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03 (独立宣言)〇

 1911年1月1日…イギリス(ブリテン)…軍 執務室。

 この日 クラウド商会を経由して、アメリカ、イギリス(ブリテン)、ドイツにトニー王国の独立宣言の書類が届いた。

 国家の要素は『国民』『主権』『領土』の3つだ。

 国民は、そのままトニー王国に住む住民の事だ。

 次に主権だが、これは自国の法律を守らせる能力…。

 法執行機関、警察や軍がこれに当たる。

 国は本来 無秩序に動く人達を、法律と言う名目とそれを守らせる強力な武力組織により、無理やり人を従わせて、それを国民としている。

 その国民が法律に全く従わないなら、国として成り立たない訳だ。

 そして、先の2つは、十分に条件を満たしている訳だが、領土は、この国を独立させる上での 唯一の問題になる。

 現在 トニー王国の領土は 本島のユートピア島、周辺の小島、最 東西南北の小島から240kmの海となっている。

 ここは 海のど真ん中だが、どこかの国が領地として 主張している可能性がある。

 その場合、主張している国から 土地の買い取るか、もしくは 国の周りの防衛力を強化して、侵攻して来る他国の軍を追い返し、実質の国とする。

 ここで、暴力で他国に こちらの言う事を聞かせる為の軍が必要になって来る訳だ。

「トニー王国?新しい国家か…。

 それにしても…この時代に まだ私達が把握していない国があるとはな…。」

「場所はこちらです。」

 秘書が海図を出して指を差す。

「死の海域か…複雑の海流とコンパスを狂わす 磁気異常がある危険海域…。」

「ええ、昔から あの海域では船を失う事は有名で、進路を変えて迂回していました。

 ただ 帆船ならともかく、蒸気船や軍艦まで沈んでいるのは 不可解でしたが…」

「そのトニー王国とやらに 撃沈されていた訳か…。

 自分達の存在が知られない様に 上手く隠れていたんだな。

 国の存在さえ 知られなければ、侵略されて植民地にされる事もない…」

「そうです。

 ですが、問題なのは、トニー王国が 我が国に 主権を主張 出来るだけの武力を手に入れていると言う事です。」

「それは ありえるのか?」

「まず あり得ないでしょう。

 これを見て下さい。

 死の海域の面積と トニー王国から送られて来た地図から陸地の面積を算出しました。

 これに よりますと、陸地面積から考えて 200万人分の食料が限界…。

 ただ、これは 我々が使っている最新の科学肥料を使って食料を生産している仮定での計算です。

 肥料を使わないなら、精々20万人の維持が限界でしょう。

 トニー王国の人口は 200万人の国と自称していますから、それが本当なら化学肥料の技術を取得している事になります。」

「大量の肥料が作れると言う事は、大量のアンモニアと、大量の硝酸が手に入る。

 つまり、火薬の大量生産も出来るはずだ。」

「ええ、そして彼らが使用している銃は スプリングフィールド ライフルです。」

「は?あれは アメリカで配備が始まってから まだ5年程度だろ…アメリカの軍艦を沈めて、コピーしたのか?」

「分かりません。

 ただ、あの海域は迂回が基本になっていますから…」

「もしかしたらアメリカの傀儡国(かいらいこく)か?」

「?と言いますと?」

「アメリカが トニー王国に技術提供をして、条約を結んでいないトニー王国に汚れ仕事をさせるつもりだ。

 これで アメリカは、表向き綺麗でいられる」

「む…確かに…それは私も考えていました。

 我々の科学技術は、途方もない数の偉人の成果をかき集めて成り立っています。

 死の海域の面積と人口で、これだけの発明をするのは不可能です。

 普通に考えるなら、後ろに何処かの国が付いていると考えて良いでしょう。」

「うん、分かった。

 過去にトニー王国と接触した記録があるのかを調べてくれ…どんな些細な事でも良い。」

「了解しました。」

 秘書はそう言って書類を置いて下がる。

「ふう…トニー王国か…。

 また戦争が始まるかもしれないと言うのに…面倒な事を…。」

 私はそう呟き、次の作業に取り掛かった。


 数日後…。

「これだけか?」

 秘書が持って来た書類は 6枚…。

 今の時代、発達した文明なら 隠す事は 不可能だ。

 どっかに痕跡が残っていると思っていたんだがな…。

「ええ、怪しい情報は 今の所 2件。

 1つは、独立宣言の書類が クラウド商会を経由して届けられた事です。

 そこで、クラウド商会を徹底的に調べました。

 それで出て来たのは、アメリカ側の商会が使っているバギーカー、バッカスです。

 これは工業用のアルコールを使って動いています。

 そして、このバッカスは、アメリカの独立前にも使われています。」

「何ぃ?」

 独立戦争は1775年…それより前に車が有った?

「アメリカ独立戦争で、補給部隊として水を使った動力付きの馬車の記述があります。」

「水…蒸気機関か?」

「恐らくは…蒸留酒(ブランデー)で動いていた可能性も否定は出来ないのですが…。

 この補給を担当したのが、クラウド商会です。」

「車が普及したのは割と最近だろう」

「ええ、1900年からです。

 ですが、最初に蒸気機関の車が発明されてのは、1703年です。

 場所は ケンブリッジ大学…開発者は 蒸気機関の学者 ジェームズ・ワット。

 この年は ロバート・フックが、神に連れられて行方不明になった年です。」

「アトラスだな。それは私も知っている。

 確か、医学の知識がある 異国のメイド学生が、フックを治療した時の騒動だな。

 その後、メイド学生は火あぶりに あい、神がメイドを火から守り、地上に降臨してメイドを助けた。」

 その光景は、当事者が その光景を描いた 宗教画になっている。

「そうです。

 神は人の3倍の身長で、黄緑色の光を放つ巨人として現れ、当時 神の名を騙って好き勝手していた大司教に文句を言いました。

 その時のメイドが、ジガ・エクスマキナ…。

 エクスマキナは、トニー王国が信じる 道具を開発する神の名前です。」

「と、言う事は、王族の娘だったのか?」

「恐らくは…。

 彼女は トニー王国からケンブリッジ大学に留学して来た 初の女性 留学生です。

 ただ、政府の書類は移動中に紛失し、しかも 当時では認められない女性 学生…。

 なので、メイドとして働きながら学ぶ事になりました。

 これは、アイザック・ニュートンの日記に残されています。」

「良く調べられたな。」

「神の降臨の前後ですから…歴史学者達が 当時の書類を片っ端から集めていた みたいで…。

 ケンブリッジ大学に聞いてみたら、あっさりと分かりました。」

「ふむ…と言う事は、当時からスパイ活動をして技術を盗んでいた訳か…。」

「そうなりますかね…。

 まさか 他国に気付かれずに 帆船で あちこちの技術の蓄積をしていたなんて…驚きました。」

「全く厄介な国だ。

 よし、まずは友好的なアプローチを取って、学者をトニー王国に入れよう。

 向こうの国の文化、文明レベル、政治体制、後は、崩す為の人や政治的な穴を調べないとだな。

 こちらの植民地にして、補給基地を建設 出来れば良いのだが…。」

「まずは これから始まりそうな戦争に備えませんと。

 それに、このタイミング…トニー王国の介入が気になります。」

「そうだよな…アタタ」

 私はそう言った所で、胃が痛くなり、引き出しを開けて 薬を取り出して飲むのだった。

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