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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 4巻 (Rabbit Wars-ラビッド ウォーズ-)
100/339

10 (民間企業 参入!!)〇

 1708年春。

 実演 販売の期間が過ぎた事で、大好評のデジタルゲームのテーブルは 国民達に惜しまれたが撤去(てっきょ)し、興味を持ったゲームマニア達が、コンピューター 一式を購入して それぞれ自分達で ゲームを作り始めている。

 エスペラント語で動く本体は 扱い(づら)いが、ゲーム作成ツールの方は トニー王国語が分かれば 誰でも ある程度のゲームを作れる。

 さて、オレは そんなゲームマニアとは 別の方向で頑張っていた。

 直径2cmの6×6のコインの型を正確に作り、鉄の硬貨を鋳造(ちゅうぞう)で作る。

 1回の鋳造(ちゅうぞう)で出来るのは 36枚…。

 出来た36枚の重さやサイズを正確に測り、型の誤差を極限まで無くして行く。

 そして出来上がったのは、鉄製の100トニーコインだ。

 100トニーコインに合わせて コイン投入口を作り、入ったコインの重さで スプリングが(しず)み ロックが外れる単純な仕組みにした。

 欠点としては コインの模様(もよう)を判定せず、重さとサイズで識別しているアナログ方式の為、セキュリティが甘い事…。

 スプリングの長さの問題で 最大で6枚しか入らない事だ。

 とは言え 日常で使う分には これで十分。

 オレは大型 冷蔵庫 程度の大きさの自販機を見る。

 自販機には 6ヵ所のコイン投入口(とうにゅうぐち)と下に回すレバーがあり、オレは ドアを開けて商品を入れて行く。

 商品を入れ終わったら ドアを閉じて 鍵を掛け、左上から100トニーコインを入れてレバーを回す。

 そうすると商品を1つ重力で落ちて来る。

 基本は ガチャの仕組みと同じだ…よしOK。

 200、300、400、500、600トニー…よし…これで 売店を自動化 出来る。

「あ~外側(ガワ)だけ作ったけど、商品のパッケージを作らないとな。

 う~んプリンターを作って見るか?」

 マシニングセンターのレーザーをインクに()えれば 行けるか?

 設計データは そのまま使えるし、基板を焼くほどの精度は 必要ないから小型化も出来る。

 ただ インクは黒しかないから、モノクロ印刷になるかな…。

 オレは そんな独り言を言い、手書きで描けば良いと言うのに プリンターの設計を始めた。


 数日でテーブル2個分サイズのプリンターの試作機が出来、白黒のドット絵をコンピューターから入力して紙に印刷して行く。

「よし、上手く行った。」

 そう言いつつ、オレは自販機を()(かか)えて 冒険者ギルドまで持って行く。

 自販機は軽量の炭素繊維で出来ている為、商品が入っていない状態であれば、普通に持ち上げられる…そして 自販機を売店の隣に置く。

 施設(しせつ)が増える度に コンテナを追加接続させる拡張工事を繰り返している冒険者ギルドは、今では 求人や飲食店、売店、銀行と様々な施設(しせつ)が一体化している。

 ただ まだ役所の機能は 冒険者ギルドには 無く、そもそも正確な国民の数すら把握(はあく)していない。

 住民票とかを作って 国民をリスト化 出来れば良いんだが…。

「ナオさん…今度は一体何を作ったのです?」

 売店の定員、クロエが聞いてくる。

「ああ…自販機…自動販売機って言ってな。

 新しい売店だ。」

「これが売店ですか…」

「そ…よっと…ここに 商品を入れてドアを閉じて鍵を掛けるだけ。

 で、コインを入れてここを回すと…ほら」

 オレがクロエの為に実際にやって見る。

「確かに便利ですね。

 特にフリーズドライの食品は、買う人が多すぎて 並ぶ人も多いですから…。」

「スーパーマーケット式にすれば、結構 効率が良くなるんだけどな。」

 ここの売店は カゴに商品を入れてレジで精算(せいさん)する()馴染みの方式では無く、昔ながらの店員と会話をして商品を出して(もら)う接客方式だ。

 この販売の仕方は クラウドが教えたもので、品数が増えて来ると対応 出来なくなると言う欠点があるが、万引きなどを確実に防げる 利点も存在するので、この時代では割と一般的な販売 方式だ。

 クロエの手間も考えると ある程度 自動化させた方が効率が良い。

 オレはそう思って自販機を作った。


「と言う訳で、はい…急増だけど初期ロットの100トニー。

 次のロットは造幣局(ぞうへいきょく)の方から来るから…。」

 売店の隣の銀行の職員に オレは ガラス繊維の袋を開けて中のコインを見せる。

「自販機ですか…面白そうですね。

 これが コインですか?

 素材は鉄?」

「そう…両替は頼むよ。

 それと『自販機を作って見たい』って言う人が出たらオレに教えてくれ。

 これを元に民間で自販機を作って(もら)いたい。」

「分かりました。

 声かけときますね…。」

「あ~私も お客さんと交流がありますので声を掛けて見ます」

 クロエが言う。

「ねぇねぇ なお…」

「はいはい?」

 オレは下を向く。

 そこでオレのジャージを引っ張っているのは、クロエの子供のミアだ。

「また、でじたるげーむ?やらないの?

 わたし、あれ すき、マザーも」

「あ~確かクロエも一緒にやってたな…」

「ええ…ただ この子 上手くて…。

 でもね…ミア、あれは 皆にコンピューターを買って(もら)う為に作ったのよ」

「なら…かって…ミア、まだ おかね もらえない」

 ミアは まだ文字の読み書きや この国の法律に付いて勉強中で働いていないので収入が無い。

「う~ん買えない事は 無いのですが…私で使いこなせるか…」

「なら、なお かって、おかねもち でしょう。」

 ミアがオレに抱き着いてくる。

「確かにオレは銀行のトップだから 通貨発行が出来るけど。

 可愛い幼女の頼みとはいえ、1国民を優遇するのもな~。

 学校の先生にコンピューターが欲しいって言って(もら)えば、学校側が買ってくれると思うぞ…。

 まぁ皆の物になるんだろうけど…。」

 生徒の要望による学習機材は 経費で落ちるので、学校側から発注してくれれば、こっちでも優遇が出来る。

「まっゲームを やりたいだけなら ゲームの自販機を作ろう。」

「じはんき?」

「そ、自販機…まぁゲームは出来る様にするから待ってて」

「うん、ミア、まつ」

 そう言うとオレは テーブル席に座り、自販機の売れ行きを見ながら過ごす。

 夕食時に行列が出ていた売店は いくらか落ち着き、隣の自販機でフリーズドライ食品を慣れない手つきで購入してる人も結構いる。

 デザインに問題は (かか)えているが、これから住民の手で改良されて行く自販機の始めとしては 良いだろう。


 そして数日後…。

 チャリン、チャリン…。

 コイン投入口が追加されたデジタルゲームのテーブルが4台追加され、賑わっている。

 内2台が侵略者(インベーダー)ゲーム。

 早速(さっそく)、クロエとミアが 100トニーコインを使って対戦を行っている。

 残り2台は 最初期にコンピューターを購入して オレにゲームを見せて来たゲームマニアが作った作品だ。

 赤い帽子に(ヒゲ)を生やした白い手袋をして青のオーバーオールを着たおっさんが、障害物を飛び越えながらゴールまで進んでいく アスレチックゲームだ。

 そのおっさんのデザインを見てオレは 世界一有名な配管工に非常に似ているので驚いた。

 まぁ16×16ドットの(しばり)りで キャラを描くとなると、帽子を被せて、大きな鼻と髭で顔の輪郭(りんかく)を再現して、手と腕、それに胴体は 違う色で無いと動きが分かりにくいので、オーバーオールを着させて見やすくする…。

 少ないドット数でキャラクターを表現すると言う(しば)りで、ひたすら合理化されたデザインを追求した結果、同じ結論に たどり着くのは 必然だった。

 そんな訳で 稼いだコインの1割がオレで、9割が開発者の取り分となる契約(けいやく)をして、デジタルゲームのテーブルとして2台が導入された。

 その後、この契約(けいやく)内容を聞いた 別のマニアが作ったゲームも見る事になり、面白そうな物をピックアップして 冒険者ギルドの隣にゲームセンターと自販機による軽食を食べられる ゲーム喫茶を民間企業で作る事になった。

 今は 各製造会社と発注する機材の生産スケジュールを組んでいる所で、そう長く掛からない見通しだ。

 他にも 生産性 第一で 低性能な国の製品では無く、デザインや性能に こだわった高級品を売る 民間の店も 人が集まる冒険者ギルドの周りに次々と出店する予定が入っており、全部を合わせると 商店街の規模になる。

 特にバギーの店が 出そうとしている 屋根が付いたオート三輪は、後ろに2人が乗れるタイプで、コンテナハウスを けん引も出来る馬力を持っている。

 これは 試乗してみて性能が良かったら是非(ぜひ)買って見たい所…。

 オレは そんな事を考えながら、早くもコインで一杯になったコイン箱を交換をしにテーブルに向かった。

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