表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タッツミー  作者: ゆらゆらゆらり
69/74

もどかしいです

 祝杯は亮を中心に大いに盛り上がった。そして、一段落すると亮の仲間たちは、ほんのり顔を赤らめ、楽しそうに帰っていった。

 明子は、そんな彼らを感謝いっぱいの思いで見送った。彼らはみんな、本当は朝までだって祝ってあげたいと思ってくれているはずだ。でも、誰もが激戦を戦い抜いた亮を気遣ってくれている。


 やがて、美貴も立ち上がり、亮に声をかけている。

「亮くん、本当におめでとう」

 微笑みながらの声に、亮も笑顔でうなずいている。

「じゃー、私たちはそろそろ」

 美貴が、亮やみんなに向かってそう言った。

 すかさず亮が、「じゃあ、送りますよ」と声をあげた。

 美貴はすぐに、「亮くん、疲れているんだからゆっくりして。それに今日は大丈夫よ。あの子もあんなに元気だから」


 前回の祝勝会では、拓也が眠ってしまっていたが、今日はユイと、はしゃぎ合っている。

 明子はそんな様子を眺めながら口を開いた。

「興奮して、今日はなかなか眠れないかもね」、そう言いながら、あえて苦笑いを作って視線を後ろに、「こっちは、すぐに寝ちゃったけどね」

 明子の後ろには真っ赤な顔をし、幸せそうな顔で眠る大作の姿がある。


「大ちゃん、普段はまったく飲まないし、コップ一杯だって飲めないのにな。相当嬉しかったんだな」

 その武史の言葉に、みんなが優しく微笑むように大作を見つめている。

 いつもは表情をあまり顔に出さない大作が、今日は本当にうれしそうな顔で眠っている。



「まだ帰りたくない」と言う拓也を美貴が宥めて手を引くと、「じゃー、外まで」と言って亮まで出て行ってしまった。

 明子は出入り口のところまでいって、拓也に手を振りながら見送った。


 外って、会館の外までじゃないの。


 亮は一緒に駅のほうへと向かってしまった。


 明子はため息をつきつつ向きを変え、会館の引き戸を開けた。

 会館の中は主役がいなくなっても、あいかわらず飲みが続いている。


 引き戸の音に奈津子が顔を向けてきた。戻ってきたのが明子ひとりだったからか、寂しげな表情が浮かんだ。ほんの一瞬だけ。

「明おばちゃんも飲もうよ」

 笑顔を作って、そんな言葉をかけてくる。


 その姿に、明子の胸がちくりと痛む。

 奈津子を見つめる淳史の眼差しにも。


 奈津子は笑顔で話の輪に入っていっている。

 ぎこちない笑顔と大きめの声の奈津子。いつも以上に盛り上げようと笑い声を上げている淳史。

 明子は浮かんでくる涙を払い飛ばし、話へと加わっていった。


 このバカ息子が!


 胸の中でそう叫びながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ