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26 (捕虜からの攻撃)〇

 武器が取り上げられ、拘束されて 捕虜になったナオ(オレ)達は トラックに乗せられ、トニー王国軍が土地を借りている捕虜収容所に向かった。

 トニー王国軍兵の監視が付いているが、トラック内は 快適その物で 逃亡する兵士もいない。

 通常 捕虜収容所では 捕虜と管理者と言う明確な立場が存在し、管理者による いじめは日常茶飯事だ。

『重要機密を持っていて それを吐かせる為に暴行を加えている』と言う大義名分で、何も知らない捕虜を拷問して殺したりする事も良くある。

 その為、捕虜収容所の職員には サディストが多く、第二次世界大戦 終了後 位までは 捕虜の為の条約なんて実質 守られていない。

 で、こんな状況の為、収容所からの脱走する兵士が多発し、それを防ぐ為の監視を用意し…と、戦争中にも関わらず、捕虜が収容国の国力を圧迫してしまう事態が発生する。

 自国は 勝つ為に国家総力戦を行っているのに、条約では 捕虜達を人道的な扱いをしないといけないので貴重なリソースが奪われる…そりゃあ、捕虜に対する扱いも悪くなるのも当然だろう。

 だが、トニー王国は 連合国軍、同盟国軍 共に味方であり敵だ。

 それに人道支援だけで戦闘は 行っていないので、捕虜の為に使える 人員も物資も まだまだ余裕がある。

 なので、ちゃんと条約を守った捕虜の対応が期待 出来る真面な国で、両軍共 戦場の過酷さに耐えられ無くなれば 相手国の捕虜になる…これが地味に自国の戦力に効いて来る訳だ…オレも そんな1人だ。


 さて、捕虜収容所に辿り着く。

 収容所は 連合国軍と同盟国軍で分けられており、オレはドイツ側なので 敵である連合国軍側の収容所だ。

 大量の収容所が 規則正しくズラリと大量に並んでおり、数が足りないのか今もトニー王国の工兵部隊が新しく施設の建築している。

 そんな中 オレ達は 隣の新しく作られた収容所に入れられる。

 自力で動ける兵士は 裸にされて シャワー室に入れられ、パイロットスーツを着たトニー王国軍 兵士に徹底的に石鹸で洗われる。

 3割程いる女性兵士に当たれば ラッキーだが、残念ながらオレの担当は野郎だ。

 綺麗に洗われた全裸の兵士達は 次の部屋に行き、S、M、L、規格外の4種類の体格に分けられる…オレはSサイズの場所だ。

 両軍とも体格が良いので、Sサイズが珍しく 人数が少ない。

 兵士に渡されたのは 白色のガウンタイプの病院着だ。

 まぁ撃たれたヤツもかなりの数いるし、病院着とは 共有なのだろう。

「よっと…」

 オレは 前開きの服に身体を通して、前を紐で結ぶ。

「野郎のノーパンなんて誰得 何だか…。」

 そして最後に管理番号が入った首輪が付けられ、鍵をされる。

「うわっ…エグイ管理の仕方をするな…。」

 首輪をオレに 付けたトニー王国軍の兵士が こちらに不審な目を向けるが、オレは気にせず 他の体格の兵士と合流して 次の大部屋に行く。


「ようこそジェノバ捕虜 収容所へ…。

 私達 職員はあなた方を歓迎します。」

 マネキンと共に 舞台に立ってている女性職員がマイクを持って言う。

「まずはルールの説明です。

 捕虜の管理を委託されているトニー王国の仕事は、あなた方のお世話をし、捕虜の良質な状態を維持する事です。

 捕虜の品質は 私達が受け取る報酬にも影響が出ますので、これは 確実に守られます。

 あなた方は 外交の取引 材料として使われ、のちに 安全に本国に帰国 出来る事でしょう。 」

 兵士達から歓声が聞こえる。

「ですが…安全に帰国する為には、あなた方の協力が必要です。

 このマネキンに注目して下さい。

 あなた方の首にある首輪と同じ物です。

 これは小型の爆弾となっており…」

 女性職員がポケットからスイッチを取り出し、ボタンを押す。

 ボンと少量の火薬が爆発がし、マネキンの首が切断…床に頭が転がる…。

「ひえっ…」

「ちなみに首輪を外そうとしても爆発します。

 こちらの指示に従ってくれている内は爆発させません。

 くれぐれも脱走は しないで下さいね…。」

 ざわざわ…。

「上手いな…」

 首に爆弾を取り付ける事で 兵士達の行動を抑制して、脱走の可能性も潰した。

 これにより 少ない人数で この大規模な捕虜の管理が出来るだろう。

 長い間トニー王国には行っていないが、オレがいなくても ちゃんと国は機能しているようだ。

 そう思いオレらは 隔離施設に案内された。


 生活は(いた)って快適だ。

 1人部屋に4台の机付のベッドがあり、壁には棚もある。

 1人部屋に4人は狭いが 部屋のドアには鍵穴が無く、簡単に部屋の外に出られる。

 オレ達が生活する区画には 部屋の他に食堂、トイレ、シャワー室、図書室に、トレーニングジムと設備が充実している。

 ただ、この区画の外へはいけない…何かしらの方法で外に出たとしても 出た瞬間に首輪が爆発して首が切断されるからだ。

 ここでの生活は 監視カメラでトイレやシャワー室まで監視されているが、尋問して調書を取ったら 基本 自由だ。

 通常 捕虜は 肉体労働をさせられるのだが、監視のトニー王国人を付けるのが面倒だったのか、労働は無い。

 食事は 緑のポレンタが基本だが 十分な量が食べられ、捕虜としては好待遇だ。

 で、シャワーでオレの身体を洗った兵士がオレが全身義体である事を見抜き、オレがトニー王国で神の地位にいるナオだと分かり、オレの食事に必要な発電用のファントムキューブと電源コードが返却された。

 オレは ファントムのキューブにあるUSBポートにケーブルを挿しこみ、もう片方のマグネットの端子を首の後ろに接続…これでオレの食事が出来る。

 オレは食事をしながら柔らかい ベッドの上に横になり2階のベッドの天井を見上げる。

 ここに収容されている捕虜は部屋の数から考えて約1200人…。

 で、そんな収容施設が、横にズラーと並んでいる訳だ。

 確か 記録では 第一次世界大戦で捕虜になった兵士は 全世界で800~900万人だったはず…。

 前回の世界だと 第一次世界大戦には トニー王国を関わっていなかったが、今回は予定より かなり早く参戦している。

 どう低く見積もってもトニー王国の人口20万人より、捕虜の数の方が何倍も多いはずだ。

 しかも 自動化をさせようにも トニー王国の最大の労働元であるドラムを捕虜に見せる訳にもいかない。

 その為、可能な限り人手を掛けない方針でも、結構な激務になっているはずだ。

「さて この問題…如何(どう)やって解決しているんだか…。」

 オレはそう思い目を閉じた。


 トニー王国、捕虜島…都市長室。

 トニー王国は 捕虜による攻撃を受けていた。

 戦争開始時は 人道的 立場を貫いていたトニー王国だったが、戦争の規模が際限なく拡大し、すぐに現地の収容所がいっぱいになって行った。

 現場では 施設の拡張を続けているが、トニー王国と距離が離れている為、本国からの補給では兵站に多大な負担が掛かる。

 そこで 使われていない無人島を整備して、捕虜島にする事を決定。

 ここは 周囲が海に囲まれていて、その海も良く荒れる為 船を使ったとしても脱出が 不可能。

 つまり、施設だけを造れば良い訳だ。

 そんな訳でドラムを使って 急ピッチで収容施設を完成させ、200万人を収容 出来る施設を作った。

 ここが満員になれば いよいよ 受け取り拒否をするしか無くなる。

 唯一良い所を言うなら 資金は いつも通り潤沢だと言う事 位だ。

 ここの臨時の都市長になったクラウド()は 書類を確認しつつ、今後の地獄を考え、頭痛を忠実に再現してくれる この機械の頭を抱えた。


 医療は現地で任せ、通院が必要無い元気な捕虜達が 昔の奴隷船の様な すし詰め状態の潜水艦で 次々と捕虜島に上陸して来る。

 肉付きも 顔色も良く、指示も忠実に従ってくれている。

 ここでは 管理出来る 人が少ない為、捕虜を半分 放し飼い状態だ。

 捕虜の位置は 首輪から発せられる信号で常時 監視しているので、そこまで問題にならないし、何より暴力も振るわず ある程度の自由が保障されている この環境を 彼らは 失いたくないはずだ。

 その横では、補給物資を乗せた何機ものエアトラを1日に何便も飛ばし、トニー王国の人口の10倍の捕虜の生活を支え続ける。

「おっクラウドか…久しぶり…」

「あ~実際に会うのは 何年ぶりだろうな。」

 潜水艦からナオが出て来る。

 名簿で確認していたが ナオは この便だったか…。

「それにしても 捕虜になって帰国するとはな…。」

「現場の指揮官に嫌われていたからな…あのままじゃ使い潰されていた。

 それで…戦争は?」

「交渉には もう入ってる…同盟国軍が負けるのは ほぼ確定。

 後は どこまで傷を減らせるか かな…。

 ただ連合国軍側は、まだ戦いたい見たいだ。

 明らかに支払いが不可能な賠償金を提示している。」

「あ~それ、ガチの金額…。

 戦闘機を作る為に掛かった出費を賠償金で回収しないと 色々な国が経済危機に陥るからな…ほらイギリスの時と同じ…」

「独立戦争の時の話か?

 借金を踏み倒した方が被害が少ないヤツだな…」

「そ…そして律儀に借金を返す為に増税して 国民に負担を掛けるから、国の情勢が不安定になる。」

「全然 学習しないな…。」

「まぁ アレを体験している人って オレとクラウド位だからな。

 人は死ねば 持っていた情報がリセットされるから、歴史を見て見ると 何度も同じ事を繰り返す…。

 で、それは こちらの強みでも ある訳だ。」

「やっぱり、政治や経済はナオの方が優秀だな。

 手伝ってくれないか?」

「いやいや…オレ捕虜で 一応ドイツ人だし…。」

「そんなの書類で如何(どう)にでもなる。

 今 必要なのは ナオの頭だ。」

「今、この国にいる神は?」

「私とナオだけだ。」

「あらら…ハルミは前線か?」

「そう…クオリアとジガは ブリテンのドーバー支店。」

「分かった…後で適当な理由を付けて オレを回収してくれ…。

 この首輪も外さないと行けないし…そんじゃあ…」

 オレはそう言うと 捕虜たちの列に並び、収容所まで歩き始めた。

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