戦が決まったな。」

『こちら指揮通信車(CCV)…。

 DL部隊は このまま 敵の戦車の掃討…砲撃の指示は 任せます…。』

「了解…」

 オレ達は 機体を加速させ、敵戦車の履帯を中心にライフル弾で撃ち抜き、脚を止めて 後の掃除は 砲撃部隊に任せる。

 今回は 使う武器の制限もあり、まだ戦車と戦うには 火力不足だ。

 火器管制システムは正常に動いていて、敵の おおよそ の位置に向けた銃に 的確に補整を掛けて こちらが 望んだ場所に命中させてくれる。

「いや~ラクだね…」

 近づいて来る戦車を回避し、オレは 盾をライフルを軽く放り、腰のハードポイントから DL用の斧を取り出して 両手で しっかりと持ち、DLの5tの体重を乗せて戦車の上部に叩きつける。

 正面の装甲は分厚いが、戦車の上部装甲なら研磨した鋼の斧と 5tのDLの体重が加わる事で、容易に穴を開けられる。

 オレは 血まみれになった斧を抜き、捨てたライフルと盾を回収して 次の戦車に向かう。

 こちらのDLの数が12機だから200台の戦車だと1人辺り16.6台…しかも砲撃支援が完璧に受けられる今の状態なら非常にラクな仕事だ。

 これが 戦車に砲塔が付いてる場合だと、ここまで簡単には仕留められ無いんだろうが…。

「よし…表示されている全戦車の動きを止めた。

 トドメは砲兵に任せるよ 次は?」

『敵の歩兵の体勢が 立ち直りつつあります。

 DL部隊は敵の掃討を頼みます。』

「了解…」

 オレは目線を敵歩兵に合わせる。

 オレの顔の向きに追従して動いているDLの頭が歩兵に向き、こめかみ辺りに装着されている2門の機関銃が敵を(とら)える。

 ババババ…。

 火器管制システムで補整されて 放たれた1人1発ずつが敵の頭に命中し、相手が痛みを知覚するより早く即死させる…無駄弾が無く非常に経済的だ。

「頭部バルカンってイロモノだと思っていたんだけど、意外と効果があるな…。」

 背中に背負っている弾薬箱から 髪の様に伸びている弾帯(ベルトリンク)が 次々と こめかみの機関銃に吸い込まれる様に 発射されて行く。

 頭の向きと視線で相手を狙うのは ライフルを向けるよりも 速い。

 敵がライフルでこちらを攻撃して来るが、歩兵の弾では 致命傷には程遠い…。

 とは言え、手榴弾を複数発 食らえば、それなりに危険だ。

 大型の盾を構えて被弾を防ぎつつ、キルスコアを確実に稼いで行く。

 両軍とも あんなに必死で苦労していた歩兵達が、笑える位 簡単に この地上から消えて行く。

「何と言うか…人って本当に(もろ)いな…」

 オレは 一瞬で消えた大量の命を見つつ そう(つぶや)く。

『補給を受けたらDL部隊6機は エアトラに乗って移動して下さい。

 次は孤立したドイツ軍の撤退を援護します。』

「了解~」

 DLの髪が かなり短くなった オレ達 DL部隊は、新しい弾薬箱を背中に背負い、外の作業員の手によってベルトリンクを機関銃に繋げて貰う。

 機関銃の弾は アメリカのスプリングフィールド弾の為、DLの手で持つには小さく装填作業が出来ない。

『補給終わりました』

「ご苦労…」

 風が舞い 3機のエアトラが近くに着陸し、オレ達は2機ずつ分けれて 脚を抱えた状態で エアトラに乗り、簡易固定を受けて すぐさま 上昇して出発する。

「次は?」

『ドイツ軍の撤退 支援です。

 如何(どう)やら撤退命令を無視して勇敢に粘っているらしく、指揮官が 撤退支援の救助部隊を送ろうとするも、到着前に殺されて犠牲者は増える一方です。』

「あ~兵士が切り捨てを望んで、指揮官が撤退が遅れたのを 回収をしてようとしているのか…」

『そうです。』

「全く…自分達は 最前線で国を守ったと思って気持ち良く 死ねるが、軍にとっては 迷惑 極まりないヤツだな。」

『ですね…私達の仕事は 取り残された兵士の生存確認。

 可能ならば救出…拒否するなら その場で射殺して欲しいそうです。』

「救助部隊を送り続けている司令官を 諦めさせるのか…」

『ええ…』

『さて…おしゃべりは その位で…投下まで残り 3分。』

 エアトラを操縦している パイロットが話に割り込んで来て言う。

「了解…」

 オレはパイロットに短く答えた。

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