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02 (小児性愛者-ペドフィリア-)〇

 数日後…海上 浮き整備ドック。

「は?ナオ(オレ)も行くのか?」

 アメリカから持って帰って来た筒型 潜水艦の整備と推進機関のアップデート作業を防護柵に寄りかって見降ろしながら、隣のジガに言う。

「そ、ウチは イギリス(ブリテン)で歴史資料を集め続けないと いけないからな。

 ここに 頻繁に戻ってられない。

 移民の輸送は ナオに頼む事になる。」

「また少女のお守りか…オレの性癖を知っているんだろ」

「別にナオは 相手が嫌がる事は しないだろう。

 相手が合意しているなら、ヤっちゃっても、この国の法律では 問題無い訳だし…。」

「オレが気にしている事を…」

「そろそろ、自分の性癖に正直になっても良いんじゃないか?」

「それが出来たら苦労しねぇよ」

 ジガは 元セクサロイドだと言う事もあり、あらゆる性癖に寛容(かんよう)だ。

 それは、オレの妻のクオリアもそうで、オレの性癖に対しての理解者がいる事は、それだけで有難い事なんだが…オレ自身がオレの性癖に対して寛容(かんよう)になれない。


 その翌日…。

 オレとジガは、設備をアップデートした潜水艦に乗ってトニー王国を出る。

 船員はドラムが12体おり、戦闘でもない限り 寝ていても問題無い。

 発令所に行き、浮きドックに海水が流れ込み、潜水艦が海に浮んだ所でイギリスに向けて出航…。

 後方に見える浮きドックは排水を始めて浮き上がり始めている。

 スクリューの他に 新しく取り付けた ウォータージェット推進で、勢い良く水を後方に押し上げ、静穏性と最大速度、消費電力が上がった潜水艦でイギリスのクラウド商会 ブライトン支店に向かうのだった。


 更に数日後…。

 馬車が通る道路から外れ、草木が広がる舗装されていない地面をナオ(オレ)は 後部座席に高精度な地図を見ているジガを乗せ、荷馬車をけん引しているバギーで ゆっくりと走る。

 付近には 家が無く、人が住んでいる様な気配は無い。

 だが、しばらく進むと小さな畑が見え、少女達が慣れない手つきで ここら辺の主食である ジャガイモを掘り起こしている。

「お客さま~ですか?」

 土まみれの手の少女が 作業を止めてオレに聞く。

 年は8~9才位で、後2~3年で出荷と言った所か…。

「ああ…シスターに会いんだが、いるか?」

 オレは少女の隣にバギーを持って行き、聞く。

「多分、修道院にいるかと…」

 少女の後を追って 到着したのは、レンガ造りのシッカリとした 大きな家が2件ある。

「しすた~お客さま~」

 少女は扉を開けて大声で言う。

「はいはい…」

 少女の声を聞きつけた シスターが扉まで やって来る。

「旅の方ですか?

 小銅貨3枚の料金(寄付)を頂ければ、宿泊が出来ますが…。」

「安いな」

 小銅貨1枚だと ビールジョッキ1杯の酒か、普通サイズのパンが買える金額で、3枚だと庶民のランチが食べられる位の金額だ。

 宿泊費用としては 非常に安い。

「ん…ここでは 酒を作っているのか?」

 オレとジガがバギーを降りて部屋の中に入る。

 部屋の中には 大量の酒樽(さかだる)が積んであり、この修道院では 酒を作っている事が分かる。

「ええ…エールを近くの酒場に降ろしています。」

 修道院は酒造のスペシャリストだ。

 昔は修道院が酒場を経営していて、教会の権力もあり、さまざまな特権を享受(きょうじゅ)して行ていた。

 が、神職だと言うのに煩悩(ぼんのう)まみれな 利益追求のやり方や、何より 修道員達が軒並み酔っ払いの集団になってしまったので、カトリック教会は 教義に(そむ)くとして、酒場の営業と特権を はく奪した。

 な はずなのだが、ここでは まだ酒造だけは やっているらしい…ここを統治している領主が寛容(かんよう)なのだろうか?

「オレ達が ここに来たのは、子供を引き取る為だ。」

「……分かりました…こちらにどうぞ」

 シスターが少し考える仕草をし、オレとジガは シスターの案内の元、少女と離れ、個室に向った。


「まず、この修道院は 生活苦で預けられた子供や、親がいない孤児達を働ける年齢になるまで面倒を見る施設です。

 施設の運営費は、()()()で賄われています。

 そして、子供達の里親を見つけるのも この修道院の仕事の1つに なります。」

「ふむ…こちらとしては、出来るだけ若い修道女を引き取りたいと考えている。」

 ジガがシスターに言う。

 こっちで 20年以上 暮らしているジガに 交渉を任せた方がスムーズになるだろう。

「若い…具体的に いくつをお望みで?」

「0才ならベストだな…上限は6才位まで…」

「働かせる事が目的ではないのですか?」

「ウチらは とある貴族の()()()の依頼で、6才未満の少女を集めている。

 用途は 愛玩目的、まぁ手は出されるだろうが、無理やりは されないだろうな。

 アイツらは 何より少女に嫌われる事を嫌うから…」

小児性愛者(ペドフィリア)ですか…。

 なるほど…仲介人を立てるのは、そう言った事情なのですね。」

 オレは少し顔をしかめる。

 ペドフィリアは 国によって定義が色々とあるが、主に年齢が10歳以下の女性対して 性的欲求を持っている人の事を言い、オレもこの性癖に当てはまる。

 ただ、少女を愛しているが故に 少女の嫌がる事を嫌い、肉体関係を持つケースもあるが、基本的に少女と良好な関係を築いている事が多い。

 逆に本人の意思を無視して、ひたすら自分の欲望を満たそうとする一番ヤバい クソ野郎は チャイルド マレスターと言われ、ペドフィリアと区別される。

 まぁこの時代には それを取り締まる法律が無い為、合法なんだが、いくら少女と良好な関係を築こうと、2000年代の大体の国では、児童虐待と、強姦の容疑で しょっ引かれてしまうんで、性的マイノリティの中で 一番 保護が難しいと言われている。

 ちなみに トニー王国の法律だと『双方合意の無い性行為を しては ならない。』の一文があるだけなので、小児性愛者(ペドフィリア)や同性愛者、その他 色々なマイノリティ性癖も双方で しっかりと合意を取れば 認められ、逆に合意を無視してしまう チャイルドマレスターなどは認められない。

「現在、その条件に該当する修道女は10人です。」

「いくらで買える?」

「いいえ…修道院は修道女を金銭で売る事はしません。

 利益の追求は、教典に背く事になりますので…」

 という建前か…

「とは言え、あなた方の生活は キツそうだ。

 今後に こちらに送られて来る 修道女の為にも、オレらから寄付金を渡したいと思う…。

 よほどの金額ではない限り、言い値で払うつもりだ。

 いくら位、寄付をすれば良い?」

 オレがジガをサポートしてシスターに言う。

「これ位で如何(どう)でしょう…」

 シスターが金額を提示する。

 通常、子供は 大人の半額位で取引き されるらしいのだが、大人の3分の2位の金額になっており、多少割高の様な気もする。

 とは言っても 今まで掛かった 食費などの経費もあるだろうし、十分良心的な価格だ。

「分かった…商品の検品をしたい。」

「分かりました。」

 シスターは椅子から立ち上がり、オレ達は シスターの後ろについて行った。


 食堂に少女達が 次々と集まって来る。

 美人に子供を産ませていたのか、自然淘汰の原理で どの子も容姿が洗練されていて、後1~2年成長すれば、オレの好みになるだろう。

 ただ、髪は手入れしていないのか、ボサボサ…。

 服もシスター服を着ている訳では無く、裸の上に だぶだぶのボロ布に見える服を一枚来ただけの妙にエロい姿だ。

 これだけでも ここの生活環境が劣悪だと言う事が分かる。

 そして、まだ歩けない 幼い子を抱きかかえている 先ほどのジャガイモ修道女…。

「ん…1人多いな」

「済みません…この子は、他の子達の面倒を良く見てくれる子でして、離れたくないと…」

「年は?」

「8歳です。」

「ふむ…慣れない環境だろうし、この子がいれば 向こうで面倒が起きても対処出来るか…並んでくれ」

 オレがそう言い、ジガが 一人ずつ健康状態を確認して行く…。

 バイタルは全員正常…ここ1ヵ月以内の病気も無し…。

 ただ、肋骨が浮かび上がっている栄養失調の子が1人いる…彼女は最近入った新入りで、年は5才…。

 足と腕にアザがあり、ジガが身体を確認しようと手を上げると、殴られると思ったのか、反射的に目をキツく閉じて涙目になっている。

 貧困による虐待か…他の子達に虐待痕が見えない事から、修道院では無く 前の家での事なのだろうが…。

 ロリコンを(こじ)らせているオレからすれば、一番ムカつく相手だ。

「よし、全員合格だな」

「わああい」

 オレの言葉に 少女達は一緒に引き取って貰える事に尻が見える程に飛び跳ねて 喜んでいる…如何(どう)やら少女達の関係は良好みたいだ。

「それじゃあ 予定通り、寄付金を払うよ」

 オレは カバンから 巾着袋(きんちゃくぶくろ)を出して大きな銀貨で支払いを行う。

「確かに…これで私達の生活も いくらかラクになります。」

「なぁ…この教会…人が多すぎだよな。

 人数に対して畑の面積も小さいし…」

「税の徴収が厳しくなったからでしょう…他の修道院も似たり寄ったりです。」

「そうか…何かあったら ここに連絡を入れろ。

 助ける事が出来るかも知れないからな。」

 オレは ブライトン支店の連絡先を書いた紙をシスターに渡す。

「分かりました。」

「そんじゃあ、行くぞ」

 オレの後をゾロゾロと付いて来て バギーの荷馬車に乗せ、ブライトン支店に向けてバギーを走らせた。


 移動中の少女のメンタルが気になったが、朝昼晩の3食、腹いっぱいに なるほどの食べ物を食べられる生活は、これから向かう先が食べ物に不自由しない場所だと言う事が分かり、少女達は期待に満ちている。


 そして、ゆっくり2日程 掛けてクラウド商会のブライトン支店に到着。

 今だと ここは、東インド会社の貸し倉庫や水夫達の宿泊施設を運営しており、国内の配達業務もやっている。

 ここで 1日(とま)って疲れを落とし、ジガと別れ、そこに 沈めてある潜水艦に乗ってオレ達は トニー王国に向かう。


 潜水艦では ミドリムシを育てられる施設があり、強炭酸水にミドリムシを入れ、青色のライトを当てて数を増やしている。

 ここで収穫したミドリムシを 加熱して乾燥させれば ミドリムシパウダーの出来上がりだ。

 完成したミドリムシパウダーは、フードメイカーと呼ばれる機械に入れる。

 これは 味覚パラメーターを入力すると、そのパラメーターに従って 食感剤、味覚剤が混ぜられ、自由に味を変えられるソイフードを作る為の機械だ。

 ただ、色や匂い、形の変更は まだ小型化が難しく、全部が緑色のショートブレッドの様な見た目になっている。

 少女達は 最初は 苦そうな緑色の見た目から苦手そうにしていたが、甘味が強いフルーツ味のショートブレッドを食べさせると、バクバクと食べだした。


 腹が一杯になったら後は風呂だ。

 少女達は 普段、臭いに無頓着なオレでも 少し気になる位の臭いを出していて、せっかくの見た目が台無しになっているし、何より衛生 問題的にマズイ…ハルミが文句を言って来るだろう。

 なので、潜水艦の後方に設置されてある 小型核分裂炉の隣にある風呂場に連れて行く。

 ここは 組み上げた海水を蒸留して、塩と真水を作る為の施設で、使わない時には 風呂場として使われている。

 と言うか、風呂の装備が充実していて、今では 蒸留にも使える風呂だ。

 オレは 彼女達のワンピースを脱がせ、洗濯機に入れて洗う。

 次は 彼女達だ。

 風呂の習慣が無い 彼女達の為にオレは 煩悩を押し殺して少女達の身体を石鹸を付けたタオルで洗って行く。

 ()れば、()る程、(アカ)が バスチェアの下に落ちて来る状態で、かなり大変な作業だ。

 とは言え、少女を綺麗に磨いていると考えれば 少し嬉しくもある。

 髪も洗い終わった少女は湯船に入らせ、次の裸の少女を洗う。

 湯船も彼女達に取っては 水深が高く、立った状態じゃないと入れない。

 しかも 子供は、湯船で(おぼ)れて 死ぬ事も普通にあるので、そこら辺も注意しないといけない。

 で、洗濯にも耐えられなかった服は 穴が空いてしまい、新しいワンピースを持って来て、肩紐と丈の調整をし、何とか着させる。

 後はトイレや寝る為の個室を教えて、その日は 終了。

 次の日は、全員のボサボサの髪を切って整えてやった。

 で、そんな 合計1週間の旅が終わり、肋骨が浮かび上がっていた栄養失調の少女に体脂肪が付き始めて ふっくら し始めて来た辺り…。

 トニー王国の港の街のメンテナンス浮きドックに到着。

 オレらは モーターボートに乗り換えて海岸まで行き、ハルミの指導の元、身体の徹底洗浄と防疫検査を行い、3日目に正式に入国。

 赤ん坊は この街の保育院に入れ、その他の少女達は 移民用の学校の寮に個室を割り当てられる。

 ここで 彼女達は 他の水夫達と一緒に、トニー王国の価値観を徹底的に教育される。

 まだ幼く 価値観が決まっていない少女達は、すぐに ここを出れる様になるだろう…これで オレの仕事は終わりだ。


 その頃。

 クラウドとクオリア()は、ジガが持って来た大量の歴史書を読み、すべてを電子化して行く 作業をしている。

「歴史資料は メインサーバーと石英ガラス ストレージに保存する。

 大戦後も このストレージは 残るだろう」

「大戦か…確か、機械人達の独立戦争だったか?

 人類が絶滅し掛けたって言う」

「そう…2050年に始まる 私達の祖先がやった独立戦争…大戦…。

 戦争終盤には 大量の核兵器による撃ち合いと その爆発による電磁パルスで、電子機器が破壊され、当時100億いた人口が10億まで減った。

 更に物理メディア以外でのデータは 吹っ飛んでしまい、人類は 歴史の大半を失ってしまった。」

「で、その歴史を復旧させたのが、今、私達が作っているデータと言う事か…」

「そうだ。

 ある程度 データが溜まって来たら、ガラス ストレージにレーザーで書き込んで行く。

 それが終わったら、地下倉庫に厳重に保存だ。」

「分かった。

 それにしても…歴史がどんどん 変わって行ってるな。」

 クラウドは歴史書をゆっくりと見ながら言う。

「歴史は 統治者に都合の良い様に作られて行くからな。

 特に戦争の後は ガラリと歴史観が変わる事も多い。」

「もう何が真実なやら…」

 クラウドは そう言い ながらも 今の歴史を まとめるので あった。

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