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ヴィジターキラー  作者: 反物質
第3章 「異世界転生したので錬成スキルで裏社会を牛耳る件について」秋山利人
28/110

3-3

 逃げ出した盗賊の逃げ込んだ先は、盗賊団のアジトだった。そこには辺り一帯の商隊を襲っていた盗賊の総本山で、そこに殴り込むのはギルドの猛者でさえ容易ではなかった。ただでさえ100人にも及ぶ大人数のうえ、「異世界の技術」を取り入れていたからだ。だが、「転生者殺し」がすでに対策をしていたため、彼らは為す術もなく捉えられてしまった。彼らは「異世界の技術」、そしてそれを用いて作られた武器「銃」を主力にしていたからだ。

 そしてその主力である「銃」を無効化していたという事実は、「対転生者特別防衛機関」の名を冠するものであることを証明していた。

「成る程ねぇ。今までにも銃を“使っていた”転生者は居たけど、銃を”量産していた“ケースは初めてだねぇ」

 木のテーブルにクロスを敷いて、そこに並べられた「銃」をまじまじと見ながら、ネロはつぶやいた。彼らは盗賊団のアジトに居るが、そこにはもう敵対勢力は居ない。

「うーん・・・・でも、この銃は今までに見た“モデル”とも違うね・・・・・」

 と、ネロは手元にある分厚い本とにらめっこしながら、手袋越しに銃を丁寧に扱う。

「あの・・・・・すみません。これって、異世界の武器、なんですよね?・・・・・・・なんで、どんな種類があるのかとか解るんですか?」

 マナはネロに質問した。確かに、自分たちの世界にはない技術で作られた武器など、本来は知っているはずもないものだ。マナが疑問に思うのも無理はない。

 だが、「対転生者特別防衛機関」だからこその理由があった。

「それはね、これまで“送り返してきた”転生者からの情報からなんだ」

「送り返してきた・・・・・?」

「うん。元の世界に返す代わりに、彼らの持っている情報をもらっているんだ。“メモリーリーダー”っていう装置を使ってね」

 転生者といっても、彼らにはそれぞれ「危険度」がある。危険度には1~8があり、4~8に定められた転生者が、基本的に「転生者殺し」の討伐対象になる。一方で危険度の低い1~3の転生者は基本的にマークすることがない。そして転生者自身の実力は、基本的に危険度に比例すると言っていい。

 危険度の低い転生者は無害ではあるが、裏を返せば「良くて普通」「弱い」という意味でもある。そんな彼らはこちらの世界の冒険者と同じようにモンスターに苦戦するし、クエストの成功に一喜一憂するし、並の冒険者と同じように「挫折」も経験する。そして「挫折」した転生者は「元の世界に帰りたい」と思うようになるものがほとんどである。

 そんな彼らの行き着く先の一つが「対転生者特別防衛機関」である。元々「転生者を取り締まる」彼らではあるが、あくまでも「転生者を送り返す」というのが真の目的であり、故に彼らに相談すれば元の世界に帰れる、というわけだ。もちろん無償でそういうことをするわけにはいかないのだが、それにぴったりの対価が「情報」というわけだ。

 こうして得られた「情報」を元に、向こうの世界ではどんな生活を送っているのかなどを知ることができ、転生者に対する「対抗策」を講じることができる。その一つに、「銃」の存在がある。

「グリップの位置・・・・トリガーの形状・・・・・ディテール・・・・・どれをとってもこれまでに得られた情報とは合致しないぞ・・・・?なんでだ・・・・?」

 と、ネロが格闘していた時だった。

「おそらくだが、この銃を提供した“秋山利人アキヤマリヒト”のイメージだけで作られているのかもしれん」

「トーヤ君!」

 奥の洞窟から、トーヤがやってきたその手には押収した銃の一丁が握られている。

「秋山利人・・・・・“産業を切り拓く者”なんて呼ばれている奴だったっけ。そいつが今回の元凶だって?」

 ネロの質問に対し、トーヤはこくりと頷いた。

 秋山利人というのは2年前にこちらの世界に来た転生者で、「錬成スキル」と呼ばれる「素材から全く新たなアイテムや武具を生成する」スキルを手に入れている。一時期冒険者ギルドに所属していたが、そのうち自身のスキルを利用した販売業を行うようになり、後に冒険者ギルドを脱退した。元々転生者である上に「自身の望んだものを思うがままに作り出す」力を持っていたため「転生者殺し」は彼をマークしていたが、つい最近その消息が途絶えたのだ。

 それ以来その行方を追ってはいたのだが、こんなところでその名を目にすることになるとは思っても居なかった。

「この盗賊団の頭領は奴と秘密裏に取引をしていたらしい。頭領の部屋を調べていたら、こんなものが出てきた」

「何だって?・・・・・・“契約書:有用な異世界の技術を提供する代わりにこの秋山利人に継続的に資源を供給し続けること”・・・・・・そこには“鉄鉱石”に“エレメントメタル”・・・・さらには“重鋼竜の激震炉”・・・・・こんなものまで要求していたのか?!」

 ネロはそのリストを見て目を見開いた。「重鋼竜の激震炉」とはギガドラスのその力の根源である内臓器官で、土を喰らいそれをここで燃焼させることで膨大な土属性の魔力を生成し、自身の肉体の自己強化を図るのだ。だが蟻を踏み潰すがごとくホイホイ殺す転生者なら兎も角、タツモドキ一体を討伐するのも相当な労力が必要だ。下手したら、ここに居た盗賊団全員がかかっても傷一つつけられないだろう。だからこそ、盗賊なのだろうが。

「そして驚いたのだが、この銃の使い方を、奴はまともに教えてなかったみたいだ」

 といって、手にしていた銃を操作し、グリップからマガジンを取り出した。

「え?!こ、壊しちゃっていいんですか?!」

「え?・・・・・ああ。お前は知らないんだっけ」

 トーヤは驚くマナに対して、マガジンを抜いて安全になった銃をくるくる回しながら答えた。

「“銃”って言うのは“火薬の力で弾を放つ”武器で、こんな風に“弾丸”を直接コイツにぶち込んで、引き金を引いて使うんだ。火薬が燃えるとすごい音がなるし、反動もあるが、その一撃は矢なんかよりも遙かに上なんだ。しかも弓矢と違ってかなり小さいから携帯するのには都合がいい・・・・・・まさに、至れり尽くせりな武器なんだ。・・・・・が」

 パシッ、と回していた銃を手に取り、グリップの底の穴の開いたところを見せた。

「こんな風に弾丸を装填するところがあるんだが、奴はここを開けて入れることを教えてなかったらしい。さっきこの盗賊団の頭領に会って話をしたが、やっぱりお前みたいな反応をしていたよ」

「・・・・・・もしかして人数に対して5倍近い数の銃が見つかったのも」

「使い捨てさせていたんだろうな。使い終わった銃も奴に取引で装填させていたみたいだし、仮にそうでなくとも新たに購入させれば懐も潤う。・・・・・・ずいぶんいい性格していやがるぜ」

 と、トーヤは忌々しげに吐き捨てた。正しい使い方を知っているにもかかわらず、敢えてそれを教えずにビジネスに応用するそんなやり方に、虫唾が走る。実際仲間の背後にトーヤが回ったときも、「楯にされるかもしれないのに」下っ端は引き金を引いていた。おそらく「撃てば当たる」ぐらいの感覚でしか教えられていなかったのだろう。

「(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?)」

 しかしそれとは別に、マナはなぜか違和感を覚えた。確かに、ネロの言うとおりならば「銃」という武器を使えるのもおかしくはないだろう。実際「図鑑」という形で様々な種類の銃の情報を手に入れている訳なのだから。

 だが、トーヤはなぜか扱いなれている感じがするのだ。





まるで()()()()()()()()()()()()()




 そんな彼女の思惑をよそに、トーヤは話を続ける。

「そこでだ、ちょっと気になるのが今回護衛対象になった彼のことなんだが・・・・・・・」

「え?ああ。彼ね。それがどうかしたんだい?」

 ネロは傍らにいる男性に目を向けた。彼はなんとか目的の町に品物を納めたのだが、その後にトーヤに「仕事が一段落したら、事情聴取させてほしい」と言われていたのだ。ちょうど納品が終わって指定された場所に来る頃にはアジトの制圧が終わっていたわけだが、トーヤもまさかこんなに早く来ると思っていなかった。

「この人の荷物がやけに軽かった。おかげでマナやシロが隠れることができたが・・・・・もしやコイツが関係しているのかと思ってな」

「え?利人が・・・・・・?」

 ネロはトーヤの意見に眉をひそめた。






「秋山利人。コイツがあの町に向かう商人達の仕事を奪っている可能性が高い」

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