表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

たたりなんてあり得ない!

作者: 伊藤康弘

いつの間にか寝ていたようだ。

目覚めると仲間ふたりの笑顔があった

「よお、来たよ」

「生きてるな」

オレが応える。

「だから言ってたろ、たたりなんかねーって」

輝夫が言う。

「お前が証明したな」

笑ってみせるオレ。

良太が言う。

「でも超心配したんだぞ」

「そうそう、なんたって帰りに必ず事故って死ぬという桐谷病院だったからな」

「で、マジ事故ってるし」

オレが応える。

「それは偶然!あんだけ廃墟めぐりしてきたら事故るときもある!」

輝夫が意地悪げに笑いながら、

「綺麗だったけどな。バイクからシャーっと火花が散って」

「ああドラゴン花火みたいだったぞ」

オレも笑いたかったがあえて不機嫌そうに、

「廃車になったんだから、新しいバイク代てめーらもカンパしろよ」

気まずそうに顔を見合わせる輝夫と良太。

こいつらを見ていると本当に不機嫌になってきた。

「この世に幽霊なんて存在しねーの。だからたたりなんてものもない!全てはてめーの脳が見せる幻想なんだよ!」

輝夫が、

「でも…」

「でもじゃねーよ!100パー死ぬって場所に行って生きている俺らが証拠なんだよ!」

黙ってしまったふたり。

「もういい、てめーら帰れ」

ふたり、再び顔を見合わせたあと、

「…じゃあ、また来るよ」

そう言うと松葉杖を使い立ち上がる輝夫。

良太も車椅子のタイヤを鳴らし後ずさる。

「もう来ねーでいいからな。辛気臭くなる!」

病室から出て行くふたり。

腹が減ったがナースコールを押す手がなくなっちまったのでどうしようもない。

投げ出す足すら失ってしまった。

いまのオレは四肢のない肉ダルマだ。

このまま何年生きていても両手両足は戻らないだろう。

ふたりに話していないことがある。

バイクが倒れアスファルトがオレの四肢をもぎ取ったあと聴こえた女性の声、

「死ねばよかったのに」

残念だったな、オレは生きている。

死ねばよかったと思う毎日だがオレは生きている。

声に出して言おう、


「たたりなんてあり得ない!」


(おわり)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ