たたりなんてあり得ない!
いつの間にか寝ていたようだ。
目覚めると仲間ふたりの笑顔があった
「よお、来たよ」
「生きてるな」
オレが応える。
「だから言ってたろ、たたりなんかねーって」
輝夫が言う。
「お前が証明したな」
笑ってみせるオレ。
良太が言う。
「でも超心配したんだぞ」
「そうそう、なんたって帰りに必ず事故って死ぬという桐谷病院だったからな」
「で、マジ事故ってるし」
オレが応える。
「それは偶然!あんだけ廃墟めぐりしてきたら事故るときもある!」
輝夫が意地悪げに笑いながら、
「綺麗だったけどな。バイクからシャーっと火花が散って」
「ああドラゴン花火みたいだったぞ」
オレも笑いたかったがあえて不機嫌そうに、
「廃車になったんだから、新しいバイク代てめーらもカンパしろよ」
気まずそうに顔を見合わせる輝夫と良太。
こいつらを見ていると本当に不機嫌になってきた。
「この世に幽霊なんて存在しねーの。だからたたりなんてものもない!全てはてめーの脳が見せる幻想なんだよ!」
輝夫が、
「でも…」
「でもじゃねーよ!100パー死ぬって場所に行って生きている俺らが証拠なんだよ!」
黙ってしまったふたり。
「もういい、てめーら帰れ」
ふたり、再び顔を見合わせたあと、
「…じゃあ、また来るよ」
そう言うと松葉杖を使い立ち上がる輝夫。
良太も車椅子のタイヤを鳴らし後ずさる。
「もう来ねーでいいからな。辛気臭くなる!」
病室から出て行くふたり。
腹が減ったがナースコールを押す手がなくなっちまったのでどうしようもない。
投げ出す足すら失ってしまった。
いまのオレは四肢のない肉ダルマだ。
このまま何年生きていても両手両足は戻らないだろう。
ふたりに話していないことがある。
バイクが倒れアスファルトがオレの四肢をもぎ取ったあと聴こえた女性の声、
「死ねばよかったのに」
残念だったな、オレは生きている。
死ねばよかったと思う毎日だがオレは生きている。
声に出して言おう、
「たたりなんてあり得ない!」
(おわり)