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第3話 エール
熱中症だろうか?
大柄な男がスーツを着た男を担いで運んでいる。
その異様な姿が人通りの多い通りを歩いているのに、行き交う人々は気にもとめていない。
それはそうだろう。みんな忙しいのだから、暇なのは私ぐらいだろう。
コンビニで買ったアイスキャンデーをペロペロと舐めながら、その姿を目で追う。
担がれている男に意識はないようで、筋骨隆々な男が歩くたびに、力なく手足がぶらぶらと風に吹かれる稲穂のように揺れていた。
しかし、風は吹いていない。
額から溢れる汗をハンカチで拭き拭き、こぼれ落ちそうになるアイスキャンデーを慌てて舐めとる。
そりゃ全身真っ黒のスーツを着ていたら熱中症にもなるよね。
熱中症の男に無言のエールを送った。