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01 (哨戒-しょうかい-任務)〇

挿絵(By みてみん)

 1750年 死の海域 周辺 水深60m…潜水艦内。

「こちらに気付かずに 行きましたね…」

 潜水艦に乗るソナーマンがナオ(オレ)に言う。

 今のイギリスは のちにアメリカ合衆国となる13植民地から、紅茶、砂糖、コーヒー、タバコ、綿花(めんか)、ゴム、など輸送しており、死の海域周辺でのイギリス軍、貿易船の移動が活発になり始めた。

 船も少ないながら試験運用中であろう蒸気船(じょうきせん)も見え、如何(どう)やらイギリスは 産業革命に入った見たいだ。

 これに対して トニー王国は 船を領海内に入れない為にトニー王国海軍を設立。

 今は 150名程の海兵が 120m級の潜水艦 12隻を動かし、6隻ずつ交代で監視作業をしている。


 海面に浮かべてあるドローンが 有線ケーブルを通じて、リアルタイムに映像や音声を こっちに送られて来る。

 この海域に入った船は どの船も 行方不明になるので、向こうは 危険地帯だと学習している見たいで、死の海域を迂回(うかい)する進路を常に取っている。

 まぁこの海域に入った船は トニー王国の存在を知られない様に潜水艦で 丁寧(ていねい)に船を潰して、乗組員は自国民に加えているからなんだが…。

 なので、トニー王国の人口は 順調に増えつつあり、トニー王国の価値観を教える思想教育に多くの人員を割かれていて、今はそれなりに(いそが)しい。


 現在 この潜水艦は、水深60mに(もぐ)っており、乗っているのは12名…。

 普通 この規模の潜水艦には 60人程の人員が必要なのだが、ドラム12体が常時 潜水艦のサポートに付いてくれるので、大幅な人員の削減が出来ている。

 ただ、問題なのは 海中だと周波数が低い電波でしか通信が出来ず、一度に送れる情報量も非常に少なくなるので ネットは勿論(もちろん)の事、他の艦との通信も真面に出来ない。

 ただ この問題を解決する為に、潜水艦に接続されている有線のドローンを、海面に浮かべて 海面の監視の他に 艦との無線通信、娯楽であるネットの使用が出来る様にして オレ達の生命線を確保している。

「あれっ…ナオ…これは、味方の艦ですよね?」

 ソナーマンがオレを呼んで 聞いて来る。

「ん?…確かに…無線で連絡。」

「了解…あ~如何(どう)やら小規模なケンカをしている見たいです。

 向こうの艦は 2週間目なので…」

 トニー王国は 仕事の(ほとん)どを自動化していて、毎月 国から金も出しているので、非常に安定したストレスの少ない治安の良い社会になっている。

 ただ、国民がストレス慣れしていないので 生死に関わる戦場や密閉(みっぺい)空間に閉じ込めたりすると、問題を起こし始める。

 これは普段、ネットばかりしていて 閉鎖環境(へいさかんきょう)()れしているインドア派の乗組員でも、この症状が発生しているので、何か別の要因(よういん)があるのだろう。

「やっぱり、閉鎖環境(へいさかんきょう)だと1週間位が限界か…。

 それにしても ケンカの雑音で こっちのパッシブに引っかかるなんてな…。」

 海の中での潜水艦は 目視が出来ないので、周囲の音で状況を確認する事になる。

 確認方法は 大きく分けて『アクティブソナー』と『パッシブソナー』の2つだ。

 アクティブは、潜水艦からパルス状の音波を発生させて、反射した音波の状態から敵の位置を割り出す方法だ。

 ただ、これは 敵に『私はここにいます』と知らせる事になってしまうので、滅多(めった)に使われない。

 で、通常は 敵の潜水艦から発生する駆動音などから相手の位置を絞り込むパッシブ方法を取る事になる。

「とは言っても、昔は生活音まで聞こえていましたから、だいぶ良くなったと思いますよ。」

「今は その程度でも良いんだが、世界にケンカを売るとなると不安過ぎる。」

「なら装甲内に グラスウールを詰め込んでみますか?

 アレは吸音性が高いですから、いくらかマシになるかと思うんですが…」

「ふむ…だとすると まずは グラスウールの吸音性の最適解を見つけないとだな…。」

「ですね…。

 おっと 味方の潜水艦が来ました。

 海流を利用しているのでしょうか?

 上手いですね…全然 位置が分かりませんでした。」

「一応、ステルス能力はあるって事かな。

 よし、味方が位置に付いたらユートピア島に戻るぞ」

「了解…進路変更します。

 さて…雑音が出ますかね。

 あらら…スクリュー音から味方に こちらの位置を特定されました。」

「スクリュー音か…そこも改造が必要か。」

「見たいです。

 ただ、やけに()こうの耳が良すぎる様な気もしますが…」

 ソナーマンが そう言うとオレ達とケンカになった潜水艦は 推力を上げてユートピア島に戻って行った。


「お疲れ…ドラムだけの潜水艦は如何(どう)だった?」

 潜水艦を降りて港に付いた所でクオリアが言う。

「あ~アレ、ドラムが動かしていたのか…」

「そう、敵への攻撃は出来ないが、静穏性(せいおんせい)監視任務(かんしにんむ)ならドラムに任せた方が良い。

 何より空調の問題を考えなくて済むから、作戦可能時間を大幅に伸ばせる。」

「と言う事は 今後は軍港からドラムに指示を出して 行く事になるのか?」

「そう、技術力は ともかく、メンタルが問題だからな」

 現状だと潜水艦の性能は それなりに良いのだが、乗組員のメンタルが対応出来ておらず、結構な問題行動を起こしている。

 それがドラムに置き換えれる事が出来れば、それなりにラクになるだろう。

 ただ 基本命令が無いとドラムは 動けないので、通信用のドローンのケーブル以上の深度には潜れなくなる。

 となると警備計画の大幅な見直しが必要になるな。

「おっ…降りて来たな」

「……。」「……。」

 クオリアの言葉に オレが隣の浮き桟橋(さんばし)を見るとケンカを始めた潜水艦の乗組員12人が降りてくる。

「はいはい…まずはお疲れ。

 しばらくは休暇(きゅうか)…ゆっくり休んで…。

 後 ケンカの内容をレポートに書いて提出(ていしゅつ)して…不満や要望があるなら聞くから」

「……分かりました。」

 声を(やわ)らかくして言うオレに 乗組員12名が敬礼(けいれい)して、コンテナハウスを積み上げて作られている宿に向かって行った。


 港の町(旧 港の村)、冒険者ギルド。

 さて、何で乗組員がケンカを始めたかと言うと、艦内に持ち込んだトランプで ポーカーをしていた所、イカサマがバレた事で 口論になり、エスカレートして 殴り合いのケンカに発展してしまったとの事だ。

 戦場だと割と くだらない理由で死んだり、船が沈められたりする事が多いが、それが1万トニーの掛け金をめぐった、ケンカによる騒音問題とか、くだらな過ぎる。

 オレは 書類を見て苦笑いを浮かべる。

「あっいた いた ナオ…そろそろ、クラウドを(むか)えに行こう。」

 クオリアが冒険者ギルドに入って来て、オレに言う。

「そう言えば、あれから もう20年か…。

 そうだな…人用の義体は もう十分な性能が出ているんだろ」

 この20年間ドラムを運用して来た事で、人工筋肉、バッテリー、ニューロコンピューターの性能も順調に上がって来ており、毎秒1TB、800億ニューロンを手の平サイズにするスペックになっている…ただし量産は まず出来ず、非常に高価なんだが…。

 これは、大体 人1人分の頭を動かすのに必要な処理能力で、消費電力もオレ達に比べれば 効率が悪いが、日常生活をする分には十分な性能だ。

「まだ 二足歩行時の姿勢制御をする為のバランサーの問題があるが、人の脳の中には 高度なバランス制御システムが組み込まれている。

 後、作れないのは 皮膚(ひふ)位だな。」

「そればかりはな…。

 オレの皮膚(ひふ)培養(ばいよう)して作るしかないか」

 人の義体だと感覚を伝えるセンサーが 義体側では無く、人工皮膚(ひふ)側に組み込まれているので、高度な製造技術が必要だ。

 しかも 人が違和感を感じる 不気味の谷を超えたデザインの皮膚(ひふ)を作らないと いけない。

 この条件に当てはまる皮膚(ひふ)を作るなら、既存の物を培養(ばいよう)するしか無いだろう。

「それじゃあ、クラウドの義体の製作を始めよう。」

「ああ…」

 クオリアがそう言うと、冒険者ギルドの すぐそばにある工場に向かって行き、オレもクオリアの後を()った。

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