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05 (筋力アシストスーツ)〇

 ナオ(オレ)は 半分は 本気じゃなかった。

 オレのアドバイスを聞いたドレイクは、学校が終わった放課後に職業訓練校のクラブ活動に参加して大人達との交流を深め、ロボットに興味がある人を集めて『ロボット研究部』と言う クラブの設立した。

 その1ヵ月後には 計画書の作成を行い、銀行に提出…Dランクの研究予算を手に入れた。

 オレはCランクも合格出来ると踏んでいたが、ドレイクは 基本的に 何の研究でも通るDランクの研究予算を勝ち取った。

 実績作りの為の研究に そこまで金が掛からなかったからだ。

 彼は 金が掛かる特注品では無く、既存の人工筋肉を使っての開発に乗り出した。

 それは 人の筋肉増強計画だった。


 学校、会議場。

 人工筋肉、電子機器、ドラム、軍事の会社から派遣された役員達の中、6才になったドレイクがプレゼンを開始をしている。

 このプレゼン方法も振る舞いも、彼の人脈のお兄さんから教えて貰った見たいだ。

「僕達は 今まで、筋トレをしなければ 筋力が付きませんでしたが、外部から人工筋肉を取り付ける事により、運動が苦手なインドア派の人も、僕の様な子供でも、女性でも、屈強な戦士並みの筋肉量を持てる事となります。

 需要としましては、個人が持てる積載量が増えるので、今まで重くて使え無かったドラム専用の銃…F-2000が実戦レベルで使用可能になったり、高齢者の介護施設では、筋力の少ない女性が 人を持ち上げるなどの肉体労働をしていますが、コレを使えば ラクに人を持ち上げられる事でしょう。」

 ドレイクが言っているのは 強化外骨格…パワードスーツの計画だ。

 サイズは 2m程で、人が着こんで手足を動かす事で、人工筋肉が連動して動く機構になっている。

 ただ、ロボットデザインが好きなのか、肌に密着して着るパイロットスーツタイプでは無く、機体を身体に装着する感じになっている。

 この発展の先には、人工筋肉に ある程度の防弾性能がある事を理由に パイロットスーツとの統合がされ、オレが着ている様な筋力アシスト式のパイロットスーツになる。

 将来の投資としては 十分に結果が見込める。

「次に現状での研究での問題点です。

 まずは もちろん 実績の不足から来る 予算不足…。

 テストとして 既存のドラムの制御モジュールを購入して入れて見ましたが、ドラムと人では規格が合わないのか、上手くコントロールが出来ません。

 これを解決する為には 人の規格にあった専用の制御モジュールが必要になって来ます。」

「それを特注で作りたいと?」

 ドラムの製造会社の役員がドレイクに聞く。

「ええ…既に制御モジュールを持っているヒトがいますので、その方からデータを提供して貰えれば、開発期間の短縮になるかと…。」

「人の制御モジュールを?

 それは…ああ なるほど…クラウド氏ですか…。」

「そうです。

 彼の身体は 全部、トニー王国製の純正品…。

 彼が今まで 学習して作り上げた身体の制御モジュールを提供して貰えれば…。」

「理屈上では可能ですね。

 となると 私達がやるのは、彼のデータの買い取り交渉になりますか?」

「ええ…まだ初等学校に通っている 僕では 信用がありませんから…。

 交渉を お任せする事になると思います。」

「ふむ…良いでしょう。

 資金以外なら私達は 協力を惜しみません。」

「ありがとうございます。」

 ドレイクが頭を下げる。


 こうして 各社の協力によりドレイクに信用が生まれ、銀行からは クラスCの予算が通った。

 何と言うか 6才だから そこまで頭が良いと言う訳じゃないんだが、優秀な人材を まとめて、自分の野望を達成させようとする能力…。

 つまり、社長適正が異様に高い。

 しかも『最年少経営者』と言う、バズりそうな肩書きをフル活用して、次々と関係会社を 自分のわがままに 巻き込んで行く訳だから本当に(たち)が悪い。

 マジでオレと同じで、人生を既に一回経験している 異世界転生者かと疑うレベルの手際の良さだ。

 そして、オレと同じく暇をしていた クラウドが興味を持ち始め、正式にパワードスーツのテストパイロットになった。


 1年後…ドレイクが7歳。

 放課後…校庭。

 パワードスーツを装着したクラウドが、砂袋を両手で(つか)んで持ち上げる。

 重量は70㎏…男1人の体重だ。

 前回は 荷物を持つと 前のめりになって転んでしまっていたが、背中にバッテリーパックのカウンターウエイトを背負う事で、バランスが良くなっている。

「それじゃあ、テストを行います。」

 ドレイクが言い、クラウドがスタートラインに着く。

「カメラOK…」

 オレがカメラをクラウドに向けて答える。

 今回オレは 広報用の撮影係を任されている。

「それでは…どうぞ」

 クラウドが砂袋を持った状態で走り出す。

 走り方は まだまだ ぎこちないし、速度も遅いが、設置された障害物を難無く避けて行き、階段での段差は2段飛び、平均台も3歩でクリアして行く。

 4足歩行のドラムは 段差と細い道に弱いので、これは 2足歩行の大きなメリットとなる。

 そして ゴール…と…50mでのタイムは15秒…。

 生身だと10秒位でいけるのだが、70㎏を持って このタイムなら かなり良い方だ。

「お疲れ…良いタイム出てましたね。」

 ドレイクがクラウドに気を使って声を掛ける。

 こう言う細かな気遣いが出来る事が彼の持ち味なのだろう。

 続いてF-2000や弾薬、リュックなど積載量が100㎏の状態で走り、やっぱりタイムは落ちるが、普通に完走出来る。

「これなら、ナオにも勝てるかもな。」

 空中に強烈なストレートパンチを放ちつつ クラウドが言う。


 最後のテストは 筋力アシストをした パイロットスーツを着ているオレと、 パワードスーツを着たクラウドとの格闘戦だ。

 撮影は クオリアがやってくれている。

「それじゃあ、格闘戦…始め!」

 クオリアの合図で オレはクラウドのパンチを正面から受け止める。

「くっ…」

 力では こっちが圧倒的に不利…アシストを使っても体格差が大きく、一発辺りのパンチの重みが違う。

「オラオラオラオラ!!」

 にもかかわらず…繰り出されるパンチの数が多い。

「無駄無駄無駄無駄無駄…」

 オレは ユーモアを交えながら、パンチの運動エネルギーと軌道を見極め、オレが クラウドの拳の側面を叩いて 軌道を変え、運動エネルギーを外に逃がして回避…その繰り返しだ。

 格闘戦は 相手の重心位置と運動エネルギーのやり取りが 何より重要になって来る。

 ただ それを一発のパンチ事に計算して対処している時間なんて無いので、本来なら 経験から来る直感に頼って対処する。

 だが オレの頭は、そのパンチの軌道や計算を その場で簡単に計算出来るだけの処理スペックを普通に持っている。

 加速された思考のこちらがクラウドを見ると、クラウドのパンチは凄くスローに見え、ゆっくり考えられる位の余裕は普通にある。

「はい…ここ…」

 クラウドの斜め横にオレの身体を滑り込ませて…放たれた腕を(つか)んで引っ張り、身体を丸めて背負う形になる。

 あえて技を定義するなら背負い投げが近いか?

 ただ、本来の試合なら相手の安全を気遣って 相手の腕を掴んだままにするのだが、オレの場合、クラウドが斜め30度に傾いた地点で 手を放して投げ飛ばしている。

 クラウドの150㎏の巨体は そのまま 真っすぐに飛んで行き、盛大に地面に叩きつけられる。

「がはっ…うっそ」

「パワーがあれば 勝てる訳じゃないぞ」

 むしろ 相手にパワーがあり過ぎるから、その力を利用する事で ここまで投げ飛ばせる。

 これがクオリア相手なら ここまでは 出来ないだろう。

「はい、終了…勝者ナオ…」

 クオリアが オレの片手を上げさせて言う。

「ナオ…宣伝としては 負けて貰った方が良かったのに…」

 ドレイクが隣に来て言う。

「それだと八百長になるだろ。

 てか、普通の人間なら簡単に殴り殺せる威力だぞ…そんなの大人しく 受けてられるか…」

 オレはドレイクに そう答え、クラウドの元に向かう。

 クラウドは 地面に背中から叩きつけられた事もあり、積層化炭素繊維電池のバッテリーが損傷して 中の電気が急速放電し、人工筋肉が動かなくなって固まり、拘束される形になった。

「はぁ…参った、参った」

 オレが動かなくなった人工筋肉を外すと クラウドが起き上がって言う。

 身体が頑丈なのと パイロットスーツを着ていた事もあって クラウドに外傷は 見当たらない。

「さてと…真面にある程度 動ける様になったな。

 そろそろ、企業に売り込みをして生産させるか?」

「そうですね。

 近日中に関係者を集めてプレゼンを行います。」

 ドレイクが答える。

「あっそう言えば、これからも 筋力アシストスーツの名前で行くのか?」

「いえ…もっと製品ぽい名称を考えています。

 ダイレクトリンクシステム搭載機…略称はDLSです。」

「DLか…」

 予想はしていたが…やっぱりコイツが 人型機動兵器DLのプロジェクト リーダーだったか…。


 ドレイク達は ダイレクトリンクシステムの一式の技術を国に売って高額で買い取って貰い、人工筋肉の会社の隣に施設を追加…。

 企業は ドレイク達を雇い、本格的な製品開発と量産に向けて動き出した。


 そして、更に1年後のドレイクが8歳。

 遂に強化外骨格SDLの名前で、少数生産の販売が始まった。

 ここからお客の要望に合わせて、次の製品を開発していく訳だ。

「売れ行きは上々だな。」

 軍は 試験導入の為に6機 購入しており、現場の要望を聞き入れた軍事仕様SDLの開発も時期に始まる予定だ。

 民間では こちらの狙い通り、介護の重労働を緩和する為に6機 試験購入されており、こちらも 結果が出次第、介護仕様のSDLが生まれるだろう。

 ドレイクも 次のSDLの仕様について あちこちで話し合っていて、次の製品が大規模で売れれば、ここで得た技術を使って ドレイクのゴールでもある5m前後の人型兵器の開発が出来るだろう。

 オレはそう思いつつ、オレは 介護施設に向かった。

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