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17 (難破船)〇

 死の海域周辺。

 トニー王国がある死の海域の周辺では ドラム達が乗る原子力潜水艦達が常時監視任務に就いており、他国の船が死の海域に接近してきた場合、港の町の軍港に連絡が入る様になっている。

 現状でのトニー王国の防衛戦略は ひたすら知られない事だ。

 知られなければ、軍を送られる事も植民地にされる事も無い…。

 その為 こちらの情報を持っている船は、魚雷?で海に沈めて事故死する事になる。

「あらら…」

 深度120mから、有線ケーブルを繋いだ水中ドローンを海に浮かべて状況を確認しているドラムの1台が言う。

「これは知らせた方が良いかもしれませんね。」

「そうだな…軍港に連絡…。

 『漂流している船を発見、指示を求める』」

「了解しました」

 ドラム達がそれぞれに仕事をこなし、軍港に連絡が入った。


 軍港…。

「隊長…1番の潜水艦から緊急通信です。」

「ふむ…これは…了解した。

 クオリアに連絡…港の町の何処(どこ)かに いるはずだ。」

「はい」


 クオリア()とハルミが緊急通信を受けて軍港に向かう。

 今は 私達 神が 手を出し過ぎるとトニー王国 国民の発展を阻害してしまうので、防衛は基本 トニー王国 海軍に任せている。

 何かと口を出してしまう3人が 外の国に行っているのも、好奇心の他に、余計な干渉を避ける為でもある。

 だが、自分達で判断が難しい時は この国に駐留している私達が呼ばれる事もあるのだが…。

「大型船か…」

 私達と軍幹部が席に座り、プロジェクターから潜水艦から送られてきた情報が表示される。

 船は大型の輸送船で、帆が折れて機能しなくなり、今は海流に流されるだけの船だ。

 このまま進むと 死の海域に入った時に船体が横転して転覆(てんぷく)するだろう。

「ええ…船は漂流状態で、危険は無し…。

 通常通り、水中用のドラムで 船体に爆薬を設置して、いつでも 沈められる様にしています。

 今回は 乗員の救助を行うかの相談をしたい」

 初老の指揮官が言う。

「ふむ…今年の移民(わく)は まだ空いているだろう。

 なら、救助してしまえば良い」

「いや…最近、教育途中の移民達の犯罪が目立っている。

 私は救出には 反対だ。」

「なら、犯罪を犯した移民は 後で処刑してしまえば良い。」

「法律上では 移民もトニー王国 国民だ。

 ここで入国されると 移民が犯罪を犯しても殺せず、入れ墨刑になる。

 なら、今放置する事で殺してしまった方が良いだろう。」

「いや…その理屈が通るなら、私達は 移民の子孫です。

 無法者の外国人だった私達の先祖をトニー王国が受け入れてくれたから、今の私達が存在する事をお忘れなく」

「それを言われるとキツイな…。

 分かった…私も救助に賛成だ。

 それで…救出となるとヘリか?」

 原子力潜水艦では 水中を移動する為、速度が遅い。

 となると 空中輸送が一番だろう。

「それは 確実性があるのか?」

 今トニー王国には ヘリコプターが3機あり、とりあえず 機能はするが、安全性が十分では無く、まだ試験の域を出ない。

 このヘリコプターの研究、開発、運用チームをまとめているのが 私だ。

 今回 私がここに 呼ばれたのも そう言った理由があるのだろう。

「ヘリの操作は 私が担当する。

 航続距離の問題はあるが、現地で潜水艦から推進剤の補給を受ければ良い。」

 ヘリに使われている酸水素は、原子力潜水艦の電気と海水から生成出来るので、現地の潜水艦から推進剤を補給する事が出来る。

 現地での救出時間を含めると燃料は ギリギリで余裕が一切無い。

 安全を取るなら現地での推進剤の補給は必須だろう。

「ヘリに積める人数には限りがある。

 最大の人数を確保するなら、治療と回収が出来る私が必要だな。

 と言うかヘリでの海難救助って、皆 やった事が無いだろうし…」

 今のハルミは 軍医達の教育をしているのだが、特にケガ人が出ない この軍では、割と暇な部署だ。

 民間も もう人材が(そろ)っていて、ドラムの診断能力も向上して来ているので、ハルミ自体が治療する事が極端に少なくなり、最近はストレスが()まって来ている。

 ハルミは 衛生兵の仕事が 行動目的として組み込まれているので、病気や怪我人が出なく、出たとしても すぐに治してしまえる2600年の世界では ハルミの活躍は 非常に少なかった。

 ワームとの戦闘では 負傷者が出て 自分が負傷者を治療出来る事を望んでいたし、過去には 暇になったハルミが マッチポンプで紛争を引き起こして、衛生兵として双方の治療をしていた事もある。

 わざわざ過去に戻って来たのも、治療出来る人が増えるからだしな。

 なので、そろそろ 患者を与えておいた方が良い。


「と言う訳で私とハルミの2名で行く…他に意見はあるか?

 ないな…情報は常に送るから、モニタリングを頼む」

「了解…」

 ハルミは 倉庫から9パラの弾薬箱を出し、救難用の浮袋を装着して 医療品が入ったリュックを私達が背負い、私が運転するバギーに乗って すぐ近くの飛行場へ向かった。


 飛行場とは言われているが 滑走路は無く、釘とロープでⒽマークが描かれた だけの まだアスファルト舗装がされていない土のヘリポートと、少し離れた場所にある整備用の格納庫だけだ。

 ここでは 6機分のヘリポートがあるが、今は実用試作機の3機しかない。

 ヘリコプターの外見は、大戦が終わるまで使われていた海上自衛隊のUS-3飛行艇(ひこうてい)に近く、水上を滑走を出来る丈夫で軽い炭素繊維 装甲に、翼の角度を変えられるティルトウィング方式の飛行艇(ひこうてい)になっている。

 エンジンは 航空機燃料では無く、酸水素型 ターボシャフトエンジンが2基…。

 バギーのロータリーエンジンを転用して造っていた最初期の実験機とは違い、航空機専用のエンジンが開発され、前の機種と比べて各段に推力が上がって来ている。

 私は 機体の翼の下から燃料ホースを挿して バルブを開放する。

 この飛行場の地下には 直径30mの球体のガスタンクが埋め込まれており、そこに溜められている酸水素を翼の中のタンクに入れて行く。

「よし…補給完了…乗り込むぞ」

 私はヘリの後部ハッチを開いて 機長席に乗り込み、ハルミがハッチを閉じる。

『エンジン始動…』

 2機の酸水素ターボシャフトエンジンが動き出し、回転を始める。

『そう言えば、これに乗るのは初めてだな…大丈夫なのか?』

 隣の敵に座るハルミが量子通信で話して来る。

 この機体は ロクに騒音対策もしてない為、口頭で話しても騒音で音がかき消され、聞き取れない…。

 なので、防音性能が高く通信が出来る ヘルメットが必要になって来る。

『少なくとも 落ちる事は無くなった。』

 3年前に 実用試験機である この機種になってから、破損事故は20回を超えている。

 毎日1回は飛ばしているから 計算だと2~3ヵ月に1回位のペースで起きている計算になる。

 だが、その度に改善を繰り返して行き、死傷者2名…重傷者8名の犠牲もあり、今では 半年間 破損事故が無いまでに機体側が成長している。

 今だと無線は使えるが レーダーが まだ搭載されていないので有視界飛行しか出来ないが、多少の雨天でも対応出来る機体に仕上がっている。

 後 数年もすれば、商業用の利用も出来るだろう。

『テイクオフ…』

 私はT字ハンドルを ひねってプロペラの回転出力を上げ、手前に引くと機体が垂直に浮かび上がる。

 ハンドルは バギーと同じT字ハンドルを引き継いでいるので 多少扱い難いが、この操作系統に慣れているトニー王国民は普通に扱えている。

 手元にあるダイヤルを回して 翼を傾けて斜め上に高度を上げて行き、気圧を測定して高度をアナログ表示させる高度計が、1200mの安全高度に到達した所で翼を水平にしてプロペラ機にする。

 翼の角度によって空力特性が大幅に変わるので、可変中に失速して墜落する可能性があるのが ティルトウィング機の最大の弱点だ。

 その内、これもレバー1つで、ヘリモード、中間モード、プロペラ機モードの3種類に切り替えられる様にしなくては ならない。

 今はシステム側に操縦テクニックを学習させている所なので、この不便がまだ続きそうだ。

 ヘリが加速を始めて 時速300kmの巡航速度になった所で 難破船に進路を取り、向かう。

 普通のヘリの限界が時速270kmなので それよりかは速いが、プロペラ機の平均速度と考えると150km程 遅い。

 目標は おおよそ250km先なので、片道だけなら十分な燃料だ。

 だが、翼の中には 酸水素の圧力の問題もあり、2時間分の燃料しか積んでいないので、結構ギリギリの距離になっている。

 パチッパチッ…。

 安定飛行に入った所で ハルミは、サブマシンガンのマガジンに箱ごと持って来た弾薬箱から弾を入れていく。

 使う弾は 9x19mmパラベラム弾…通称9パラ…。

 使っている銃は 国産の最新サブマシンガン スペクトラM4だ。

『ま…600発あれば 十分だろう。

 殺しに行く訳じゃないしな…』

『終わったら周りを見てくれ…見逃す可能性がある』

 この機体は 下方向が見にくい。

『よっと分かった。』

 ハルミが防弾ベストに予備マガジンを入れて、スペクトラM4を腰のホルスターに入れて下を確認する。

『おっアレじゃないか?

 確かにマストが逝ってるな…近くに船は無し…他の船に見つかる心配もないな。

 高度下げ、船の船首に降ろせないか?』

『こちらは 10tはあるんだぞ。

 床が抜ける可能性があるし、排気熱で船が燃える可能性もある。

 船首ギリギリをホバリングするから ハルミは そこで降りてくれ、私は120m程 横にある潜水艦で補給を受ける。』

『分かった。』

 私は翼を水平から斜めに傾けて減速をしつつ、翼を縦にして ヘリで船の周りを1周回り、距離感を(つか)めた所で船首にヘリを寄せる。

『こっちの合図で降りてくれ』

『ああ…』

 後部ハッチを開放…。

 機体が少し揺れつつも立て直し、高度を下げる。

 ヘリは ホバリングに始まり、ホバリングに終わると言われる格言が生まれる程、ホバリングは 基本で 一番危険だ。

 双方のプロペラから生み出された風が海に当たって波を作り、風に当たった船が傾き始める。

 水流の流れる方向も計算に入れ、小さな円を描く様にヘリを揺らし、ゆっくりと降りて、飛び移るタイミングを作る。

『今!』

 後ろからドサッと飛び降りる音がする…船首との距離は1m以内…無事だろう。

『こちらハルミ、着地に成功』

『了解…こちらは 退避し、補給に入る』

 私はハッチを閉めて ヘリの高度を上げ、海面から出て来た原子力潜水艦の後ろから横にヘリを滑り込ませる様にして機体を止め、推進剤の補給の為エンジンを止める。

『お待ちしていました。』

 潜水艦のハッチを開けてドラムが酸水素供給用のホースを持って 出て来る。

 潜水艦が翼の下に入り込み、ドラムが翼の供給口にホースを接続して潜水艦内のガスタンクに入っている酸水素の供給が始まる。

 酸水素は航空機燃料とは違い、気体なので押し込むポンプが必要で、それは翼に内蔵されている。

 ただ現状だとガスタンク内の圧力は 200気圧までとなっており、航続時間の大幅な制限を受けている。

 まぁこれが 冷却された液体水素なら この800倍も積み込める訳だが、極低温環境だとエンジンが凍り付いてしまう為、今後のエンジン開発の課題となっている。

『200気圧になるまで、どの位掛かる?』

『安全を考えると30分程度でしょうか…』

『分かった…マニュアル通りにやってくれ』

『了解しました。』

「さてと…向こうは どの位時間が掛かるかな…」 

 私は海の流れに気を付けつつ、そう言うのだった。


 ドサッ…。

 医療品が入ったリュックを背負い 武装をしたハルミ()が1m程ジャンプし、船首に着地する…足場は思ったより しっかりとしている。

『こちらハルミ、着地に成功』

『了解…こちらは 退避し、補給に入る』

 ヘリの風で 私の髪が舞う中、飛んでいく ヘリの後ろ姿を見て 仕事に取り掛かった。

「クリア…クリア…」

 私はFPSゲームで鍛えた才能を生かして クリアリングを正確に行い、生存者の捜索を始める。

 この船は 帆を張った大型船だ。

 帆は嵐で無くなり、航行能力を失った船は ひたすら海流の流れるままに動いている。

 操舵を行う船員室は空で、船長の姿も見えない。

 まぁこの船は どっかの陸地に船が流れ着くのを期待するしかない状態だからな…。

 ただ、木の壁に取り付けられている 金属プレートからこの船の名前が『カンビュセス号』だと言う事が分かった。

「嫌な名前だな…」

 私は一言そう言い、階段を降り 船内に入る。

 船内は 掃除をしていないのか汚く、(さら)に少し前までヘリの爆音がなっていたと言うのにも関わらず、人の声もしない…。

「これって…血?」

 人を思いっきり壁に叩きつけた思われる 割れた木材…。

 人を切りつけて付いたと思われる血が染み付いた壁の木材。

 明らかに人が争った後があると言うのに死体が無い。

 死体が腐敗する前に海に捨てたのか?

 (さら)に警戒して奥に進むと大部屋が見える…多分、船長などの上の人物の部屋だろう。

 もしかしたら、航海日誌が見つかるかも知れない。

「おっ見つけた」

 船長(Captain)(Room)とタグが描かれたドアが見える。

 早速開けようと ドラノブを握ろうとするが、ドアノブは 破壊されていて、そばには パチンコ玉が転がっている…これは銃弾か?

 中に入ると壁には血痕が付いていて 部屋も荒れている。

 ここも死体が無い…。

 が、机の引き出しに入っている航海日誌は無事だ。

 取りあえず それっぽい本をリュックに入れて、探索を再開…後は下の階だな…。

「うわっ…」

 下の階は死臭に糞尿、血の臭いを混ぜた様な悪臭がしている。

「あ~そう言う事ね…」

 私はこの(にお)いで すぐに状況を理解して階段を降りる。

 周りの木の壁は血だらけ パチンコ玉だらけ、床には糞尿に吐しゃ物がブチ撒かれているが、やはり死体は見当たらない。

 確か帆船のトイレは一番下にあり、溜めた糞尿は海に捨てる事で処理しているはずだ。

 (さら)に私は奥に進む…そして食料保管庫周辺…。

「やっぱりね…」

 廊下にはバラバラにされた人骨が無造作に捨てられていて、5人程の人?が 仰向(あおむ)けの状態で船員が倒れている。

「あっあっ…」

 骸骨(がいこつ)型のクリーチャーが、ゾンビの様な声にならない様な音を出して床を張って来る。

 私が咄嗟に銃を向けて 良く見ると、極度に痩せ細っていている船員だった。

「まだ 生きているのか?」

 顔が青白く、心拍数、脈拍数共に随分と遅くなっているが、まだ止まっておらず、口に耳を近づければ 微かに呼吸音が聞こえ、まぶたを開いて目にライトを当てると 瞳孔が狭くなり、まぶたを閉じようとしている。

 明らかに生きている。

 私は、ゾンビを踏まない様に気を付けつつ、鉄製のドアの食糧庫を見る。

 中には鍵が掛かっており、中に入れない。

 コンコン…。

「厚さ的には 行けるかな~」

 バン…バン…。

 私はドアの蝶番(ちょうつがい)をスペクトラM4で撃ち抜き、部屋の中に突入する。

 中には箱から開けられた大量の食料を食べた跡や骨が残っており、床には

殴り合ったのか顔がボロボロになっている2人の船員が倒れている。

「おお…救助か…おお神よ」

 如何(どう)やら、こっちは食料を確保していた事もあって 喋る事が出来る位には 大丈夫みたいだ。

「何日食べていない?」

 私は脈を測りながら言う。

「さぁな…窓はあるが…何日、経ったか…隣のヤツ…は死んだか?」

「ああ…もう腐っている」

「そうか…」

「動けるか?」

「無…理だ」

「なら、私が背負う…少し痛いだろうが我慢してくれ…」

「ああ…うっ」

 私は船員を おんぶ状態で 船首まで運び、また戻って残りの5人を回収する。

「生き残りは 合計で6人か…。」

『クオリア…補給は 終わったか?』

『ああ…終わっている…船首で良いか?』

『頼む』

 しばらくするとプロペラ音が聞こえ始め、どんどんと音が大きくなる。

「1時間程、うるさくなるが我慢してくれ」

 船首に開けた後部ハッチを向けて、多少左右に振られながらホバリングしている…その中で私は6人の患者を1人1人背負って乗せて行く。

 患者を見ながら ふと隣を見る…船の板がプロペラの下から出る排気熱で焦げている…そろそろ危ない。

 3人…2人…1人、発火!!

 木造の船が燃える中、最後の1人を背負った私がジャンプで飛び乗り、私の『出せ』の一言で ヘリが高く飛び上がり、甲板が燃えて行く中 ドラムが船の外から船底に取り付けた爆弾が爆発する。

 後部ハッチが閉じる際に見た光景は 浸水が始まり 海に沈んでいく『カンビュセス号』の最後の様子だった。


「何か…メシは、無いのか?」

 エンジン音で周りがうるさい中…寝たきりの船員の男が言う。

「メシ…あるが、食べたら絶対に吐くぞ…。」

「マズくても…食べられれば 良い」

「いや、味じゃなくて そんなボロボロじゃ 身体が受け付けないって事だよ。

 物を食べて消化するには 結構な体力が必要になるんだ。

 まずはコレからだな…」

 私は 壁に点滴をぶら下げて、患者の血管に針を片っ端から刺して行く。

「何を…」

「中身は 水と塩の生理食塩水にブドウ糖とビタミンCをブレンドした物…。

 と言っても分からないか…血管から直接 栄養を与えているって事。

 まずは食べ物を ちゃんと消化出来るまで これで身体を回復させる。

 1週間もあれば、まともに食事が出来る様になるよ…」

 普通なら2~3週間掛かる所だが、ソイフードの主成分である ミドリムシは、吸収を妨げる細胞壁をもたないため、93%と言う驚異的な消化効率を(ほこ)る。

 つまり、少しの量で効率良く栄養が取れて、胃の中で水分を吸収して膨らむので 満腹になり易く、食べる量も少なくても済み、無駄がない為 排出される便の量も少なくなると、これ以上に無い位に消化機能が衰えている病人に食べさせるのは良い食材だ。

「本当に…助かるんだな…。」

「ああ…回復したら学校に通って、いずれ働いて(もら)うぞ。」

「文字も読めないオレが学校か…」

「そう、私の国にバカはいないから…ちゃんと学んで賢い労働者になってくれ」

「分かったよ。

 助けて貰った(おん)は 必ず返す。」

「さてと…こっちは、それだけじゃ済まなそうだな。」

 腹を抑えて痛がっている病人を見に行く。

 簡易検査だと多臓器不全を起こしている…点滴の他に抗生物質が必要だな。

「ちょっとキツイだろうが、コイツを飲んでくれ」

 私は水に溶かした抗生物質を飲ませる。

 あんな不衛生な環境で殺し合いをし、人肉を取り合ったら、身体に何かしらの毒素を()め込み、抵抗力が落ちた身体で それを食べたなら当然、感染症になる可能性も出て来る。

 他のヤツも疲弊していて表に出ていないだけで、感染症に掛かっている可能性もある。

 病人が入院する事に喜ぶなんて 不謹慎(ふきんしん)だが しばらくは 暇しなくて済みそうだ。

 私はそう思い、ヘリはトニー王国に向けて進んで行った。

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