表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/339

27 (停戦 調停)〇

 連合国軍、司令部 会議室。

 ドイツ側からの交渉の為に代表団(私達)が送られた。

 会議室は重苦しい雰囲気を放っており、その中で代表団が停戦の為に政府からの書類を読み上げ、連合国軍の停戦の為の条件を聞く。

「我々が こう出向いた事により、陸海空 あらゆる戦闘行為の停止を願っております…つまり停戦です。

 人道的配慮から即時の停戦に ご同意下さい。

 今回の交渉期間中の即時 停戦に同意を求めます。

 互いに無用な犠牲を回避いたしましょう。」

 ドイツ側の代表団が連合国軍を指揮している元帥(げんすい)に言う。

 元帥(げんすい)は通訳を介して聞いた その言葉に不快な顔を浮かべ、彼らの言語で話す。

「72時間以内に この条件を飲んで下さい。

 一切の交渉は 認めません…それまで この戦争は続きます。」

 通訳が元帥(げんすい)の言葉を私達に伝える。

元帥(げんすい)閣下(かっか)、72時間も放置しないで下さい。

 それでは 大勢の兵が死んでしまいます。」

「あなた方が この場で条件を飲んで 署名してくれさえすれば、すぐに戦争が終わり、大勢の兵の命が助かります。」

 元帥(げんすい)が停戦の条件が掛かれた協定書を重要な案件では無いかの様に片手で乱暴に渡す。

 代表団は その損在(ぞんざい)な態度に眉をしかめるが、感情を押し殺して協定書を確認する…協定書の内容は酷い物だ。


 ドイツ側 外交用の列車、客室。

 協定書を受け取り 我々 代表団が拠点にしている列車の中の客室に入り、軍人達に 協定書を見せる。

「何だこれは!

 これは交渉では無い…命令だ!

 こんな無茶苦茶な条件があるか?

 ライン川の撤退、大砲、列車、食糧も渡せと、これでは全面降伏じゃないか…。」

 調停書をテーブルに叩きつける。

「これなら 最終的に敗戦するとしても、この条件での降伏よりマシだ!」

「そうだ…戦うしかない。」

 軍人達が口を(そろ)えて言う。

「また 数十万の兵を殺す気ですか?

 毎月25万人のアメリカ兵がヨーロッパに上陸している。

 マルヌ、カンティニー、カンブレーも 落とされた。

 もう この条件を飲むべきです。」

「これから冬だぞ。

 列車や食糧が無ければ、撤退時に大量の餓死者が出る。

 それなら 戦場で 名誉の死を与えてやるのが 良いのではないか?」

「名誉ですか…。

 私の息子は 西部戦線で戦死しましたが、もう名誉も感じません。

 感じるのは 生きている私達です。

 思う所はあるでしょうが、今は 無駄なプライドを捨てて頂きたい。

 至急 電報を打ってくれ、指令部に連合国の条件を伝えるんだ。」

「はっ」

 その場にいた兵士が電報を打ちに部屋から出る。


 同日 トニー王国 外交島、市役所 会議室。

 会議室には トニー王国の各都市長と軍関係者が話をしている。

 そして、そこには トニー王国とドイツ政府との仲介役のドイツの外交官もいる。

 ドイツと何かの交渉をしているのか?

「よく来てくれました」

 バートがナオ(オレ)と握手をして言う。

 オレは爆弾の首輪が外され、服は 気慣れた甚平姿…腰には 愛銃である リボルバーとウージーマシンピストルが ホルスターに入れられている いつもの服装に戻った。

 ドイツ側は 重っ苦しい雰囲気の中スーツでビシッと決めていて、トニー王国側は 彼らのスーツ文化に逆らう様に GパンにTシャツと私服に近く、軍関係者は トニー王国軍の制服であるパイロットスーツを着ている。

 オレは席に着く。

 ドイツの外交官は 真剣な様子で 雰囲気が非常に重く、逆にトニー王国側は服装もあって おおらかな雰囲気だ。

「さて、集まりましたね。

 トニー王国軍に 新しい依頼がいました。

 では お願いします。」

 バートがドイツの外交官の方を向いて言う。

「はい…トニー王国軍に依頼したい仕事なのですが…。

 現在、ドイツ主導の元で フランスとの停戦交渉に入っています。

 ですが フランス側は 停戦交渉中の休戦に反対し、現在 アメリカ、ブリテンの協力の元、停戦前に少しでも占領地を広げる為に損害を無視した攻撃を続けています。

 こちら側は 1人辺り10キルはしているのですが、それでも 敵の圧倒的な数には敵わず 押し負けています。

 あなた方には 停戦交渉中の間の前線を支えて欲しいのです。」

 ドイツの外交官が言う。

「確かに これで戦争が終わるなら、私達が戦闘する価値もあります。」

「ですが 我が軍は 質では 連合軍に勝っている自信はありますが、連合軍の物量には 敵いません。

 長期戦をすれば すぐに すり潰されるでしょう。」

 バートの隣の軍の指揮官が言う。

「ええ…それは 分かっています。

 なので、仕事の期間は1週間以内…。

 私達が交わす 契約内容は 連合軍側にも知らせます。

 同盟国軍に参戦するのでは無く、あくまで我々が依頼を受けた形を取ります。

 これで如何(どう)でしょう?

 報酬は後で専門家に決めて貰うとして トニー王国は この依頼を受けるつもりです。」

「報酬は 私が政府と交渉して必ず出させます。」

「時間的に間に合わないので 準備だけは させておきます。」

「よろしく お願いします。」

 ドイツの外交官がそう言うと一刻も早くドイツと連絡を取る為に部屋から出て行った。

「さてと…詳しい作戦を組みましょう…。」

 バートがそう言い、トニー王国軍 初の殺しを目的とした作戦が始まった。


 夜…列車の中。会議室。

 寝台車の中の会議室で背広を着た政府から選ばれた代表団が並んでいる。

 そして、敗戦国になるであろうドイツの代表団役人が部屋に入り座った。

「皇帝の退位が決定しました。

 ドイツ軍は命令を拒否し、脱走者も出ています。

 新政府には 最大限の努力で義務をはたして貰うつもりです。

 しかし国民は 飢餓と混乱に巻き込まれる事になります。」

 代表団が連合国軍の元帥(げんすい)に告げる。

「敗戦国の問題など 私達には 関係ありません。

 我々は 妥協は 決してしません。」

 通訳が元帥(げんすい)の言葉を翻訳して私達に伝える。

 私達は、彼らの態度に怒りがこみ上げて来るが 我慢し、調停書にサインをする。

「議事録に記して下さい。

 休戦協定は 今から6時間後の11月11日午前11時に有効になります。」

「よし、このくだらない戦争は これで終了だ。」

 元帥(げんすい)は そう言うと立ち上がり、列車を後にした。


 前線 指令所。

『本日11月11日午前11時を持って、全戦線でのあらゆる戦闘行為を禁止とする。

 11時以降、戦列の前進は 決してしてはならない。

 繰り返す、本日11月11日午前11時を持って、全戦線でのあらゆる戦闘行為を禁止とする。

 11時以降、戦列の前進は 決してしてはならない。』

 無線、電報、ラジオ、飛行機から落とされるチラシと あらゆる媒体を使って停戦の指示が出る。

「くっそ…兵達を中庭に呼べ

 こんなクソみたいな状況は 終わりにしてやる。」


 兵達が中庭に集まる。

「諸君らは 両親、妻、子供に帰れる…戦争が終わる。

 何千、何万の兵士達の犠牲が、今報われようとしている。

 ここで成し遂げた事を称賛して貰えるだろう。」

 司令官が兵士達に言う。

「だが同志達よ…英雄として歓迎される道も 残されている。

 それとも 後 一歩の所で逃げて来た臆病者と思われたいか?

 兵士諸君…私は 終戦後、キミ達が臆病者として 扱われる事に我慢がならない。

 これから敵を全力を持って攻撃をする。

 この土地は我がドイツの物なのだ!

 午前11時まで まだ時間がある…。

 その時間 前に我が土地を取り戻し、この戦争を必ず勝って終わらせるのだ!

 進め!突撃せよ! 恐れる事は無い 我々の先人達同様 我々には 神が付いている。

 勝利は我が軍にあり!!」

「嫌だ…戦いたくない。

 オレは家に帰るんだ!」

「そうだ!そうだ!

 これで 戦争が終わるんだ。

 死にに行く事は無いじゃないか…何をするっ!?」 

 戦いを拒否した兵士が羽交い絞めになり、私の前に連れ出され、私は ルガーP08を懐から出し、頭を撃ち抜く。

 本部からは 即時撤退命令が出ており、ここで戦うのは 命令違反だ。

 だが、情報の伝達が遅れた事にして 午前11時まで現場の兵士達が命令を無視して()()()に戦闘を行う事は 十分に可能だ。

「さあ行け!同志達よ英雄になってこい!」

 私は 兵士達に命令違反をして自発的に戦う事を強要した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ