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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 4巻 (Rabbit Wars-ラビッド ウォーズ-)
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17 (Rabbit Wars-ラビッド ウォーズ-)〇

 1709年秋 開戦 翌日。

 港の町…ウサギ小屋…。

 ナオ(オレ)達と大量の住民は M3グリースを構えながらウサギ小屋を包囲(ほうい)して行く。

「撃ち殺せ!」

 オレの合図で住民達が 次々とウサギを射殺して行く。

 ウサギは 小屋の敷地内(しきちない)で 必死に逃げまわり、オレ達の包囲(ほうい)を突破するが 向かっている先は フェンスだ。

 フェンスにぶつかり、地面に穴を()って逃げだそうとするが 土の下には金網(かなあみ)()いてあり、穴は()れない。

 そして、フェンスに近づいて来たウサギを 酸水素ガスを使った火炎放射器で焼き殺して行く。

 ウサギに 逃げ場は無く、程無くして最後の1匹を仕留(しと)め終わり、ウサギの死体は火炎放射器で燃やされて行く。

「次 行くぞ、工場の町」


 工場の町のウサギ小屋は 補給が断たれた時 用の非常食なので規模は小さく、一匹事に(おり)に入れられているので簡単に殺せる。

 そして、最後は 硫黄の町のウサギ小屋…これも簡単に片付く。

 やっぱり 人が小屋の(かぎ)を意図的に開いて、家畜を逃がさない限りウサギの脱出は不可能だ。


「ご苦労…次はアトランティスの町の森に入るぞ…」

「はい」

 アトランティスの町の森に入るが いくら探しても少数のウサギの姿は見えず、次々と狩って行くが 本隊が見えない。

「こりゃ拡散(かくさん)されたな。

 一時撤退(いちじてったい)する。

 補給を受けて明日の朝に再開だ。」

 ありったけ持って来た弾も残り(わず)か…。

 そろそろ 補給を受けないと 今度は こちらが殺られる。

「はい」

 オレ達はバギーに乗り、アトランティスの町へ帰還した。


 ウサギ小屋から流失したウサギは 全部で1万…。

 建国当初からオレ達トニー王国の食生活を支えてくれた 大切なウサギは、誰かの動物愛護のお(かげ)で オレ達の害獣(がいじゅう)となった。

 ウサギは12時間で森の全体に拡散(かくさん)してしまい、ロウが中心で組織した狩り部隊が対処するが 失敗。

 それから、ガス室を使った安楽死 計画を破棄(はき)して、銃と火炎放射器で ウサギ小屋内の ウサギを殲滅(せんめつ)した。

 そして こまめに森の探索を続けるが、少数のウサギしかいなく、成果はとても低い

 食べもしないのに動物を殺すのは嫌なんだが、そうでもしないとウサギの数が減らない。


 そして開戦から1ヵ月後。

 ウサギのメスは 1ヵ月で 子供を5~10匹産む…。

 ただウサギのメスのは 子宮が2つあるから最大で20匹だ。

 となると 1ヵ月で最大で10万匹…最小でも5万匹が産れる事になる。

 この1ヵ月間で森で 仕留(しと)めたウサギの数は(わず)か1000匹程度で、全体からすれば誤差に近い。


 ウサギ軍との開戦から半年後…。

 流出したウサギの子供が生殖能力を持つ大人になり、60万匹、最小で30万匹に増える。

 まず影響が出て来たのは港の町だ。

 港の町の付近にある竹の森は 次々と竹が かじられて倒され、地面の草や根っこ、種なども 食べてしまうので、草1本も育たない土地に変わってしまった。

 水場である川は トニー王国のエネルギーである電力を支える為に大量の マイクロ水力発電機が設置されているが、ウサギ達は 川の水を()らす勢いで飲み始め、発電機に巻き込まれたり、配線をかじって 止めたりと言った事が発生し、各町で電気の供給不足から大規模な停電が起きる。

 とは言え、竹の森や水場に張り込んでいれば、ウサギ側から やって来るので撃ち殺すには 効率が良い。

 だが、上手く包囲(ほうい)して一気に狩り()くさないと、ウサギは全方位に拡散(かくさん)して逃げられる事になる。

 畑は金網(かなあみ)で防御しているが、夜勤が無いこの国では 夜の畑を警備する人はいない。

 その為、夜の内に ウサギが地面に穴を掘って畑に侵入し 数十万匹分の腹を満たす為、1夜で畑を食べつくされる事も普通に発生した。

 本当に イギリス軍の侵略して来た時が 可愛く見える位の攻撃だ。

 このウサギ軍の兵站(へいたん)攻撃により、工場生産されているミドリムシの需要(じゅよう)が一気に急増して 大半の天然物の食べ物は食卓から姿を消し、既存(きぞん)の食べ物が駆逐(くちく)されて行った。

 もう高級品として販売していた 天然物はなくなり、ソイフードに使う香辛料や小麦など(ほとん)ど最低限の物しか製造出来なくなりつつある。

 と言うかミドリムシが無かったら、確実に食料難に(おちい)っていた。

 まぁそれでも肉には困らない生活になっただろうが…。

 ハルミは 既存(きぞん)の種を守る為、大規模な水耕栽培(すいこうさいばい)設備を(つく)るが、頻繁(ひんぱん)に電力が足りなくなり、常に発電施設の監視(かんし)に人を割かなくては ならなくなった。

 マイクロ水力発電機の欠点は、発電に必要な面積が 大きくなり過ぎる事だ。

 その為、全部の発電機を監視する事は難しく、ウサギに壊されて電力不足になる事も多い。

 オレ達は これに対抗する為、港の村や硫黄の村から工場の村への電柱や電線の設置を進ませ、電力(でんりょく)供給網(きょうきゅうもう)の完成を急ぐ。

 少し前の大量失業が 今では嘘のようだ。

 逆に言うなら ここまで徹底的に自動化しなければ、この戦争に対処(たいしょ)が出来なかった相手だ。

 本当にウサギの力は凄い。


 ウサギ軍との戦争の開戦から1年後の1710年 秋。

 アトランティス村、工場の村、港の村の草と言う草を食べつくし、木すら かじり倒して食べてしまい 不毛(ふもう)の大地に変え、新たな草を(もと)めて 硫黄の町に向けて進軍を開始…。

 だが、ここには ウサギの天敵がいた…キツネや狼、野犬などだ。

 これにより、大量のウサギがキツネ達の食料となる。

 ウサギは自分達が食い()くした不毛(ふもう)の大地に撤退(てったい)する訳にもいかず、現地の雑草を食べ続けながら 逃げ続けるが、ここに来てウサギの個体数が激減(げきげん)

 理由は 食料を現地調達に頼っていた為に起きた 兵站(へいたん)の問題だ。

 ウサギは 膨大(ぼうだい)に増えた個体数を支える為 ひたすら草や木を食べ続けて、食べつくし、キツネは肉食寄りの雑食なので、現地での食事には困らない。

 ウサギを狩ってくれるキツネを生態系に組み込んでくれたレナに感謝だ。

 と言う訳で この時期に ウサギ側に餓死(がし)が多発…。

 こちらの畑の防備(ぼうび)も やっと整い 畑も再稼働し 始めた所で(さら)なる問題が発生…キツネの大量 繁殖だ。

 これにより、クラウド商会の輸送部隊や現地の住民が キツネに襲われる頻度(ひんど)が多発…。

 ただ、キツネは ウサギ程 繁殖(はんしょく)力が高くない為、国民全員が銃を所持している今の状況なら 対処 出来る範囲の個体数だ。

 だが、キツネを食べている(さら)に大型の肉食獣…熊の個体数が増え、銃弾や農作物や物理的 被害がドンドンと広がって行く。


 ウサギ軍との開戦から2年…1711年。

 毎日大量のウサギを狩っているが、ウサギ軍の侵攻は止まらず、(つい)に硫黄の村の近くまで ウサギの大群(たいぐん)がやって来る。

 この年は ウサギの個体数は減ったが、キツネの増加が問題となり、硫黄の村の作物が ウサギとキツネにより全滅。

 ただ、アトランティス村、港の村の間には 草が1本も無い 不毛地帯(ふもうちたい)が広がっている為、ウサギの補給線が途絶(とぜつ)し、工場の村に やって来れない。

 なので、こちらの畑は 順調に作物を生産して 食料を硫黄の町に輸送している。

 ただ、輸送隊が野生の動物に襲われる事件が多発…負傷者も多く出す。

 そして、ウサギの補給線を断つ為に 硫黄の村の周囲の森を火炎放射器で焼く事に決まった。

 大量のウサギを含めた 様々な動物が森林火災(しんりんかさい)によって死亡し、個体数が激減(げきげん)…。

 ウサギの個体数が戻った事で、キツネの数も安定…その他の大型動物も元に数に戻る。


 ウサギ軍との開戦から3年…1712年。

 (つい)に我々はウサギ軍との戦争に勝利した。

 が、直径500kmの円の島であるトニー王国 本島の4分の1が草も生えない土地に変わり、竹や木材などの森林資源は 植樹をしても 復活するのに何年も掛かるだろう。

 (さら)厄介(やっかい)なのは 炭素繊維に必要な木を燃やして作るコールタールの 入手が難しくなる事だ。

 そして、ウサギやキツネは 残りの4分の3に移住し、また現地の生態系に影響を及ぼし、オレ達はウサギ軍に マンパワーを割かれた事で技術の大幅な停滞(ていたい)を生み、戦略的には オレ達は ウサギ軍に敗北したのであった。


 そして戦後復興(ふっこう)…。

「まさか…こんな事になるなんて」

「ウサギ にがした だけで、もり、しぬなんて…」

 草が無く見通しが良くなった道路をナオ(オレ)が運転しているバギーの後部座席に座るミアとハインが 言う。

 その後ろの屋根を付けた荷台には 一回り小さい 子供達が座っている。

 今日は復興作業の一環(いっかん)植樹(しょくじゅ)作業だ。

「それだけ人の影響が大きいって事だ。」

「ん?」

 オレの言葉にハインが疑問()を浮かべる。

「通常、ウサギは ここまで増えない。

 周りの草を食べつくせば餓死(がし)したり、キツネに食べられたりして数が自然に調節(ちょうせつ)される。

 だけど 家畜は別…。

 人がウサギを敵から守り、自然に生えている草の数百倍の生産効率が高い農耕(のうこう)で生み出された 栄養価が高い飼料を大量に食べる事になる。

 だから 流出すると生態系が破壊されるレベルの被害になる。」

 まさか大量のウサギが 大木まで かじって切り倒す程の能力があるとは オレも予想外だったが…。

 根本を かじられて食べられ続けた木は ウサギを押しつぶして倒壊し、それも(さら)に別のウサギが かじって(けず)り取り(えさ)となる。

 その後は 土を掘り起こして 木の根っこまで食べて木が生えなくなる。

 道路の両側には、戦争序盤にジガが確保していた種から作った 水耕栽培(すいこうさいばい)で成長させた 果物の木の(なえ)が植えられている。

 この道が また果物の木で(おおわ)われるには 5年位の時間が掛かるだろう…。

「さてと、着いたぞ」

 オレは子供達を降ろす。

 ここからは果物の木の苗は見当たらず、今から土を(たが)やして肥料(ひりょう)()き、果物の(なえ)を植える事になる。

 ハインが土を耕して肥料(ひりょう)()き、ミアが涙を浮かべ 次々と(なえ)を植えて 支柱を建てて行く。

 1712年…トニー国はウサギにより破壊された森の復興(ふっこう)を始まった。

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