15 (石鹸)〇
翌日も雨…。
流石に雨が何日も続いて長期休暇状態になったら、食料問題に発展する…。
現状だと後2日で 昨日作ったばかりの保存食に手を出す事になる。
今日も住民達は竹の家に こもっている…。
が、流石に娯楽設備が一切無い この状況で休日を満喫出来る訳も無く、竹を編み込んだり、竹の樽を作ったりと言った内職作業をゆっくりとしたペースでやっている。
ハルミの調理部屋を見て見ると 男性の奴隷が圧倒的に多い中、十代後半位の全裸の美少女達が火が付いている窯を中心に集まっていて、塩分まみれだった自分達の服を洗って干している。
オレが部屋に入って来ても悲鳴を上げる訳も無く、いつも通りで 異性に裸を見られる事への羞恥心の文化が無い みたいだ。
彼女達の話によると ナオとハルミが昨日作った石鹸の話を聞きつけて来た見たいで、一人の少女が ハルミに全身を洗われている。
「肌がピリピリしたり痛かったりはするか?」
ハルミが洗いながら少女に聞く…。
ああ…直接 性奴隷達の身体に使ってテストしているのか…。
ただ、相当に身体が汚いのか ハルミが いくら石鹸を付けた手で擦っても泡が一切立たないし、垢もボロボロと落ちて行く。
この時代の価値観的に 石鹸は高級品であり、庶民が手に入れる事は 出来なくは ないが難しく、水を含んだボロ布や手で身体を擦って垢を落とすのが基本だ。
つまり、彼女達は 石鹸の使い方も洗い方も分からない状態なので、ハルミが洗って あげている訳だ。
「ほい終わり…ユフィ…石鹸を落としてこい。」
ハルミがそう言うと、ユフィと言われた全裸の少女が、外に出て来て雨のシャワーで身体の石鹸を流している。
栄養が少ない生活だった せいか発育が遅く、少しだけ くびれた身体に小さな胸…白い肌…子供っぽさを持つ童顔の顔は、オレの好みに どストライクなのだが、周りの竹の家から男達が見ているにも関わらず、気にせずに…と言うより、むしろ男に見せつけるように身体を洗っている。
あ~この娘は純真無垢な 少女時代を とっくに卒業しているんだな…。
まぁ…この時代では生殖能力を得る10~13歳辺りで成人で、速攻 子作りして子孫を増やして行かないと民族が絶滅しかねない社会だからな…生娘が生まれる訳も無い。
「これで衛生問題も いくらか良くなるかな…。
特にクロエの子供のミアにはな…。」
ハルミが言う。
オレが助けた子持ちの黒人女性…。
クロエは 白人の女の子の赤ん坊のミアを竹の桶に石鹸と ぬるま湯に入れた泡風呂に入れ、まだ薄いミアの髪の毛を洗っている。
「石鹸のアルカリ濃度をぬるま湯で薄めて落としている…。
新生児の皮膚に影響が出るかもしれないからな。
とは言え、これで新生児の死亡リスクが大幅に下がる…。」
「死なない?殺さない?」
クロエがカタコトの英語でハルミに聞く。
「ああ…この子はちゃんと生きている 私が死なせない。」
「殺さない?」
オレがハルミに聞く…。
「ああ…マーティン・アーサー・クーニーって言う やぶ医者が、保育器を作って未熟児の治療の成功を広めるまで、未熟児は遺伝的に劣っていて将来の見込みがないと言う事で殺処分対象だった。」
「自然淘汰説としては正しのか…。」
環境に生きられない個体は子供を残せずに死に、環境に適応出来る個体のみ 子供を作る事が出来るので、世代交代を重ねて行くにつれて 環境に適応出来ない遺伝子は排除され、遺伝子の最適化して行く…。
その理屈を人工的にやっているって事か…。
「まぁな…。
で、この子は その未熟児…原因はクロエの栄養失調だな…。
私が見込みなしと判断して この子…ミアを殺さないか 心配なんだろう。」
「で、その見込みは?」
「この時代の人間が見捨てる位にはヒドイが、保育器を急いで作ろうとしない位には優良児…。
性奴隷なのに妊娠期間中に本番行為をしなかった事で、面倒な感染症の類を防げている。」
「性感染症の類か?」
「いや…単純に雑菌が含まれている精液を防衛機構が まだ出来ていない子供にぶっかけると 感染症になるってだけ…。
医師が妊娠中の性交が禁じるのは これが原因だな。
で、ミアは 身体を清潔にして栄養のある物を食べさせていれば 取りあえずは 大丈夫…。
体温も自分で維持 出来ている みたいだしな…。」
「なら良かった。」
ハルミは クロエが聞き取りやすいように単語を事にしっかりと区切った英語で伝え、クロエは理解したようで、ほっと一息を付いた。
「さて…それじゃあ、ナオは男達を頼む…私はソープ嬢じゃないからな…。
ジガが いれば任せたんだけど…。
と言うか そろそろ帰って来る頃だよな。」
「ここで営業されても困る…。
まだ貨幣すら無いんだからな…。
まぁ1人2人洗ってやれば、覚えるだろう。
それじゃあ…。」
オレはビーカーに入れられた石鹸を持ち、雨のシャワーで石鹸を洗い流している女性達を凝視している男性達の元へ向かった。
女性達の裸を見ている男達の部屋に行くと、竹の桶を作っているクラウドがいた。
「何だ いたのか…。」
「まっいつも寝泊りに使っているのは ここだからな…。
それより、石鹸が出来たって?」
クラウドは女の裸より石鹸自体が気になる見たいだ。
「石鹸を扱った事があるのか?」
「商品としては無い…が、私も1つ持っていた。
駆け出しの時は石鹸より商品を優先して 大きな病にも掛かっていたが、石鹸を使い始めてから 大きな病には掛からなくなった。」
「そんなに高かったのか?」
「ああ…7シリング…いや…1週間分の収入はした。」
クラウドが オレが この時代の相場を知らないと思い、労働日数に置き換えてくれる。
1シリングは10円だから70円…非常に安いと思うが、1日の労働賃金が1シリングの時代だ。
現代の価値に換算すると5~6万円位か?
PCのアップグレードをしたり、液晶ディスプレイを買い替えたり 出来ると思えば 確かに痛い金額で、しかも石鹸は消耗品だ。
確かに買うのを躊躇するか…。
「なら石鹸の使い方も知っているな。
オレと一緒に何人か洗ってやって皆に石鹸の使い方を教えてくれ」
「私が…高価な石鹸を…奴隷に?」
プライドの高いクラウドの価値観では 黒人奴隷の身体を洗うと言う行為は、自分が奴隷を使う側じゃなく奴隷に奉仕し、使われる側になると言う事だ。
クラウドは露骨に嫌そうな顔をする。
「そ…ここでは黒人も白人も無い…皆が対等だ。」
「対等じゃない自称神様がよく言う。」
「まぁごもっともで…。
ただ、オレは教会で祈られるだけの神になる つもりは無いよ。
で、誰からやる?」
オレは奴隷に聞き、適当に1人選んで説明をしながら頭を洗って行く。
最初は オレが石鹸を擦った時に出る白い泡を警戒していたが、安全だと理解してくれたのか…。
次々と裸になり、自分で身体を洗い始め、雨のシャワーを浴びて行く。
オレが洗っている途中で、素材調達に行っていた ファントムに乗ったジガが 戻って来て男共の身体を洗う営業が始まり 大変好評だ。
その光景を見ながら クラウドは渋々と奴隷達が使った石鹸を使って自分の身体を洗い、雨のシャワーで身体に付いた石鹸を流す。
結局、クラウドは奴隷を洗う事無く その日は終わったのだった。